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相場展望5月29日 米国: インフレ高止まり⇒高金利長期化⇒景気後退⇒債務上限問題解決も高株価反落懸念に備えを 日本: 個別株では天井を付けたと思われる銘柄増える
■I.米国株式市場
●1.NYダウの推移
1)5/25、NYダウ▲35ドル安、32,764ドル(日経新聞より抜粋)
・米連邦政府の債務上限問題を巡る不透明感が引続き重荷となり、3/29以来の安値。半面、NYダウ構成銘柄ではないが、画像処理半導体(GPU)のエヌビディアが急騰し、ハイテク関連銘柄に買いが入り、NYダウを下支えした。
・政府と野党・共和党による債務上限を巡る協議が続いている。大手格付会社フィッチは5/24、米国の信用格付の見通しを「ネガティブ」とした。早ければ6/1とされる米政府の資金繰り策が行き詰まる「Xデー」が近づいており、交渉の進展を見極めたい投資家が多く、NYダウの下げ幅は一時▲200ドルを超えた。
・売り一巡後は下げ渋り、小幅に上昇する場面もあった。5/25の取引時間中にバイデン米大統領が交渉は「進展している」との考えを示したと伝わった。共和党のマッカーシー下院議長も「どこに隔たりがあるか分かっている。結論に至るように努力している」などと記者団に話したと報じられた。市場では、債務不履行(デフォルト)は避けられるとの見方も根強い。
・エヌビディアは+24%高で終えた。5/24夕に1~3月期決算と併せて発表した5~7月期の売上見通しは市場予想を大幅に上回った。人工知能(AI)に使う半導体の需要急増が大幅な業績拡大を支えるとの見方が強まり、「エヌビディア株の急騰がハイテクを中心に相場を押し上げた」。AI技術の成長期待が広がり、NYダウ構成銘柄ではソフトウェアのマイクロソフトが+4%高となり、スマホのアップルも高くなった。AMDも+11%高となった。ネット検索のアルファベットや交流サイトのメタプラットフォームズも買われた。半導体製造装置株も高かった。
・ハイテク株に資金が流入した半面、ディフェンシブ株や消費関連株が売られた。通信のベライゾンやバイオ製薬のアムジェンが安い。ドラッグストアのウォルグリーンやホームセンターのホームデポも売られた。米原油先物相場が下げ、石油のシェブロンや化学のダウも下落した。
【前回は】相場展望5月25日 米国: 「インフレ抑制のため歳出削減で、債務上限問題を解決」に 日本: 外国人の先物買いは継続、売りに一部外国人が加担
2) 5/26、NYダウ+328ドル高、33,093ドル(日経新聞より抜粋)
・米政府の債務上限問題を巡る協議が進展していることへの期待から、買いが優勢。朝発表の経済指標が米経済の底堅さを示したことも、相場を支えた。
・米政府の資金繰り策が行き詰まるとされる「Xデー」が迫るなか、バイデン大統領と野党・共和党のマッカーシー下院議長の協議は続いている。米メディアによると、交渉は合意に近づいており、2年程度の引上げを軸に5/26にも妥結する可能性があるという。合意に至った場合は5/30に下院、5/31には上院でそれぞれ可決できるとして、市場ではリスク回避の姿勢が和らいだ。
・朝発表の経済指標が米経済の強さを示したことも株買いを誘った。ミシガン大学が発表した5月消費者態度指数は59.2と、市場予想57.7を上回った。4月の個人消費支出(PCE)物価指数は、変動が大きい食品とエネルギーを除くコアの上昇率が前年同月比+4.7%と、市場予想+4.6%を上回った。前月比も+0.4%と、3月の+0.3%から伸びが加速した。
・市場では「金融引締めが続くなかでも米景気の力強さが意識され、景気が悪化するとの見方が弱まった」との声が聞かれた。
・NYダウは前日まで5営業日で▲770ドルあまり下落していた。3連休を控え、売りに傾いた持高を中立にする動きも出やすかった。顧客情報管理のセールスフォースやスマホのアップルが買われた。アナリストが高評価のクレジットカードのアメリカンエクスプレスの上昇も目立った。1~3月期決算が好調だった半導体のマーベルテクノロジーは+3割超上昇した。同業のAMDやブロードコムにも買いが波及した。自動車大手のフォードと提携を発表した電気自動車のテスラも買われた。一方、製薬のメルクや医療・日用品のJ&Jは売られた。
●2.米国株:インフレ率の高止まり⇒「高金利の長期化」懸念が深まる
1)米国のインフレ率は高止まり、金融引締め策である「高金利の長期化」は避けられず
・米4月コアPCEが+4.7%と予想外に伸び加速
⇒米インフレの根強さ示す
⇒6月FOMCで利上げ確率上昇
⇒米10年債利回りが上昇
⇒円安・ドル高が進行
のシナリオが定着する可能性が強まってきた、と思われる。
・このような構図のなか、高インフレの長期化でFRBは金利引上げの「停止」は見通せず、まして「金利引下げ」は年内の実施可能性はないと思われる。
・FRBによる高金利長期化は、徐々に米国経済の重石となり、需要は減速し、景気後退は避けられない見通し。こうした景気減速のなかで、企業業績も悪化へと圧迫を受けるだろう。FRBの量的縮小策は続行し、市場から資金が引き揚げられ続けている。その影響は、株式市場にとって「負」となる。
2)米債務上限問題を巡る交渉妥結への目途が高まる⇒米株価は大幅上昇で反応
・NYダウは5/26の+328ドル高と急伸したが、要因は
・債務上限問題解決への期待。
・直近▲771ドル下落の自律反発局面。
・3連休を控え「売り方の買戻し」。
が重なったため。
3)株価大幅上昇に対する自律的反落の可能性に備えよう!
・ハイテク株が多いナスダック総合指数が大幅高となった要因は、半導体メーカーのエヌビディアが予想を上回る好決算を発表したことにある。
・「生成AI」が注目される地合のなかでの、エヌビディアの好決算発表で、先行き不透明感が強まっていた半導体業界だけに、その株価反発は大きくなった。
・ただ、決算発表という好材料は出尽くし感があり、今後の反落に備えたい。次の決算発表まで材料的に乏しくなることもある。
・NYダウのチャートでみると、5/26の上昇は直前の下落に対する自立的反発の域内であると解釈できる。3連休を前に、「売り方による買戻し」が債務上限問題解決をきっかけにした
可能性がある。そのため、本格的な上昇パターンに転じたとは思えない。
4)市場ごとの思惑の相違に注目
・金利市場 : 年内の利下げを見込む。
株式市場 : 利下げを好材料とする。
金融当局 : タカ派色を強める。
・上記の通り、市場によって思惑に大きな相違がみられる。米金融当局のFRBは、中堅銀行の相次ぐ経営破綻の監理問題で追い詰められている。パウエル議長は逃げとして「信用問題の深刻化解決」のためとして「利上げ停止」をしたいところであろう。しかし、インフレ高止まりのなか、「金利停止・引下げ」を執行した場合、再度の「利上げ」実行に追い込まれる可能性が濃厚となる。金利が高止まりすれば、株式や経済活性化を圧迫する。その場合の景気後退の谷は深くなり、株式相場にとっても悪夢を迎える。利上げ停止・利下げは、インフレ率3%台が見通せてからの議論になるのではないか。
5) 今週の注目イベント
今週 債務上限問題
6/02 米5月雇用統計
5/31 5月ISM製造業景況指数
5/31 4月JOLT求人件数
●3.JPモルガンのコラノビッチ氏、株を減らして現金・金の保有増を(ブルームバーグより抜粋)
1)理由:
(1) 決着がつかない米債務上限交渉
(2) リセッション(景気後退)リスクの高まり
(3) 米金融当局(FRB)のタカ派姿勢
2)コラノビッチ氏はウォール街の著名強気派だが、株式配分を引下げた。
●4.米4月コアPCE価格指数は前年比+4.7%、予想+4.6%・3月+4.6%を上回る(フィスコ)
1)PCE(個人消費支出)は予想外に伸びが拡大した。
●5.米1~3月期GDP、前年比年率+1.3%、予想+1.1%を上回る(フィスコ)
1)ただ、伸びは2022年10~12月の+2.6%増からは鈍化した。(ロイター)
●6.IMF(国際通貨基金)は5/21、米国は物価抑止で一段の利上げを勧告(フィスコ)
1)米国のインフレは、2023年末も約+4%と、FRB目標の+2%を上回ると予測。
●7.欧州のエンジン、ドイツがリセッション入り、危機乗り越えられるか(ブルームバーグ)
■II.中国株式市場
●1.上海総合指数の推移
1)5/25、上海総合▲3安、3,201(亜州リサーチより抜粋)
・朝高後に売られる流れとなった。指数は前日に4ヶ月ぶりの安値水準に落ち込んだとあった、値ごろ感に着目した買いが先行した。ただ、新型コロナウィルス感染の流行第2波による経済活動への影響が懸念されるなか、上値は重く、指数はほどなくマイナス圏に沈んだ。
・また、米国のデフォルト(債務不履行)や金融引締めの長期化懸念も全体相場の重石となった。
・業種別では、メディア・娯楽関連の下げが目立ち、ホテル・観光関連も冴えない。農薬・化学肥料・食品・農林水産・非鉄金属なども売られた。半面、水・ガス供給は高く、発電・電力設備・印刷報道・電器・ガラスが買われた。
2) 5/26、上海総合+11高、3,212(亜州リサーチより抜粋)
・自律反発狙いの買いが優勢となる流れとなった。
・上海総合指数は前営業日まで3日続落し、本日の前場には一時、心理的節目の3,200を割込む場面もみられた。
・中国経済の先行き不透明感や人民元安・米ドル高を背景に、海外へのホットマネー流出が不安視されている。株価指数の上値は重い。
・米国のデフォルト(債務不履行)や金融引締めの長期化懸念も根強い。
・業種別では、バイオ医薬品が高く、メディア・娯楽関連がしっかり、電子情報・水ガス供給・医療機器が買われた。半面、石炭は安く、電器・ガラス・家具などが売られた。
■III.日本株式市場
●1.日経平均の推移
1)5/25、日経平均+118円高、30,801円(日経新聞より抜粋)
・米画像処理半導体(GPU)のエヌビディアが発表した好決算を受け、値嵩の半導体関連株を中心に連想買いが波及した。半導体製造装置のアドテストが急伸し、日経平均を1銘柄で+154円押し上げた。
・アドテストのほか東エレク・スクリン・信越化など主要な半導体関連株が軒並み高となった。エヌビディアの決算は売上高や見通しが市場予想を上回り、生成人工知能(AI)に使う半導体の引き合いの強さが確認されたとの見方から、東京市場でも関連とされる銘柄に物色が向かった。
・米債務上限問題を巡る先行きの不透明感が重荷だった。5/24の米株式市場でNYダウは▲255ドル安と4日続落した。米株安の流れを引き継ぎ、日経平均は朝方に下げ幅を▲100円超に広げる場面があるなど、相場全体の上値を抑える要因となった。
・安川電・エーザイ・味の素が上げ、第一三共・川崎汽船・エムスリーが下げた。
2) 5/26、日経平均+115円高、30,916円(日経新聞より抜粋)
・前日の米ハイテク株高や為替市場での円安・ドル高を背景に値嵩の電機機器や精密機器が買われ、指数を押し上げた。一方、週末を前にバリュー(割安)株を中心に利益確定売りが出て、上値が重くなった。
・5/25の米市場で主要な半導体関連銘柄で構成するフィラデルフィア半導体株指数(SOX)が大幅に上昇したのを受け、東京市場でも半導体関連株に買いが入った。前日に急伸したアドテストは朝安後、上昇に転じ、東エレクは年初来高値を更新した。日経平均の上げ幅は一時+300円を超え、5/22の31,086円を上回る場面もあった。
・円相場が一時140円/ドル台に下落し、輸出企業の採算改善への期待が高まったことも相場を支えた。今後のインバウンド(訪日外国人)需要の回復期待もあり、JALやJR東海が上昇した。
・「過熱感から利益確定売りも増えてきたが、日本経済の正常化と今後の業績回復に対する期待が外国人投資家を中心に根強い」との指摘もあった。
・東証株価指数(TOPIX)は後場に失速し、小幅に4日間続落した。
・HOYA・丸紅・京成が買われ、半面、KDDI・第一三共・セブン&アイが売られた。
●2.日本株:個別株価では天井を付けたとみられる銘柄が多くなってきた模様
1)日経平均は上昇するも、一部値嵩株の寄与度が高く、歪さが増える
・値嵩で上昇銘柄に集中。
・米金利高を受け、円安が進行し140円台乗せで輸出関連株が買われる。
・米2年債利回りは5/26、4.61%へ急伸。
・米エヌビディア株の急騰を背景に、半導体&同製造装置株が上昇波及。
2)米4月コアPCEが前年比+4.7%で、6月利上げ確率上昇
・米6月FOMCで利上げの確率が高まる。
・円安進行で輸出関連株には追い風だが、日本の経済・国民にとってはマイナス。
3)株式先物市場で、外人投資家は5/25・26と「売転換」⇒売り継続となるか注意したい
・5/29の外人投資家の先物手口に注目したい。
4)自社株買い発表が増え、6月末の株主総会まで買い圧力となる
・株主総会前まで 5/1~5/25までに企業発表があった209社の自社株買い。
・金額は総額で3兆2,400億円と過去最大。昨年5月の月間で3兆1,200億円を既に上回る。
5)個別株でみると、チャートで天井を付けたと思える銘柄数が多く見受けられる。
・米債務上限問題を巡る交渉妥結で、株価は好反応を示すだろう。
・利益確定売りにとって絶好の機会となろう。
・今後の材料は乏しくなる傾向にあり、株式市場はいったん様子見姿勢が強まる可能性もあり得る。
・下落の備えにも注意を払いたい。
●3.企業動向
1)ソニー 熊本県で半導体新工場、数千億円で建設へ(熊本朝日放送)
■IV.注目銘柄(投資はご自身の責任でお願いします)
・4461 第一工業製薬 業績回復。
・7012 川崎重工 業績堅調。
・9519 レノバ 業績好調。
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