相場展望9月4日号 米国株: インフレ鈍化と米経済の好調で、米株式市場は堅調 ただ、インフレ再燃の兆しあり 中国株: 中国経済のバブル崩壊を防ぐ政策は「資金供給」

2023年9月4日 11:50

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■I.米国株式市場

●1.NYダウの推移

 1)8/31、NYダウ▲168ドル安、34,721ドル(日経新聞より抜粋
  ・好決算を発表した銘柄の株高や、米連邦準備理事会(FRB)の金融引締めが長期化するとの警戒が後退したことから買いが先行した。一方、明日9/1には8月米雇用統計の発表がある。利益確定や持ち高調整の売りに押され、買い一巡後に下げに転じた。
  ・顧客情報管理のセールスフォースは一時+6%上昇した。8/30夕に発表した2023年5~7月期決算は主要項目が市場予想を上回り、同時に示した2024年1月通期の見通しを上方修正し、好感した買いが集まった。投資家心理が改善し、NYダウの上げ幅は+180ドルに迫る場面があった。
  ・8/31発表の7月米個人消費支出(PCE)物価指数はエネルギー・食品を除くコアが前年同月比+4.2%上昇した。ダウジョーンズ通信が集計した市場予想と一致した。同日にはアトランタ連銀のボスティック総裁が講演の草稿を発表し、FRBの金融政策は+2%の物価目標に向かうのに「すでに十分に引締め的だと考えている」と指摘した。FRBが長期にわたって金融引締めを続けるとの観測が後退し、株買いを誘った。
  ・しかし、NYダウは前日までの4営業日で+800ドル近く上昇しており、買い一巡後に下げに転じた。雇用統計の発表を前にディフェンシブ株や景気循環株を中心に利益確定や持ち高調整の売りが出た。
  ・個別株では、医療保険のユナイテッドヘルスや航空機のボーイング、クレジットカードのアメリカンエキスプレスなどが下落した。金融のJPモルガンチェースと飲料のコカコーラも安かった。半面、工業製品・事務用品のスリーエムと半導体のインテルは上昇した。スマホのアップルは5日続伸した。ネット通販のアマゾン、電気自動車のテスラが上昇した。

【前回は】相場展望8月31日号 日本株: 8月相場は、やや弱含みながらも横ばいと堅調な展開 9月相場は、経験則では「売られやすい」月間 ただし、選挙あれば上昇 チャイナ・ショックに留意

 2)9/01、NYダウ+115ドル高、34,837ドル(日経新聞より抜粋
  ・朝発表の8月米雇用統計では、失業率が市場予想に反して前月から上昇した。労働需要の緩和を背景に、米金融引締め長期化への過度な警戒が和らぎ、買いが入った。半面、米債券市場で長期金利が上昇し、株式の相対的な割高感が意識されたことが重荷となった。
  ・8月の米雇用統計では非農業部門の雇用者数が前月比+18.7万人増えた。ダウジョーンズ通信がまとめた市場予想17万人を上回った。一方、失業率は3.8%と、2022年2月以来の高水準となり、横ばいを見込んでいた市場予想3.5%に反して上昇した。雇用市場の過熱感の和らぎが意識され、米連邦準備理事会(FRB)の追加利上げ観測が後退した。NYダウは一時+250ドルを超えた。
  ・ただ、上値は重く、下げに転じる場面もあった。クリーブランド連銀のメスター総裁は9/1の講演で失業率の低さに言及したほか、「労働市場は需給が均衡してきたが、依然として強い」と指摘した。インフレ率については「高すぎる」との認識を示し、FRBによる金融引締めが長引くとの警戒が再燃した。雇用統計発表後に低下していた米長期金利が上昇に転じると、株式市場では次第に売りが増えた。
  ・朝発表の8月のサプライマネジメント協会(ISM)製造業景況感指数は47.6と、市場予想46.9を上回り、7月の46.4から改善した。「雇用」や「価格」が上昇し、市場では「インフレ圧力のしつこさを示した」との受け止めがあったのも相場も重荷だった。
  ・9/4はレーバーデーの祝日で、米株式市場が休場となる。3連休を控え、薄商いだったことが上値を抑えた面もある。
  ・個別株では、スマホのアップルやホームセンターのホームデポが高かった。原油価格が上昇し、石油のシェブロンが買われた。半面、通信のベライゾンや航空機のボーイングは下落した。ケーブルテレビのチャーターコミュニケーションとの契約を巡る不透明感から映画・娯楽のディズニーは▲2%下げた。最高経営責任者(CFO)の退任を発表したドラッグストアのウォルグリーンは▲7%安で終えた。画像処理半導体のエヌビディアやネット検索のアルファベットが売られた。中国での追加値下げを発表した電気自動車のテスラは▲5%下落した。

●2.米国株:インフレ鈍化と米経済の好調で、株式市場は堅調

 1)米株式市場は、薄商いの8月を株価「横ばい」という堅調な流れで乗り切った

 2)株式市場に追い風が吹き始めている
  ・8月雇用統計では、失業率が3.5⇒3.7%と労働需要の逼迫感は和らいだ。
  ・賃金上昇率も低下してきた。
  ・なりよりも長期金利が低下した。

 3)ただ、インフレの芽は大きくなっているのを、忘れないで
             直近安値   9/1価格  上げ幅   上昇率
  CRB国際商品指数  5/31 253.85⇒9/1 284.36 +30.51   +12.0%
  WTI原油価格    6/12  68.50⇒9/1  86.05 +17.47ドル +25.47%

 4)長期金利は上昇途上にある
  ・直近の長期金利は低下しているが、その前の急ピッチな上昇の反動とみる。急ピッチな金利上昇で、債券価格が低下に着目した債券買いが入ったとみる。
  ・今後、米財務省は債券を大幅発行し、FRBの市場からの資金回収は月1.4兆円以上が継続見通しであるため、市場の余剰資金は吸収されていく。そのため、FRBが「金利引き上げ停止」「金利引下げ」しても、金利は上昇する構図になっている。
  ・金利上昇で、株式は割高感が増すことを忘れないようにしたい。

●3.米コアPCE価格指数は予想通り伸びが拡大(フィスコより抜粋

 1)燃料や食品を除いたコア個人消費支出(PCE)は前年比+4.2%と、予想通りで6月+4.1%から伸びが拡大。FRBがインフレ指標として注目している指数。

 2)米総合消費指数(PCE)は前月比+0.8%増、予想+0.7%。前年比+3.3%増。

 3)米労働省発表の先週分新規失業保険申請件数は前週比▲0.4万件減の22.8万件と前回から予想以上に減少し、労働市場の強さを証明した。

●4.チャレンジャー社のアンドリュー・チャレンジャー氏の労働市場の見方(ロイターより抜粋

 1)求人件数は低下しており、米国内の労働者は今、職を離れたがらない。コロナ後の採用ブームが落ち着き、労働市場はリセットされつつある。

 2)米企業の人員削減数は8月が急増、トラック運送大手イエローの破産影響で3万人が失業したのが要因。

●5.米7月消費者支出は拡大も、今後は鈍化の兆しも、貯蓄率低下や労働市場の悪化で(フィスコより抜粋

 1)7月個人消費支出(PCE)は前月比+0.8%と、伸びは6月+0.6%から予想以上に拡大し、1月来で最高となった。サービス支出は+0.4%、良好な天候でレストランなどで支出に拍車がかかった。

 2)一方、消費支出を支える実質可処分所得は▲0.2%、貯蓄率3.5%と11月来で最低。今後は、労働市場の悪化、支払い延滞率の上昇、学生ローン支払い再開で、消費者の財政状態が一段と悪化し、支出も鈍化する可能性が示唆された。

■II.中国株式市場

●1.上海総合指数の推移

 1)8/31、上海総合▲17安、3,119(亜州リサーチより抜粋
  ・中国の景気懸念が意識される流れとなった。
  ・寄り付き直後に公表された今年8月の中国製造業PMIは49.7となり、前月実績49.3と市場予想49.2を上回ったものの、景況判断境目の50を5ヵ月連続で割りこんだ。
  ・中国では、不動産デベロッペーや地方政府の債務問題が依然としてくすぶっている。当局は不動産業の支援策を相次ぎ投入しているほか、一部デベロッペーは財務再編や返済先送りなどを画策しているものの、予断は許さない状況だ。
  ・業種別では、不動産の下げが目立ち、消費関連も冴えない。銀行・素材・エネルギー・インフラ関連・運輸なども売られている。半面、発電の一角はしっかり。ハイテクや保険の一角も買われた。

 2)9/01、上海総合+13高、3,133(亜州リサーチより抜粋
  ・当局の元安抑制のスタンスが好感される流れだった。
  ・中国人民銀行(中央銀行)は9/1、金融機関の外貨の預金準備率を引下げると発表した。9/15付けで6⇒4%に引下げる。外貨預金準備率の引下げは2022年9月以来。外貨の流動性を高めることで、急ピッチな人民元相場の下落を抑制する狙いがある。この発表を受け、人民元相場は元高方向に振れている。上海総合指数の改善にもプラス。
  ・取引時間中に発表された5月財新中国製造業PMI(民間)は51.0に上向き、景況判断の境目となる50を回復した。
  ・業種別では、保険が相場を牽引し、石炭も高く、消費関連もしっかり。素材・不動産・銀行・証券・運輸なども買われた。半面、ハイテクは冴えず、医薬品・公益・メディア・娯楽も売られた。

●2.中国株:中国経済のバブル崩壊を防ぐ方策は「資金供給」

 1)中国不動産開発会社に必要なのは、「資金繰り」支援で、金利引下げではない
  ・中国で経営危機に陥っている不動産開発会社が抱える問題は「資金繰り」だ。中国では多くのオフィッスビルやマンション建設がストップしている。その要因は、建設会社などに対する膨大な工事未払金にある。
  ・債務状況:恒大集団 48兆円、碧桂園 29兆円
        この2社の債務だけで、中国GDPの3%を占める巨額の負債。
  ・中国では会計が不透明で、公表された負債総額がすべてであるか判明しない。中国の公認会計士監査の監査証明書は、信頼性に課題がある。
  ・もし、不動産開発大手が破綻することになれば、莫大な未払金が表面化し、今度は建設会社・建設資材納入会社、セメント・鉄鋼・ガラス会社など広範囲に破綻の影響が及ぶ。つまり、破綻の連鎖が波及する恐れがある。
  ・碧桂園では資産の約半分が建設途上の物件といわれる。

 2)不動産開発会社への「資金注入」を怠れば、連鎖倒産の津波は限りなく拡大
  ・国有銀行からの資金注入をしなければ、中央銀行の中国人民銀行からの直接的な資金支援が必要である。
  ・それぐらい切羽詰まった状況にある。
  ・不動産開発会社への資金注入を実行してから、その債権の回収を施すことになる。

 3)不動産開発は中国経済の3割を占めることを忘れるな、その波及効果は破壊的
  ・それだけに、不動産会社の破綻処理を誤れば、関連分野に経営破綻が波及し、失業の新規増大・消費縮小・デフレの加速が懸念される。中国経済の失速だけでなく、暴動の発生の原因となり、中国社会の不安定化を招く可能性が増す。そうなれば、習主席の1人独裁にとどまらず、中国共産党の1党独裁支配をも揺るがしかねないリスクを抱えることになる。
  ・いまでも失業率は高い。特に、若者層16~24歳の失業率は6月で21.3%と高率である。7月の若者層の失業率の公表は「データの適正性」との理由で発表差し止め。それも狭義であって、家庭に籠って養われている若者1,600万人を含むと46%になるという北京大学の副教授の調査もある。発表後、削除された。そうした若者の喪失感が「寝そべり族」などを生んできた。

 4)中国が抱える問題、いつ噴出するか?
  ・中国が抱える問題
  ・人口減少。
  ・急速な高齢化:生産人口減少と年金負担額の急増、介護保険なし。
  ・威圧的影響行使により国境接する諸国との「紛争の拡大」で閉じ籠り。
  ・インド、ベトナム、フィリピン、インドネシア、マレーシアなど。
  ・輸出の減少。
  ・7月は前年同月比▲14.5%減少。
  ・若者の生産人口減少と高賃金で「世界の工場」を維持困難。
  ・外国企業の中国投資の急減:4~6月期で前年同期比▲9割減少。
  ・中国生産拠点の海外移転の加速:中国リスクの増大。
  ・インフラ投資の減少。
  ・インフラ投資は地方政府が担ってきたが、マンション建設の停滞で土地譲渡益の減少のため歳入縮小し、インフラ投資が減少。
  ・国内経済活動の減退。
  ・中国人民銀行の新規融資は前月比▲9割減少と、生産・設備投資の減少を映す。

 5)中国政府は根本的な病巣の処置を誤るな
  ・不動産業界は「資金繰り」の問題に直面している。その対応が迫られている。
  ・ところが当局は、「金利引下げ」「住宅ローン金利の引下げ」策で対応している状況にある。住宅需要の掘り起こしには有効であっても、不動産開発会社の資金繰りの危機には直接的支援にはならない。
  ・不動産開発会社の危機の発端は、「3つのレッドライン」といわれる「融資規制」にある。この融資規制が、
   ⇒マンション価格の下落を生み
   ⇒購入者の買い控えにつながり
   ⇒将来の生活不安(中国人の資産の7割が住宅、年金は少額、介護保険なし)
   ⇒家計は投資から貯蓄へ転換
   ⇒消費の減少
   ⇒デフレを生じ
   させている。
  ・この悪いスパイラルに陥っているのに、中国当局は「金利引下げ」の対応しかできていないところに病巣と処置の見誤りに表れている。中国人民銀行(中央銀行)の預金準備率引下げもそうだ。
  ・中国は、1990年以降の日本と同様の「バランスシート不況」にある。これは「日本の失われた30年」の後追いとなる可能性がある。中国の構造をみると、「失われた30年を超える」リスクがある。
  ・中国は、鄧小平の「改革・解放」路線で急成長をしてきたが、習主席の「3つのレッドラインつまり不動産開発会社への融資規制」で中国経済のブレーキを強く踏んでしまった。「改革・解放」路線の歪(ひずみ)を是正するための政策変更であったが、必要以上の急ブレーキが思わぬ結果を呼び起こした格好だ。これでは、健康回復のための「手術」が、命の危険を招きかねない。
  ・中国当局は、
  ・「3つのレッドライン」の撤廃もしくは大幅緩和をし、
  ・不動産開発会社への緊急融資を実施し、
  ・不動産会社による値引き販売などを止めて、住宅価格の下落を食い止め、
  ・中国人の資産の7割が不動産であるだけに住宅価格安定は必須。
  ・経済の活性化策を講じ、
  ・失業率の大幅低下を図り、
  ・家計の不安払拭をする、
   必要があると思われる。
  ・中国が「失われた30年を超える」から「脱却」することを望んでいる。

●3.中国不動産大手の碧桂園をムーディーズは「Ca」に格下げ、不履行の可能性も(共同通信)

●4.英国議会、公文書に「台湾は独立国」と明記(TL THE NEWS LENS)

■III.日本株式市場

●1.日経平均の推移

 1)8/31、日経平均+285円高、32,619円(日経新聞より抜粋
  ・米長期金利の低下を受けて幅広い銘柄に買いが広がり、1ヵ月ぶりの高値。中国の経済指標が想定より良好で、景気への懸念が和らいだことも買い安心感
  ・軟調な米雇用統計を受け、米連邦準備理事会(FRB)による追加利上げ観測が後退した。米長期金利が低下するなか、8/30の米株式市場でハイテク株比率の高いナスダック総合株価指数は4日続伸し、およそ1ヵ月ぶりの高値を付けた。東京市場でもグロース(成長)株を中心に幅広い銘柄に買いが入った。
  ・リクルートは+3%超上げて年初来高値を更新。インバウンド(訪日外国人)関連も強く、JR東海も年初来高値を付けた。自動車生産の回復期待からトヨタも+2%超上昇した。主要銘柄が買われるなか、日経平均の上げ幅は+350円を超える場面があった。
  ・中国国家統計局などが午前に発表した8月製造業購買担当者景気指数(PMI)は49.7と、先月から+0.4上昇し、市場予想49.1も上回った。中国の景気の先行き懸念が和らいだことも相場の支えとなった。
  ・個別株では、ファストリ・東エレク・三菱商が上昇した。ファナック・松井・シャープが下落した。

 2)9/01、日経平均+91円高、32,710円(日経新聞より抜粋
  ・米長期金利の先高観が後退するなか、海外短期筋が株価指数先物に断続的な買いを入れた。中国の景気回復への期待も追い風となり、上げ幅は一時+200円を超えた。東証株価指数(TOPIX)も5日続伸し、約33年ぶりの高値を付けた。
  ・前日の8/31の米債券市場で長期金利の指標となる10年債利回りが低下し、4.10%と節目の4%に接近した。米金利の低下傾向を受けて、海外投資家による株買いが活発化した。米株価指数先物が日本時間の9/1の取引で堅調に推移したことも日本株買いを誘った。
  ・9/1発表の民間調査の8月中国の製造業購買担当者景気指数(PMI)が、好不況の境目となる50を上回り、最近、広がっていた中国の景気減速懸念が和らいだ。東京市場では銀行や商社・鉄鋼や海運など幅広い業種に買いが入った。
  ・日経平均は朝方、下げる場面があった。前日の米株式市場でNYダウが下落した流れを引き継いだ。ただ、売りはすぐに一巡し、次第に押し目買いが優勢となった。日本時間の今晩に8月の米雇用統計の発表を控え、結果を見極めたいとして一段の上値を試す動きは限られた。
  ・個別株では、ソニー・日立が上昇した。一方、東エレク・三菱自・エーザイが安い。

●2.9月食品値上げ2,067品目(FNN)

■IV.注目銘柄(投資は自己責任でお願いします)

 ・2502 アサヒ    業績回復期待。
 ・3401 帝人     業績回復。
 ・4443 Sansan    業績回復。

著者プロフィール

中島義之

中島義之(なかしま よしゆき) 

1970年に積水化学工業(株)入社、メーカーの企画・管理(財務含む)を32年間経験後、企業再生ビジネスに携わる。 現在、アイマックスパートナーズ(株)代表。 メーカーサイドから見た金融と企業経営を視点に、株式含む金融市場のコメントを2017年から発信。 発信内容は、オープン情報(ニュース、雑誌、証券リポート等々)を分析・組み合わせした上で、実現の可能性を予測・展望しながらコメントを作成。http://note.com/soubatennbou

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