相場展望3月2日号 米長期金利4%に到達、まだまだ上昇する金利 黒田日銀の総括

2023年3月2日 10:40

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■I.米国株式市場

●1.NYダウの推移

 1)2/27、NYダウ+72ドル高、32,889ドル(日経新聞より抜粋
  ・前週に▲1,000ドル余りの下落後で、短期的に売られ過ぎと見た押し目買いが入った。朝方に昨年11月以来の高水準に上昇した長期金利が下げに転じたのも、買い安心感につながった。
  ・長期金利低下で相対的な割高感が薄れた高PER(株価収益率)のハイテク株が買われ、NYダウは午前に一時+370ドル高となった。ただ、買い一巡後は伸び悩んだ。米連邦準備制度理事会(FRB)による利上げ長期化への警戒がくすぶり「値動きが不安定になりやすい」との指摘があった。
  ・週内に米サプライマネジメント協会(ISM)の製造業と非製造業の景気感指数など重要な経済指標の発表を控える。景気動向が金融政策を左右するとあって経済指標を見極めたい投資家が多く、積極的に運用リスクを取る雰囲気は乏しかった。NYダウは午後に小幅安に転じる場面があった。
  ・建機のキャタピラーや航空機のボーイング、金融のJPモルガンチェースなど景気敏感株の一角が上昇。ハイテクではスマホのアップルと顧客情報管理のセールスフォースが高い。電気自動車のテスラが+5%高で終えた。一方、半導体のインテルや小売のウォルマート、クレジットカードのアメックスは下落した。

【前回は】相場展望2月27日号 米国利上げ長期化観測で金利4%⇒米国株下落へ 日米金利差が拡大⇒円安・ドル高⇒インフレ高まる

 2)2/28、NYダウ▲232ドル安、32,656ドル(日経新聞より抜粋
  ・インフレ高止まりで米連邦準備制度理事会(FRB)の利上げが長引くとの観測が強まっており、米長期金利が一時、昨年11月以来の高水準を付けた。金利上昇が続くとの見方から株式の相対的な割高感が意識され、NYダウは昨年11月上旬以来の安値で終えた。
  ・長期金利は一時、前日比+0.07%高い3.98%に上昇、株式相場は下落した。午前中に上昇した後は、水準を切り下げる場面もあったが、FRBの利上げ継続観測から金利先高感が強く、米国株は引けにかけて売りの勢いが強まった。3/1発表の2月の米サプライマネジメント協会(ISM)の製造業景況感指数が1月から上昇すると市場で予想されている。米景気の底堅さを示せば、FRBの金融引締め強化につながるとの警戒から売りが出た。
  ・消費者向け事業の再編を明らかにした金融のゴールドマンサックスが▲4%近く下げ1銘柄でNYダウを▲90ドル余り押し下げた。製薬のメルクなど業績が景気に左右されにくいディフェンシブ株も安い。
  ・前週に▲1,000ドル余り下げ、短期的に売られ過ぎとの見方があり、消費関連株や景気敏感株の一角に押し目買いが入り、NYダウは下げ渋る場面もあった。

 3)3/01、NYダウ+5ドル高、32,661ドル(見んかぶより抜粋
  ・中国のPMIが強い内容だったことから、米国株式市場も下支えされたが、上値は依然として重い。
  ・取引開始後に2月のISM製造業景気指数が発表され、判断基準の50を4カ月連続で下回った。新規受注は予想外に盛り返したが、堅調と思われていた雇用指数が50以下に再び低下した。脆弱な需要とインフレ圧力の高まりの中で、米製造業のセンチメントは依然として収縮領域にとどまっている。拡大を報告したのは14業種中4業種だけとなった。ただ、米株式市場も敏感に反応したものの、大きな動きには至っていない。
  ・今日から3月相場に入ったが、強い米経済指標を受けたFRBのタカ派姿勢と高金利の長期観測などで、2月の株式市場は弱気相場を再認識された。ただ、3月に発表される米経済指標はこのところの需要減を反映し、2月ほど強くないとの見方も出ているようだが、果たして3月相場は前月から回復できるか注目される。
  ・キャタピラーが上昇、同社の 4カ所の拠点の従業員7,000人との労使交渉で、暫定合意に達したと発表した。フォードが商いを伴って上昇。米郵政公社がバッテリー駆動型の配達用小型トラックをフォードから9,250台購入すると伝わった。ホームセンター大手のロウズは決算を受け下落。

●2.米国株:3/1、米長短金利は上昇、高金利の長期化が強まる

 1)米長短金利の推移    2/1  ⇒  3/1  上昇幅   上昇率
      2年物金利   3.417%    3.996  +0.579% +16.9%
      10年物金利   4.106%    4.883  +0.777  +18.9
      逆イールド  ▲0.689%   ▲0.887  ▲0.198
  ・2年物金利は4.9%と2007年ぶり高水準。
  ・10年物金利は4%と昨年11月以来の高水準。

 2)FRB高官のタカ派発言が次第に重みを増してきている。
  ・ハト派と見られるパウエル議長からの発言なし。

 3)米金融大手バンクオブアメリカ(BofA)は、インフレ抑制のために長期金利見通しを6%に引き上げた。1~2月に掛けて発表された経済指標を見ると、FRBが本当にインフレ抑制をしてインフレ目標の2%を目指すなら、従前からの主張通り、やはり7~8%になると見ていることの変更はなし。

●3.ミネアポリス連銀総裁、ピーク金利予想の引上げを示唆、市場は5.5%織込む(フィスコより抜粋

 1)利上げが、サービス需要を減速させている兆候が見られないことが懸念、ピーク金利を引き上げる可能性に言及。

 2)アトランタ連銀総裁も、2024年まで政策金利を5~5.25%で据え置く必要があると語る。

●4.米2月ISM製造業景況指数は47.7、予想48.0を下回る、1月は47.4(フィスコ)

 1)2月は4カ月連続で50割れ(ロイター)

●5.米2月消費者信頼感指数は102.9、予想108.5・1月107.1を下回り悪化(フィスコ)

 1)雇用情勢については、職が「十分」と見なす回答者の割合が、昨年春と並ぶ水準に増加するなど、労働市場に対しては楽観的な見方が示された。(ロイター)

●6.米12月ケース・シラー住宅価格、前年同月比+5.8%上昇、前月+7.6%から鈍化(ロイターより抜粋

 1)2022年は+5.8%上昇、記録的な上昇となった2021年の+18.9%からは鎮静化したものの供給が逼迫しているため価格下落は抑制される可能性がある。

●7.ロシア、1月石油ガス収入は前年同月比▲38%減、IEAトップ「制裁の目的達成」(ロイターより抜粋

 1)「今後数カ月でさらに大幅に減少し、中期的には技術や投資の欠如で、さらに急激な落込みとなるだろう」と語った。

■II.中国株式市場

●1.上海総合指数の推移

 1)2/27、上海総合▲9安、3,258(亜州リサーチより抜粋
  ・投資家の慎重スタンスが持続する流れとなった。
  ・米利上げ継続の長期観測が強まる中、世界経済の成長が鈍ると懸念されている。
  ・先週末の米国株安や、この日の香港を含むアジア市場の株安も重しとなった。ただ、下値は限定的。
  ・中国の経済対策に対する期待感は根強く、指数はプラス圏で推移する場面も見られた。
  ・中国では国政助言機関の全国政治協商会議が3/4、全国人民代表会議(全人代)が3/5に開催する。
  ・業種別では、ITハイテク関連の下げが目立ち、医薬品も安く、金融・不動産が下落。半面、酒造・食品はしっかり。レストラン・レジャー・空運・エネルギーも買われた。

 2)2/28、上海総合+21高、3,279(亜州リサーチより抜粋
  ・前日までの続落を受け、ひとまず買い戻しが先行する流れとなった。
  ・昨夜の債券市場で米債券利回りが低下に転じたことも好感された。
  ・中国人民銀行(中央銀行)の大幅資金供給もプラス材料。人民銀は2/28、月末の流動性確保に向け3,310億人民元を市中供給した。2/27の供給額は660億人民元にとどまっていた。ただ、上値は重い。
  ・ロシア支援や気球問題を巡り、米中関係が悪化すると警戒されている。指数は安く推移する場面も見られた。
  ・業種別では、通信の上げが目立ち、発電も高く、医薬品も物色された。半面、石炭は冴えず。

 3)3/01、上海総合+32高、3,312(亜州リサーチより抜粋
  ・中国景況感指標の上振れが材料視される流れとなった。朝方公表された2月の製造業購買担当者景気指数(PMI)は52.6に回復し、市場予想50.6や前月実績50.1から改善し、2021年4月以来、10年10カ月ぶりの高水準を記録した。
  ・中国経済対策に対する期待感も根強い。
  ・国政助言機関の全国政治協商会議は3/4、全国人民代表会議(全人代)は3/5に開幕する。
  ・指数は安寄り後、ほどなく上昇に転じ、中盤から上げ幅を広げた。
  ・業種別では、通信の上げが目立った。中国共産党中央委員会と国務院は先ごろ、「デジタル中国建設の全体準備計画」を発表。中国のデジタル化を進め、2025年までに、世界最高水準を目指す戦略を改めて強調した。ITハイテク関連も物色され、金融もしっかり。消費関連・エネルギー等も買われた。

●2.中国進出の米企業、今後の見通しを悲観、投資計画の見直し(ロイター)

■III.日本株式市場

●1.日経平均の推移

 1)2/27、日経平均▲29円安、27,423円(日経新聞より抜粋
  ・米連邦準備制度理事会(FRB)の利上げ局面が長期化するとの観測を背景にした前週末の米株式相場の下落が重荷だった。一方、為替市場で円安が進み、相場の下値を支えた。
  ・日経平均は朝方の売り一巡後は下げ渋る展開となった。米長期金利が上昇傾向にある中、ハイテク株を中心に売りが先行した。半導体関連やソフトバンクGの下落が目立った。
  ・半面、円安は自動車など輸出関連株の買いを誘い、日経平均は午前中上昇に転じる場面もあった。午後は新規の材料に欠き、小幅安で膠着感も見られた。
  ・参議院での植田次男・次期日銀総裁候補の所信聴取については2/24の衆議院での発言内容と大きく変わらず、相場の反応も薄かった。
  ・配当の権利落ち日で株式分割後の価格が適用されたファストリは大引けに掛けて買いがやや強まったが、相場への影響は限られた。
  ・東エレク・アドテスト・トレンド・中外薬が下落、ファナック・テルモが上昇した。

 2)2/28、日経平均+21円高、27,445円(日経新聞より抜粋
  ・前日の米長期金利の上昇一服が支えとなり、米主要株価指数が上昇した流れを受け、東京市場でも運用リスクをとりやすくなった投資家の買いが入り、ハイテク関連などグロース(成長)株を中心に上昇し、上げ幅は一時+100円を超えた。半面、バリュー(割安)株の一角に利益確定売りが出たことが重荷となり、午後にかけて伸び悩んだ。
  ・海運株など今まで堅調に推移していたバリュー株や高配当利回りの銘柄に売りが出た。前日の日本郵政が発表したゆうちょ銀株の売出しで株式需給の悪化が意識される中、日経平均は下げに転じる場面もあった。
  ・日経平均への寄与度が高いファストリやソフトバンクG・ゆうちょ銀が上昇、郵船・日本製鉄・三菱UFJは下げた。

 3)3/01、日経平均+70円高、27,516円(日経新聞より抜粋
  ・終値で心理的節目の27,500円台を回復したのは2/20以来。前日の米国株安を受け、朝方は下落して始まった。売り一巡後は中国の景気回復を示す経済指標の発表をきっかけに鉄鋼や機械株に買いが集まり、上昇に転じた。
  ・中国国家統計局が3/1に発表した2月の製造業購買担当者景気指数(PMI)は好不況の境目となる50を上回り、市場予想も大幅に上回った。景気回復期待から上海や香港などアジアの株式市場が上昇し、東京市場でも日本製鉄や安川電など中国関連株に買いが入った。
  ・3月期末を基準日とする配当の権利取り目的の買いも相場の支えとなった。
  ・米長期金利の上昇や、東証がPBR(株価純資産倍率)1倍割れの上場企業に是正を求めていることなどを背景としたバリュー(割安)株への買いも継続した。
  ・日経平均が27,500円を上回る水準では戻り待ちの売りが出て、相場の上値は重くなる場面もあった。
  ・米国で3/1に発表される米サプライマネジメント協会(ISM)製造業景況感指数の結果を見極めたいとして、持高を積極的に傾ける動きは限られた。
  ・ファナック・SMC・日立建機が上昇。2/28に2023/3期の連結純利益が予想を上方修正した味の素は+9%上昇した。一方、サイバー・郵船・商船三井が安い。

●2.日本株:黒田日銀の総括

 1)黒田・バズーカ砲の内容
  ・異次元の超金融緩和
  ・マイナス金利の導入
  ・YCCの導入(イールドカーブ・コントロール)
  ・FTF(上場型投資信託)購入額を膨張させ株式市場への直接介入
   ETF購入額37兆円(2/20時点)、時価51兆円(昨年3月末時点)
   日銀は日本の上場株式時価総額の7%を持つ、日本企業の最大の株主。
   米国などでも中央銀行のFRBは、株式市場に直接介入していない。

 2)黒田・異次元緩和策がもたらしたものは、「日本経済の成長力低下」「銀行への不信」
  ・日本のGDP推移を見ても、ダッチロールして成長を失っている。
  ・銀行の「メインバンク意識の放棄」
   ⇒ 企業は自己防衛上、新規投資を取りやめ、資金を積み上げた。その結果、企業の成長は止まりこぢんまりとなり、日本経済の成長も止めた。
  ・低金利長期化で、業界から退場をせまられる企業の生息をさせる。
   ⇒ 日本経済の新陳代謝を阻害。
  ・日銀の介入で債券市場、株式市場の健全性は低下し、市場は活性化を失った。

 3)日銀への要望
  ・通貨の番人の役割を果たせ。
  ・インフレから国民を守れ。
  ・政府・財務省から独立性を堅持しろ。

●3.企業動向

 1)日本郵政  ゆうちょ銀行の保有株を国内外で売出し、総額1.3兆円(ブルームバーグ)
売出し価格決定は3/13
 2)エーザイ  アルツハイマー新薬が中国で優先審査に指定(ロイター)
 3)NTT    KDDIと次世代光通信技術開発で提携へ、6Gで世界標準目指す(NHK)

■IV.注目銘柄(投資は、ご自身の責任でお願いします) 

 ・4301 アミューズ   コロナ回復期待。
 ・4503 アステラス薬  業績好調。
 ・7564 ワークマン   業績回復期待。

著者プロフィール

中島義之

中島義之(なかしま よしゆき) 

1970年に積水化学工業(株)入社、メーカーの企画・管理(財務含む)を32年間経験後、企業再生ビジネスに携わる。 現在、アイマックスパートナーズ(株)代表。 メーカーサイドから見た金融と企業経営を視点に、株式含む金融市場のコメントを2017年から発信。 発信内容は、オープン情報(ニュース、雑誌、証券リポート等々)を分析・組み合わせした上で、実現の可能性を予測・展望しながらコメントを作成。http://note.com/soubatennbou

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