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相場展望10月20日号 米国株は「金利引上げ相場」⇒『業績相場』に移行か 英国の政局・米国中間選挙に注意
■I.米国株式市場
●1.NYダウの推移
1)10/17、NYダウ+550ドル、30,185ドル(日経新聞より抜粋)
・米主要企業による決算発表が本格的に始まり、業績が警戒するほど悪くないとの見方から買いが入った。
・英政府による減税策の撤回発表を受けて、金融市場の混乱が落ち着くとの見方もあって米国株の買い安心感につながった。
・銀行のバンクオブアメリカが10/17に発表した7~9月決算は1株利益と売上高が共に市場予想を上回った。前週末に発表した決算が市場予想を上回ったJPモルガンチェースが+4%高、10/18に決算発表を控えるゴールドマンSが+2%高となった。
・市場では「想定ほど悪くない金融大手の決算を受けて米企業業績への警戒感が和らぎ、売り込まれていたハイテクなど幅広い銘柄が買い直された」との指摘があった。マイクロソフト+4%高、セールスフォースやアップルの上げも目立った。電気自動車のテスラ、通販のアマゾン、半導体のエヌビディアなど主力が総じて上昇。
【前回は】相場展望10月17日号 株式市場の「甘い希望的観測」は、リスクが濃い 日本株は、「押し目買い・吹いたら売り」が良さそう
2)10/18、NYダウ+337ドル、30,523ドル(日経新聞より抜粋)
・米主要企業の7~9月決算が相次いで市場予想を上回り、業績懸念が和らいだ。
・米国株相場は景気減速による業績悪化を織込んでいたため、決算を好感して上昇した。
・金融のゴールドマンSが+2%高、JPモルガン・チェースも買われた。セールスフォース+4%高で、NYダウを押し上げた。物言う株主による大量の株取得が明らかになり、追随買いも入り、NYダウの上げ幅は+652ドルに達する場面があった。買い一巡後、NYダウは+116ドルまで伸び悩む場面があった。
・ハイテク株の多いナスダック総合指数は続伸し、ネット検索のアルファベットや半導体のエヌビディアが上昇したが、交流サイトのメタは下落した。
3)10/19、NYダウ▲99ドル安、30,423ドル(ロイターより抜粋)
・米国株式市場は反落して取引を終えた。
・米10年国債利回りが約14年ぶりの高水準に上昇し、不動産など金利敏感株やマイクロソフト、通販のアマゾンなど成長株の重石になった。
・SP500の主要セクターでは、エネルギーが+2.9%高と、唯一プラス圏で引けた。
・ネットフリックスは+13.1%急伸、契約者数が増加に転じ、市場予想の倍以上を達成。
・市場では「債券が株価の大きな重石になり、好決算に影を落としている。好決算は最終的に株価を押し上げるが、マクロ経済がどのくらい業績を圧迫し続けるかが問題」との指摘があった。
・FRB当局者の発言は、インフレ抑制に向けて積極的な利上げが必要との立場で一致している。ミネアポリス連銀総裁は10/19、労働需要は引続き堅調で、インフレ圧力は依然ピークに達していない可能性があるという認識を示した。
・商務省発表の9月住宅着工件数は年率換算で前月比▲8.1%減少。
・テスラは売上高が市場予想を下回り、時間外取引で▲3.9%下落した。P&Gとトラベラーズは予想利益を上回り、それぞれ+0.95、+4.4%高となった。アボットはドル高と海外売上の伸びが予想を下回り▲6.5%安。
●2.米国株:「金利引上げ相場」⇒「業績相場」へ移行か、英国・米中間選挙に注意
1)「米FRB金利上昇に伴う相場」⇒『7~9月決算相場』に移行が始まった模様。
・金利引上げ予想は11月+0.75%、12月+0.75%を織込み、FRBは政策金利4.9%まで引上げすることを短期金融市場は織込んだ。
・このことから、「金利引上げ」による景気減速・後退の材料は使い古され、新鮮味が乏しくなってきた。このところ、「7~9月決算発表が本格化し始めた」ことから、移ろいやすい市場は『決算業績相場』へと移行し始めている。
2)今後の株式相場の流れ
・9月消費者物価指数(CPI)は予想を上回り、FRBによる利上げを後押しした。「利上げ」を嫌った株式相場は「下落基調」だったが、CPI発表を受けイベント通過と受け止めた株式相場は大幅上昇に転じた。
・今後の相場展開は次のようなものになると予想する。
(1)FOMCと利上げイベントが通過で、CPI発表を契機に、アク抜けし株価反騰。
⇒ (2) 7~9月決算発表シーズンによる『業績相場』イベントへ。
⇒ (3) ただし、決算イベント終了後は11月FOMCに視点が向き株価軟調を予想。
3)懸念材料
(1)英国の政局不安からくる市場の不透明感がくすぶり続けている。
・英首相による大規模減税策に対する市場の反応は通貨大幅下落を招き、金融市場に動揺を引き起こした。
・英イングランド銀行(中央銀行)はすかさず市場介入、金融市場の鎮静化を図る。
・英財務相を更迭、新ハント財務相の減税計画撤回で市場に安心感が出た。これにより金融市場混乱不安が後退⇒リスク選好が優勢となった。
・しかし、英トラス首相の支持率が7%に急落し、ブレーバーマン内相の2人目の辞任など、「退陣」の声が飛び交う状況に陥り、英国の政局は不透明感が急速に増している。
・英国発の金融不安定化が、米国金融市場への波及が懸念される。
(2)米中間選挙の結果によっては、米政治の不安定感が増し、株式市場の影響が懸念。
・現時点では、上院は民主党・共和党が拮抗する状況にあるが、下院ではバイデン民主党が不利な情勢となっているようだ。
・下院で共和党が勝てば、バイデン民主党政権の政策実行に暗雲が垂れ込む。米政局の動揺が波及し、米金融市場への影響が懸念される。
●3.米経済、12カ月以内のリセッションの思惑さらに強まる、ドルの上値抑制か(フィスコ)
●4.1年以内の米リセッション、確率は100%、ブルームバーグ予測モデル(ブルームバーグ)
●5.クレジット市場に警鐘、企業バランスシート上の現金が減少(ブルームバーグより抜粋)
1)景気減速の中で7~9月決算発表が始まったが、一部の運用者が特に注視しているのがバランスシートにおける現金レベルだ。米企業の現金レベルは低下した。高インフレと景気鈍化が重石となっている表れで、一部の企業は債務履行に苦戦する可能性がある。ブルームバーグの分析によると、金融機関を除くSP500構成企業の6月末の現金残高は前年6月末から▲14%減少し約1兆9,000億ドル(約283兆円)だった。景気が鈍化している時に全体として現金が減少しているとなると、企業収入が減っているか、費用が増大しているか、その両方であることを示す場合が多い。企業の手元資金の減少は、状況が悪化している示す最初の兆候の一つである。
2)FRBがマネーサプライを減らしている(バランスシート縮小、QT)ことは、「流動性の引き揚げは、深刻な影響を与える」とし、「最終的に何かが壊れ、何かが露呈する」とした。
■II.中国株式市場
●1.上海総合指数の推移
1)10/17、上海総合+12高、3,084(亜州リサーチより抜粋)
・中国の景気テコ入れスタンスが好感される流れとなった。
・10/16開幕の共産党大会の冒頭演説で習近平・総書記(国家主席)は、「実体経済に重点を置き、経済を発展させる」との方針を示した。
・主要な国営の各商業銀行もそれに対し支持を表明。主要銀行は実体経済のために足元で融資を拡大してきたと説明し、これからも投融資を積極化すると説明した。
・ただ、指数は安く推移する場面もみられた。
・業種別では、医薬品の上げが、目立ち、証券・保険もしっかり、軍事関係も物色された。反面、発電・電力設備は冴えず、エネルギー・消費関連・銀行などが売られた。
2)10/18、上海総合▲3安、3,080(亜州リサーチより抜粋)
・投資家の慎重スタンスが強まる流れとなった。
・9月貿易統計に続き、中国当局は7~9月GDP成長率などの発表も揃って見送った。景気悪化を示唆する内容ではないか・・などの見方が広がっている。
・李克強・首相などが中国経済の堅調さをアピールする中、一時は小高く推移したものの上値は重く、指数は引けにかけてマイナスに転じた。
・業種別では、不動産の下げが目立ち、金融も安く、半導体も冴えない。医薬品は高い。
3)10/19、上海総合▲36安、3,044(亜州リサーチより抜粋)
・前日の軟調な地合を引き継ぐ流れとなった。
・中国で重要経済統計の発表が見送られたことや、新型コロナ感染対策の防疫措置が一部地域で広がっていることを不安視された。広州市では多数のエリアで住民の外出が禁じられ、深圳市では10/15から一部地下鉄駅を閉鎖し、北京市一部も封鎖措置となった。
・外国為替市場でも米10年債利回りが節目の4%を超え、再び人民元安に進んでいる。中国からの資金流出も警戒された。
・業種別では、消費関連の下げが目立ち、医薬品・金融・ハイテクが下げ、海運は上昇。
●2.中国株:中国統計の発表延期理由と、経済悪化情報に注目
1)10/18発表予定の小売売上高や7~9月期GDP統計などの統計発表を延期。
・9月貿易統計も10/14発表予定を延期している。
・新型コロナにける経済封鎖で、成長減速が懸念され、延期理由がリスク要因となる。
2)中国経済の悪化情報に注目
・不動産関連業界の不振:中国GDPの約25%も占めるだけに動向に注目。
・地方政府のファンド経営悪化:
中国国民から集めた預金で不動産開発などに投入。
預金の取り付け騒ぎが多発しており、動向に注目。
・中国の米国不動産投資が裏目:
2013~2018年は+520億ドルで買収。
2019~2022年は▲236億ドル売却、損切り撤退。
・膨大な固定資産投資の採算性低下:
胡錦濤の時代から経済の牽引力を担ってきたが、収益性低下で採算に疑問が出始めている。
高速鉄道建設したが、黒字区間は北京~上海のみで利息支払いも困難。
・新型コロナ防疫措置で行動制限:
経済活動を阻害し、生産・消費が停滞。
●3.中国、GDPなど7~9月期・小売売上の経済指標の発表を延期、理由は示さず(ロイター)
1)コロナ規制などで、経済回復の弱さ示す可能性(ブルームバーグ)
■III.日本株式市場
●1.日経平均の推移
1)10/17、日経平均▲314円安、26,775円(日経新聞より抜粋)
・米消費者の予想インフレ率の上昇などを受けて、米連邦準備理事会(FRB)が積極的な金融引締めを続けるとの警戒感から、値嵩株を中心に売りに押された。
・株価先物の下げが主導して、日経平均は朝方に▲400円超下落した。ただ、売り一巡後は新規の売り手掛かりが乏しく、一方的に日本株の下値を探る動きには、なりづらかった。
・個人投資家の押し目買い意欲の強さを指摘する声もあり、日経平均は取引終了にかけ下げ幅を縮小した。
・インバウンド(訪日外国人)需要の回復期待を支えに、百貨店・鉄道・海運が上昇した。ファストリ・ソフトバンクG・ダイキン・第一三共が下落した。
2)10/18、日経平均+380円高、27,156円(日経新聞より抜粋)
・前日に米国株式相場は英政府による減税策の撤回発表や、米大手銀行バンクオブアメリカの7~9月決算発表を受けて主要3指数が上昇した流れを引き継ぎ、東京市場でも幅広い銘柄が買われ、上げ幅は+450円を超える場面があった。円安に加え、アジア株高、英中央銀行の引締め再延期を巡る報道も支えとなった。
・ドル円相場が一時32年ぶりの安値水準に下落し輸出企業の採算改善期待を高めた。
・買い一巡後は伸び悩んだが、英FT紙が「英イングランド銀行が量的引締め(QT)の開始時期を再延期する方針だ」と報じたのを受け、再度買いが入った。
・市場は「英国関連の報道に振り回された面はあったが、日経平均で27,000円を割込むと割安感が強まり、押し目買いが入った」との指摘があった。
・ファストリ・リクルート・エムスリー・東エレクなど半導体関連・JR東日本が上げた。
3)10/19、日経平均+101円高、27,257円(日経新聞より抜粋)
・米国株式相場は金融機関の決算を好感した上昇を受け、東京市場にも波及して一時+200円を超えたが、後場には追加材料が乏しく、戻り待ちの売りに押され伸び悩んだ。
・為替が149円台で推移したことも支援材料となった。
・新型コロナ対策の入国規制緩和で、国内企業は円安の恩恵を受けとの見方がある。
・一方、戻りお待ちの売りや利益確定売りも出て、上値は重かった。「今後発表される国内企業の決算内容が市場予想を上回っても、米連邦準備理事会(FRB)の積極な利上げ継続で世界経済が冷え込むとの懸念から投資家心理の大幅な改善は見込み難い」との指摘があった。
・大ガス・東電・ソフトバンクG・日産自・スズキが上昇、クレセゾンが大幅安。
●2.日本株:薄商いの中、短期間で売り買いが交錯し、方向感が出ない状況にある
1)テクニカル指標は、直近の「下げ」を示唆している
・上値抵抗線となっていた25日移動平均27,047円、200日移動平均27,247円を、10/19に25日が+0.78%、200日が+0.04%を上回り、「買われ過ぎ」を示唆。
・騰落レシオ(6日)が10/19に127と「買われ過ぎ」圏内に入り、下落に注意。
2)空売り比率が低迷する中、薄商いで買い仕掛けも、相場勢いは弱い
・ 10/14 10/17 10/18 10/19
空売り比率 43.0% 42.6 43.2 41.8
日経平均 +853円高 ▲314安 +380高 +101高
3)外国人の先物売買は、薄商いの中目まぐるしく買越し・売越しが交錯し、方向感がない。
4)中国の経済指標公表に注目。
●3.企業動向
1)リクルート 1,500億円上限に自己株式取得へ(ブルームバーグ)
2)ヤクルト 清涼飲料48品目、11/1から最大10%値上げ(TBS)
●4.企業業績
1)SANKYO 2023/3月営業利益+290⇒+450億円黒字に上方修正(フィスコ)
■IV.注目銘柄(投資は、ご自身の責任でお願いします)
・1377 サカタのタネ 業績堅調。
・4661 オリエンタルランド 業績急回復。
・6289 技研製作所 業績堅調。
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