相場展望12月8日号 米国株: 米国株のリーダー銘柄は、ピークを付けたもしれない 2026年株式相場は、年央まで「追加利下げで追い風」、その後は「逆風」か 日本株: 日経平均寄与上位銘柄中心から広がる展開か、注目

2025年12月8日 13:38

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■I.米国株式市場

●1.NYダウの推移

 1)12/4、NYダウ▲31ドル安、47,850ドル
 2)12/5、NYダウ+104ドル高、47,954ドル

【前回は】相場展望12月4日号 米国株: FRBは12/10利下げ▲0.25%の実施確率が高い⇒株高要因 日本株: 日経平均大幅高も新高値銘柄数と新安値数が拮抗、相場変調が忍び寄る?

●2.米国株:米国株のリーダー銘柄は、ピークを付けたもしれない

       2026年の株式相場は、年央までは「追加利下げで追い風」、その後は「逆風」か

 1)米国株上昇の牽引役の株価動向
  ・米国株高を牽引のリーダー銘柄の株価  
   ・エヌビディアの株価推移
      10/29最高値 207.04ドル
      11/25    177.82
      12/05    182.41  10/29比▲24.63ドル安・▲11.89%安

   ・パランティアの株価推移
      11/03最高値 207.18
      11/21    154.85
      12/05    181.76  11/03比▲25.42ドル安・▲12.26%安

   ・テスラの株価推移
      2019年05/01   12.34
      2021年11/01   381.58
      2023年01/03   173.22
      2024年12/02   403.84
      2025年01/02   404.60
         03/02   259.16
         10/01最高値456.56
         12/05   455.00   10/01比▲1.56ドル安・▲0.34%安

 2)米国株のリーダー銘柄は、ピークを付けたもしれない
  ・PER(株価収益率)からみた状況
   ・PERは、株価が1株当たり利益の何倍の価値になっているかを示す。
       PER=株価÷1株利益(EPS)

  ・PERの状況(12/5時点)
     エヌビディア   61.42倍 
     パランティア   865.52倍
     テスラ      204.04倍

  ・NYダウのPERは、24.93倍であり、上記3銘柄の株価は1株当たり利益に対する株価が異常に高い状況にあるかを示している。(日経平均の予想PERは、18.79倍である)

 3)ただ、米国株には「追加利下げ」という追い風が吹く可能性がある
  ・パウエルFRB議長の任期は来年5月までである。トランプ米国大統領は後任に「利下げ派」を選任するだろう。そうなった場合、追加利下げの連続で、米国株にとって追い風が吹く。

 4)不安要因は、トランプ関税の最高裁での違憲判決と、中間選挙の結果
  ・トランプ関税が違憲判決で確定する可能性がある。トランプ氏が選任した保守系判事が9人中6名を占めるが安閑できない。保守系判事から「違憲」とのニュアンスが漏れているからだ。

  ・トランプ関税が最高裁で違憲となれば、今年、徴収した巨額の関税を払戻さなければならない。加えて、関税を当て込んだ歳出増もあって、米国連邦政府の財政赤字は急膨張する。

  ・ドル安のリスクもある。ドル安は輸入物価の上昇をもたらし、消費者物価上昇を再燃させる。

  ・来年の中間選挙は、トランプ共和党にとって苦戦となる可能性が高い。物価鎮静化を期待して、民主党支持者がトランプ氏に大統領選で投票した多くの有権者がいる。物価鎮静を実現すると約したトランプ氏だが、トランプ関税もあり一向に物価が下がっていない。消費者、特に低所得者層は「裏切られた」との見方が増えている。

  ・ニューヨーク市長選、2つの州知事選でトランプ共和党は民主党に負けた。テキサス州であった下院議員の補選でも、共和党は圧倒勝ちできる選挙区でありながら、辛勝と追い込まれた。

  ・1年を切った中間選挙では、トランプ共和党に期待した低所得者層の票が民主党に投票される確率が高い。中間選挙の結果、下院で民主党が多数を占めると、トランプ政権のレイムダック化が進むだろう。しかも、トランプ政権は2期目であり、3期目がないだけに、政権の急激な劣化は避けれないだろう。

 5)2026年の株式相場は、年央までは「追加利下げで追い風」、その後は「逆風」か
  ・トランプ氏の利下げ派FRB議長選任で、米国株式相場は「追い風が続く」とみられる。
  ・ただ、米国株高を牽引してきたリーダー株のPERは極めて高く、不安定化の兆しがうかがえる。ロボットAI開発などで新たな銘柄が株式相場を牽引する相場展開となるか注目したい。

●2.トランプ政権が方針、車の燃費基準を大幅引下げへ、ガソリン車優遇(時事通信)

 1)来秋の中間選挙に向け、自動車価格の引下げで有権者にアッピールしたい思惑がある。

■II.中国株式市場

●1.上海総合指数の推移

 1)12/4、上海総合指数▲2安、3,875
 2)12/5、上海総合+27高、3,903

●2.「中国経済に深刻な暗雲」内需も輸出も急失速、中国経済は推進力を失う(kangnamtimes)

 1)民間調査会社RaitingDog 中国製造業購買担当者景気指数(PMI)
  ・11月は49.9と、今年7月の49.5以来4カ月ぶりに50を下回った。予想は50.5。
  国家統計局製造業PMI
  ・11月は49.2と、今年4月以来8カ月連続で基準値50を下回った。
   #1.中国の製造業の苦難が大企業と中小企業、内需と輸出企業全般に広がっていることを示す。特にこれまで相対的に好調だった輸出中心の企業までも苦戦している点から中国景気後退の深刻さを示唆すると分析されている。
   #2.ブルームバーグ通信は「中国で民間と政府調査が同時に製造業の縮小を指し示すのは珍しい事例」とし、「中国経済が推進力を失っているという懸念が高まっている」と分析した。

■III.日本株式市場

●1.日経平均の推移

 1)12/4、日経平均+1,163円高、51,028円
 2)12/5、日経平均▲536円安、50,491円 

●2.日本株 : 日経平均寄与上位銘柄中心から広がる展開か、注目

 1)日経平均寄与上位の状況
  (1)12/4、日経平均+1,163円高、寄与上位5銘柄は+678円
   ・寄与上位5銘柄      寄与度    株価
     ソフトバンクG   +307円高   +1,530円高
     ファーストリテイ  +122    +1,520
     ファナック     +114    +684
     東京エレクトロン  +104    +1,040
     信越化学      +31    +184
      合計       +678

  (2)12/5、日経平均▲536円安、寄与上位5銘柄は▲359円安・▲66.9%を占めた
   ・寄与上位5銘柄      寄与度    株価
     アドバンテスト   ▲134円安  ▲500円安
     ファーストリテイ  ▲109    ▲1,360  
     東京エレクトロン  ▲68    ▲ 680
     TDK        ▲24    ▲48
     中外薬       ▲24    ▲239
      合計       ▲359

   ・ソフトバンクG   +218円高  +1,085円高と、下支えした。
   ・日経平均寄与上位5銘柄の占有率が低下しており、株価の値動きの広がりが目立つ。この流れが、続くか否かに注目したい。

 2)ロボットAI関連が牽引
  ・米国政治サイトのポリティカが、トランプ米国政権がロボティクス開発の推進と12/3報じた。
  ・この報道が伝わると、ファナックなどロボットAI関連銘柄が急伸した。
  ・この流れが、次期主流となるか注目したい。

 3)FRB議長にハセットNEC委員長が就任したら、「円高・ドル安」に
  ・米国金利低下で、日本長期金利との差が縮小する⇒円高・ドル安へ転換するとみられる。
  ・日銀は長期金利を引上げる方向にあり、加えて、円高進展となれば日本株にとって逆風となりえるため注視したい。


●3.長期金利が18年ぶりとなる2007年7月以来の1.935%に上昇(エキスパートトピ)

 1)日本の長期金利上昇の要因
  ・日銀の追加利上げ観測がある。12/18~19の金融政策決定会合で政策金利を+0.75%に引上げるとの観測が強まり、国債利回りが上昇した。
  ・また、政府の補正予算にかかわる国債増発、さらには来年度予算にかかわる国債増発への警戒感も出ている。

●4.長期金利、1.9%台に上昇、約18年ぶり、利上げ観測や積極財政への警戒感で(テレ朝)

●5.2025年の値上げ品目数20,609、前年比1.6倍(日本テレビ)

■IV.注目銘柄(投資は自己責任でお願いします)

 ・4567 大塚      業績好調
 ・6301 コマツ     底値圏
 ・6473 ジェイテクト  業績好調

著者プロフィール

中島義之

中島義之(なかしま よしゆき) 

1970年に積水化学工業(株)入社、メーカーの企画・管理(財務含む)を32年間経験後、企業再生ビジネスに携わる。 現在、アイマックスパートナーズ(株)代表。 メーカーサイドから見た金融と企業経営を視点に、株式含む金融市場のコメントを2017年から発信。 発信内容は、オープン情報(ニュース、雑誌、証券リポート等々)を分析・組み合わせした上で、実現の可能性を予測・展望しながらコメントを作成。http://note.com/soubatennbou

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