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相場展望2月16日号 米インフレ鈍化も立ち止まり、小売売上高増⇒米金利高止まりの長期化懸念 日銀新総裁の方針に注目
■I.米国株式市場
●1.NYダウの推移
1)2/13、NYダウ+376ドル高、34,245ドル(日経新聞より抜粋)
・市場の関心は2/14発表の1月米消費者物価指数(CPI)に集まっている。午前の取引では様子見ムードが強まり上値が重くなる場面があったが、インフレ鈍化が示されるとの期待がじわりと高まり、ハイテク株を中心に買われた。
・1月のCPIは前月比では+0.4%上昇が市場で見込まれている。前年同月比では+6.2%上昇と、伸び率は昨年12月の+6.5%から縮小すると見られている。
・「インフレが沈静化に向かっていることが示されれば、米連邦準備制度理事会(FRB)の、利上げ停止が近いとの見方が強まる」との指摘がある。
・ニューヨーク連銀が2/13に発表した1月消費者調査で、3年先の予想物価上昇率が2.7%と2年3ヶ月ぶりの低水準となった。同調査が投資家のインフレ鈍化への期待を後押ししたとの指摘があった。
・米長期金利の上昇一服も、相対的な割高感が薄れた高PER(株価収益率)のハイテク株の買いを誘った。ソフトウェアのマイクロソフトは3%高となり、顧客情報管理のセールスフォースやスマホのアップルも高い。スポーツ用品のナイキやホームセンターのホームデポなど消費関連株も買われた。交流サイトのメタ、動画配信のネットフリックスの上げが目立ち、半導体株も買われた。
【前回は】相場展望2月13日号 米国: 決算イベント終了⇒2/14発表のCPIに警戒 日本: 決算⇒次期日銀総裁と金融政策に関心が移る
2)2/14、NYダウ▲156ドル安、34,089ドル(日経新聞より抜粋)
・1月米消費者物価指数(CPI)の上昇率が市場予想を上回った。インフレ高止まりで、米連邦準備制度理事会(FRB)による利上げ継続観測が強まった。長期金利が上昇したのも株式相場の重荷になった。
・1月のCPIは前月比で+0.5%上昇し、ダウ・ジョーンズ通信がまとめた市場予想の+0.4%上昇を上回った。食品とエネルギーを除くコア指数の上昇率も+0.4%と市場予想を超えた。政策金利の高止まりが意識され、長期金利は一時3.79%まで上昇した。昼前にはNYダウの下げ幅は▲400ドルを超える場面があった。
・午後にかけてNYダウは下げ渋った。CPIの上振れが想定内との受け止めが一部にあった上、前年同月の上昇率は2022年6月をピークに低下が続いている。FRBの金融引締めのスタンスを変えるほどではないとの見方もあって、下値では株買いが入った。
・飲料のコカコーラや建機のキャタピラーが下落、化学のダウと顧客情報管理のセールスフォースも安かった。一方、インドから大型受注のあった航空機のボーイング・スポーツ用品もナイキ・銀行のJPモルガンチェース・電気自動車のテスラ・半導体のエヌビディアが買われた。
3)2/15、NYダウ+38ドル高、34,128ドル(日経新聞より抜粋)
・米1月小売売上高が個人消費の堅調を示し、米連邦準備制度理事会(FRB)の利上げが続くとの観測から売りが先行した。その後は、米景気自体は強いとの楽観から買いが入り、NYダウは下げ幅を縮小し、引け際に上げに転じた。
・1月の小売売上高は前月比+3.0%増と市場予想の+1.9%増を上回り、個人消費の底堅さが確認された。FRBが利上げを停止する時期が遠のいたとの見方が広がり、NYダウは▲250ドル余り下げる場面もあった。
・だが、NYダウの下値は堅かった。次第に下げ渋り、上げに転じて終えた。個人消費鈍化の懸念が薄れ、景気後退は避けられるとの期待が買いにつながった。
・映画娯楽のディズニーやスポーツ用品のナイキなど消費関連株の上昇が目立った。
●2.米国株:インフレ率鈍化傾向も立ち止まり、米国経済の堅調さ示す小売売上高 ⇒ FRBの金融引締め長期化を示唆
1)米1月消費者物価指数(CPI)は予想を上回る伸び、さらなる金利引上げの可能性増す
・米1月消費者物価指数は、前年同月比で総合CPIは+6.4%、コアCPIで+5.6%上昇。市場予想を上回る上昇は、エネルギーと住居費が主導し、インフレ圧力の継続を示唆。
・これにより、米FRBは政策金利を想定以上の高い水準に引上げる可能性が出てきた。
2)米10・2年国債利回り逆転「逆イールド」幅が拡大中で、40年ぶりの差異
・逆イールド 1/3 2/1 2/14 2/15
▲0.631% ▲0.689 ▲0.871 ▲0.830
・逆イールドが▲1.0%に接近、これは債券市場が景気後退を見ている強い証左の表れ。
3)個人消費は堅調
・1月小売売上高は前月比+3%増
・個人消費は底堅さを示しているが、個人の貯蓄取崩しとクレジットカード使用増加に頼った消費増である。バイデン大統領就任時の大判振る舞いでばら撒かれた現金が貯蓄されていたが、その貯蓄も半分に減ったと言われている。したがって、個人消費の増加傾向は長くは続かない。
4)FRBが「金利引上げ継続」は長期化し、「金利引上げ停止・引下げ」はまだまだ先
・1月CPIの強さから、インフレ鈍化の持続性に懸念が見えた。内容を見ると「住居費」の高止まりが大きな要因となっている。住居費(家賃)は上昇に期間が掛るが、契約期間が1~2年であり下方硬直性がある。
・原油価格も、ロシアが日量▲50万バレル減産、中国景気の回復需要増とも報じられ、70ドルを下回ることは考えにくい状況である。
・したがって、米国のインフレ鈍化はここら当たりで立ち止まる可能性がありそうである。
5)米国株式市場は堅調さを示しているが、依然「過剰流動性相場」の中にある
・「米消費は堅調で、米景気は底堅く、景気後退の懸念は薄れた」との解説があるが、消費増の中味を見ると住居費増であり、楽観論に浮かれるリスクに注意したい。
・FRBによる金融引締めは昨年3月から始まったばかりである。新型コロナ対策で、FRBが市場に供給した資金約5兆ドルのうち、まだ2割程度しか回収できていない。まだまだ、株式市場は「過剰流動性相場の中にある」。年初からの米国株急伸の源泉は、この「過剰流動性」に支えられた「楽観」であり、「株式相場は適温状態」のお風呂に入っている、とも見ることができよう。1株利益の減少にもかかわれず、株価が堅調な理由はここにある、と思われる。FRBは毎月、市中から▲995億ドルの資金を回収している。過剰流動性の正常化への進展による影響は、これから発生する。
●3.米1月消費者物価指数、前年比+6.4%と予想+6.2%を上回った、12月+6.5%(フィスコ)
1)コア指数、前年比+5.6%と予想+5.5%を上回った、12月+5.7%。
●4.米フィラデルフィア連銀ハーカー総裁、年内の利上げ停止を示唆(フィスコより抜粋)
1)年内のどこかで、金利が十分な引締め域に到達すると、言及。
2)今後、0.25%の利上げが適切で、金利は5%を上回る水準が必要と、繰り返した。
●5.ボウフマンFRB理事、「インフレ目標に向け一段の引締めが必要」(ブルームバーグ)
●6.米1月小売売上高は前月比+3.0%と、予想+2.0%を上回る、12月▲1.1%減(フィスコ)
■II.中国株式市場
●1.上海総合指数の推移
1)2/13、上海総合+23高、3,284(亜州リサーチより抜粋)
・経済指標の改善が好感される流れとなった。
・1月中国金融統計では、国内金融機関の新規融資が市場予想を大幅に上回り、マネーサプライ(通貨供給量)M2の伸び率も上振れた。中国景気の持ち直しが改めて意識される中、指数は上げ幅を徐々に広げた。
・業種別では、消費関連の上げが目立ち、旅行関連も高い。ゼネコンや建機・素材などインフラ建設関連株も物色された。半面、銀行・不動産・公益・石炭は売られた。
2)2/14、上海総合+9高、3,293(亜州リサーチより抜粋)
・前日の好地合を継ぐ流れだった。
・リオープン(経済再開)の進展や、当局の景気テコ入れスタンスなどを背景に、中国景気の早期持ち直しが期待されている。
・今年1月の中国金融統計で、新規融資や通貨供給量の上振れが確認されたことも引続きプラスとなり、経済活動の活発化を連想させている。
・業種別では、素材の上げが目立ち、発電・電力設備も高く、保険・医薬品なども上昇。半面、軍事関連は冴えず、通信・メディア関連も売られた。
3)2/15、上海総合▲12安、3,280(亜州リサーチより抜粋)
・米金利高が嫌気される流れとなった。
・米インフレの高止まりで米債券利回りが上昇する中、中国などから資金が流出するとの懸念がくすぶっている。
・また、上海総合指数はこのところ堅調に推移し、約1ヶ月ぶりの高値水準を切り上げていただけに、利食い売りも出たようだ。もっとも、下値を叩くような売りは見られない。
・リオープン(経済再開)も進んでいる上、当局の景気テコ入れスタンスも強まっている。中国メディアが2/14に報じたところによれば、2023年特別地方債の前倒し発行額は前年同期比で+50%も増加した。各地方政府が打ち出した重点プロジェクトでは、鉄道や高速道路などの「旧型インフラ」に加えて、人工知能(AI)・新素材などの「新型インフラ」も幅広くカバーしている。
・業種別では、不動産の下げが目立ち、金融・医薬品も冴えない。ハイテクは急伸した。
■III.日本株式市場
●1.日経平均の推移
1)2/13、日経平均▲243円安、27,427円(日経新聞より抜粋)
・前週末の米長期金利の上昇を受けて半導体関連などハイテク株を中心に売りが優勢だった。香港ハンセン指数の下げに伴って下げ幅を▲400円超に広げる場面もあった。
・1月の雇用統計が労働市場の強さを示す内容だったことから、2/14に控える1月米消費者物価指数(CPI)でのインフレ高止まりが警戒されている。
・さらに半導体を巡って、米中関係の悪化が再びリスク要因として意識された。東エレクが大幅安となり、1銘柄で日経平均を▲72円ほど押し下げた。ファストリなど値嵩株も売られた。
・もっとも、短期筋の売りが一巡した午後は、様子見ムードも広がり、持ち高をさらに一方向に傾ける展開とはならなかった。
・日銀の金融緩和策の修正観測がくすぶる中、メガバンクや地銀株の買いが優勢だった。
・資生堂・オリンパス・ソニー・ファストリが下落、ホンダ・セコム・日揮が上昇。
2)2/14、日経平均+175円高、27,602円(日経新聞より抜粋)
・前日の米株市場は、米インフレ鈍化を米消費者物価指数(CPI)が示すとの期待でNYダウが+1.1%高や米ハイテク株高となった。それを背景に東京市場でも、東エレクなど半導体株を中心に買いが入り上げ幅は一時+300円に迫った。
・日経平均は節目の28,000円に近づくと、戻り待ちの売りが出て、上げ幅を縮小した。米CPIの発表を控え、次第に様子見姿勢を強める投資家も多くなった。円安進行が一服し、円安が企業収益を押し上げる自動車株などの売りが重荷となった。
・政府が2/14、日銀の黒田総裁の後任に経済学者で元日銀審議委員の植田和夫氏を充てる人事案を国会に提示した。すでに報道で伝わっていたため材料視する向きは限られたが、市場では「植田氏の金融政策に対する姿勢を見極めたい」との声が聞かれた。
・SUMCO・信越化・日本製鉄・JFE・神戸鋼・鹿島・大塚の上げが目立った。一方、ヤマハ発・IHI・リクルート・日製鋼が売られた。
3)2/15、日経平均▲100円安、27,501円(日経新聞より抜粋)
・米1月消費者物価指数(CPI)が市場予想を上回る伸びを示し、米金融引締めの長期化観測が高まったのを嫌気した売りが優勢だった。日経平均が心理的節目の27,500円を上回る水準では個人投資家などの戻り待ちの売りに押された。
・1月のCPIは前年同月比+6.4%上昇、市場予想の+6.2%上昇を上回る伸びとなった。米利上げが長引くとの見方から、日本市場では電子部品関連などグロース(成長)株の下げが目立った。香港ハンセン指数など主要なアジアの株式市場は総じて下落しており、米株価指数先物も軟調に推移した。
・日銀の次期総裁の政策方針を見極めたいとの見方も多く、上値を追う買いは入りづらいとの声も聞かれた。個人や国内の機関投資家などが日経平均の27,500円を上回る水準では売りを出したとの見方もあった。
・半面、円相場は1月初旬以来の133円まで下落し、日本株の下支え要因となった。朝方は輸出採算の改善期待から自動車など輸出関連株に買いが入り、日経平均は一時+100円超上げる場面もあった。
・米金利の上昇を受けて、保険や銀行株も総じて堅調だった。
・リクルート・太陽誘電・SMC・資生堂が下落、東京海上・JT・日本製鉄は上昇。
●2.日本株:日経平均は高値圏にあり、注意 新・日銀総裁の方針確認が重要
1)日経平均の足元は不安定化が進む
・EPS(1株利益)は下落基調の中で、PER(株価収益率)の上昇で日経平均は上昇。つまり、企業業績が低下する中での、株価上昇は長続きしない。
・PERと1株利益の推移
1/4 2/1 2/15
PER(株価収益率) 14.95倍 16.02 16.48 : 人気で上昇
EPS(1株利益) 1,720円 1,707 1,668 : 業績は下降
日経平均 25,716円 27,346 27,501 : 余剰資金で上昇
・企業業績は年初から悪化しているにもかかわらず、株価は上昇。こうした歪な株価上昇は、いつまでも続くものではない。
2)外国人の株式先物手口は2/13から「売り転換」
・外国人株式先物手口 2/7 2/8 2/9 2/10 2/13 2/14 2/15
先物枚数 +6,426枚買 +610 ▲2,522売 +4,890 ▲3,402 ▲702 ▲3,484
日経平均の値動き ▲8円 ▲79 ▲22 +86 ▲243 +175 ▲100
3)金利上昇局面で株価上昇の可能性がある「銀行・保険」業種
・銀行 : 利ざや拡大で業績上昇
保険 : 金利上昇で運用利益上昇
4)日銀金融政策決定会合
・黒田総裁が、白川・前総裁から引き継いだのは任期終了を待たず、副総裁任期終了日だった。今回の副総裁の任期終了日は3/19。黒田総裁の任期は4月8日までだが、任期終了を待たず、前倒し辞任の可能性がある。
・日銀の金融政策決定会合
3/09~10 黒田総裁の前倒し辞任した場合に新総裁出席
4/27~28 任期終了が4/8になる場合に新総裁出席
次期日銀総裁の方針次第で株価の方向性が転換する可能性があり、注目したい。
自己の信念へのこだわりが強い黒田総裁で、世界の金融動向と乖離が進み、世界の投資家から日本債券への売りを仕掛けられるようになっているだけに、株式市場への影響も大きいと見られるため、警戒したい。
●3.企業動向
1)出光興産 発行済み株式の9.7%、600億円上限に自社株買い決議(ロイター)
2)ハイデイ日高 全商品の9割の70品目、最大50円値上げ(テレ朝)
●4.企業業績
1)楽天 通期最終損益▲3,728億円赤字、4年連続過去最大の赤字、携帯事業(NHK)
2)すかいらーく 通期最終損益▲63億円赤字、郊外店で集客振るわず(NHK)
3)ロイヤル 通期最終損益+27億円黒字、行動制限緩和と付加価値高いメニュー(NHK)
4)クボタ 通期最終利益+1,561億円黒字、前期比▲10.6%減、原材料・物流高(読売新聞)
5)東京電力 4~12月最終赤字▲6,509億円、火力発電の燃料価格高騰で(TBS)
■IV.注目銘柄(投資は、ご自身の責任でお願いします)
・2502 アサヒ 業績堅調。
・4507 塩野義 業績好調。
・6548 旅工房 回復期待。
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