相場展望10月2日号 米国株: インフレ再加速と金利高を懸念し、下落基調へ明確に転換 日本株: 堅調に推移も、外国人の強い先物売りもあり、波乱含みへ

2023年10月2日 08:50

印刷

■I.米国株式市場

●1.NYダウの推移

 1)9/28、NYダウ+116ドル高、33,666ドル(日経新聞より抜粋
  ・米長期金利が朝方にほぼ16年ぶりの高水準を付けた後、午後にかけて低下した。米原油先物相場も反落し、金利上昇と原油高への過度な警戒が和らいだ。NYダウは前日にほぼ4カ月ぶりの安値で終え、ハイテク株や景気敏感株などに値ごろ感からの買いが入った。
  ・米長期金利は朝方に4.68%と、2007年10月以来の水準に上昇した後、午後は前日終値4.61%を下回る4.5%台後半で推移する場面が目立った。
  ・米原油先物は9/27夜に1バレル95ドル台と昨年8月以来の水準を付けたが、9/28は91ドル台に下げて終えた。
  ・9月半ば以降に主要株価指数の下げが加速し、NYダウは9月に入って約▲1,170ドル下げていた。売られ過ぎとの見方もあり、四半期末や月末を控えて売り持ち高を手仕舞う動きが出た。上げ幅は一時+220ドル強に達した。
  ・米長期金利が上昇していた午前中には▲70ドル余り下げる場面もあった。朝方発表の週間の米新規失業保険申請件数が市場予想ほど増えなかった。労働市場の底堅さを背景に、米連邦準備理事会(FRB)の金融引締めが長引くとの見方が意識された。
  ・引けにかけて買いの勢いが鈍った。パウエルFRB議長が9/28夕のタウンホールミーティングに参加する予定で、発言を見極めたい投資家が多かった。
  ・個別株では、半導体のインテルや医療保険のユナイテッドヘルス、通信機器のシスコシステムズ、金融のJPモルガンチェースなどの上げが目立った。足元で下げがきつかったソフトウェアのマイクロソフトや顧客方法管理のセールスフォースなども上昇した。半導体のAMDの上昇も目立った。電気自動車のテスラも高かった。

【前回は】相場展望9月28日号 米国株: NYダウ「三尊天井」、上昇支持線34,400ドル割れで警戒 日本株: 9/27反発は「一時的」、「10月相場は荒れ展開」に注意

 2)9/29、NYダウ▲158ドル安、33,507ドル(日経新聞より抜粋
  ・朝方に発表された米連邦準備理事会(FRB)が重視する物価目標が市場の想定の範囲にとどまり、株買いが先行した。買い一巡後は米政府機関の一部閉鎖のリスクが意識された。高水準の米政府金利が長く維持されるとの見方も根強く、NYダウは下げに転じほぼ4カ月ぶりの安値となった。
  ・NYダウは月間では2カ月連続で下落し、下げ幅は▲1,214(▲3.49%)となった。下落幅は2月以来の大きさとなった。
  ・9/29朝発表の8月の米個人消費支出(PCE)物価指数は前月比で+0.4%上昇した。一方、食品とエネルギーを除くコア指数は+0.1%上昇と、ダウジョーンズ通信がまとめた市場予想+0.2%上昇を下回った。コア指数の前年同月比の上昇率は+3.9%と市場予想と一致し、7月+4.3%から伸びが鈍化した。「コアインフレは根強いながらも、+4%を下回ったことは朗報と受け止められた」という。NYダウの上げ幅は一時+200ドルを超えた。
  ・インフレの沈静化が進んでいるとの見方から、米債券市場では長期金利が一時4.50%に低下した。だが、債券買いの勢いは次第に鈍くなり、米長期金利は前日終値4.57%をやや上回る場面もあった。金利の高止まりは、株式の相対的な割高感につながった。
  ・米連邦議会下院は9/29、共和党幹部が提案したつなぎ予算を可決できなかったと伝わった。新しい会計年度が始まる10/1が迫っており、政府機関の一部閉鎖が避けられないとの見方が強まった。市場では「政府機関の閉鎖は投資家心理の悪化につながる」との声が聞かれた。
  ・FRBの金融引締めが長期化するとの見方も根強かった。ニューヨーク連銀のウィリーアムズ総裁は9/29に公開した講演草稿で、インフレは「まだ高すぎる」と指摘し、「抑制的なスタンスの金融政策を当面は維持しなければならないだろう」との考えを示した。このところFRB高官の金融引締めに前向きなタカ派的な発言が目立っている。
  ・月末と四半期末が重なり、機関投資家のリバランス(資産配分の調整)に伴う売りが相場の重荷になったとの見方もあった。
  ・個別株では、銀行のJPモルガンチェースや医療保険のユナイテッドヘルスなどディフェンシブ株も売られた。ネット検索のアルファベットや交流サイトのメタが下げ、主力株はまちまちで、ナスダック指数は月間で▲5.81%下げ、下落率は昨年12月来の大きさとなった。半面、前日夕に発表した2023年6~8月期決算で1株利益が市場予想を上回ったスポーツ用品のナイキは+7%弱高となった。ソフトウェアのマイクロソフトとスマートフォンのアップルも上昇した。画像処理半導体のエヌビディアやネット通販のアマゾン、電気自動車のテスラが買われた。

●2.米国株:インフレ再上昇と金利高を懸念し、上昇基調から下落基調に反転した

 1)まちまちな9/29の米国株3指数と半導体株指数
  ・原油高でインフレ懸念 NYダウ    ▲158ドル安  ▲0.47%安
              SP500     ▲ 11安    ▲0.27%安
  ・金利上昇の一服を好感 ナスダック総合 +18安    +0.14%高
              半導体株指数  +13高    +0.39%高

 2)米FRBの金融引締め長期化への根強い警戒

 3)米主要3指数と半導体株指数は四半期で見るとすべてが今年初の下げとなった
  ・主要株価指数   6/30   9/30   下げ幅   下落率
   NYダウ     34,407  33,507   ▲900   ▲2.6%
   SP500       4,450    4,288   ▲162    ▲3.6%
   ナスダック総合  13,787  13,219   ▲568    ▲4.1%
   半導体株指数   3,673   3,434   ▲239    ▲6.5%

 4)NYダウ、3/13~9/29の推移
  ・NYダウは、3/13の31,819ドルを起点として+3,811上昇し、8/1に高値35,630を付けた。その後、反落しチャートで三尊天井を形成し、下落を速めた。3/13からの上昇支持線34,400ドルを9/21に割込み、9/29に▲2,123安の33,507を付けた。今回の上昇幅に対して▲55.7%下落した。

 5)NYダウ株の当面の「底」は、3/13の31,819ドルか5/25の32,674ドルを意識か
  ・底をチャートの節目の3/13とすると、あと▲1,688ドル安・▲5.0%安が必要。または、5/25を底とすると、あと▲833ドル安・▲2.4%安が目途となる。

 6)今後の懸念材料
  ・金利高
  ・インフレ再加速
  ・WTI原油価格の推移: 6/12 67.12ドル ⇒9/27 93.73  +39.6%上昇
  ・原油価格が100ドルに上昇するという予想がある。
  ・米景気低迷
  ・通貨供給量の減少(米FRBと財務省による市場から資金の吸い上げ)

 7)運用資金が、株式⇒債券市場へシフトする可能性

●3.米議会上下院、つなぎ予算45日分を可決、政府機関閉鎖を回避(BBCより抜粋

 1)45日ごとに、共和党と民主党との闘いは繰り返すおそれあり。

 2)ウクライナ支援は含まれず、ウクライナ戦争継続が懸念される。

●4.米4~6月期GDP個人消費・確定値は+0.8%と、予想+1.7%を大きく下回る(DZH)

 1)米長期金利が急速に上昇幅を縮目、NYダウはプラスに転換した。

 2)個人消費の伸びがほぼ半分に下方修正、サービス支出鈍化が主に反映(ブルームバーグ)

●5.米8月中古住宅販売成約指数は前月比▲7.1%と、予想▲1.0%を下回る(フィスコ)

 1)下落率は昨年9月来で最大となった。

●6.米10年債利回りは4.63%と、2007年以来で最高水準(フィスコ)

●7.米4~6月期GDP確定値は前年比+2.1%、予想+2.2%を下回る(フィスコ)

 1)力強い成長ペースを継続した。(ロイター)

●8.米先週分新規失業保険申請件数は20.4万件、予想21.5万件を下回った(フィスコ)

●9.米運用会社ブラックロックのフィンクCEO、米10年債利回り5%へ(ブルームバーグより抜粋

 1)インフレは深く根深く、ここ2年間は継続。

 2)米銀大手JPモルガンチェースのCEO 、最悪のシナリオでは米政策金利は7%にまで達する可能性があると指摘。

■II.中国株式市場

●1.上海総合指数の推移

 1)9/28、上海総合+3高、3,110(亜州リサーチより抜粋
  ・中国の景気支援スタンスが相場を支える流れだった。
  ・中国人民銀行(中央銀行)は9/27、景気回復を支援するため金融政策を強化すると表明した。一部のアナリストによれば、人民銀行は10~12月期に融資を拡大する可能性があるという。もっとも、上値は限定的。
  ・指標発表や大型連休を前に積極的な売買も手控えられている。中国では9/29に9月の財新中国製造業PMI(民間集計)・財新中国サービス業PMI、9/30に9月の製造業PMI(国家統計局)・非製造業PMIが報告される予定。
  ・また、中国本土は明日9/29から、中秋節・国慶節の大型連休(10/6まで、香港は10/2休場)に入る。
  ・業種別では、ハイテク関連の上げが目立ち、不動産も物色された。自動車もしっかり。インフラ関連・エネルギー・銀行・公益・運輸なども買われた。半面、酒造・食品は冴えず。中国では例年、中秋節と国慶節の期間に白酒が過去2年に比べ、数十~数百人民元の幅で値下がりしている状況だ。医薬・メディア・娯楽・保険・証券も売られた。

 2)9/29、祝日のため休業

●2.中国国慶節の大型連休、今年の旅行は国内が主流で消費底上げ、1人当たり支出低下(ロイター)

●3.中国、ロシアと2004年画定のアムール川ウスリー島の国境線を無視、ロシア側は静観(Newsweek)

 1)ロシアはアムール川(黒竜江)の中洲のウスリー島西側を中国に引き渡すことを決め、係争が続いてきた土地を2分割して国境線を画定することで、プーチン大統領と胡錦濤・国家主席が合意した。

 2)しかし、今年8月、中国自然資源省が公表した地図で、大ウスリー島の全域が中国の国境線の内側に記していた。中国のアプリ「百度地図」でも同島の全域が中国領としている。

●4.中国恒大、人民元建て810億円も支払えず、険しさ増す再建への道のり(朝日新聞)

 1)中国恒大の許会長の当局による拘束を認める。(時事通信)

 2)香港株式市場で中国恒大の株式取引を9/28に停止、理由は明らかにせず。(朝日新聞)

■III.日本株式市場

●1.日経平均の推移

 1)9/28、日経平均▲499円安、31,872円(日経新聞より抜粋
  ・9月期末配当の権利落ちの影響が相場を下押しし、終値で32,000円を下回るのは8/25以来、およそ1カ月ぶり。日米の長期金利が上昇する中、値がさのハイテク株を中心に幅広い銘柄に売りが出て、下げ幅は一時▲600円を超えた。
  ・日経平均採用銘柄の配当の権利落ちの影響は、QUICKの試算で日経平均を▲224円程度下押ししたと見られる。前日の米株式市場で米NYダウが下落し、東京市場でも朝方から売り優勢だった。
  ・原油先物相場の上昇を受け、燃料費が上昇し収益の重荷になるとの見方から空運株や陸運株の下げが目立った。
  ・日経平均は前引け前に急速に下げ幅を拡大した。四半期の決算期末に向けて機関投資家などによるリバランス(資産配分の再調整)売りが出やすかったとの指摘があった。
  ・米国で9月末までに連邦政府の予算が成立せず、10月から米政府の一部機関が閉鎖するリスクへの懸念が投資家心理の重荷になったとの見方もあった。
  ・個別株では、ファストリ・ソフトバンクG・東エレクが下落した。リクルートやアステラスも売られた。半面、中外薬・第一三共・JTが上昇した。

 2)9/29、日経平均▲14円安、31,857円(日経新聞より抜粋
  ・機関投資家による四半期末に伴うリバランス(資産配分の調整)の売りや、米政府機関の閉鎖を懸念した売りが優勢だった。大引けにかけては日経平均構成銘柄の入れ替えに伴う売りも重荷となった。ただ、前日の米株高が支えとなり、日経平均は上昇する場面もあった。
  ・今日の東京市場ではバリュー(割安)株への売りが目立った。足元で上昇基調が目立ったバリュー株にはリバランスの売りが出やすく、国内株式相場の重荷になったとの見方があった。日経平均の銘柄入れ替えに伴う資産配分調整を背景に需給悪化も意識された。
  ・米国では月内に連邦政府の予算案が成立せず、10月から政府の一部機関が閉鎖するリスクが意識された。週明け以降の不透明感が強い中、市場では「週末を控えて買いに動ける局面ではなかった」との声が聞かれた。
  ・日経平均は上げる場面もあった。前日の米株式市場でハイテク株を中心に上昇した流れを受け、東京市場では指数寄与度の大きい東エレクやアドテストへの買いが目立った。9/29の香港株式市場でハイテク株などが大幅高となったことも相場全体を下支えした。
  ・個別銘柄では、デンソー・ホンダが下落。伊藤忠・コマツの下げも大きかった。

●2.日本株:堅調に推移したが、外人の強い先物売り継続もあり、波乱含みへ

 1)9/29日経平均は▲14円安と横ばいながら、まちまちの内容となり波乱含み示唆か
  ・株価指数の動向
  ・日経平均    ▲0.05%安
  ・JPX日経400   ▲0.92%安
  ・TOPIX     ▲0.94%安
  ・マザーズ    +0.60%高

 2)外国人投資家は株式先物の売り圧力を強め&継続
  ・米国株安を受け、海外投資家は東京市場で売り攻勢。
  ・海外投資家の株式先物の売り状況。(投資の森)
  ・ 9/19  9/20  9/21  9/24  9/25  9/26  9/27  9/28   9/29
   ▲708枚売▲6,479▲8,296▲6,390▲2,741▲10,220▲15,090▲24,287▲10,888

 3)日経平均は、買い攻勢が弱まるも、相場全体は依然として堅調を維持
  ・買いの勢いが低下 9/19  9/20  ⇒  9/28  9/29  
    ・新高値銘柄数  286   265      21   46 高値追いが弱まる
    ・新安値銘柄数  21   28      32   21 売り圧力見られず

 4)日経平均のチャートは、今後の「崩れ」を予感させる形に
  ・7/03 33,753円
   8/01 33,476円
   9/15 33,533円を天井にして、7/03を超えられずに、
      9/29 31,857円と下落基調に転じた。

 5)円安は、輸出企業の業績向上の追い風⇒物価高・コスト高に見方が転換する懸念

●3.長期金利一時0.750%(9/28)、10年ぶりの水準(時事通信)

■IV.注目銘柄(投資は自己責任でお願いします)

 ・4552 JCRファーマ   業績回復
 ・7267 ホンダ     株式分割効果を期待
 ・9022 JR東海     株式分割効果を期待
 ・9468 KADOKAWA   業績回復期待

著者プロフィール

中島義之

中島義之(なかしま よしゆき) 

1970年に積水化学工業(株)入社、メーカーの企画・管理(財務含む)を32年間経験後、企業再生ビジネスに携わる。 現在、アイマックスパートナーズ(株)代表。 メーカーサイドから見た金融と企業経営を視点に、株式含む金融市場のコメントを2017年から発信。 発信内容は、オープン情報(ニュース、雑誌、証券リポート等々)を分析・組み合わせした上で、実現の可能性を予測・展望しながらコメントを作成。http://note.com/soubatennbou

記事の先頭に戻る

関連キーワード

関連記事