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相場展望1月31日号 「金」上昇は、高インフレ対策の買い再燃が要因 株式市場は楽観だが、債券・金市場はリスク姿勢
■I.米国株式市場
●1.NYダウの推移
1)1/26、NYダウ+205ドル高、33,949ドル(日経新聞より抜粋)
・10~12月の米実質国民総生産(GDP)が市場予想を上回り、米景気の減速懸念が和らいだ。1/15発表した電気自動車(EV)のテスラが大幅上昇し、ハイテク全般に買いが及んだ。
・実質GDPは前期比+2.9%増(年間換算)と2022年7~9月期から減速したものの、市場予想+2.8%を上回った。米経済のソフトランディング(軟着陸)への期待が高まり、投資家心理の改善につながった。
・決算を受けてEV需要の鈍化懸念が後退したテスラは+11%高となった。他のハイテク株にも買いが広がり、米株相場を下支えした。NYダウの採用銘柄では顧客情報管理のセールスフォースやソフトウェアのマイクロソフトの上げが目立った。
・もっとも、NYダウは前日にかけて上昇が続いたことから利益確定売りも出やすく、下げに転じる場面もあった。人員削減の方針を示したIT(情報技術)のIBMが売られ、重荷となった。交流サイトのメタやネット検索のアルファベットが上昇した。
【前回は】相場展望1月26日号 市場はまたも楽観「金利引上げ停止」報道に注意 日本株: テクニカル指標「過熱感」、売りに注意
2)1/27、NYダウ+28ドル高、33,978ドル(日経新聞より抜粋)
・インフレが落ち着く傾向になる中、米連邦準備制度理事会(FRB)が利上げペースを緩めるとの観測が株買いを誘った。
・決算発表の内容が好感された一部銘柄が買われたこともNYダウを支えた。
・ただ、週末を控え、利益確定の売りも出て取引終了にかけて上げ幅を縮小した。
・朝方に発表された12月の米個人消費支出(PCE)物価指数は、変動の大きい食品・エネルギーを除くコア指数が前年同月比+4.4%上昇し、市場予想と一致した。上昇率は11月の+4.7%から鈍った。FRBが重視する物価指数でもインフレが落ち着きつつあるとの見方が広がり、「市場は年前半の利上げ停止を視野に入れている」との声が聞かれた。
・クレジットカードのアメリカン・エキスプレスが、10~12月期決算と同時に発表した2023年12月通期の収益予想が市場予想を上回り、株価は+11%高となった。ビザは四半期決算で売上高と1株利益が市場予想を上回り、+3%上昇した。この2銘柄でNYダウを+150ドル強押し上げた。
・NYダウの上げ幅は一時+200ドルを超える場面があったが、買い一巡後は急速に伸び悩んだ。前日までの5営業日で+900ドルほど上昇し、週末を控えて持ち高調整や、利益確定の売りが出やすかった。市場では「来週は米連邦公開市場委員会(FOMC)のや主力ハイテク企業の決算発表など相次ぐ重要イベントを控え、取引終了にかけて売りが出た」との指摘があった。
・半導体のインテルが▲6%安となった。前日に発表した四半期決算が市場予想を下回り1~3月の1株利益の見通しも市場予想に反して赤字を見込む。石油のシェブロンも1/27発表の四半期決算で1株利益が市場予想に届かず、▲4%安で終えた。
・ハイテク株比率の高いナスダック総合指数は続伸し、決算内容を好感した電気自動車のテスラが連日で+11%高、ネット通販のアマゾンや画像処理半導体のエヌビディアも高い。
3)1/31、NYダウ▲260ドル安、33,717ドル(日経新聞より抜粋)
・米連邦公開市場委員会(FOMC)など重要日程を週内に控え、結果を見極めたいムードが強い。前週まで相場上昇が続いたこともあり、短期の利益確定売りや持ち高調整の売りが優勢となった。
・1/31~2/1に開催するFOMCでは米連邦準備制度理事会(FRB)が利上げ幅を前回の0.5%から0.25%に縮小する見込み。早期の利上げ停止の思惑も浮上する中、政策の行方を見極める上でパウエルFRB議長の記者会見が注目されている。
・今週は巨大ハイテク企業の決算発表が相次ぐ。2/2のスマホのアップルとネット通販のアマゾンなどが予定する。重要日程を前に最近買われていたハイテク株は利益確定売りに押された。
・映画娯楽のディズニーなど消費関連株の一角も安い。原油安を受け、石油のシェブロンも売られた。1/30の米連邦控訴裁判所の決定を受け、ベビーパウダーを巡る賠償問題の長期化が警戒された医薬・日用品のジョンソン&ジョンソンは大きく下げた。
・ハイテク株比率の高いナスダック総合指数は3営業日ぶりに反落。前週末の急伸した電気自動車のテスラが▲6%下げ、交流サイトのメタ、エヌビディアなど半導体株も下落。
●2.米国株:
(1) 金(ゴールド)の急騰は、高インフレ継続を見込んだ対策としての買いが要因。
(2) FRB高官は「高水準の金利の長期化」発言を繰返す。
(3) 債券市場では、金利上昇に振れ始め、FRBに沿う動き。
(4) 株式市場は「利上げ停止・低下」を期待するも、慎重に対処したい。
(5) 格言「FRB(中央銀行)に逆らうな」を忘れずに。
1)米主要企業の決算発表(予定):企業業績悪化へ向かい、1株利益の低下の視点で注目
・2/2、10~12月期決算発表、アップル・アルファベット・アマゾンなど
2)金(ゴールド)は先行きの高インフレ継続を見込んで、最高値に向かって上昇中
・金価格の推移 2022/3/8 11/3 2023/1/25
2,043ドル 1,630 1,959 : 11/3比+20.2%上昇
・NYダウの推移 ― 32,001ドル 33,743 : 11/3比+ 5.4%上昇
・金価格の上昇は+20.2%に対して、株式価格は+5.4%と低い上昇に留まった。
つまり、高インフレが継続すると見た方が正解と思われる。
3)FRB高官発言:ハト派のブレイナード副議長でさえ「高金利継続」を発言
・ブレイナード副議長:「利上げ停止しても、高金利の水準は当面継続する」。
・クリーブランド連銀メスター総裁:「景気減速を示すデータはまだまだ不足」と述べ、「利上げ継続」を示している。
・FRBは過去に、早過ぎる金融緩和を実施して、インフレ復活を許した苦い経験がある。FRBは2度とこの失敗の轍を踏まないとの思いが強い。FRB議長も同様の思いだろう。
4)債券市場は景気後退を見ており、その慎重スタンスを映して、金利も反騰へ
・金利動向 1/18 1/30
10年債利回り 3.37% 3.546 : +5.2%上昇
2年債利回り 4.083 4.242 : +3.9%上昇
5)格言『FRB(中央銀行)に逆らうな』を忘れずに
・歴史的に見て、FRBの政策方針を見誤ると、悪い結果になりやすい。
・FRBはインフレ退治にまっしぐらであり、中途半端な政策転換はないと見る。
・景気後退の着地は、ソフトランディング(軟着陸)でなく、ハードランディングとなる可能性が高いことに留意したい。
●3.米12月個人消費支出(PCE)は前年比+4.4%増、11月+4.7%から鈍化(フィスコ)
1)昨年10月来の低い伸びとなった。
2)個人消費は米経済活動の3分の2超を占める。
●4.米GDP、10~12月は前期比年率2.9%増、予想2.6%を上回る(ブルームバーグ)
●5.企業業績
1)インテル 1~3月売上高見込み105~115億ドル、市場予想は140億ドル
1株利益▲15セントの赤字、市場予想は+25セントの黒字。
■II.中国株式市場
●1.上海総合指数の推移
1)1/26、祝日「春節」で休場
2)1/27、祝日「春節」で休場
3)1/30、上海総合+4高、3,269(亜州リサーチより抜粋)
・経済対策への期待感が相場を支える流れとなった。
・中国国務院(内閣に相当)は1/28の常務会議で、「中国経済の着実な回復を後押しするため、消費促進策の完全な実行を要する」との認識を示した。地方政府は春節(旧正月)明けに、大規模な景気対策を相次ぎ発表している。
・また、連休中の消費活動が活発化する中、国内景気の早期持ち直しも期待された。
・明日1/31、1月中国PMIが公表されることが気懸かり材料となっている。
・業種別では、自動車の上げが目立ち、景気動向に敏感な素材株も高い。半面、エネルギー関連・公益・医薬品・空運・不動産・保険証券・半導体は売られた。
●2.中国株:今週の上海総合指数は上昇を予想
1)上昇要因
・新型コロナ感染爆発が大都市でピークアウト傾向にあり、リオープン(経済再開)の期待が高まる。
・政府当局からの景気テコ入れ期待。
・中国人民銀行の資金供給期待。
・米欧は中国景気の回復期待で春節期間中に既に上昇しており、欧米からの中国株投資資金の流入が予想される。
●3.中国の2022年歳入+0.6%増、コロナ支援の税還付で伸び大幅鈍化(ロイター)
1)2021年の歳入の伸びは+10.7%増だった。
■III.日本株式市場
●1.日経平均の推移
1)1/26、日経平均▲32円安、27,362円(日経新聞より抜粋)
・取引開始直後に上昇し、節目の27,500円を上回った後、戻り待ちの売りが優勢となる。日経平均は前日までの4営業日で+1,000円近く上げ、約1カ月ぶりの高値を付けており、利益確定の売りが出やすかった。一方、1/26の香港株や米株価指数先物の上昇が下値を支えた。
・1/25に半導体製造装置の米ラムリサーチが決算を発表し、時間外取引で株が下落。東エレクなど東京市場の半導体関連に売りが波及したことも全体の上値を重くした。
・円相場が強含むと輸出関連に売りが出て、日経平均は▲100円超下げる場面があった。
・主要企業の決算発表が本格化しつつある。市場では「個別物色が中心で、相場全体の方向感はしばらく出にくい」との声があった。
・来週1/31~2/1に開かれる米連邦公開市場委員会(FOMC)の結果を見極めたいとの雰囲気もあり、午後は小安い水準で狭い値幅で推移した。
・10~12月決算が最終赤字だったサイバーが下落。商船三井など海運株・ダイキン・太陽誘電が下落。一方、オリンパス・信越化が上げた。
2)1/27、日経平均+19円高、27,382円(日経新聞より抜粋)
・前日の米株式相場の上昇を受けた買いが先行した。半面、最近の一方的な相場上昇を警戒した戻り待ちや利益確定の売りも出やすかった。
・国内主要企業の決算を見極めたいとの雰囲気も積極的な買いを見送らせ、日経平均は下落に転じる場面もあった。
・1/26の米株式市場では、10~12月期の米実質国内総生産(GDP)が市場予想を上回ったことなどを背景に、NYダウなど主要指数が揃って上昇した。米景気減速に対する懸念の後退は、東京市場でも投資家心理の一定の支えになった。
・朝高後はすぐに伸び悩み、その後は上値の重い展開が続いた。積極的な売買は目立たず、日経平均の高値と安値の差は125円と、昨年11/17以来の小ささだった。
・安川電・日本電産・信越化・三井住友FG・みずほFGなど銀行株・マツダ・パナが上げ、郵船など海運株・オリンパス・テルモが安い。
3)1/30、日経平均+50円高、27,433円(日経新聞より抜粋)
・前週末の米株高や春節(旧正月)連休明けとなる1/30の中国・上海株高が投資家心理の支えとなり、機械株など景気敏感株と株価指数先物が買われ、上げ幅は一時+100円を超えた。
・一方、短期的な過熱感を警戒した戻り売りが、重荷になった。このところ上値の重さが意識される心理的な節目の27,500円に接近すると、戻り売りに押され下げに転じる場面があった。
・「日本が先端半導体の対中輸出規制を強める」と伝わり、値嵩の半導体製造装置株の伸び悩みが目立った。
・日銀の政策修正に対する思惑的な円高進行も上値を抑えた。令和国民会議(令和臨調)は1/30、政府・日銀の共同声明に関し、日銀の金融政策を柔軟化するため、異次元緩和の象徴となっている2%の物価目標を長期的な目標に据えることを提案した。円相場が一時129円台前半に上昇、自動車など為替感応度が高い銘柄の売りを促した。
・信越化・ファナック・日東電工・資生堂・オムロン・ヤマトが上げた。一方、第一三共・中外薬・アステラス・コマツ・日立建機が下落した。
●2.日本株:10~12月期決算発表の本格化始まる。決算内容で個別銘柄物色の高まりを予想。
1)主な決算発表(予定):10~12月期は好悪入り交じったまちまちの決算を想定
焦点は2023年3月度決算見通し
1/30、 キャノン、オムロン、三井住友FG
1/31、 レーザーテック、HOYA、コマツ、商船三井、
2/01、 キーエンス、日立
2/02、 ソニー、パナソニック
2)テクニカル指標:「買われ過ぎ」を示唆
1/19 1/27 1/30
・騰落レシオ(25日) 94.86 122.27 128.95
( 6日) 99.00 213.58 182.98
3)好決算銘柄は買われ、そうでない銘柄は売られる展開か
・全体的には、既に上昇しているだけに、今後は強くない相場展開を想定する。
・日銀の金融政策の修正に注目が集まっているだけに、買いの一方通行は望めないと思われる。
●3.IMF、日銀は金利変動幅拡大可能、持続的な物価目標2%達成前でも(ロイター)
●4.企業動向
1)日産自 ルノー出資比率で対等な立場に見直すなど基本合意で声明(NHK)
日産は持ち合い株式比率が、日産の15%に対してルノーが43%となっており、これを対等な立場の15%に引下げることを求めて交渉してきた。日産の経営危機から20年余にわたって続いてきたルノーに有利な資本関係が抜本的に見直され、新たな段階に移る。
2)オリエンタルランド 社員・パートなど2万人に4/1から平均約7%賃上げ(NHK)
3)SG 傘下の佐川急便が個人宅配を4/1から約8%値上げ(日経新聞)
●5.企業業績
1)ファナック 23/3期営業利益予想1,817⇒1,844億円、前年比0.6%増(ロイター)
2)日東電工 23/3期純利益は前期比3%増の1,000億円、市場予想比▲16%減(日経新聞)
3)SMBC日興 4~12月純損失▲244億円で最大の赤字水準、前期+478億円黒字(ロイター)
金利上昇で株式市場低迷と、相場操縦事件が影響した
4)三井住友FG 10~12月純利益+2,406億円、前年同期比+43%増(ブルームバーグ)
通期目標は据え置き
■IV.注目銘柄(投資は、ご自身の責任でお願いします)
・6645 オムロン 業績堅調。
・6856 堀場製作所 業績好調。
・7270 SUBARU 業績好調。
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