相場展望9月19日 NYダウは新1番底25,500ドルをつけに行くか 日経平均も弱気展開を予想、外国人の先物売りに注意

2022年9月19日 08:57

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■I.米国株式市場

●1.NYダウの推移

 1)9/15、NYダウ▲173ドル安、30,961ドル(日経新聞より抜粋
  ・米連邦準備理事会(FRB)が利上げ加速するとの警戒感から、高PER(株価収益率)のハイテク株を中心に売られ、相場の重荷になった。顧客情報管理のセールスフォースやソフトウェアのマイクロソフトの下落が目立った。
  ・市場予想を上回る米小売統計を受けて消費関連株への買いが先行したが、午後に失速。
  ・FRBがインフレ抑制の利上げを急ぐとの見方で、米長期金利は3.45%前後で推移。長期金利上昇で利ざやか改善するとの見方から、金融株に買いが入った。医療保険のユナイテッドヘルスなどディフェンシブ銘柄も上昇した。
  ・市場では「強弱まちまちの結果」との見方も出た。
  ・ナスダック総合では、ネット通販のアマゾンや交流サイトのメタが売られ、動画配信のネットフリックスは大幅高だった。

【前回は】相場展望9月15日 米国株: FRBの力強い金融引締め政策は変わらず 日米とも株価は9~10月乱調を予想

 2) 9/16、NYダウ▲139ドル安、30,822ドル(日経新聞より抜粋
  ・物流大手フェデックスが9/15夕に発表した決算の速報値と業績見通しが振るわず、株価は▲2割余り下落し、世界景気や米企業業績の下振れへの懸念が強まった。
  ・米連邦準備理事会(FRB)の急激な金融引締めが、米景気を一段と悪化させるとの見方が強まり、景気敏感や消費関連株を中心に売りが優勢となり一時▲400ドル下落。
  ・NYダウは週間で▲1,329ドル安となったが、8月米消費者物価指数(CPI)の上振れを受け、9/13に今年最大の下げを記録したのが響いた。
  ・投資家は9/20~21の米連邦公開市場委員会(FOMC)を控え慎重になっている。「持ち高調整を含め、短期的な自律反発を見込む買いが入った」との声があった。
  ・ナスダック総合では、アマゾン・メタなどの下げが目立った。

●2.米国株:FRB利上げ加速で、新1番底・NYダウ25,500ドルを目指す可能性が濃い

 1)9月FRBの利上げ予想
  ・9/20~21のFOMCの利上げ予想は+1.00%と通常の4倍の見方も出てきたが、3倍の+0.75%を予想。

 2)NYダウをチャートで見ると2番底ではなく、新1番底を形成に行く可能性が高い
  ・NYダウをチャートで見ると、
   (1)8/16天井34,152ドル⇒9/16安値30,822ドルと下落基調が続く。
   (2)次のポイントは6/17安値29,888ドル。これを下回ると新1番底を形成に行く。
  ・上回って反発すると2番底となり大きな反転攻勢となり得る。
  ・しかし、(3)8/16天井まで+4,264ドル上昇。そこから9/16まで▲3,330ドルと、上昇幅に対する下落率は▲78.1%。上昇に要した期間は2カ月、そこからの下落期間は1カ月。下落スピードの速さから
しても、2番底ではなく、新1番底を目指す可能性が大と予想する。

 3)NYダウは下落し、新1番底を予想
  ・上げ幅は、コロナ禍の最安値から最高値まで倍上昇。
   最高値 2022年1月04日 36,799ドル
   最安値 2020年3月23日 18,591
   上昇幅         + 18,208
  ・フィボナッチで予測。
   ▲38.2%押し: ▲6,955ドル下げ幅で、29,844ドル⇒6/17に29,888と達成済。
   ▲61.8%押し: ▲11,252ドル下げ幅で、新1番底25,547ドルを予想。
  ・フィボナッチ▲61.8%押しのケースでは、9/16比で、さらに▲5,275ドル下げが見込まれることになる。インフレ高進、特にコアCPIはさらなる上昇の可能性が高いと見込まれ、FRBの金利引き揚げが加速すると予想する。賃金上昇は労働需要の高さから今後も続き、サービス価格などが上昇し、インフレ抑制はより困難さを増すだろう。それにしたがって、FRBによる金融引締めは加速・長期化が予想される。よって、景気減速のソフトランディング⇒ハードランディングは避けらず。また、ハイテクが牽引してきた米国株だが、半導体関連の先行き見通しも暗くなってきているだけに、NYダウ等の米国株は新安値形成に向かう可能性が高そうだ。

●3.米燃料列車が運行停止、鉄道ストに備える、米北東部でエネルギー不足も(ロイター)

●4.米新規失業保険申請件数は21.3万件、予想22.6万件を下回る(ロイター)

 1)米連邦準備理事会(FRB)の大幅利上げにより来年の景気後退観測が高まっているが、雇用が冷える兆しは見えない。

●5.世界の投資家、株式「強気」の割合が最低、米バンカメ調査(日経新聞より抜粋

 1)米バンク・オブ・アメリカ(バンカメ)9/13公表、9月機関投資家調査によると、世界の投資家がリスク資産の保有に慎重な姿勢を強めていることが明らかになった。株式の保有について「オーバーウエート(強気)」と回答した割合から「アンダーウエート(弱気)」と回答した割合を差し引いた値がマイナス52ポイントとなり、過去最低の水準となった。

■II.中国株式市場

●1.上海総合指数の推移

 1)9/15、上海総合▲37安、3,199(亜州リサーチより抜粋
  ・投資家の慎重姿勢が持続する流れとなった。
  ・中国経済指標の下振れ懸念が気懸かりだ。8月の各種統計(小売売上高・鉱工業生産・固定資産投資など)は、明日発表される。
  ・米中関係のさらなる悪化も警戒。米上院外交委員会は9/14、台湾に対する米国の軍事支援強化や、中国が台湾に対する敵対行動に出た時の制裁を盛り込んだ「台湾政策法案」を賛成多数で可決した。
  ・中国の経済活動正常化や産業支援策などの期待感で買い先行したものの、上値は重く、指数は程なくマイナスに転じた。

 2)9/16、上海総合▲73安、3,126(亜州リサーチより抜粋
  ・世界経済の先行き不安が投資家心理を冷やし、5/26以来の3カ月半ぶりの安値に下落。
  ・世界銀行は9/15、「インフレ対策で各国の中央銀行が利上げを加速させているため、世界全体がリセッション(景気後退)に向かっている恐れがある」などと警告した。
  ・また、格付け会社フィッチは最新リポートで、2022年の中国国内総生産(GDP)成長率見通しを+3.7%⇒+2.8%に▲0.9%下方修正した。新型コロナ感染拡大、不動産市場の低迷を理由に挙げた。
  ・人民元安の進行もマイナスで、2020年7月以来となる1ドル=7.0人民元を付けた。
  ・中国本土からの資金流出なども警戒されている。
  ・業種別では、不動産の下げが目立ち、エネルギー関連・金融も冴えない。

■III.日本株式市場

●1.日経平均の推移

 1)9/15、日経平均+57円高、27,875円(日経新聞より抜粋
  ・前日に米株式が上昇したことや、前日▲800円近く下げた後ということもあり、一部主力銘柄に自律反発を見込んだ買いが優勢で一時+100円を超える場面があった。
  ・政府が10月にも新型コロナの水際対策を緩和すると伝わり、需要回復への期待から、空運・鉄道・消費財などインバウンド(訪日外国人)関連の上昇が目立った。
  ・米連邦準備理事会(FRB)が積極的な金融引締めを続けるとの見方が根強い。円安が進行するなかで、政府・日銀による円買いの為替介入への警戒感も高まった。中国が外国製医療機器を締め出そうと動いていると伝わり、関連銘柄に売りが出た。日経平均は一時下落に転じるなど、積極的に上値を追う動きは限られた。
  ・ファストリ・東エレク・ソフトバンクG・資生堂・JR東日本・ANAが高かった。テルモ・オリンパス・アドテスト・日本製鉄・川崎汽船が売られた。

 2)9/16、日経平均▲308円安、27,567円(日経新聞より抜粋
  ・米金融引締めを警戒した前日の米国株安を受け、値嵩のグロース(成長)株を中心に運用リスクを回避する売りが出て、指数を押し下げた。
  ・明日からの3連休を前に持ち高を減らす動きもあり、下げ幅は一時▲350円を超えた。
  ・上海や香港などアジア株相場の軟調さも心理的な重荷となった。
  ・米長期金利上昇で米ハイテク株が売られたことを背景に、東京市場でも半導体株が軟調で、原油価格下落を受け石油関連株も売られた。
  ・「9/20~21の米FOMCを前に、リスク資産を減らす動きが日本株にも波及」との声も。
  ・東エレク・アドテストなど半導体関連株が大幅安、TDK・日東電・キーエンスが下落。三菱UFJ・東京海上など金融株と関西電・三井不が買われた。

●2.日本株:日経平均は弱気相場入りか、外国人短期筋の先物売りに警戒

 1)日経平均は弱含み展開を予想
  ・年初来新高値・新安値:買い優勢⇒売り買い拮抗へ。
            9/12 9/13 9/14 9/15 9/16
   新高値(銘柄数) 148  118   35  48  44
   新安値(銘柄数) 2   4  29  35  45
   空売り率(%) 39.5% 38.4 46.9  41.8 41.2
   日経平均(円) +327  +72 ▲796  +57 ▲308 
  ・空売り比率が低いなか、日経平均は下落⇒実需の弱さを反映。
  ・外国人短期筋は、9/14先物で売りに転換し、日経平均も下落に転じた。NYダウは、フィボナッチ▲38.2%に到達してから反発に転じた。日経平均も7月以降の短期筋の外国人による先物買いで上昇に転換し、8/17に高値29,888円を形成した。ただ、注意しなければならないのは、外国人は先物買いをしながら、現物株を売っていたという点である。しかも、大量の先物買い残高を外国人は保有しているだけに、外国人の先物売りに警戒したい。

 2)主要会議
  ・9/20~21  日銀政策決定会合:止まらぬ円安への対応に注目。

 3)米国株はチャートからは新1番底を目指す形成が濃く、日本株は底堅いとはいえ影響を受けるため、秋相場は警戒したい。

■IV.注目銘柄(投資はご自身の責任でお願いします)

 ・4502 武田薬   業績好調
 ・8015 豊田通商  業績堅調
 ・9432 NTT    業績堅調

著者プロフィール

中島義之

中島義之(なかしま よしゆき) 

1970年に積水化学工業(株)入社、メーカーの企画・管理(財務含む)を32年間経験後、企業再生ビジネスに携わる。 現在、アイマックスパートナーズ(株)代表。 メーカーサイドから見た金融と企業経営を視点に、株式含む金融市場のコメントを2017年から発信。 発信内容は、オープン情報(ニュース、雑誌、証券リポート等々)を分析・組み合わせした上で、実現の可能性を予測・展望しながらコメントを作成。http://note.com/soubatennbou

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