相場展望7月24日 日本:日本株上昇の牽引役・海外投資家の「買いが止まる」

2023年7月24日 13:21

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■I.米国株式市場

●1.NYダウの推移

 1)7/20、NYダウ+163ドル、35,225ドル(日経新聞より抜粋
  ・市場予想を上回る四半期決算を発表した銘柄を中心に買いが入り、NYダウを押し上げ、2022年3月以来の高値を更新。9日連続は2017年9月以来の長さ。
  ・医薬・日用品のJ&Jは+6%高で終えた。7/20に発表した4~6月期決算が市場予想を上回ったうえ、12月期通期の業績見通しを引き上げた。IT(情報技術)のIBMは+2%上昇した。7/19夕に発表した4~6月期決算で1株利益が市場予想以上だった。前日の決算発表とあわせて経営陣が事業環境に改善の兆しがあるとの見方を示した金融のゴールドマンサックスは+3%高となった。7/20に決算を発表した保険のトラベラーズも高い。
  ・前週発表の米物価指数が軒並み市場予想を下回ったことを受け、米国は景気後退を避けながらインフレが落ち着く方向にあるとの楽観も、引続き市場心理を支えた。これまで今年の相場を牽引してきた主力ハイテク株と比べ、出遅れ感があった銘柄に買いが入りやすくなっている。航空機のボーイングや機械のハネウェルや飲料のコカ・コーラなどディフェンシブ株も堅かった。
  ・一方、主力ハイテク株には売りが広がった。前日夕に発表した決算で売上高が市場予想に届かなかった動画配信のネットフリックスが▲8%安となった。電気自動車のテスラは前日夕に市場予想を上回る増収増益を発表したが、利益率の低下が嫌気され、▲10%ほど下げた。これまで上昇が目立っていた主力株には「期待値に届かない決算を発表すれば利益確定売りが出やすい」との見方があった。他のハイテク株に売りが波及し、ソフトウェアのマイクロソフトやスマホのアップルが下げた。ネット通販のアマゾンやネット検索のアルファベットなど半導体株も下げが目立った。半導体受託生産の台湾積体電路製造(TSMC)が7/20に決算発表とあわせて示した2023年12月期の売上高見通しを引下げ、半導体関連銘柄の重荷となった。

【前回は】相場展望7月20日 米国: 決算発表シーズン・インで株価には追い風 日本: 米国株を上回る買い優勢だったが、調整傾向

 2)7/21、NYダウ+2ドル高、35,227ドル(日経新聞より抜粋
  ・新たな材料が乏しいなか、米経済の先行きへの楽観が相場を支え、10日続伸。一方、前日まで上昇が続いた後だけに、主力銘柄に持ち高調整の売りが出やすかった。
  ・来週には米連邦準備理事会(FRB)を控える。市場では、+0.25%の利上げを決め、今の利上げサイクルでは最後になるとの見方が優勢となている。TD証券やモルガンスタンレーなどのエコノミストの間でも、7月会合の利上げでピークを向かえるとの予想が多い。米経済が底堅いなかで、景気後退を回避できれば企業業績が悪化するリスクが下がり、相場上昇の材料となる。
  ・製薬のメルクや飲料のコカ・コーラ、通信のベライゾンといったディフェンシブ株が買われ、指数を支えた。映画・娯楽のディズニーも高かった。傘下のスポーツ専門放送局「ESPN」を巡り、米プロバスケットボール協会(NBA)や米プロフットボールリーグ(NFL)などと提携協議があったとの報道が好感された。
  ・一方、主力ハイテク株は下げが目立った。動画配信のネットフレックッスや電気自動車のテスラは、前日に続き決算内容を嫌気した売りに押された。「他のハイテク企業決算でも業績が下振れするとの警戒もある」との見方があったほか、7/24に実施されるナスダック100株価指数の構成比見直しをにらんだ売りが出た。NYダウでは、スマホのアップルとソフトウェアのマイクロソフトが下落した。金融のJPモルガンチェースや航空機のボーイングが下げた。朝方発表の決算で売上高が市場予想に届かなかったクレジットカードのアメリカンエキスプレスも安かった。交流サイトのメタや半導体のエヌビディアも下げた。
  ・米取引所のナスダックは7/24から、時価総額加重平均型のナスダック100株価指数の「スペシャルリバランス」を実施する。特定銘柄の比率が高くなっていたことに対応する狙いがある。米報道では、「マグニフィセント・セブン(壮大な7銘柄)」と呼ばれる大型ハイテク株の構成比が現在56%弱から44%程度に下がる。

●2.米6月景気先行指数は前月比▲0.7%減と、予想▲0.6%を下回る(フィスコ)

●3.米6月中古住宅販売件数は年率換算で416万戸と、予想421万戸を下回る(フィスコ)

●4.米失業保険申請件数は22.8万件、前週比▲0.9万件減少(ロイター)

 1)予想24.2万件と比べ、予想以上に減少したことで、労働市場が力強さを維持していることが示された。

●5.ウクライナが対抗で警告、ロシアの黒海沿岸港に向かう船舶は攻撃対象(ブルームバーグ)

 1)ロシアにとって黒海は、農産物と原油・石油製品の輸出に活用されている。

■II.中国株式市場

●1.上海総合指数の推移

 1)7/20、上海総合▲29安、3,169(亜州リサーチより抜粋
  ・投資家の慎重スタンスが再び強まる流れとなり、6/23以来、約3週ぶり安値。
  ・足元で公表された経済指標は中国景気の持ち直し鈍化を示す内容が多く、景気先行きが不安視されている。また、早ければ来週にも開催される中央政治局会議の結果を見極めたいとするスタンスも漂った。
  ・中国経済対策の期待感や、人民元安の一服などを手掛かりに指数は続伸で推移したものの、上値は重く、中盤からマイナスに転じた。
  ・業種別では、ハイテクの下げが目立ち、石油関連も冴えない、消費関連・インフラ関連・素材・金融・医薬品も売られた。半面、不動産はしっかり。

 2)7/21、上海総合▲1安、3,167(亜州リサーチより抜粋
  ・前日の軟弱な地合いを継ぐ流れとなった。
  ・中国景気の持ち直し遅れへの警戒感が引続き、投資家心理の重しとなった。足元では関係部門が景気支援策を相次ぎ発表しているものの、「経済活動の押し上げには力不足」との声も一部から聞かれた。早ければ来週にも開催される中央政治局会議で、下半期の政策方針が決定される見通し。財政・金融政策を見極めたいとするスタンスが強まっている。
  ・もっとも、下値は限定的。人民元安の進行の警戒感が薄れるなか、指数はプラス圏で推移する場面もみられた。
  ・中央銀行の中国人民銀行は7/21、人民元レートの対米ドル基準値を前日に引続き元高方向へと設定した。外国為替市場では、人民元高・米ドル安が進んでいる。中国の金融当局は、過度な「元安」を容認しないとの見方が続いた。
  ・業種別では、ハイテクの下げが目立ち、ゼネコンや鉄道整備などインフラ関連も冴えない、公益・自動車・エネルギー・軍事関連・銀行保険も売られた。半面、酒造・食品はしっかり、不動産・医薬品・空運も買われた。

■III.日本株式市場

●1.日経平均の推移

 1)7/20、日経平均▲405円安、32,490円(日経新聞より抜粋
  ・前日の米株式市場でハイテク株の一角が売られた流れを受け、東京市場では指数寄与度の高い半導体関連株が大きく下げて指数を下押しした。日経平均は前日に▲400円ほど上げて節目の33,000円に接近しており、今日は決算発表シーズン前の様子見ムードもあって持ち高調整の売りが優勢だった。
  ・7/19の米株式市場では主要な半導体関連銘柄で構成するフィラデルフィア半導体株指数(SOX)が▲1%ほど下落。東京市場では東エレクなどの関連株に売りが広がり、アドテストは▲4%超下落した。米国時間の7/19夕の時間外取引で電気自動車(EV)のテスラが決算発表を受けて大幅安となり、投資家心理を冷やしたとの見方もあった。
  ・国内では今日のニデックを皮切りに、4~6月期の主要企業の決算発表シーズンに入る。来週には日米の金融政策を決める会合も控える。市場では「目先はイベントが多く、持ち高を積極的に傾けづらい状況」との見方が多い。
  ・HOYA・SMC・安川電が下落。大成建設・JFE・INPEXが上昇した。

 2)7/21、日経平均▲186円安、32,304円(日経新聞より抜粋
  ・前日の米ハイテク株が急落した影響から半導体関連株が大幅安となったことが重荷となり、日経平均は続落した。株価指数先物に買い戻しなどが入り、下げ渋る場面もあったが一時的だった。
  ・7/20の米株式市場でナスダック総合株価指数やフィラデルフィア半導体株指数(SOX)が大幅安となったことを受け、東エレクなど値がさハイテク株が下落し指数を押し下げた。日経平均の下げ幅は朝方に一時▲400円を超えた。
  ・売り一巡後は外国為替市場の円安・ドル高などを背景に、株価指数先物に押し目買いや、売り方の買い戻しが入り、下げ幅を縮める場面もあった。ただ、戻った場面では利益確定売りが出た。「今日の半導体関連株は台湾積体電路製造(TSMC)など海外半導体企業の決算の影響を受けたが、全体で見れば、来週の日銀の金融政策決定会合などの重要イベントを前にして慎重な動きだった」とみる声があった。
  ・アドテストやスクリンが大幅安、安川電・川崎汽船・ニコンも売られた。一方、前日に決算を発表したニデックが大幅高。テルモ・ホンダが買われた。

●2.日本株:日本株上昇の牽引役・海外投資家の買いが「止まる」

 1)海外投資家の買い効果・・・日経平均とPERの推移
  ・海外投資家の買い効果、日経平均は1/4⇒7/3で+8,037円高・+31.25%上昇
       日経平均    PER(株価収益率)
   1/04  25,716円   14.95倍
   6/16  33,706    20.42
   7/03  33,753    20.44
   7/21   32,304   19.47
  ・PERは、1/4⇒7/3で+5.49倍上昇。
  ・しかし、7月1週以降から調整に入り、日経平均とPERは下落傾向にある。日経平均は7/3高値から7/21まで▲1,449円安・▲4.29%下落。

 2)日本株上昇の牽引役であった海外投資家の日本株買いが「止まる」
  ・海外投資家の日本株買いの推移
               買残高      年初比の買金額
   1月1週(~1/06)   ▲4,391億円売残高
   6月1週(~6/09) +7兆8,949億円買残高  +8兆3,340億円 
   7月1週(~7/07) +7兆4,270億円買残高  +7兆8,661億円
  ・海外投資家は1月2週から買攻勢に転じ、6月1週まで+8兆3,340億円の買超過。
  ・しかし、海外投資家は6月2週から売りに転じ、7月1週までに▲4,679億円売り。ただ、売り越し額は▲5.61%と小さく、海外投資家の本格的な売り転換との判断はできない。
 
 3)海外投資家の買いに対して「提灯買い」をしてきた証券会社自己部門は売転換
  ・証券自己部門は買残ピークの6月3週から3週間で▲8,678億円売り転換した。売り合計は、買残ピーク比▲29.5%の減少。この大幅減は、証券自己部門は腰を入れた売り転換のサインとみえる。
  ・証券会社自己部門の動向
    6月3週(~6/23) +2兆9,392億円買残高
    7月1週(~7/07) +2兆0,714億円買残高  ピーク比▲8,678億円減少

 4)年金基金などは年初から一貫して「売り」継続
  ・同様に売り向かっていた個人(現金)筋は、売り疲れしたのか、若干の買い越しに転換している。

 5)日経平均の売り圧力は「強くない」
  ・新高値・新安値銘柄数などの動向
            7/18   7/19   7/21   7/22   7/3
   新高値銘柄数    61    102    109    57   294
   新安値銘柄数    27     8     10    26    1
   値上がり銘柄数  1,300   1,615    497    755  1,499   
   値下がり銘柄数   478    179   1,264    988   292
   日経平均値動き  +102円高 +402   ▲405円安 ▲186  +564
  ・新高値銘柄数は7/3の数に比べ減少し勢いの陰りはみえるものの、新安値銘柄数は増加傾向がみられず、底堅さを感じる。
  ・ただ、新新高値銘柄数の減少傾向をみると、先行き「懸念」に留意したい。

■IV.注目銘柄(投資は自己責任でお願いします)

 ・5726 大阪チタニウム 業績期待。 
 ・8267 イオン     業績好調。
 ・9716 乃村江     業績期待。

著者プロフィール

中島義之

中島義之(なかしま よしゆき) 

1970年に積水化学工業(株)入社、メーカーの企画・管理(財務含む)を32年間経験後、企業再生ビジネスに携わる。 現在、アイマックスパートナーズ(株)代表。 メーカーサイドから見た金融と企業経営を視点に、株式含む金融市場のコメントを2017年から発信。 発信内容は、オープン情報(ニュース、雑誌、証券リポート等々)を分析・組み合わせした上で、実現の可能性を予測・展望しながらコメントを作成。http://note.com/soubatennbou

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