関連記事
相場展望12月6日 米国・長短金利差が縮小、VIX指数高水準に注目 日本株、個別株で下落目立つ、SQ波乱?注視
■I.米国株式市場
●1.NYダウの推移
1)12/02、NYダウ+617ドル高、34,639ドル(日経新聞より抜粋)
・1日の上げ幅としては、今年最大だった。
・NYダウはこの2日間で▲1,100ドルほど下落し、その自律反発狙いの買い優勢となった。
・また、12/3発表の11月雇用統計で堅調な雇用者数の伸びが見込めるとの期待と労働市場の改善基調を背景に個人消費の回復観測からクレジットカードのアメックスとビザが+4%強、上昇した。航空機のボーイングも+8%近く上げ、NYダウを1銘柄で90ドル余り押し上げた。
【前回は】相場展望12月2日 米国3重苦で、経験則『年末の株高』が揺らぐ? 米市場は『金融緩和の早期解消・利上げ』を警戒
2)12/03、NYダウ▲59ドル安、34,580ドル(日経新聞より抜粋)
・米国を含む世界各地で新型コロナ変異型「オミクロン型」の感染者が相次いで確認され、感染拡大への懸念が投資家心理を冷やした。
・投資家のリスク回避姿勢が強まり、年初から上昇率が大きい高PER(株価収益率)のハイテク株中心に売りが優勢となり、ナスダック総合が大きく下げた。
・ワクチンや治療薬の有効性が確認されるまで、米国民が外出などを手控える可能性があり、目先の経済活動の縮小につながるとの懸念が強まった。
・11月雇用統計は21万人増と予想を大幅に下回った。平均時給の伸びも鈍化した。一方、失業率は4.2%に低下し、労働参加率が上昇と、雇用情勢は一部改善を示す。
・インフレ懸念を強めるFRBが金融政策の正常化加速の見方が、相場の重荷。
・NYダウは寄付き直後+160ドル超上昇、買い一巡後はハイテク売りで一時▲375ドルまで下げ、終了にかけ買い戻しが入り、下げ幅を縮小する不安定な展開だった。
●2.米国株式は変調の兆しか?各株価指数にバラつきが発生、注意深く見守りたい
1)米国株式12/3の状況:NYダウとその他指数とバラつき
・12/3は、NYダウは▲59ドル下落・▲0.17%安と小幅反落。他指数の、ナスダック▲1.92%安、SP500▲0.84%、ラッセル2000▲2.11%安と軒並み大きく売られ、逆にNYダウの下げに対する抵抗力の強さが目立つ展開。
・金利の上下に敏感に反応しやすい高PER(株価収益率)のナスダック総合だが、12/3は長短金利が低下し上昇する条件ながら、大幅下落となった点に注目したい。
・フィラデルフィア半導体株指数は▲0.16%と小幅安にとどまっている。なお、直近高値11/29比では▲2.71%下落と、NYダウ▲1.58%安より大きく下落。
2)米・長期短期金利差は狭まっており、縮小・逆転は景気後退懸念を示唆するので注目
11/01 12/01 12/02 12/03
10年国債利回り 1.556% 1.404% 1.438 1.356
2年国債利回り 0.499 0.551 0.623 0.593
利回り差 1.057 0.853 0.815 0.767
3)VIX(恐怖指数)は不安心理が高まったとされる節目の20を、大幅に上回る30超
11/01 12/01 12/02 12/03
・VIX指数 16.41 31.12 27.95 30.67
・オミクロン新変異種の広がりで、11/26(金)のNYダウは▲905ドル安となった。11/26のVIX指数は28.62と節目20を超えたが、翌週の金曜日12/3にはショックが落ち着くか注目していたが30.67とさらに上回り、先行き懸念が深まった状況にある。
4)12月FOMC会合(12/14~15)結果に注目
・注目点 ・テーパリング(FRBの資産購入縮小)のペース加速
・金利引上げの早期化
・金利先物・現在は来年2回の金利引上げを織り込んでいるが、その動向に注目
5)12月特有の事象も含め、来週後半からの相場に警戒材料
・年末前に節税対策の売り圧力が増す。
・クリスマス休暇で、徐々に市場参加者が減少のため、大きな買い仕掛け期待できず。
・株価下落局面では、急増した個人のオプション・現物投資の動向にも注視したい。
・投機資金がWTI原油先物市場などから逃げ出し始めたか?注視。
11/01 12/03
WTI原油先物 84.05ドル 66.27 ▲21.2%下落
国際商品指数(CRB)239.29 220.64 ▲ 7.8%下落
NY金先物 1,795ドル 1,784 12/3リスク回避の買いで+21ドル上昇
商品市況の下げが、米国株式市場への波及につながるか、注目したい。
・なお、年末近くには売りが一巡しており、年末特有のお化粧買いもあって反発する可能性が高い。
●3.米大統領、つなぎ予算に署名、政府機関の閉鎖回避(ロイター)
1)バイデン大統領は12/3、2022年2/18までの連邦政府資金を手当てするつなぎ予算に署名した。
2)つなぎ予算は12/2に上院で可決され、大統領に送付されていた。
●4.サマーズ氏は12/3、FRBは信頼回復のため年4回の利上げ示唆(ブルームバーグ)
1)サマーズ元米財務長官は、(1)失業率が4.2%に急低下 (2)労働市場改善が力強い (3)インフレの高進の中、FRBはインフレ抑制政策で信頼回復するために年4回の利上げ示唆を行うべきだ、と述べた。
●5.ゴールドマン・サックス、来年の米経済成長見通しを変異株で3.8%に引下げ(ロイター)
1)米ゴールドマン・サックスは12/4、2022年の米経済成長見通しを従来の4.2%⇒3.8%に引下げた。
2)新型コロナの新たなオミクロン変異株の発生に伴なうリスクと不確実性が理由。
●6.イエレン財務長官、「米国の労働市場は逼迫している」と言及(フィスコ)
●7.米・11月雇用統計は前月比+21万人、予想+55万人を大幅下回る(NHK)
1)失業率は4.2%、前月から0.4%改善。
●8.米・先週分新規失業保険申請件数22.2万件、予想24.0を下回り改善(フィスコ)
1)前週は19.9万件だった。
●9.米・11月ISM非製造業景況指数69.1、予想65.0・10月66.7を上回る(フィスコ)
●10.米・10月製造業受注は前月比+1.0%、予想+0.5・9月+0.2%を上回る(フィスコ)
●11.国際通貨基金(IMF)は12/3、「FRBはインフレリスクを一段と注視すべき」(ロイターより抜粋)
1)「FRBが資産買入の縮小ペースを加速し、利上げ時期を前倒しすることは適切」とし、今週のパウエルFRB議長の発言に同調した。
2)インフレに関しては、エネルギー価格と食料品価格の上昇が、多くの国でインフレ高進を招いており、一部の国では2022年もインフレ高進が続く可能性が高いと分析。
●12.ヘッジファンドの株離れが進む、FRB議長発言や新変異株で市場動揺(ブルームバーグより抜粋)
1)パウエルFRB議長の11/30議会証言
・物価上昇の表現に「一過性」という言葉の使用を止める。
・インフレは根強いものになっている。
・一段と根強いインフレ高進を引き起こしている要素が存在する。
2)この発言を受け、投資家は想定より『利上げが早まる』との見通しを資産価格に織り込む動きが一気に広がった。
3)ヘッジファンドの株離れが進む
・バンク・オブ・アメリカ(BofA)のヘッジファンド(HF)に関するデータでも、HFのレバレッジ解消傾向が示された。
・一部のHF顧客は先週20億ドル(約2,250億円)を上回る株式を売却するなど、4月以来で最速のペースで株式市場から引き揚げている。
・そうしたリスク回避姿勢は、長期債利回りが急上昇時に、株式が売り込まれる傾向があり、赤字のテクノロジー株は総崩れとなった。アリババ株は12/3は111.96ドルと、12/2比▲10.04ドル安・▲8.23%下落。
・年末ラリーが想定されていたが、そこに疑念が生じるやいなや、多くのポジションで再調整が見られている、と分析した。
●13.中国電力の米免許を取消、米高裁が差し止め請求を棄却(ロイター)
1)ワシントン連邦高裁は11/2、米連邦通信委員会(FCC)による米事業免許取り止めを求めていた中国通信大手の中国電信(チャイナテレコム)の請求を棄却した。
2)FCCの決定は、来年1月初めに効力が生じる。
■II.中国株式市場
●1.上海総合指数の推移
1)12/02、上海総合▲3安、3,573(亜州リサーチより抜粋)
・新型コロナ感染拡大が不安視される流れとなった。
・欧州・アフリカ・中東などで感染が広がっている変異株「オミクロン」は、米国でも初めて感染者が確認された。渡航制限など各国が水際対策を強化する中、経済活動の縮小が懸念されている。
・もっとも、下値は限定的。中国経済の先行き楽観や、産業支援策の期待感などが相場を下支えした。
・業種別では、医薬品が安く、発電・ハイテク・非鉄・食品飲料などが売られた。反面、不動産は高く、銀行・エネルギー・自動車・海運・インフラ建設が買われた。
2)12/03、上海総合+33高、3,607(亜州リサーチより抜粋)
・中国景気の先行きを巡る過度な鈍化が薄らぐ流れとなった。
・中国の政府顧問は2022年の経済成長目標について、2021年目標「6%以上」を下回る「5.0~5.5%」に設定するように提言したが、市場では想定の範囲内と受け止められた。
・業種別では、港湾の上げが目立ち、発電も急伸、石炭・インフラ・不動産が高い。
●2.中国政府の顧問は、来年の経済成長率目標を5.0~5.5%に提言へ (フィスコ)
1)2021年の目標は6%以上だった。
●3.中国企業の米上場株が大幅安、滴滴出行のNY上場廃止方針を受け(ロイターより抜粋)
1)中国配車サービス大手の滴滴出行はNY証券取引所からの上場廃止手続きと香港上場準備に着手すると発表したことを受け、12/3は▲22.2%の大幅安となった。
2)中国規制当局による厳格な調査や、緊迫する米中関係を巡る懸念が高まった。
3)6月末に中国当局の意に反して、米国での上場を果たし44億ドル調達したが、わずか5カ月で上場廃止を迫られた。
4)12/3の中国株は、電子商取引のアリババは▲8.2%安、インタ―ネット検索の百度(バイドゥ)▲7.8%安、インターネットサービスの騰訊腔股(テンセント)▲12.9%。
●4.中国恒大集団は、債務返済を「履行できない可能性」と公表(テレ朝より抜粋、共同通信)
1)債務危機に陥っている中国の不動産大手・恒大集団は、今後の債務返済について「責任を履行できない可能性がある」と公告を出した。
2)これを受けて、本社がある広東省当局は経営の正常化に向けた作業チームを、中核子会社・恒大地産集団に派遣すると発表した。自力での再建が困難な見通しとなる中、地方当局が主導して問題の解決を進め、市場の混乱を早期に収拾したい考え。
●5.中国・佳兆業集団は社債の償還延長に同意得られず、デフォルトの恐れ(時事通信)
■III.日本株式市場
●1.日経平均の推移
1)12/02、日経平均▲182円安、27,753円(日経新聞より抜粋)
・10/7(27,678円)以来、およそ2カ月ぶりの安値となった。
・米国でオミクロン型の感染者が初めて確認され、米株式は大幅に下落した。この流れを受け、東京市場もリスク回避目的の売りが先行し、一時▲300円近く下げる場面があった。
・経済活動の再開が滞りかねないとの見方から、空運株や鉄道株、百貨店株などが下落した。
・もっとも、日経平均の下値は堅かった。株価水準が下がったため、割安感が出てきた主力銘柄の一角に押し目買いが入った。米株価指数先物の堅調な動きも、投資家心理を支えた。
・ソフトバンクG・TDK・エムスリーは下落し、ダイキン・海運株が上げた。
2)12/03、日経平均+276円高、28,029円(日経新聞)
・最近の▲1,700円超の急落相場の自律反発を見込んだ買い優勢となり、景気敏感株など幅広い銘柄に買いが入った。
・上昇銘柄数を下落銘柄数で割って算出する東証1部の騰落レシオ(25日移動平均)が12/2に底値の目安とされる70%を割り込むなど、「売られ過ぎ」を示すテクニカル指標も多かった。
・12/3昼前に、「米議会上院で新たなつなぎ予算案が可決した」と米メディアが報じ政府機関の一部閉鎖がひとまず回避された。午後には、「米製薬大手メルクの日本法人がコロナ治療薬候補の製造販売承認を厚生労働省に申請した」とも伝わり、日経平均は騰勢を強めた。
・商船三井、川崎汽が大幅高となり、反面、任天堂が売られた。
●2.日本株は米国株次第だが、日経平均は少数の銘柄で維持しており、個別では下落が目立つ
1)外資系先物の動向
・外資系先物の買残高枚数は減少し、売り圧力の源泉になっている。
12/01 12/03
94,042枚 89,644
2)信用買い残高は今年最大まで積み上がっており、戻り売り圧力に転換する恐れあり。
・対応 : 信用倍率が低く、売買出来高が良好で、来期業績が好調な銘柄に着目。
3)12/3、日経平均は+276円高となったが、外国人先物手口は▲4,591枚の売りが出たが、野村の+4,553枚の買いなど日本勢と一部海外勢が押し上げた格好。決して、強い上げ相場とは言い切れない。
4)NY外国為替12/3は、112円80~90銭と円高を示現(共同通信)
・新型コロナ変異種「オミクロン株」流行の懸念から、安全な資産とされる米国債が買われ米長期金利が低下した。
・これを受け、日米の金利差の縮小を意識した「ドル売り・円買い」が優勢となる。
5)今週12/10にメジャーSQ(先物特別清算)があり、週半ばは波乱があるか?注目したい。
6)日本株はいずれにせよ、米国株動向次第で方向性が見える。
7)個別株で見ると、11/19以降、株価に軟調を見せ始めた銘柄が多数あり、要注視。
・ 11/26 11/29 11/30 12/01 12/02 12/03
日経平均値動き ▲747円▲417 ▲462 +113 ▲182 +276
年初来高値数 12 6 14 3 6 9
年初来安値数 337 542 485 528 237 88
値上がり銘柄数 152 159 573 1,368 607 2,016
値下がり銘柄数 1,992 1,994 1,533 752 1,433 138
●3.米当局、エヌビディアの英アーム買収阻止へ提訴、独占禁止法違反で(毎日新聞)
1)米連邦取引委員会(FTC)は12/2、米半導体大手エヌビディアによる英半導体開発大手アームの買収計画について、独占禁止法(反トラスト法)に違反するとして差し止めを求めて提訴した。
2)英政府も独禁法違反で調査を進めており、買収計画の実現は極めて不透明になった。
3)アームは、ソフトバンクG傘下の会社で、エヌビディアと2020年9月に約400億ドル(約4.5兆円)で買収することで合意した。
●4.企業動向
1)損保J、川重 高齢者宅へロボットが薬など配達実証実験(朝日新聞)
2)7&I 過疎地でのドローン配送実証実験(HNK)
3)ロート製薬 三洋化成と資本提携、化粧品などを共同開発へ(朝日新聞)
4)日本ハム ソーセージ、冷凍食品など424品目を来年2月に値上げ(朝日新聞)
値上げ幅は5~12%
5)キューピー マヨネーズなど85種類を来年3月に2~10%値上げ(日テレ)今年7月も値上げしていた
■IV.注目銘柄(投資は自己責任でお願いします)
・4452 花王 業績堅調。ディフェンシブ銘柄として期待。
・6143 ソディック 業績好調。
・7012 川崎重工 黒字転換。水素・手術ロボット等に期待。
スポンサードリンク
関連キーワード
中島義之氏のコラム一覧
- 相場展望12月19日号 米国株: NYダウ、金利引下げ回数減とインフレ再加速懸念で、大幅安 日本株: 朝高・終値安の「陰線」が続く、年末のお化粧買いに期待
- 相場展望12月16日号 米国株: 心理的節目の大台乗せで、高値警戒・金利上昇・インフレに視点移る 日本株: 円安進行も、輸出関連株に追い風吹かず
- 相場展望12月12日号 米国株: FRBは「金利引下げに前のめり」、インフレ上昇には鈍い反応 日本株: 日米金利差が拡大し、円安が進行⇒日経平均には追い風 ボックス圏の高値にあり、海外投機筋に翻弄されない備えを
- 相場展望12月9日号 米国株: 今後の米国株を支える材料は「FRBによる利下げ」観測のみ 日本株: 今年の日経平均の上昇は事業会社の「自社株買い」が貢献大
- 相場展望12月5日号 米国株: 米景気堅調で最高値更新も、下院で共和党が僅差で勝利 年末商戦が苦戦か 日本株: トランプ・ラリーから取り残された日経平均
- 中島義之氏のコラムをもっと読む