長期債利回りが過去最高を更新、その背景と今後の行方は?

2025年12月7日 19:10

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 国内債券市場で長期金利が急上昇している。30年国債利回りは連日過去最高水準を更新しており、市場関係者の注目を集めている。高市政権の積極財政による財政悪化懸念が金利上昇の要因と指摘される場面も多いが、足元では景気の底堅さや成長期待を背景とした、いわば「健全な金利上昇」との見方が広がりつつある。

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 実際に、企業業績は改善傾向が続き、設備投資や賃上げも回復基調にあることから、物価上昇は一時的な局面を越え、緩やかながら定着の兆しを見せている。こうした中で実質成長率の底上げが意識され、名目成長率の上振れ期待が長期金利に反映されているのだ。

 金融政策面でも、日本銀行が金融正常化への姿勢を維持しており、超低金利環境からの転換が超長期ゾーンにも波及している。

 これまで日本の長期金利は、低成長とデフレ心理を背景に歴史的な低水準に抑え込まれてきたが、物価と賃金の上昇が同時に動き始めたことで、実質金利の極端なマイナス幅が徐々に是正されつつある。名目金利が上昇するのはある意味で自然な流れであり、市場では「財政不安だけで説明するのは無理がある」との声も強まっている。

 一方、財政に対する警戒感が完全に払拭されたわけではない。大型の経済対策や防衛費増額を背景に国債増発への懸念は根強く、財務省の財政運営には引き続き厳しい目が向けられている。

 ただ近年は、名目成長率の上昇を背景に政府の税収が明確に増加し、プライマリーバランスも改善傾向にある。デフレ下で前提とされてきた緊縮財政論は、もはやそのまま通用しにくい局面に入りつつあるとの見方も広がっている。

 それらを踏まえると、足元の国債利回り上昇も、財政不安の高まりだけで説明するより、需給や成長期待の変化といった市場の実需に基づく動きと理解するのが自然だ。

 そもそも、日本政府の国債が財政破綻に陥る確率は、国際的に見ても極めて低いと考えられている。国債の大半は国内で消化されており、発行通貨も自国通貨である円建てであることに加え、日本銀行が最終的な流動性供給者として機能する体制が維持されている以上、短期的に政府債務の返済不能に陥るリスクは想定しにくい。

 長期金利の上昇は、家計や企業にも徐々に影響を及ぼし始めており、住宅ローン金利は緩やかな上昇傾向をたどり、企業の借入コストも底打ちの兆しが出てきているのも事実だ。

 ただし今回の金利上昇が成長期待を伴うものであれば、企業収益とそれに伴う賃金上昇によって金利負担を吸収できる余地も残ることから、過度な金融引き締めによる悪影響とは性質が異なる。

 先行きについては、物価動向と金融政策、そして財政運営への信認が最大の焦点となる。成長期待が維持される限り、超長期金利は高止まりしやすい展開が見込まれ、日本の債券市場は、長く続いた超低金利時代から、新たな金利環境へと静かに移行しつつある。(記事:Osaka Okay・記事一覧を見る

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