相場展望9月14日号 米国株: 米国は「3重苦」で米経済悪化懸念 日本株: 9月相場は、9/27まで堅調と予想

2023年9月14日 14:41

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■I.米国株式市場

●1.NYダウの推移

 1)9/11、NYダウ+87ドル高、34,663ドル(日経新聞より抜粋
  ・米連邦準備理事会(FRB)の追加利上げの警戒感が和らいだのが買いを誘った。大手ハイテク銘柄の一部が大幅に上昇したことも投資家心理の支えになった。
  ・FRBウオッチャーで知られる米紙ウオールストリートジャーナル(WSJ)のニック・ティミラオス記者が9/10付けの記事で、FRBが利上げに慎重になりつつあるとの見解を示した。同氏は「FRB高官の金融政策に対する姿勢で重要な転換が進みつつある」と題した記事で、一部高官が過度の金融引締めが経済や金融の混乱を引き起こすことを懸念していると指摘した。
  ・景気敏感株の一角が買われ、工業製品・事務用品のスリーエムと機械のハネウェルが上昇し、映画・娯楽のディズニーも買われた。ケーブルテレビ大手に対する配信契約を更新することで合意したと発表し、好感した買いが入った。電気自動車のテスラは+10%強上昇した。モルガンスタンレーが投資判断を引上げたことが材料視された。買いは他のハイテク株にも及び、ソフトウェアのマイクロソフトとスマホのアップルの上げが目立った。交流サイトのメタは高性能のAI(人工知能)を開発していると伝わり、+3%強上昇した。アップルと通信半導体を2026年まで供給する契約を結んだと発表したクアルコムは大幅高だった。
  ・もっとも、NYダウの上値は重く、上げ幅が前週末の終値近辺まで縮小する場面があった。9/13に8月の米消費者物価指数(CPI)の発表を控えて様子見の投資家が多く、一部銘柄には売りも出た。ドラッグストアのウォルグリーンズや石油のシェブロン、スポーツ用品のナイキが下げた。

【前回は】相場展望9月11日号 米国株: 上昇支持線に支えられているが、ダウ34,400ドルが分かれ目 中国株: デフレ懸念  日本株: 円安進展でインフレ上昇⇒実質賃金マイナス⇒景気後退懸念

 2)9/12、NYダウ▲17ドル安、34,645ドル(日経新聞より抜粋
  ・原油先物相場の上昇を受け、インフレ懸念が強まった。金利上昇への警戒からハイテク株を中心に売りが広がった。
  ・米原油先物相場は9/12、89ドル/1バレル台前半とおよそ10カ月ぶりの高値を付けた。インフレ圧力が高まれば、長期金利の先高観につながるとして、株式相場の重荷となった。原油高が企業収益を悪化させるとの見方につながった面もある。
  ・IT(情報技術)のオラクルが大幅安となった。前日夕に示した2023年9~11月期の業績見通しが市場予想に届かなかった。他のハイテク株に売りが及び、NYダウの下げ幅は一時▲100ドル余りに達した。ソフトウェアのマイクロソフトと顧客情報管理のセールスフォースが下落した。スマホのアップルも安かった。中国での販売落ち込みへの警戒が一段と高まるなかで、取引時間中に新製品の発表会が始まると下げ幅を広げる場面があった。市場では「製品の買い替えを促すような目新しい話題はなかった」との受け止めがあった。電気自動車のテスラやネット検索のアルファベットが売られた。
  ・半面、金融株や一部のディフェンシブ株が買われ、NYダウは一時+190ドル近く上げる場面があった。金融各社のトップらが投資家向けイベントで先行きに前向きな発言をしたことで、買いが入りやすかった。金融のJPモルガンチェースとゴールドマンサックスが上昇した。原油高で石油のシェブロンも高かった。

 3)9/13、NYダウ▲70ドル安、34,575ドル(日経新聞より抜粋
  ・朝方発表の8月の米消費者物価指数(CPI)は強弱両面の材料があったものの、インフレの沈静化にはなお時間がかかるとの受け止めが次第に広がり、株式相場の重荷となった。景気敏感株を中心に売りが出たことも指数を押し下げた。
  ・8月のCPIは総合が前年同月比+3.7%上昇し、ダウジョーンズ通信がまとめた市場予想+3.6%を上回った。一方、食品とエネルギーを除くコアの上昇率は前年同期比+4.3%と7月+4.7%から減速し、市場予想と一致した。市場では「インフレ鈍化に時間がかかっていることが改めて示された」との声があった。
  ・工業製品・事務用品のスリーエムが▲6%弱下落し、NYダウを▲40ドル押し下げた。経営陣が2024年の成長ペースが鈍化するとの見方を示し、売りが膨らんだ。売りは他の景気敏感株に波及し、航空機のボーイングや化学のダウが下げた。
  ・NYダウは高く推移する場面があった。コアの物価上昇率が減速しており、インフレ鈍化の流れが続いているとの見方から、米連邦準備理事会(FRB)による金融引締めへの過度な警戒が薄れた。米債券市場で長期金利が下がったことも、一部のハイテク株の買い安心感につながった面がある。電気自動車のテスラが買われた。欧州委員会が中国製EVの調査を開始する予定だと伝わり、ドイツに生産拠点を構えるテスラには追い風との見方があった。ソフトウェアのマイクロソフトやクレジットカードのビザなども買われた。半面、バイオ製薬のアムジェンや通信のベライゾン、医療保険のユナイテッドヘルスが安かった。
 

●2.米国株:「米国は3重苦」で景気悪化の懸念

 1)米国株の景気悪化要因  「米国は3重苦」
  (1)WTI原油価格の高騰が「インフレ加速」を促す。
   ・消費者物価指数は、7月+3.2%⇒8月+3.7%に加速。
   ・米連邦準備理事会(FRB)の物価目標は+2%で、目標とはまだ乖離。

  (2)米長期金利の上昇が「企業業績悪化」につながる。
   ・10年物利回りは、8/1 4.023%⇒9/11 4.288%⇒9/13 4.253%。
   ・2年物利回りは、9/12に5.02%と5%台に乗せる。
   ・米FRBの量的縮小が続き、米財務省のTB発行で資金が吸収されるため、FRBの金利引上げ停止でも金利は上昇する。
   ・10年物金利の上昇は、米株価、特にハイテク株の割高感を意識させる。

  (3)学生ローンの返済再開が「消費支出を減らす」。
   ・米国内総生産(GDP)では消費支出が7割を占める。

●3.米8月消費者物価指数は前年比+3.7%と、予想+3.6%・7月+3.2%を上回った(フィスコ)

●4.米経済は軟着陸でも、米経済の先行きは不透明=ゴールドマンCEO(ロイターより抜粋

 1)米国経済は大幅な景気後退を回避する可能性が高いとしながらも、インフレは市場参加者の予想以上に持続する可能性が高いと警告した。

 2)米連邦準備理事会(FRB)の利上げについては、さらなる措置が必要になるかもしれないと表明。インフレはもう少し頑迷なものになると思っている。まだやるべきことがある。

●5.アップルがiPhone15発表、充電端子がUSB-Cに(ITmedia Mobile)

■II.中国株式市場

●1.上海総合指数の推移

 1)9/11、上海総合+26高、3,142(亜州リサーチより抜粋
  ・人民元安の警戒感後退で投資家心理が上向く流れとなった。
  ・中国人民銀行(中央銀行)は9/11の声明で、「金融当局は人民元相場の安定に自信を持っている」とした上で、投機的な動きをけん制した。9/11の外国為替市場では、対米ドルの人民元が大幅な元高に転じて推移している。
  ・新規融資の伸びもポジティブ。人民銀行が取引時間中に報告した8月の金融統計では、人民元建ての新規融資が予想以上に前月から拡大した。
  ・過度なデフレ懸念も後退。9/9に公表された8月の物価統計では、消費者物価指数(CPI)が前年同期比+0.1%上昇し、3カ月ぶりにプラスを回復した。生産者物価指数(PPI)はマイナス率が▲3.0%にとどまり、前月実績マイナス▲4.4%から下落率が鈍化している。
  ・業種別では、医薬の上げが目立ち、消費関連もしっかり、ハイテクも物色され、エネルギー・素材・インフラ関連・不動産・金融・運輸などが買われた。

 2)9/12、上海総合▲5安、3,137(亜州リサーチより抜粋
  ・国内発の新規買い材料の乏しいなか、投資家の慎重スタンスが強まる流れ。
  ・景気懸念が持続しているほか、米中関係の悪化も懸念されている。
  ・また、中国では今週9/15に、8月の各種経済統計(小売売上高や鉱工業生産)、9月の中期貸出ファシリティ(MLF)金利などが公表される予定。内容を見極めたいとするスタンスも買い手控え要因となった。もっとも、下値は限界的。
  ・人民元安の警戒感が薄れていることなどを手掛かりに、指数はプラス圏で推移する場面もみられた。
  ・業種別では、保険・証券の下げが目立ち、ハイテクも安く、エネルギー・酒造
  ・素材なども売られた。半面、自動車はしっかり。今年8月新車販売台数は258.2万台に達し、前年同月比で+8.4%増、前月比で+8.2%増となっている。業界団体の中国汽車工業協会は「8月の販売増は相対外」と指摘。足元の状況からみて、向こう数か月の販売台数も前年同期を上回る可能性が高いとの見解を示した。空運・医薬品・公益なども買われた。

 3)9/13、上海総合▲13安、3,123(亜州リサーチより抜粋
  ・投資家の慎重スタンスが継続する流れとなった。
  ・中国の景気鈍化や、米中関係の悪化が依然として不安視されている。
  ・指標発表を前に買い手控えムードも漂う。
  ・中国では今週9/15、8月の各種経済統計(小売売上高や鉱工業生産)、9月の中期貸出ファシリティ(MLF)金利などが公表される予定だ。ただ、指数はプラス圏で推移する場面もみられた。
  ・人民元相場の元高傾向や、中国当局の景気支援スタンスがプラス材料だ。
  ・業種別では、ハイテク関連の下げが目立ち、医薬も冴えず、消費関連・素材・不動産・インフラ関連・保険・証券なども売られた。半面、石油・石炭のエネルギーはしっかり、公益・銀行も買われた。

●2.中国不安で米国株投資が改善、中国の不動産市場は次の世界的信用不安の第1要因

 1)投資家は、中国経済を押し上げるような景気刺激策の可能性に懐疑的(みんかぶ)

●3.株式配分に「劇的な変化」、中国を悲観し米株にシフト=BofA調査(ブルームバーグより抜粋

 1)投資対象としての中国株の適正について疑問が高まっている。

 2)資金が中国など新興国市場から流出し、米国に流れ込んでいる。ファンドマネジャーの間では、「中国回避」の傾向が強くみられた。

●4.中国外務省報道官「中国崩壊論を真っ向から否定」「中国は活力満ちている」(共同通信)

 1)海外で中国経済への不安が高まっていると、中国メディアでも報じられている。

●5.米大手上場企業は、中国リスクを開示すべき=前SEC委員長(ロイター)

■III.日本株式市場

●1.日経平均の推移

 1)9/11、日経平均▲139円安、32,467円(日経新聞より抜粋
  ・日銀の政策修正への思惑から国内長期金利が上昇し、値がさの半導体関連などに売りが出た。外国為替市場で円高・ドル安が進んだことも相場全体の重荷となった。
  ・9/11の国内債券市場では長期金利の指標となる新発10年物国債の利回りが0.7%台と、2014 年1月以来の高水準を付けた。日銀の植田総裁がマイナス金利解除のタイミングなどに言及したとの一部報道を受け、日銀が金融緩和策の修正に向けて動き始めるとの思惑が広がった。
  ・金利上昇が逆風になりやすいグロース(成長)株への売り圧力が強まり、相場全体を下押しした。金利上昇が事業環境にマイナスとの見方から不動産株が安くなった。
  ・日経平均は前週末の米株高を引き継いだ買いで高く始まったものの、ほどなく下げに転じた。後場には下げ幅が▲200円超に拡大する場面もあった。
  ・金利上昇による収益改善期待から銀行株は軒並み上昇し、三菱UFJ・三井住友FG・みずほFGは年初来高値を更新した。
  ・個別株では、ルネサス・リクルートが下落した。半面、ソフトバンクG・第一生命・関西電力が買われた。

 2)9/12、日経平均+308円高、32,776円(日経新聞より抜粋
  ・米追加利上げへの警戒感が和らぎ、前日の米株式市場で主要株価指数が上昇。東京市場でも運用リスクを取る動きが優勢だった。外国為替市場で円相場が146円台後半まで下落し、前日比で円安・ドル高に振れたのも輸出株を中心に相場の支えとなった。
  ・9/12午前の国内債券市場で長期金利の指標となる新発10年物国債利回りが一時0.720%と9年8カ月ぶりの水準に上昇した。金利が上昇すると相対的な割高感が意識されやすいグロース(成長)株には逆風で、日経平均は上げ幅を縮小する場面があった。その後、長期金利の上昇が一服すると日経平均は再び強含み、この日の最高値で引けた。
  ・市場では「円安基調が続くなか、2023年4~9月期の企業決算発表で通期見通しの上方修正が増えるとの期待から、海外勢が先回りして買いを入れているようだ」との声が聞かれた。海外勢は引き続き低PER(株価純資産倍率)企業の改革に対する関心を持っていることも日本株への資金流入につながっているとの見方もあった。
  ・個別株では、ファストリ・ソフトバンクGが高い。東エレク・信越化・NTTデータも上昇した。トヨタ・ホンダ・SUBARUなど自動車株も買われた。一方、アドテストが安く、IHI・三菱重・川重など重工株の下げがきつかった。伊藤忠・三菱商・三井物産も売られた。

 3)9/13、日経平均▲69円安、32,706円(日経新聞より抜粋
  ・前日の米ハイテク株安を受けた投資家心理の悪化に伴う売りが、国内の半導体関連などに膨らんだ。
  ・8月の米消費者物価指数(CPI)の発表を控えた持ち高調整の売りも重荷となる。半面、外国為替市場での円安基調が相場全体を下支えし、日経平均は上昇する場面もあった。
  ・前日の米株式市場で金利上昇への警戒感から主要ハイテク株が売られた流れを受け、東京市場ではアドテスト・東エレク・信越化などに売りが出た。日本時間今夜に8月の米CPIの発表を控えて「市場予想から上振れするとの懸念もあり、グロース(成長)株を中心に持ち高調整の売りが出たようだ」との見方があった。
  ・日経平均の下値は堅く、上昇する場面もあった。9/13の東京外国為替市場で円の対ドル相場は一時147円台半ばまで下落し、輸出採算改善を期待した買いがトヨタなど自動車株に入った。個人投資家を中心に9月末の中間配当の権利取りを狙った買いがバリュー(割安)株に入ったとの声も聞かれた。
  ・個別株では、ソフトバンクG・リクルートが売られた。ネクソン・第一三共の下げも大きかった。一方、三菱UFJなどメガバンク株が上昇し、KDDI・ファストリも買われた。

●2.日本株:9月株式相場は、9/27まで堅調と予想

 1)9月相場は、9/27まで堅調と予想した要因
  ・9/27までは、配当などの権利取りの買い優勢。
  ・日米の金利差拡大で円安進行が続き、輸出関連株を中心に買いに勢い。
  ・配当の再投資期待で堅調な動き。

●3.英アームが上場へ、時価総額約8兆円、ソフトバンクG傘下(共同通信)

●4.SUMCO、市況低迷で2023年12月期の営業利益が▲3割以上の減益も(日経新聞)

■IV.注目銘柄(投資は自己責任でお願いします)

 ・6095 メドピア    業績順調。
 ・6768 タムラ製    業績横ばい。

著者プロフィール

中島義之

中島義之(なかしま よしゆき) 

1970年に積水化学工業(株)入社、メーカーの企画・管理(財務含む)を32年間経験後、企業再生ビジネスに携わる。 現在、アイマックスパートナーズ(株)代表。 メーカーサイドから見た金融と企業経営を視点に、株式含む金融市場のコメントを2017年から発信。 発信内容は、オープン情報(ニュース、雑誌、証券リポート等々)を分析・組み合わせした上で、実現の可能性を予測・展望しながらコメントを作成。http://note.com/soubatennbou

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