相場展望2月6日号 米国経済は予想以上に堅調、インフレ圧力強く ⇒ドル高・金利引上げ・高金利水準が長期化へ

2023年2月6日 10:08

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■I.米国株式市場

●1.NYダウの推移

 1)2/2、NYダウ▲39ドル安、34,053ドル(株式新聞より抜粋
  ・米国の週間失業保険申請件数が前週より減少し、約9カ月ぶりの低水準となったこともあり、FRB(連邦準備制度理事会)の利上げが長期化するトの懸念から売り注文が優勢となり、NYダウは▲39ドル安で取引を終えた。
  ・ハイテク株主体のナスダック総合指数は続伸し、+384高と大幅高の12,200だった。好決算を発表したメタ(旧フェイスブック)が買われたほか、2/2取引終了後に決算発表を控えるアマゾンやアルファベット(グーグルの持ち株会社)なども物色された。
  ・また、パウエルFRB議長が前日の記者会見で、何回かインフレ鈍化に言及していたことから、早期の利上げ停止期待も支えとなった。
  ・一方、NYダウ採用銘柄では、ユナイテッドヘルスやメルク、ボーイングなどが値下がり率の上位に入った。
  ・2/3には米1月雇用統計の発表を控え、模様眺めムードが広がる場面もあった。

【前回は】相場展望2月2日号 FOMCイベント終了⇒業績相場に移行 株式市場はあと1回の利上げ、FOMC声明は複数回の利上げを想定

 2)2/3、NYダウ▲127ドル安、33,926ドル(日経新聞より抜粋
  ・米1月雇用統計で雇用者数が市場予想を大幅に上回って増えた。労働市場の需給逼迫が改めて認識され、前日まで高まっていた米連邦準備制度理事会(FRB)が早期に利上げを停止するとの期待が後退した。前日まで強かったハイテク株が売られ、相場の下げを主導した。
  ・雇用統計では景気動向を映す非農業部門雇用者数が前月比+51.7万人増と、前月+26万人増と市場予想+18.7万人増を大きく上回った。失業率は予想に反して3.4%と53年ぶりの水準に低下した。「労働需給は明らかに引締まっており、3月と5月の米連邦公開市場委員会(FOMC)で利上げが続くとの見方が強まった」という。
  ・前日に決算発表したスマホのアップルは高い利益率を維持し株価は+2%高となったがそれ以外のハイテク株は総じて売られた。雇用統計を受け、米長期金利が3.5%台に上昇(前日終値3.39%)し、相対的な割高感が意識された高PER(株価収益率)のハイテク銘柄の重荷となった。
  ・NYダウ構成銘柄では、マイクロソフトと顧客情報管理のセールスフォースが下げた。構成銘柄以外では、決算が振るわなかったアマゾンが▲8%安と下げが目立った。
  ・もっとも、NYダウの下値は堅く、上げに転じる場面もあった。2/3発表の米1月サプライマネジメント協会(ISM)の非製造業景況感指数は55.2と好不況の分かれ目である50を上回った。米経済の底堅さに着目し、景気後退は避けられると見た買いを誘ったようだ。

●2.米国株:米経済は予想を超える強さで、利上げは継続・長期化か!

 1)米国経済は予想以上に堅調、インフレは長期化⇒FRBは利上げ・高金利持続へ
   米株式相場は、「経済がリセッション(景気後退)に陥るので、FRBは今年軌道修正し利下げを強いられる」という期待をしてきた。その期待感から、米国株式は反騰した。

 2)ところが、その期待感の根底にある「金融引締め停止」「金利引下げ」論が後退する情勢に変化しそうである。それは、米経済の予想以上の堅調が「米雇用統計など」で、確認されたためである。今回の雇用統計とISM非製造業景況指数の強さから、株式市場の楽観論は打ち砕かれた。
  ・1月雇用統計は51.7万人増と予想18.7万人を大きく上回ることが示すように、労働市場が極度の逼迫が継続している。
  ・JOLT求人件数は1,101.2万件と、予想1,030万件・11月1,045万件を上回った。
  ・失業率は3.4%と53年ぶりの低水準を記録した。
  ・米1月ISM非製造業景況感指数が55.2と、好不況の境目といわれる50を上回り、米経済の力強さを裏付けた。

 3)米国経済がリセッション(景気後退)入りするとの懸念から、米株式市場から「金利低下」から叫ばれてきたが、その期待感に反して、労働市場やISM非製造業景況感指数から見ると現実として景気の強さが証明された。よって、労働市場の逼迫感や米経済の好調さから、米金融当局(FRB)に「利上げ継続」を求める圧力がむしろ強まったと思われる。

 4)米国株式市場は、「金融緩和期待」で上昇したが、チャートで見ると高水準にある。つまり、いつ「株価下落」があっても不思議ではない高い位置にあるとも言える。
  ・NYダウは高値に位置している。
   NYダウ高値の推移  11/30    1/13    2/1    2/3
             34,589ドル  34,302  34,092  33,926
  ・NYダウの最近の高値が「切下がっている」傾向にあることが判る。そして、2/3の下落は「NYダウが下向き始めた」兆候かもしれない。

 5)いずれにしても、米株式市場は高値水準での『踊り場』にあると見ることができる。そのため、株価推移を注意深く見ていく局面にあると言えそうだ。

●3.サンフランシスコ連銀デーリー総裁発言(ブルームバーグより抜粋

 1)今日の雇用統計は、すごい数字だった。2023年末の金利予想中央値を約5.1%としたのは、金融政策が何処に向かっているかを示唆するには良好な指標だ。

 2)リスナーに伝えるべき最も重要なことは、追加引締めと景気抑制的なスタンスを当面維持するというのが政策の方向だということだ。

●4.米製造業新規受注、前月比+1.8%増と回復、民間航空機の受注急増(ロイター)

■II.中国株式市場

●1.上海総合指数の推移

 1)2/2、上海総合+0.75高、3,285(亜州リサーチより抜粋
  ・中国景気の持ち直し期待が持続する流れとなった。
  ・リオープン(経済再開)の進展、当局の経済支援スタンスなどが支えだ。
  ・1/31に習近平・総書記(国家主席)が主宰した共産党中央政治局の研究会では、科学技術の「自立自強」ペースを拡大すると強調し、消費拡大に向けて長期戦略を確立するとの戦略が表明されている。
  ・また、米金融引締めへの警戒感が後退、米10年債利回りが急低下したことも好材料だ。
  ・ただ、売り圧力が意識される中で、上値は重い。1月の本土市場では、2010年以降で最も良好なパフォーマンスを達成した。
  ・業種別では、ITハイテク関連の上げが目立ち、医薬品もしっかり。金融は冴えない。

 2)2/3、上海総合▲22安、3,263(亜州リサーチより抜粋
  ・売り圧力が意識される流れとなった。
  ・上海総合指数は今年に入り上昇基調を強め、足元では約 5カ月ぶりの高値水準を回復した。
  ・中国人民銀行(中央銀行)の資金吸収もネガティブ。人民銀行は2/3、市中から▲2,960億元、前日は▲4,010億元を市中から引き揚げた。
  ・業種別では、金融が下げを主導し、消費関連も安く、不動産も冴えない。

●2.IMF、人口減と生産性低い国有企業で2020年後半に中国経済成長率4%以下に(時事通信)

 1)国際通貨基金(IMF)は年次審査報告書で、中国経済が2020年代後半に4%以下に減速する可能性があるとした。

■III.日本株式市場

●1.日経平均の推移

 1)2/2、日経平均+55円高、27,402円(日経新聞より抜粋
  ・米連邦公開市場委員会(FOMC)を通過し、前日の米ハイテク株が大きく上昇した。東京市場でも半導体関連やグロース(成長)株に買いが入り相場を押し上げた。
  ・半面、為替市場での円高進行が重荷となり、自動車など輸出関連株には売りが出て、重荷となった。
  ・米連邦準備制度理事会(FRB)は2/1まで開いたFOMCで+0.25%利上げを決めた。利上げ幅は前回の+0.50%から縮小した。パウエル議長はFOMC後の記者会見で物価の伸び鈍化に言及した。米利上げの停止時期が早まるとの見方から、米長期金利は低下し、米株式市場ではハイテク株を中心に大きく上昇した。
  ・東京市場でも東エレク・アドテストに加え、エムスリーなどPER(株価収益率)が高いグロース株が買われた。
  ・半面、自動車や銀行などPERが低いバリュー(割安)株は売りに押された。為替市場で円が128円台半ばまで上昇し、トヨタ・日産自など自動車株が軒並み下落。金利の先高感が後退し、三井住友FG・三菱UFJなど銀行株も下げた。ファストリ・ソフトバンクG・日立・リクルートが高い。半面、住友化・味の素・東電・双日など商社株も下落した。

 2)2/3、日経平均+107円高、27,509円(日経新聞より抜粋
  ・欧米の金融引締め緩和を期待した前日の米ハイテク株高の流れを、東京市場も引き継ぎ電気機器や精密機器を中心とした値嵩株が買われ、12/16以来1カ月ぶりの高水準となり指数を押し上げた。
  ・2/2の米株式市場でハイテク株比率の高いナスダック総合指数や主要な半導体関連銘柄で構成するフィラデルフィア半導体株指数(SOX)が大幅高となったことで、東京市場でもハイテク株が堅調だった。
  ・好決算銘柄や決算発表後に下落したグロース(成長)銘柄に対する買いも目立ち、上げ幅は一時+200円を超えた。
  ・ただ、買い一巡後は、米1月雇用統計の発表を控えていることや、日銀の次期総裁人事を警戒し伸び悩んだ。「足元の米ハイテク株高は好材料だが、日銀総裁人事の公表前に積極的な上値を追う投資家は少ない」との声があった。
  ・ソニー・Z・TDK・HOYA・中外薬・武田・レーザーテク・リクルート・野村が上昇。半面、KDDI・日野自・パナは下落した。

●2.日本株:日経平均は強さが「軟調の兆し」が見え始めたか?

 1)日経平均の「新高値」銘柄数が減少し始め、株価上昇の牽引力が弱まる傾向にある。
   新高値・新安値の銘柄推移  1/30   1/31   2/1   2/2   2/3
       新高値の銘柄数    82    91    118   49    28
       新安値の銘柄数    2 2    2 6 9

 2)しかし、新安値銘柄数は微増であり、「株式市場が弱気」に転換したとは言えない状況。

 3)日経平均をチャートで見ると「高値圏にあり、下落へと転換」してもおかしくない位置にあるので、注意したい。
  2020/01/20  コロナ前の高値 24,083円
  2020/03/19  コロナ後の底値 16,552
  2021/09/14  コロナ後の高値 30,670
  2022/03/09  コロナ後の安値 24,717
  2022/11/24  その後の高値 28,383
  2023/01/04  その後の安値 25,716
  2023/02/03  直近の高値? 27,509
  ・日経平均はコロナ後の高値30,670円から高値が切下がっている傾向に注目したい。

●3.日銀の保有国債含み損は9月末▲0.87⇒12月末▲8.8兆円と10倍増(日刊ゲンダイより抜粋

 1)日銀の純資産は+4.4兆円。(国債は時価会計をしておらず購入簿価のまま資産に計上)

 2)黒田・日銀総裁の「負の資産」はまだまだ増える。

●4.企業動向

 1)キューピー マヨネーズ4回目、4/1から3~21%値上げ、卵高騰で(共同通信)

●5.企業業績

 1)ANA   4~12月純利益+626億円黒字、前年同期▲1,028億円赤字(共同通信)
 2)JAL    4~12月純利益+163億円黒字、前年同期▲1,283億円赤字(共同通信)
 3)みずほ  4~12月純利益+5,432億円と前年同期比+13.55増、通期は据置き(ロイター)
 4)村田製  通期予想営業利益+3,800⇒+2,950億円に下方修正、中国低迷で(NHK)
        村田会長は「需要回復は2024年夏以降」と見ている。
 5)パナソニック 通期営業利益予想+3,200⇒2,800億円に下方修正(朝日新聞)
 6)日野自  通期最終損失▲500億円、検査データ不正問題で(NHK)
 7)三菱自  4~12月営業利益+1,537億円、前年同期比+174.7%(Impress Watch) 
 8)日立製  通期純利益+6,000⇒+6,300億円に上方修正、市場予想+6,130(日経新聞)

■IV.注目銘柄(投資は、ご自身の責任でお願いします) 

 ・4471 三洋化成    業績堅調。
 ・6768 タムラ製    業績好調。
 ・9616 共立メンテ   業績好調。

著者プロフィール

中島義之

中島義之(なかしま よしゆき) 

1970年に積水化学工業(株)入社、メーカーの企画・管理(財務含む)を32年間経験後、企業再生ビジネスに携わる。 現在、アイマックスパートナーズ(株)代表。 メーカーサイドから見た金融と企業経営を視点に、株式含む金融市場のコメントを2017年から発信。 発信内容は、オープン情報(ニュース、雑誌、証券リポート等々)を分析・組み合わせした上で、実現の可能性を予測・展望しながらコメントを作成。http://note.com/soubatennbou

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