相場展望10月24日号 NYダウの目標は32,078ドル、上昇余地+996ドル 日経平均は一時的連れ高も、下落基調は変わらず

2022年10月24日 10:38

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■I.米国株式市場

●1.NYダウの推移

 1)10/20、NYダウ▲90ドル安、30,333ドル(日経新聞より抜粋
  ・米長期金利が連日で14年ぶりの水準に上昇し、株式の割高感が意識された。ただ、市場予想を上回る決算を発表した銘柄が買われ、NYダウは上げる場面もあった。
  ・長期金利は4.2%台(前日終値は4.13%)と2008年以来の水準に上昇した。インフレの高止まりを受けて、米連邦準備制度理事会(FRB)による金融引締めが長期化するとの見方が強まった。フィラデルフィア連銀総裁は10/20の講演で「インフレ抑制の進展の遅さに失望しており、しばらくは利上げを続ける」と述べた。
  ・円相場が150円台に乗せ、ドル高への警戒感も強まった。ドル高はハイテクなど海外売上高の大きい米企業にとって収益の逆風となる。
  ・一方、IBMは7~9月決算で売上高と1株利益が市場予想を上回り+4%近く上げるなど、NYダウは一時+400ドル近く上昇する場面があった。
  ・ホームデポなど消費関連や建機のキャタピラーなどの景気敏感株の一角が売られた。金利上昇で配当利回り狙いの投資妙味が低下するとして、公益サービスが売られた。電気自動車のテスラが大幅下落した。

【前回は】相場展望10月20日号 米国株は「金利引上げ相場」⇒『業績相場』に移行か 英国の政局・米国中間選挙に注意

 2)10/21、NYダウ+748ドル高、31,082ドル(ロイター、日経新聞より抜粋
  ・決算を発表した銘柄が売られ、NYダウは朝方に▲100ドル超下げる場面があった。値上げによる契約件数減の懸念が強まった通信のベライゾンが大幅下洛、貸倒引当金積み増しで先行きの業績懸念を誘ったクレジットカードのアメックスも売られた。
  ・売り一巡後、米連邦準備理事会(FRB)が12月に利上げペースを緩めるとの見方が
浮上し、株式の買い直しが優勢となり、+748ドルと大幅高。今週のNYダウは+4.9%。米ウォール・ストリート・ジャーナル紙(WSJ)が「FRBの一角から近く利上げペースを緩めるべき」との声が上がり始めていると報道を受け、買い安心感が広がった。
  ・好決算を発表した石油大手シュルンベルジェは+10.3%上昇した。来週は、ツイッター、マイクロソフト、アルファベット、アップルなどが決算発表する。

●2.米国株:ボックス圏で短期間での上下を繰返す動き、当面の上値予想は32,078ドル

 1)10/21急騰の概況:「利上げ幅縮小の『協議』という観測報道」で沸騰した上げ相場。
  ・10/21のNYダウは、朝方こそ決算発表で業績懸念から▲100ドル超売られたが、その後、WSJ紙による「12月のFOMC会合で、利上げ幅縮小について協議する」との報道により大幅利上げ観測が後退し、買い安心感が広がり+748ドルの大幅高となった。

 2)相場の流れからすると「単に決算相場⇒業績相場への移行中の、一時的反騰」に過ぎない

 3)NYダウの推移:今回の上昇目標は32,078ドル、10/24以降の上昇余地は+996ドル。
  ・     8/16     9/30    10/21
   NYダウ 34,152ドル  28,725   31,082
          ▲5,427下洛 +2,357上昇(10/21現在で、下げ幅の+43.4%戻り)
  ・戻り目標だが、戻り率を下落幅に対する+61.8%とすると、32,078ドル。
    (参考)1/4⇒6/17の下落幅▲6,861ドルに対して、8/16高値までの戻り率+62.0%。
  ・10/24以降の上昇幅余地は+996ドルと見る。

 4)チャート面から見ると、NYダウは今年1/4高値から下落基調にあり、その中での一時的反発に過ぎない。
  ・1/4高値から下落が続いており、一時的反発も多々あったが、下げ幅を上回る上昇はない。
  ・米国のインフレ率は前年比+8%を超え、コアも+6%台と高水準を維持して、低下の兆しが見えていない。その要因は、
  ・米消費者物価の40%を占める家賃は、下方硬直性があり、家賃上昇の途上にある。
  ・原油価格も、OPECプラスの日量200万バレルの大幅減産、ロシア問題の継続、OPEC等の財政状況から80ドルを割れにくい。
  ・賃金上昇によるサービス価格も上昇しているが、賃金上昇率は+5%程度であり物価上昇率に及ばず、賃金上昇率低下は見通せない。加えて、雇用逼迫が継続しており、賃金インフレも収まらない模様。
  ・FRBはインフレ退治を目標に金利引上げを継続しており、2023年も金融引締め(金利引上げ+FRB資産縮小(QT))は続くと見られる。

 5)NYダウは、下落基調の途上にあり、まだ底値は見えていない。
  ・その要因は、
  ・FRBの政策金利引上げによる、米金利上昇は途上にある。しかも、QTによる量的引締め効果としての「金利上昇」が今後付加される。そのQT効果は、政策金利引上げに近い波及効果を上げると見られる。
  ・株式相場は、(1)政策金利上昇だけでなく、(2)QTによる市場から流動性引上げのマイナス効果が今後の圧迫要因として浮上するだろう。
  ・10/21のNYダウ上昇の根拠は、余りにも根拠レス。したがって、高揚感が落ち着けば、株価にも反映されると見る。

●3.米半導体製造装置ラムリサーチ、対中輸出制限で来年の収入▲25億ドル減(ロイター)

 1)ラムリサーチは、全事業に占める中国比率が3割に達する。

●4.英9月消費者物価指数は前年比+10.1%上昇、40年ぶり高水準(ロイター)

 1)要因
  ・ロシアのウクライナ侵攻による天然ガスの高騰。
  ・サプライチェーンの混乱・労働力不足で物価上昇。

■II.中国株式市場

●1.上海総合指数の推移

 1)10/20、上海総合▲9安、3,035(亜州リサーチより抜粋
  ・中国経済の停滞が懸念される流れとなった。
  ・中国当局が新型コロナ感染を徹底的に封じ込める「ゼロコロナ」政策を堅守する中、本土の一部地域では行動規制など防疫措置が強化される状況だ。
  ・ただ、人民元安が一服したのを受け、指数はプラスで推移する場面も見られた。
  ・業種別では、発電の下げが目立ち、石炭・不動産も冴えない。ハイテクは買われた。

 2)10/21、上海総合+3高、3,038(亜州リサーチより抜粋
  ・中国当局の景気テコ入れ期待が相場を支える流れだった。
  ・中国共産党大会の閉幕をあす10/23に控える中、景気刺激策が強められるとの見方が広まったが、上値は重い。
  ・中国人民元安の進行がマイナス材料となった。人民元は、2010年7月の取引開始以来の安値に接近している。中国本土からの資金流出も懸念された。
  ・業種別では、発電・電力設備が高く、インフラ関連も物色された。半導体は冴えない。

●2.中国共産党の習指導部、異例の3期目発足(ブルームバーグ)     

 1)習主席に近い人物起用で『一強』が加速(日テレ)

■III.日本株式市場

●1.日経平均の推移

 1)10/20、日経平均▲250円安、27,006円(日経新聞より抜粋
  ・米長期金利が2008年7月以来となる4.1%台まで上昇した。米金利上昇を嫌気し、10/19の米株式相場が下げたのを受け、短期筋による株価指数先物への売りが膨らみ、日経平均は一時▲380円を超えた。
  ・米ハイテク株安への警戒が強く、香港や台湾など主要なアジアの株価指数が下落したのも、投資家心理の悪化につながった。
  ・午後に入ると、一部メディアが「中国が新型コロナ感染対策としての入国者に対する隔離期間の短縮を議論している」と報じたことから、需要増の思惑からJAL・高島屋・などのインバウンド(訪日外国人)関連に買いが集まり、下げ幅を縮小した。
  ・円安・ドルが150円に進んだが、トヨタ・ホンダなど自動車株はまちまちの動き。
  ・ファストリ・東エレク・京セラが安く、NTTデータ・KDDI・ブリヂストンが上げた。

 2)10/21、日経平均▲116円安、26,890円(日経新聞より抜粋
  ・前日の米国株安で投資家心理が弱気に傾き、幅広い銘柄で売り優勢となった。一方、下値を模索する動きは限られ、半導体関連の一角が買われ相場を支えた。ただ、終日、投資家の様子見ムードは強く、日経平均の日中幅(高値と安値の差)は116円と2021年12月24比以来およそ10カ月ぶりの狭さとなった。
  ・直近まで上昇基調が続いていた陸運株などリオープン(経済再開)関連も利益確定の売りに押された。
  ・一方、10/20に4~12月業績が増益になるとの見通しを示したディスコが大幅上昇。東エレクなど他の半導体関連株にも買いが波及した。市場では「短期目線の投資家を中心に半導体の一角を買い戻す動きが見られた」という。
  ・円相場が150円半ばまで下げ、1990年8月以来の円安・ドル高を付けたが、材料視する向きは限られた。
  ・小田急・京王・JR西日本・ダイキン・住友鉱が安く、三菱電・電通・シャープが高い。

●2.日本株:米国株に連れて反発局面も、やがて下落に転じ低下基調は変わらず

 1)日経平均株価は、米国株に連動しやすくなっている。
  ・今年に入って、日本株は米国株に対して「底堅い」状況となっている。兜町の一角では、「日本株の米国株離れ」とか言って囃している。
  ・しかし、決して「米国株下落・日本株上昇とはなっていない」。あくまでも、米国株の下落に対して、日本株の下落率が低いだけである。

 2)日本株は世界の景気敏感株と評価されてきたように、いずれ米国株に同調すると見る。
  ・世界景気は、リセッション(景気後退)に向かっている。
  ・それも、市場が期待するソフトランディングではなく、ハードランディングに陥る可能性が濃厚と思われる。

●3.9月コア消費者物価指数、前年比+3.0%で歴史的上昇幅(TBS)

 1)背景には、(1)原油価格高騰 (2)急激な円安。

●4.4~9月の貿易赤字、過去最大▲11兆円、資源高・円安で輸入額膨張(読売新聞)

■IV.注目銘柄(投資は、ご自身の責任でお願いします)

 ・3382 7&I       業績堅調。
 ・6501 日立製作所    業績堅調。
 ・7186 コンコルディア  業績堅調。

著者プロフィール

中島義之

中島義之(なかしま よしゆき) 

1970年に積水化学工業(株)入社、メーカーの企画・管理(財務含む)を32年間経験後、企業再生ビジネスに携わる。 現在、アイマックスパートナーズ(株)代表。 メーカーサイドから見た金融と企業経営を視点に、株式含む金融市場のコメントを2017年から発信。 発信内容は、オープン情報(ニュース、雑誌、証券リポート等々)を分析・組み合わせした上で、実現の可能性を予測・展望しながらコメントを作成。http://note.com/soubatennbou

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