相場展望7月14日 米国債2年vs10年の逆イールドが一段と進行 短期筋の外国人による買い仕掛けの手仕舞いに注視

2022年7月14日 09:59

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■I.米国株式市場

●1.NYダウの推移

 1)7/11、NYダウ▲164ドル安、31,173ドル(日経新聞より抜粋
  ・ロシアから欧州への天然ガス供給の停止が、欧州景気の減速を招くとの観測が相場の重荷になったほか、中国の新型コロナ感染再拡大による行動規制の強化が投資家心理を冷やした。幅広い銘柄に売りが膨らみ、取引終了にかけて下げ幅を広げた。
  ・経済協力開発機構(OECD)が7/11発表した、6月景気先行指数は世界経済の減速が一段と進んでいることを示した。「世界の景気後退入りが懸念される水準まで低下した」とし、市場心理が悪化した。
  ・中国売上高が大きいアップル、ナイキが売られ、景気敏感株のキャタピラー・ボーイングなども安い。利ざや縮小の観測から金融も下げた。ツイッターは▲11%安。

【前回は】相場展望7月11日 参議院選挙イベントの動向に注目 不透明感を増す7月後半以降の4~6月企業決算

 2)7/12、NYダウ▲192ドル安、30,981ドル(日経新聞より抜粋
  ・景気敏感株の一角に押し目買いが入り、高く推移する時間帯が長かったが、7/13の6月消費者物価指数(CPI)発表を控え、終盤にインフレ警戒の売りが強まる。
  ・ガソリン高などを受け、CPIは市場予想で前年比+8.8%上昇と、5月の+8.6%から一段とインフレが加速する見込み。   
  ・「市場予想を上回る可能性もある」として、発表を受けて米連邦制度理事会(FRB)の利上げ観測が強まることが警戒され、NYダウは一時▲300ドル余り下げた。
  ・中国の新型コロナ感染再拡大、欧州のエネルギー高による景気懸念も投資家心理の重荷になった。
  ・米主要企業の決算発表シーズンに入り、ドル高が海外収益を押し下げるとの見方が投資家の慎重姿勢につながった。
  ・セールスフォース▲5%、マイクロソフト▲4%、原油相場下落でシェブロンが下落。夏場の旅行・レジャー需要回復期待で空運・クルーズ船が大幅高となった。
 
 3)7/13、NYダウ▲209ドル安、30,771ドル(日経新聞より抜粋
  ・米6月消費者物価指数(CPI)の上昇率が市場予想を上回り、米連邦準備制度理事会(FRB)の金融引締め加速を警戒した売りが出て、一時▲460ドル超に広げた。
  ・半面、業績が景気の影響を受けにくいディフェンシブ銘柄が相場を下支えし、売り一巡後は下げ渋る場面もあった。
  ・CPIは前年同月比+9.1%上昇と、41年ぶりの高い伸びとなり、市場予想+8.8%を上回った。エネルギーと食品を除くコア指数も+5.9%上昇し、市場予想+5.7%を超えた。
  ・インフレ加速を受け、7月米連邦公開市場委員会(FOMC)で通常の3倍の+0.75%の利上げがほぼ確実視され、市場の一部では利上げ幅が1%に拡大するとの観測も浮上。
  ・長期金利は、CPI発表直後は3%台に上昇したが、一時2.89%まで低下し、株式相場の一定の支えとなった。
  ・市場では、「6月CPIは足元のガソリン価格低下を映していない」との声も聞かれ、7月はインフレ圧力が和らぐとの楽観が広がったようだ。
  ・景気敏感株が売られ、ボーイング・ダウ・ハネウェルが安く、J&J・メルクが高い。

●2.米国株:米国債2年vs10年の金利差が逆転する「逆イールド」が一段と進行

 1)注目の7月経済指標
  ・7/13発表、米6月消費者物価指数(CPI)
  ・7/15公表、米7月ミシガン大学消費者マインド指数の家計の長期インフレ期待
  ・7/27発表、米連邦公開市場委員会(FOMC)の利上げ決定

 2)景気減速・後退懸念から商品市況が下落
  ・WTI原油先物は100ドル割れし、3/8高値123.7⇒9/13に96.14ドルまで低下した。下落率は▲22.3%。
  ・国際商品先物のCRB指数は、6/9高値329.59⇒7/13に277.93と▲15.7%下落。

 3)米国債2年vs10年の長短金利差が逆転する「逆イールド」が一段と進行
  ・逆イールドが拡大し、米景気後退リスクが上昇している。
  ・7/13の逆イールドは一時▲0.24%と、2000年来で最大となった。終値では▲0.214%。これで逆イールドは7/5~13まで7営業日連続となり、金利差は拡大している。

●3.米地区連銀報告とアトランタ連銀総裁発言で、7月FOMCで+1%利上げ確率上昇(フィスコ)

●4.米6月消費者物価指数は前年比+9.1%、ついに+9.1%超え(TBS)

 1)事前予想の+8.8%上昇を大きく上回る結果になった。
 2)ガソリンや食品など幅広い品目で歴史的なインフレが一段と加速している。

●5.国際通貨基金(IMF)予測、米国成長率は昨年5.7%⇒今年2.3%⇒来年1.0%(朝日新聞)

 1)新型コロナ禍で傷ついた世界経済を引っ張ってきた米国景気の先行きに懸念が強まる。
 2)失業率は、今年3.7%、2024年・2025年は5%を上回るとした。(ブルームバーグ)
   幅広い物価の急上昇が、米国と世界経済の両方に「システミックス・リスク」をもたらすと警告した。

●6.米地区連銀報告、需要減速の兆候で米景気後退リスクを巡る懸念が高まる(ロイター)

●7.ハイパー・サンドラーのSP500の年末予想、「最悪シナリオ」水準に下方修正(ブルームバーグ)

 1)従来は4,000としていたSP500の年末予想は、3,400に引下げ、7/12比▲11%安。

●8.バンク・オブ・アメリカ、米経済は今年「緩やかなリセッション」に(ブルームバーグ)

 1)サービス支出が減速しつつあり、高インフレが消費者の買い控えに拍車をかけている。

■II.中国株式市場

●1.上海総合指数の推移

 1)7/11、上海総合▲42安、3,313(亜州リサーチより抜粋
  ・中国の新型コロナ感染再拡大が不安視される流れとなった。
  ・中国最大の経済都市・上海市の保険当局は7/10、これまでになく感染力の強いオミクロン派生型「BA.5」の感染例が7/8に市内で初確認されたと報告した。同市では7/10の新規感染者数が69人となり、5月後半以降で最多となった。
  ・「BA.5」の感染例はすでに、北京市や西安市でも確認された。行動制限も各地で強化される状況にある。
  ・7/9に公表された6月の中国物価統計で、消費者物価指数(CPI)が予想以上に上昇加速したこともマイナス。これまでインフレは落ち着いているとして、金融政策に緩和余地があるとの見方だったが、ここにきて引締めも懸念された。
  ・業種別では、消費関連の下げが目立ち、ITハイテクも安い。発電・ゼネコンが上げた。

 2)7/12、上海総合▲32安、3,281(亜州リサーチより抜粋
  ・新型コロナ感染再拡大を不安視した売りが続く流れとなった。感染力のより強いオミクロン派生型「BA.5」などが各地で確認される中、行動制限など防疫措置が強化されており、景気に下押し圧力がかかると懸念された。
  ・中国経済対策に対する期待感が根強い中、6月金融統計で人民元建て融資が予想以上に伸びたことなどが好感され、下値を叩くような売りはみられなかった。
  ・業種別では、ハイテク関連の上げが目立ち、医薬品・消費関連も安い。

 3)7/13、上海総合+2高、3,284(亜州リサーチより抜粋
  ・主要な経済指標の改善が好感される流れとなった。
  ・中国6月貿易統計では、輸出の伸びが鈍化する予想に反し、前月から大幅に加速した。
  ・新型コロナ感染再拡大の警戒感もやや薄らぐ。中国衛生当局によれば7/12の1日当たりの感染者数は261人で(症状ありなしの両方)、300人を11日ぶりに割込んだ。
  ・中国政府が相次いで景気テコ入れ策を打ち出していることも、買い安心感がある。
  ・業種別では、旅行関連の上げが目立ち、インフラ関連も高い。一方、金融は冴えない。

●2.中国株:注目の経済指標

 1)指数
  ・7/15公表、中国4~6月期GDP    
         中国小売売上高
         中国鉱工業生産
         中国6月固定資産投資

■III.日本株式市場

●1.日経平均の推移

 1)7/11、日経平均+295円高、26,812円(日経新聞より抜粋
  ・7/10投開票の参院選挙で自民党が改選議席の過半数を単独で確保したことで政権が安定するとの期待感が高まり、幅広い銘柄が買われた。円安が進んだことも支えとなり、約2週間ぶりに27,000円を上回り一時+500円超高。
  ・米株価指数先物が下落し、中国・上海株市場なども軟調に推移したことも意識され、買い一巡後は停滞感を強め、利益確定売りに押された。
  ・トヨタ・デンソー・ファストリ・京セラ・ソニーが買われ、東エレク・東レが売られた。

 2)7/12、日経平均▲475円安、26,336円(日経新聞より抜粋
  ・世界的な景気減速への懸念から、前日の欧米株式相場が下落した流れを受け、東京市場でも運用リスクを回避したい投資家が幅広い銘柄に売りを出し、一時▲500円超となる。
  ・中国で新型コロナが感染拡大し、消費や生産活動に悪影響が出ることの警戒が強まる。
  ・日銀が7/12発表した6月企業物価指数は前年同月比で+9.2%上昇した。原材料が高止まりしているうえ、円安傾向が続いており、企業収益の下押し懸念もある。
  ・ソフトバンクG・東エレク・ファナックが下落、日水・関西電・花王が上昇した。

 3)7/13、日経平均+142円高、26,478円(日経新聞より抜粋
  ・日経平均は前日▲400円超下げたとあって、短期的な戻りを期待した買いが優勢だった。
  ・空運や百貨店に買いが入って、上げ幅は一時+200円を超えた。
  ・買い一巡後、米消費者物価指数(CPI)の発表を控え、インフレの加速度合いを見極めたいととして、持ち高を調整して売る動きもあり、上値を追う動きは限られた。
  ・東宝・ニコン・三越伊勢丹・高島屋・Jフロント・東電・IHIが上げた。一方、KDDI・NTTデータ・資生堂・花王・東京海上が売られた。

●2.日本株:外国人短期筋の買い仕掛けは、手仕舞いの可能性がある

 1)日経平均26,500円が抵抗ライン
  ・日経平均25日移動平均(7/13 26,544円)を超えると、売られて値を崩す展開となっている。

 2)減益・市場予想下回る決算をネガティブ視される懸念。

 3)短期筋の外人は株式先物では7/12に売り越しに転換。
  ・外国人短期筋が買い仕掛けを始めた6/24以降の日経平均は+642円上昇した。外国人の先物買い手口は、6/24~7/11では「11日間の買いvs売り1日」である。これだけ長期の買いに対する日経平均の上昇幅は小さい。以前は、1,000円以上の上げ幅となっていた。それだけ売り圧力が強くなっていると思われる。
  ・したがって、外国人短期筋は変わり身の速さが信条なだけに、7/12から売り転換したしていることに注目したい。今回の外国人短期筋の買い仕掛けは「失敗」の可能性があり、その場合は「売り手仕舞い」も速いとみられる。

 4)新型コロナ再感染拡大の第7波に注意。
  ・オミクロン派生型「BA.5」は感染力が強いと言われているため、経済活動に対する影響に注視したい。

●3.企業物価、6月も過去最高9.2%上昇(前年同月比)、円安が押し上げ(朝日新聞)

●4.企業動向

 1)ニコン   一眼レフから開発撤退(日経新聞)
 2)丸大食品  ハム・ソーセージなど10月から今年2回目の値上げ(NHK)
 3)JR西日本  山陽新幹線「指定席特急料金」、2023/4から値上げ(NHK)
 4)すかいらーく メニューの約半数を平均5%値上げ、7月中旬以降(朝日新聞)

●5.企業業績

 1)ローソン  4~6月期営業利益+132.8億円、前年同期比+25.1%増(フィスコ)
 2)ローツェ  3~5月期営業利益+50.3億円、前年同期比+76.6%増(ロイター)
         市場予想+55.5億円を下回る
 3)リソー教育 第1四半期営業損益▲3.5億円赤字、前年同期比▲1.5億円赤字増(フィスコ)
 4)東宝    4~6月期営業利益+142.7億円、前年同期比+35.9%増(フィスコ)
         自社株取得枠を上限60億円で設定
 5)竹内製作  2023/2通期純利益+122憶円、従来予想比+27億円上方修正(日経新聞)
 6)コスモス薬品 2023/通期営業利益+300億円、前期比+1%、2期連続増配(日経新聞)

■IV.注目銘柄(投資はご自身の責任でお願いします)

 ・1942 関電工    業績堅調
 ・2607 不二製油   業績堅調    
 ・4452 花王     業績堅調

著者プロフィール

中島義之

中島義之(なかしま よしゆき) 

1970年に積水化学工業(株)入社、メーカーの企画・管理(財務含む)を32年間経験後、企業再生ビジネスに携わる。 現在、アイマックスパートナーズ(株)代表。 メーカーサイドから見た金融と企業経営を視点に、株式含む金融市場のコメントを2017年から発信。 発信内容は、オープン情報(ニュース、雑誌、証券リポート等々)を分析・組み合わせした上で、実現の可能性を予測・展望しながらコメントを作成。http://note.com/soubatennbou

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