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相場展望12月11日号 米国株: 米景気の先行き楽観で、株価は堅調 日本株: 日銀ショック・岸田政権混迷深刻⇒市場警戒⇒円高・株安
■I.米国株式市場
●1.NYダウの推移
1)12/7、NYダウ+62ドル高、36,117ドル(日経新聞より抜粋)
・今週発表された雇用関連指数と同様に12/8発表の米雇用統計が労働市場の需給緩和を示すとの見方が相場を支えた。NYダウが前日までに3日続落したことで短期的な相場の過熱感が薄れたとの声もあり、好材料の出た主力ハイテク株を中心に見直し買いが広がった。
・今週は12/5発表の10月の米雇用動態調査(JOLTS)で非農業部門の求人件数が2021年3月以来となる低水準となり、12/6の11月のADP全米雇用リポートでは非農業部門の雇用者数が市場予想を下回った。11月の米雇用統計では全米自動車労組(UAW)のストライキ終結を受けて、雇用者数の伸びが10月を上回るとみられる半面、賃金上昇率が前年同月比で
鈍化すると予想されている。
・米景気の減速に伴い、インフレと雇用の伸びが鈍化し、米連邦準備理事会(FRB)が2024年前半にも利下げに動くとの見方が強まっている。米長期金利は前日に4.10%と約3ヵ月ぶりの低水準を付け、12/7も4.1%台前半で推移する場面が多かった。金利の低下基調で株式の相対的な割高感が薄れる傾向にあることも投資家心理の支えとなった。
・NYダウ構成銘柄ではないが、ネット検索のアルファベットに買いが集まった。傘下のグーグルが12/6に生成人工知能(AI)関連の新技術を発表し、一部のアナリストが高く評価したことが好感された。12/6にAI向け新製品を発表した半導体のAMDも大幅上昇した。アナリストが成長期待を示した画像処理半導体(GPU)のエヌビディアも高い。NYダウの構成銘柄ではスマートフォンのアップルの上げが目立った。
・個別銘柄では、ドラッグストアのウォルグリーンズや半導体のインテル、映画・娯楽のディズニーなどが買われた。一方、製薬のメルクやスポーツ用品のナイキは下落した。
【前回は】相場展望12月7日号 米国株:12/1高値がピークになるか、物色転換か、今後の動向を注視 日本株:政治不信と混迷、円高が重荷へ⇒外人の売り仕掛け注意
2)12/8、NYダウ+130ドル高、36,247ドル(日経新聞より抜粋)
・朝発表の11月の米雇用統計は総じて強い内容だったが、米連邦準備理事会(FRB)が一段と金融引締めをするほどではないと受け止められ、2022年1月以来となる1年11カ月ぶりの高値となった。米景気悪化への懸念も和らぎ、主力株の一部に買いが入った。
・11月の米雇用統計では、非農業部門の雇用者数が前月に比べ+19.9万人増え、ダウジョーンズ通信がまとめた市場予想+19.0万人を上回った。失業率は3.7%と前月の3.9%から改善した。平均時給は前月比の上昇率が+0.4%と市場予想の+0.3%より高かった。
・雇用統計の発表を受け、米債券市場では長期金利が上昇(長期債価格が下落)し、株式の相対的な割高感を意識した売りが先行した。その後は次第に買いが優勢となった。市場では「雇用統計は景気が大幅に落ち込むことへの懸念を和らげ、株買いを促した」との見方があった。
・ミシガン大学が12/8発表した12月の消費者態度指数(速報値)は前月から改善した。1年後の予想インフレ率は+3.1%と前月の+4.5%を下回り、2021年3月以来の低水準となった。消費者マインドが上向き、期待インフレが下がったことも、株式相場には追い風となった面がある。
・ハイテク株比率の高いナスダック総合指数も続伸し、14,403とおよそ5カ月ぶりに年初来高値を更新した。2022年4月以来の高値となった。多くの機関投資家が運用指標にするSP500株価指数も続伸し、2022年3月以来の高値となった。
・個別銘柄では、航空機のボーイング、金融のゴールドマンサックスが上昇した。石油のシェブロンや半導体のインテルも上げた。半導体のエヌビディア、交流サイトのメタなども買われた。半面、機械のハネウェルと小売のウォルマートが下落した。
●2.米国株:景気の先行きに楽観が広がり、株価は堅調
1)強い雇用統計を背景に⇒景気先行きに楽観⇒株高
・家計調査に基づく雇用は74.7万人と、労働市場に新規参入した53.2万人を十分に上回った。失業率も11月は3.7%と、10月の3.9%から改善した。
・米景気はソフトランディング(軟着陸)に向かっていると示唆した。
2)米国株の堅調、日本株の変調が目立つ
・NYダウと日経平均の推移 11/30 ⇒ 12/8差異
NYダウ 35,950ドル 36,627+ 297ドル上昇
日経平均 33,486円 32,307▲1,179円下落
3)注目のイベント
・12/1211月CPI:ブルームバーグ予想は3.1%の上昇で、6月来の低水準
・12/13米連邦公開市場委員会(FOMC)の結果発表とパウエルFRB議長の記者会見内容
■II.中国株式市場
●1.上海総合指数の推移
1)12/7、上海総合指数▲2安、2,966(亜州リサーチより抜粋)
・投資家のリスク回避スタンスが継続する流れとなった。
・中国経済の先行き不安が続いている。格付け会社のムーディーズは12/6、中国の信用格付け見通し引下げに続き、石油関連など中国主要企業18社の格付け見通しも「安定的(ステーブル)」から「弱含み(ネガティブ)」に引下げた。そのほか、地方政府傘下んぽ投資会社(地方融資平台、LGFV)26社を格下げ方向で見直すと発表している。
・12/7午前に公表された11月の中国貿易統計は強弱感の分かれる内容だった。人民元建て輸出はプラス成長を回復したものの、輸入は伸びが大幅に鈍化した。市場の一部からは、内需の弱さが指摘されている。
・ただ、当局の相場テコ入れ策に対する期待感などで、指数はプラス圏に浮上する場面もあった。
・中国財政部は12/6、全国社会保障基金(公的年金)の国内投資ルールを見直す方針を発表した。報道によれば、株式投資比率の上限が引き上げられる可能性もある。
・業種別では、消費関連の下げが目立ち、エネルギーも冴えない。医薬・素材・インフラ関連なども売られた。半面、不動産の一角はしっかり、金融・公益・メディア・娯楽が買われた。
2)12/8、上海総合+3高、2,969(亜州リサーチより抜粋)
・自律反発狙いの買いが優勢となる流れだった。
・上海総合指数は前日まで4日続落し、10/24以来の安値水準に切り下げていた。
・当局による相場テコ入れや、景気支援の期待感も支えとなっている。翌年の経済政策方針を決める中国の重要会議「中央経済工作会議」は、今月中旬にも開催される見通しだ。
ただ、上値は重い。
・中国経済の先行き不透明感がくすぶっている。また、米中の指標発表も気懸りだ。米国では11月の雇用統計が今夜(日本時間午後10時30分)、中国では11月の物価統計が明日12/9に予定されている。
・業種別では、ハイテク関連の上げが目立ち、石油もしっかり。医薬・公益・空運・酒造・食品の一角なども買われた。半面、不動産は冴えず、素材・自動車・インフラ関連・金融の一角が売られた。
●2.中国11月CPIは過去3年で最大の落ち込み、PPIの下落幅は拡大(ロイター)
1)消費者物価指数(CPI)は前年比・前月比ともに▲0.5%下落、市場予想▲0.1%よりも大幅なマイナスとなった。
2)生産者物価指数(PPI)は前年比▲3.0%下落し、下落率は8月以来の大きさ。
市場予想は▲2.8%下落、10月は▲2.6%下落。14ヵ月連続のマイナスとなった。
3)内需の弱さが景気回復に影を落とすなか、デフレ圧力の高まりを示した。
■III.日本株式市場
●1.日経平均の推移
1)12/7、日経平均▲587円安、32,858円(日経新聞より抜粋)
・前日の米株式市場がハイテク株を中心に下落した流れを引き継ぎ、リスク回避目的の売りが終日優勢だった。指数寄与度の高い半導体関連株を中心に売られ、日経平均を押し下げた。日経平均は前日に+670円高と急反発していたため利益確定売りも出やすく、下げ幅は一時▲600円を超えた。
・明日12/8の株価指数先物・オプション12月物の特別清算指数(SQ)算出を控えた短期筋による先物売りや、12/7のアジア株安も重荷となった。原油安も相まって米景気減速懸念が強まるなか、12/8に11月の米雇用統計の発表が予定されており、注目イベントを前にいったん株式の持ち高を減らす動きも出やすかった。
・個別銘柄では、東エレク・アドテスト・信越化など半導体関連株が安い。ファストリ・ダイキン・ソフトバンクGなど値がさ株が下落した。一方、SOMPO・東電が大幅高。小田急・京王・JR東日本など鉄道株の上昇が目立った。ニッスイ・ANAも買われた。
2)12/8、日経平均▲550円安、32,307円(日経新聞より抜粋)
・外国為替市場で円相場が対ドルで急伸し、輸出関連株を中心に売りを促し、11/8以来となる1ヵ月ぶりの安値水準となった。株価指数先物に短期筋とみられる売りが断続的に出たほか、日本時間今晩に発表される11月の米雇用統計への警戒も重荷となった。
・東証の業種別株価指数の下落率は「輸送機器」がトップだった。12/7の植田和夫・日銀総裁の発言などを受けて金融政策の修正観測が高まり、円相場が急上昇するなかで輸出採算の悪化が意識され、トヨタはじめ自動車株に売りが出た。鉄鋼や機械などほかの輸出関連株にも売りが目立った。
・日経平均の下げ幅は▲600円を超える場面もあった。直近では米労働市場の需給緩和を示す経済統計が相次いでおり、11月の雇用統計が労働市場の減速を示す内容となれば、米連邦準備理事会(FRB)の利下げ観測が強まる可能性が高い。日銀が12/18~19に開く金融政策決定会合でマイナス金利解除に動く可能性も意識されるなか、日米金利差の縮小を通じた円相場の上昇持続に警戒感が強まった。
・個別銘柄では、TOPPAN・豊田通商・アマダは下落した。一方、ニチレイ・LINEヤフー・りそなHDは上昇した。
●2.日本株:日銀ショック・岸田政権混迷が深刻⇒市場警戒⇒円高・株安
1)植田・日銀総裁発言で一気に「円高」へ⇒輸出企業業績悪化⇒株価大幅下落
・マイナス金利解除の観測が浮上。円相場は、一時141円台に突入。
・12/18~19の日銀の金融政策決定会合が焦点となる。
2)「自民党パーティー資金疑惑」が拡大、閣僚・自民党等人事改造に追い込まれる
3)日経平均はこの12/7~8の2日間で急落し、下げ幅▲1,137円安
4)米雇用統計を受け、円相場は「円安」へ
・11月雇用統計を受け米景気減速への懸念が和らぎ、長期金利が上昇し、円相場は円安に転換した。円相場は日銀の金融緩和策の修正踏切観測で、円相場は急速な円高が進行していたため、反発し一時145円台まで「円安」へと下落した。
5)今週は値ごろ感と円安に反転したことから自律反発狙いの買いが出ると思われる
・過熱感が薄れる。 12/1 ⇒ 12/8
25日移動平均線 +2.45% ▲2.17
200日移動平均線 +7.91% +3.84
6)懸念材料
・10/30安値30,538円から窓を開けて急伸しており、窓を埋めにいく可能性を秘めている。
●3.日銀・植田総裁、今後の金融政策発言で円高・ドル安が進む(NHKより抜粋)
1)日銀の植田総裁は12/7、参議院の財政金融委員会に出席し、今後の金融政策の運営について、「年末から来年にかけて一段とチャレンジになると思っている」と述べた。
2)この発言を受けて、外国為替市場では日銀が金融政策の修正に踏み切るのではないかという見方が強まり、一時、1ドル=144円台まで円高が進んだ。
●4.防衛増税、2025年開始も見送り検討、政府・与党が批判を考慮(共同通信)
1)2024年度から実施する方針であったが、根強い増税批判を払拭したい首相の意向を踏まえ、2025年からの開始も困難と判断した。
2)ただ、先送りには裏付けとなる財源を確保できるかどうかが課題となる。
3)防衛増税は、法人・所得・たばこの3税を対象とし、段階的に増税して2027年度時点で1兆円強の確保を図る。
●5.東芝とローム、EV向けパワー半導体で協業、産経省が最大1,300億円補助(読売新聞)
●6.第一生命、来年、ベネフィット・ワンにTOB、完全子会社化の方針(NHK)
■IV.注目銘柄(投資は自己責任でお願いします)
・1332 ニッスイ 業績堅調
・2412 ベネフィット・ワン TOB対象
・4502 武田薬品 配当増額期待
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