相場展望2月19日号 米国株: エヌビディアの決算発表2/21に注目、相場の流れに転機か 日本株: 史上最高値に接近しただけに、米エヌビディア決算次第

2024年2月19日 17:42

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■I.米国株式市場

●1.NYダウの推移

 1)2/15、NYダウ+348ドル高、38,773ドル(日経新聞より抜粋
  ・NYダウは続伸した。1月の消費者物価指数(CPI)を受けて今週大きく下げる場面があり、2/15は景気敏感株を中心に押し目買いが続いた。米長期金利が低下(長期債価格は上昇)し、株式の相対的な割高感が薄れたことも相場を支えた。

【前回は】相場展望2月15日号 米国株: 利下げ期待で株価上昇も、高金利の高止まりに備えも 日本株: 日経平均に影が点灯も、強さあり、堅調に推移とみる

  ・朝方発表の週間の米新規失業保険申請件数は21.2万件と、ダウ・ジョーンズ通信がまとめた市場予想の22万件を下回り、労働市場の底堅さを示した。ニューヨーク連銀とフィラデルフィア連銀が発表した2月の製造業景況指数はともに前月から改善した。1月の米小売売上高は前月比▲0.8%減と、市場予想の▲0.3%減以上に減ったものの、冬の悪天候が影響したとの見方が多かった。

  ・米経済のソフトランディング(軟着陸)期待が根強く、景気敏感株や消費関連株を中心に買いが広がった。中小型株で構成するラッセル2000株価指数は+2%強上昇したことで、「市場心理の改善につながった」との見方があった。

  ・多くの機関投資家が運用指標とするSP500 株価指数も続伸し、過去最高値で終えた。相場上昇に乗り遅れまいとする投資家の買いを誘った面もあった。

  ・米長期金利は一時前日比▲0.07%低い4.18%に低下した。今週はCPIの発表を受け4.3%台前半と、12月上旬以来の高水準を付けているが、その後は金利の上昇に一服感が出ており、株買いを支えた。

  ・NYダウの構成銘柄では化学のダウ、金融のJPモルガン・チェースと同業のゴールドマン・サックス、建機のキャタピラーが高い。原油高を受け、石油のシェブロンの上昇も目立った。

  ・一方、前日夕に決算発表とあわせて通期の業績見通しを引下げたネットワーク機器のシスコシステムズは▲2%下げた。ソフトウェアのマイクロソフトも安い。2/14夕に米著名投資家バフェット氏が率いる投資会社バークシャー・ハザウェイが保有株を減らしていたことが分かったスマートフォンのアップルは小幅安で終えた。

  ・ハイテク株比率が高いナスダック総合指数は続伸した。交流サイトのメタや電気自動車のテスラが買われた。半面、ネット検索のアルファベットや画像処理半導体のエヌビディアは売られた。

 2)2/16、NYダウ▲145ドル安、38,627ドル(日経新聞より抜粋
  ・NYダウは3営業日ぶりに反落して終えた。2/16発表の1月の米卸売物価指数(PPI)が市場予想を上回る伸びとなり、米連邦準備理事会(FRB)の早期利下げ観測が後退した。米長期金利が上昇(債券価格は下落)し、株式の相対的な割高感が意識されたのも相場の重荷となった。

  ・NYダウは午前中に▲190ドル近く下げる場面があった。1月のPPIが前月比+0.3%上昇した。上昇率は5ヵ月ぶりの大きさで、ダウ・ジョーンズ通信がまとめた市場予想+0.1%を上回った。年初のサービス値上げなど季節要因が影響した面はあるが、インフレ沈静化に時間がかかっていることが確認された。

  ・米10年債利回りは一時+0.1%高い4.33%に上昇した。「米長期金利が高水準で推移すれば、昨年同様にいずれ相場調整のきっかけとなる」との声があった。

  ・米経済がソフトランディング(軟着陸)できるとの見方や米主要企業の業績改善期待が投資家心理を支え、相場は上げに転じる場面もあった。同日発表の2月の米消費者態度指数(ミシガン大学調べ)速報値は79.6と1月の79.0から改善し、約2年半ぶりの高水準となった。

  ・人工知能(AI)需要が企業業績の拡大を後押しするとの期待も根強かった。NYダウの構成銘柄ではないが、前日夕発表の決算や見通しが評価された半導体製造装置のアプライドマテリアルズ(AMAT)が大幅上昇した。2/21に決算を発表する画像処理半導体のエヌビディアもアナリストの目標株価引き上げを受けて上げる場面があった。

  ・NYダウなど主要株価指数が前日までに過去最高値更新を続けており、相場の過熱感が意識されやすい。半面、株高に乗り遅れないために値ごろ感のある銘柄を物色する動きが続い
た。

  ・NYダウでは全従業員の2%を削減する計画が報じられたスポーツ用品のナイキが安い。バイオ製薬のアムジェンやネットワーク機器のシスコシステムズも下げた。一方、製薬のメルクなどディフェンシブのヘルスケア株が高かった。小売のウォルマートや化学のダウも上げた。

  ・ハイテク株比率が高いナスダック総合指数は3営業日ぶりに反落した。交流サイトのメタやネット接続のアルファベットの下げが目立った。

●2.米国株:2/21のエヌビディアの決算内容に注目、相場の流れの転機となるか

 1)利下げ観測の楽観と後退が1日おきに繰り返され、NYダウは都度振り回される
  2/15「利下げ期待」が高まり、NYダウは+348ドル高。
  2/16 「利下げ観測が後退」し、NYドルは▲145ドル安。

 2)FRBは「高水準の金利を長期化する」と予想する
  ・1月消費者物価指数(CPI)と1月生産者物価指数(PPI)ともに伸び鈍化せず、むしろ、インフレ再燃への懸念を高めた可能性がある。特に、PPIは5ヶ月ぶりとなる大幅な伸びとなった。労働市場も依然として逼迫している。
  ・1月消費者物価指数(CPI)と1月生産者物価指数(PPI)ともに伸び鈍化せず。
  ・したがって、「高金利の長期化」が続くと予測する。そのため、利下げ観測が後退し、長短金利が急伸、ドルの買い戻しに拍車がかかる流れになるとみる。

 3)エヌビディア決算発表は2/21、株価の流れに大きなインパクトを与えるか注視
  ・エヌビディア株価は年初来+5割も上昇し、時価総額で3位に浮上した。それだけにエヌビディアの株価が大幅に振れれば、株式市場全体に影響を及ぼす可能性がある。
  ・好業績の発表を予想のもと、先行して買われて大幅高となってきただけに、予想を上回る決算内容か否かで株価が大幅変動しやすい。なお、売上高は前年同期の60.5億ドル⇒203.8億ドルに増えると予想されている。

 4)今週の主なイベント
  ・2/19 米国・祝日「プレジデンツ・デー」で休場
  ・2/21 1月連邦公開市場委員会(FOMC)議事要旨
  ・2/22 新規失業保険申請件数
      2月製造業・サービス業PMI

●3.米1月生産者物価指数(PPI)は前月比+0.3%と、12月▲0.2%から予想外の加速(フィスコ)

 1)変動の激しい食料や燃料を除いたコア指数は前月比+0.5%と、12月の▲0.1%から予想以上に伸びが拡大した。

 2)このため、利下げ観測が後退し、長短金利は上昇し、ドルは買われた。

●4.米1月小売売上高は前月比▲0.8%、予想▲0.2%を下回る、前月は+0.6%(フィスコ)

 1)予想以上の悪化を受け、利下げ期待高まり金利低下、ドル売り。

●5.米・先週分新規失業保険申請件数は21.2万件、予想22.0万件を下回る(フィスコ)

●6.トランプ氏に制裁金約550億円、企業経営3年禁止、詐欺罪でNY州裁判所(ブルームバーグ)

 1)資産価値を偽るなど金融詐欺を働いた、とした。

●7.米ナイキ、従業員の2%・1,600人削減、北米・中国で需要低迷(日経新聞より抜粋

 1)ナイキは昨年12月、需要が想定より弱いとして、2024年5月期通期の業績見通しを下方修正した。

 2)同社のマット・フレンド最高財務責任者は昨年末の決算説明会で、「不安定なマクロ環境の中、世界中で消費者の行動がより慎重になっている」と指摘。

■II.中国株式市場

●1.上海総合指数の推移

 1)2/15、祝日「春節(旧正月)」で休場

 2)2/16、祝日「春節(旧正月)」で休場

●2.中国鉄道メーカー「中国中車」を欧州委員会が調査へ、政府補助金で不当廉価落札の疑い

 1)ブルガリア政府から約1,000億円で鉄道20両と15年間の保守事業を落札した。英紙FTによると、落札額はブルガリア政府の想定額や競合相手のスペイン企業の入札額の約半額だったという。

 2)EUは、一部の産業を除き、政府の補助金を受ける域外企業との競争で、欧州企業が不利にならないように規制を設けている。(読売新聞)

■III.日本株式市場

●1.日経平均の推移

 1)2/15、日経平均+454円高、38,157円(日経新聞より抜粋
  ・日経平均株価は反発し、2/13以来、2日ぶりに昨年来高値を更新した。終値ベースで1990年1月11日以来、34年1カ月ぶりに38,000円台に乗せた。2/14の米株式市場でハイテク株が上昇した流れを受け、東京市場でも主力の半導体関連株が軒並み急伸し、日経平均を押し上げた。日経平均は1989年12月29日に付けた過去最高値38,915円まで、あと+750円余りに迫った。

  ・前日の米株式市場で、主要な半導体銘柄で構成するフィラデルフィア半導体株指数(SOX)が大幅に上昇した。日本株への影響度が高いエヌビディアも上昇し、東京市場ではアドテストや東エレクなど半導体関連株に断続的な買いが入った。海外短期筋とみられる株価指数先物への買いも膨らむ中、一部の値がさ株が日経平均を牽引する展開となった。

  ・内閣府が2/15に発表した2023年10~12月期の国内総生産(GDP)速報値は、実質年率換算で前期比▲0.4%減だった。2四半期連続のマイナスで、市場予想の中央値+1.0%増に反して、減少した。ただ、株式市場では実体経済の低迷は日銀が金融政策の正常化に動きにくくなるとの見方から、むしろ買い要因と受け止める声も聞かれた。

  ・東証プライム市場の値上がり銘柄数は505と、全体の3割にとどまった。値下がり銘柄数は1,106だった。市場では、「今日は下落している銘柄が多い状況が続いた。半導体関連など一部銘柄に物色が偏り、日経平均を押し上げた面が大きい」との見方もあった。

  ・東証株価指数(TOPIX)は反発した。JPXプライム150指数も反発した。

  ・個別銘柄では、荏原や楽天、MS&ADが上げた。一方、バンナムやTOPPAN、サッポロは下げた。

 2)2/16、日経平均+329円高、38,487円(日経新聞より抜粋
  ・日経平均株価は続伸し、1990年1月以来、約34年1ヵ月ぶりの高値で終えた。前日の米株式市場で主要3指数がそろって上昇したことや、米半導体企業の好決算を追い風に買いが優勢だった。海外投機筋の買いが主導して10時過ぎには+707円高の38,865円まで上昇し、1989年12月29日の最高値38,915円まであと50円ほどに迫る場面もあった。日銀の緩和的な金融政策が続くとの楽観も支えに利益確定売りをこなしながら堅調に推移した。

  ・半導体製造装置大手のアプライド・マテリアルズ(AMAT)の決算が市場予想を上回り、2/15夕の米株式市場の時間外取引で株価が急伸した。それを受けて東京市場でも東エレクとアドテストが連日で株式分割考慮後の上場来高値を更新した。半導体関連の一方的な上昇には過熱感も強まっており、両銘柄が下げに転じて売りに押される場面では日経平均も上げ幅を+200円まで縮めたが、幅広い銘柄に買いが広がったこともあり、上昇を維持した。

  ・日銀の植田和夫・総裁は2/16、衆院財務金融委員会に出席した。金融緩和政策の修正を巡って、現時点での経済物価見通しを前提とすると「マイナス金利解除等を実施しても、緩和的な金融環境は当面続く可能性が高い」と語った。従来の日銀のスタンスと大きく変わるものではないが、日本株買いを進める海外投機筋にとって一定の安心感につながった。

  ・前日に発表された2023年10~12月期の実質国内総生産(GDP)速報値が2四半期連続のマイナスとなったことも日銀の緩和継続観測を後押しした。米国と比べて日本では緩和的な金融政策が続くという楽観も日本株にとって支援材料となった。外国為替市場での円安・ドル高基調を支えに自動車が買われたほか、株式市場の活況で証券株も上昇した。

  ・東証株価指数(TOPIX)は続伸し、1990年2月以来34年ぶりの高値を更新した。JPXプライム150指数は続伸し、高値を更新した。東証プライムの値上がり銘柄数は1,391と、全体の約8割を占めた。

  ・個別銘柄では、ファストリ、東エレク、リクルート、バンナム、中外薬、オリンパスが上昇した。一方、トレンド、ソフトバンクG、ソニー、レーザーテク、スクリン、アドテストが下落した。

●2.日本株:史上最高値に接近しただけに、2/21の米エヌビディア決算に注目

 1)日経平均は史上最高値にあと50円まで迫った
  ・その後、相場を牽引してきたハイテク株に過熱感が意識され売りに押された。
   例:レーザーテクなど
  ・半面、好業績でありながら相場上昇に乗り遅れていた値ごろ感のある銘柄を物色する動きがあった。
  ・この流れの変化は、最近では新たな兆候といえる。

 2)「カジノ相場」の様相を帯びてきた
  ・勢いに乗って「賭け」に出る「カジノの心理」になっている。「買えば上がる、上がるから買う」相場になってきた。
  ・企業成長を期待し、業績とともに株価が上がるのを狙うという機関投資家の長期保有の運用スタイルではない。

 3)わずかな銘柄数で動く日経平均
  ・2/15は日経平均は+454円高と大幅高したが、87%が5銘柄の上昇が占める。
  ・5銘柄の日経平均の寄与度
   東エレク+168円高
   ファストリ+ 98
   ソフトバンクG + 59
   アドバンテスト+ 37
   信越化学+ 31
   合計 +393円高・・日経平均上昇に対する貢献割合87%。
  ・したがって、日経平均の上昇率が際立っている。
   2/15のケース
   日経平均+1.21%上昇。
   TOPIX+0.28
   JPX250 +0.37

 4)いびつな上昇が目立つ2/15の株式相場
  ・2/15の日経平均は+454円と大幅高したが、東証の値下がり銘柄数は1,106数に対して、値上がり銘柄数は505と逆行している。
  ・多くの投資家が「慎重」になってきていることを示唆している。

 5)2/21発表される米エヌビディアの決算内容次第で、相場の流れの転機となるか
  ・市場の想定を上回った場合は、株式相場は「強気継続」の可能性。市場の期待を下回った場合は、「売り転換」となるリスクをはらむ。市場期待通りなら、材料出尽くしで売られることも考えられる。
  ・米半導体株指数(SOX)の値動きをみると、市場は慎重になってきたようだ。
  ・日経平均は、米半導体株の上昇の波及効果を享受してきただけに、上昇を牽引してきたエヌビディアの決算内容と株価の動向に注目したい。エヌビディアの決算内容を株式相場は意識しており、発表までは株価は様子見でやや軟調な値動きとなりそう。

●3.日本のGDPがドイツに抜かれ世界4位に転落(Response)

 1)新聞各紙の見出し
  ・朝日新聞:日本GDP4位転落、56年ぶりドイツを下回る。転落失われた30年の果て、日本の技術力世界に後れ
  ・読売新聞:投資怠り日本低迷、空洞化生産性伸びず
  ・毎日新聞:日独逆転技術立国に明暗

 2)「1人当たりGDPはドイツに抜かれるどころか、経済協力開発機構(OECD)加盟38カ国中21位であり、主要7カ国(G7)では最下位。このままではアジアの中で、いずれ韓国や台湾に抜かれるだろう」との指摘も。

●4.トヨタの時価総額、アジア2位に浮上、7年半ぶりサクソン超え(日経新聞)

 1)1位は台湾TSMC。

●5.ルネサスエレクトロにクス、米ソフトウェア会社アルティウムを8,800億円で買収(NHK)

 1)アルティウムは、半導体製品に使うプリント基板をクラウド上で設計できるソフトウェアを手掛け、世界で高いシェアを持つ。

 2)ルネサスは、買収によって設計の一部を一元化して開発や設計を短期間で行い、競争力を高める狙いがある。

 3)ルネサスは、2021年にも英・半導体設計会社を買収するなど、事業戦略を強化する戦略を加速している。

●6.オリックス、創業50年余の船舶会社「三徳船舶」を買収、3,000億円規模(NHK)

 1)三徳船舶は自動車船やコンテナ船67隻を保有し、国内外の海運会社などに船を貸し出す事業を展開し、年間売上高は600億円余り。

 2)オリックスは船舶のリース事業を強化する狙いがある。

●7.ソフトバンクG、社債5,500億円を個人向けに発行へ、既発債の償還に充当(日経新聞)

●8.ソフトバンクG、AI半導体会社の設立検討、15兆円調達も、米報道(日経新聞)

●9.H3ロケット打ち上げ、目標軌道に到達、人工衛星も分離=JAXA(ロイター)

 1)H3の特長は、打ち上げ費用の安さで、一定条件下でH2Aの半額となる50億円。

●10.ワークマン、子供服に本格参入、機能性と低価格を売り(共同通信)

●11.SUMCO、1~3月期純利益予想+20億円と前年同期比▲95%減(日経新聞)

 1)顧客の生産調整と在庫の適正化のため、半導体材料の需要低迷。

●12.サンリオ、3月期通期純利益+174億円、前期比+2.1倍、増配・株式分割(日経新聞)

■IV.注目銘柄(投資は自己責任でお願いします)

 ・6965 浜松ホトニクス 株価底値圏
 ・7912 大日本印刷   業績上方修正期待

著者プロフィール

中島義之

中島義之(なかしま よしゆき) 

1970年に積水化学工業(株)入社、メーカーの企画・管理(財務含む)を32年間経験後、企業再生ビジネスに携わる。 現在、アイマックスパートナーズ(株)代表。 メーカーサイドから見た金融と企業経営を視点に、株式含む金融市場のコメントを2017年から発信。 発信内容は、オープン情報(ニュース、雑誌、証券リポート等々)を分析・組み合わせした上で、実現の可能性を予測・展望しながらコメントを作成。http://note.com/soubatennbou

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