相場展望9月8日 米国株: 9/7は一時的反発、依然として警戒は変わらず 日本株: ▲1800円安の自律反発期待、ただし短期か

2022年9月8日 10:11

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■I.米国株式市場

●1.NYダウの推移

 1)9/5、NYダウ、祝日「Labor Day」のため休場

【前回は】相場展望9月5日 米国株:2番底か新1番底形成へ 米国株と世界景気は、原油価格とは『逆相関』 日本株:外国人投資家の売り転換確認

 2)9/6、NYダウ▲173ドル安、31,145ドル(日経新聞より抜粋
  ・米連邦準備理事会(FRB)を含む世界の中央銀行による積極利上げへの警戒感が相場の重荷だった。9/6オーストラリア準備銀行が+0.5%、今週は欧州とカナダ中央銀行。
  ・米長期金利が3カ月ぶり3.35%の水準まで上昇し、長期金利上昇時に売られやすいハイテクを中心に下げた。セールスフォース・マイクロソフトが▲1%強下げた。
  ・米8月ISM非製造業景況指数が56.9と、市場予想55.5を上回った。米景気の足元の底堅さが確認され、FRBの金融引締めが長期化するとの観測が改めて意識された。
  ・欧州ではインフレと利上げの加速が景気を冷やすとの懸念が強く、米経済はなお堅調だがFRBの利上げが長期化すれば景気後退に陥りかねないとの見方がある。
  ・スリーエム・ダウなど世界景気の影響を受けやすい銘柄の下げが目立った。

 3)9/7、NYダウ+435ドル高、31,581ドル(日経新聞より抜粋
  ・米国株式相場の下落が続いていたため、米長期金利の低下と米原油先物相場の下落もあって、短期的に「売られ過ぎ」とみた買いが幅広い銘柄に入った。
  ・米債券市場では9/7に長期金利は一時、前日比▲0.10%低い3.25%を付けた。長期金利低下でハイテクなど高PER(株価収益率)銘柄の相対的な割高感が薄れた。
  ・米原油先物は一時81ドル台と1月以来の安値を付け、インフレ懸念がやや和らいだ。
  ・もっとも、FRBなど世界の主要中央銀行が積極的な利上げに動き、景気を冷やすとの懸念は変わっていない。市場では、FRBは9/21のFOMC(米連邦公開市場委員会)で+0.75%の利上げを決めるとの観測が強まっている。
  ・米株式相場は9/7に反発したが、「売られ過ぎの反動であり、基調に変化はない。今後の金融引締めペースやインフレ動向を見極める必要がある」との声が聞かれた。
  ・個別では、景気敏感株や消費関連株が買い直された。原油安でシェブロンは下げた。3M・ナイキが+3%高、アメックス・ボーイングも高い。マイクロソフト+2%高。

●2.米国株:9/7は大幅反発も、「売られ過ぎ」の一時的上昇、依然として警戒は変わらず

 1)NYダウは9/7に+435ドル反発も、高インフレ水準が継続し、FRBの金融引締めは変わらず。
  反発の要因は、
   ・「売られ過ぎ」:8/16高値34,152ドル⇒9/6安値31,145ドルと▲3,007ドル大幅安▲8.8%安。
   ・長期金利(10年物)の低下:9/6 3.349%⇒9/7 3.267% ▲0.082%下落。
   ・原油先物価格の急落:9/6 86.88ドル⇒9/7 81.66 ▲6.0%大幅安。

 2)米インフレ率は最悪期脱せず⇒FRBの金融引締め強化(金利高・余剰資金回収)継続
  ・9月金利引上げ、通常の3倍の+0.75%を3回連続で実施の可能性。
  ・9月から本格的なQT(FRBの資産圧縮)実施、月950億ドルの吸い上げ。

 3)世界の主要中央銀行は、インフレ抑制のため金融引締めを始めたばかり
  ・欧州中央銀行(ECB)、カナダ、オーストラリアなど主要中央銀行は政策金利引上げ。

 4)原油価格は再騰予想
  ・米原油戦略備蓄はガソリン価格引下げのため大量放出⇒元の備蓄に戻すため買上げ。
  ・OPECプラス諸国は減産を発表。

 5)したがって、米国と世界景気は後退必至で、9/7の反発は「一時的」とみる。
  ・中国も、不動産業界低迷・ゼロコロナ対策で厳しい行動制限・民間活力への抑制などで、世界景気牽引役は期待できず。
  ・欧州は、高インフレ抑制政策と、ロシア産天然ガスの供給停止問題で景気悪化。

●3.米国よりもインフレは深刻、「次の世界金融危機は欧州から始まる」とウワサ(プレジデント)

●4.ユーロ圏8月総合購買担当者景気指数(PMI)48.9と、18カ月ぶり低水準(ロイター)

 1)2カ月連続で50割れ。

●5.OPECプラスは、原油減産を10月から実施、原油価格再上昇の可能性(毎日新聞)

■II.中国株式市場

●1.上海総合指数の推移

 1)9/5、上海総合+13高、3,199(亜州リサーチより抜粋
  ・中国経済対策の景気下支え効果が期待される流れとなった。
  ・当局が先ごろ策定した19項目にわたる新たな経済対策パッケージに関しては、9月上旬にも詳細が公表される見通しだ。ただ、上値は重い。
  ・新型コロナ感染を抑制するため、中国各地で行動制限が実施されている。経済活動停滞の長期化が危惧され、指数は安く推移する場面もみられた。
  ・業種別では、エネルギー関連の上げが目立ち、発電電力設備が買われ、消費関連は安い。

 2)9/6、上海総合+43高、3,243(亜州リサーチより抜粋
  ・中国経済対策の効果に対する期待感が持続する流れとなった。
  ・国務院が先ごろ策定した19項目にわたる新たな経済対策パッケージに関しては、9月上旬にも詳細が公表される見通しだ。また、国家発展改革委員会は9/5に「景気支援を適切に強化する」と表明。
  ・財政部の幹部は、追加の特別地方債の発行を急ぎ、各種インフラプロジェクトを推進していく方針を強調した。
  ・業種別では、不動産の上昇が目立ち、ゼネコン・建機のインフラ関連もしっかり。

 3)9/7、上海総合+2高、3,246(亜州リサーチより抜粋
  ・中国政府による景気下支えスタンスが期待される流れとなった。
  ・中国8月貿易統計が大幅に下ぶれる中、当局が経済対策を強めるとの見方が広がった。
  ・それより先の9/6には、国家発展改革委員会は「景気支援を適切に強化する」と表明。また、習近平・国家主席は9/6、半導体を巡り米国が中国に圧力を掛けていることを背景に、「ハイテク分野で中核技術を発展させることが重要」と述べた。
  ・指数は安く推移していたが、終盤になってプラス圏に回復した。
  ・業種別では、ハイテク関連の上げが目立ち、発電・電力設備が物色、酒造は冴えない。

●2.中国、コロナ対策で33都市6,500万人に行動制限、不満高まる(共同通信)

 1)四川省成都、広東省深圳、河北省石家荘、黒竜江省ハルビンなど。

●3.中国干ばつで被害、ピーナツが実らず、異常気象が農産物に大惨事(ブルームバーグ)

●4.深まる中国の不動産危機、日本型バブル崩壊の懸念も(日経新聞)

●5.中国企業4,800社の53%が軒並み減益、コロナ禍の2020年と同水準(Pars Today)

 1)企業の低調な業績要因は、(1)厳格なコロナ抑制策 (2)不動産市場の危機の深刻化。

 2)中国の国内総生産(GDP)の4~6月の伸び率は前年同期比+0.4%増に留まる。

 3)中国の投資銀行は年間経済成長率予測を+3%以下に下方修正(政府目標5.5%前後)。

■III.日本株式市場

●1.日経平均の推移

 1)9/5、日経平均▲31円安、27,619円(日経新聞より抜粋
  ・欧米の高インフレや金融引締めで世界景気が一段と悪化するとの懸念が重荷となった。
  ・反面、値ごろ感があるとみられた主力株の一部に買いが入り、指数を支えた。
  ・9/2の米国株安も嫌気された。9/2発表の米8月雇用統計は非農業部門の雇用者数の増加幅が市場予想並で、失業率は小幅に上昇した。
  ・米連邦準備理事会(FRB)による積極的な金融引締めペースが緩やかにならないと市場は受け止めた。
  ・売りが一巡すると、前週に下げた成長株に買いが入り、日経平均は下げ幅を縮めた。
  ・9/5の米国市場が休みのため、薄商いの中で持ち高を一方向に傾ける動きは限られた。
  ・ホンダ・デンソー・パナ・ファストリが売られ、リクルート・日揮・三菱重が買われた。

 2)9/6、日経平均+6円高、27,626円(日経新聞より抜粋
  ・前日まで4日続落したため自律反発狙いの買いと、米国株の休場明けの上昇期待で先物買い優勢もあって、日経平均は一時+200円高に迫った。
  ・買い一巡後、欧州など景気減速懸念への根強さもあり、下げに転じる場面もあった。
  ・市場では、高インフレへの警戒感がくすぶる中「各国の物価指標の発表が相次ぐ9月中旬までは持ち高を傾けにくい」との声も聞かれた。
  ・IHI・三菱重が上げ、日経平均採用のHOYAが上昇、東電・楽天・カドカワが下落。

 3)9/7、日経平均▲196円安、27,430円(日経新聞より抜粋
  ・米国の積極的な金融引締めが改めて意識され、運用リスクを回避する売りが優勢。
  ・週末に特別清算指数(SQ)算出を控え思惑的な売りも出て、一時▲350円を超えた。
  ・米8月ISM非製造業景況指数が市場予想を上回り、FRBによる金融引締め長期化観測から、東京市場でも高PERの成長株や景気敏感株など幅広い銘柄に売りが出た。
  ・144円台と円安が進み、輸出採算の改善期待から自動車株に買いが入った。
  ・郵船・商船三井・川崎汽・リクルート・出光興産が売られ、SUBARU・高島屋が上昇。

●2.日本株:9/7は自律反発を予想、ただし短期か?

 1)9/7は反発を予想
  ・テクニカル指標のストキャスティクスは「売られ過ぎ」を示す。
   RSI 23、FAST 9、SLOW 8。
  ・200日移動平均線27,467円を割込み、反発を示唆。
  ・円安の急伸で、自動車・電機・精密に円安効果期待の株価上昇を予想。9/7は144.07円と、1998年8月の147.66円に24年ぶりに迫る。
  ・日経平均8/17高値29,222円⇒9/7安値27,430円と▲1,792円安・▲6.1%安で、自律反発の動きを予想する。

 2)ただし、一時的な反発とみる
  ・米欧の政策金利引上げの影響を受けるのは避けられない。
  ・高インフレ退治による米欧諸国の景気後退の影響から免れない。

 3)米金融の動きに注目
  ・9/08 パウエルFRB議長の講演
  ・9/21 米連邦公開市場委員会(FOMC)の会合結果発表

●3.ホンダ、全固体電池に430億円、EVの開発競争激化(日経新聞)

●4.円安の理由:日米の金利差ではなく、国力の反映とみるべき(日経新聞)

●5.実質賃金、名目賃金+1.8%増だが、物価上昇で4カ月連続マイナス幅が拡大(共同通信)

■IV.注目銘柄(投資はご自身の責任でお願いします)

 ・4452 花王   業績回復期待
 ・4502 武田薬品 好業績・好配当
 ・7011 三菱重工 好業績・政策関連(原発・防衛)

著者プロフィール

中島義之

中島義之(なかしま よしゆき) 

1970年に積水化学工業(株)入社、メーカーの企画・管理(財務含む)を32年間経験後、企業再生ビジネスに携わる。 現在、アイマックスパートナーズ(株)代表。 メーカーサイドから見た金融と企業経営を視点に、株式含む金融市場のコメントを2017年から発信。 発信内容は、オープン情報(ニュース、雑誌、証券リポート等々)を分析・組み合わせした上で、実現の可能性を予測・展望しながらコメントを作成。http://note.com/soubatennbou

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