相場展望11月6日号 米国株: クリスマス商戦がポイント、予測▲5%減⇒景気後退の恐れ 日本株: 今後しばらく、日経平均は「W型」で動く可能性

2025年11月6日 13:58

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■I.米国株式市場

●1.NYダウの推移

 1)11/3、NYダウ▲226ドル安、47,336ドル
 2)11/4、NYダウ▲251ドル安、47,085ドル
 3)11/5、NYダウ+225ドル高、47,311ドル

【前回は】相場展望11月3日号 米国株: AI・半導体株が牽引する相場も、12月金利低下に不透明感 日本株: 日経平均上昇に少数銘柄が寄与、ただ「勢い」低下傾向が散見

●2.米国株 : クリスマス商戦がポイント、予測では▲5%減もあり⇒景気後退の恐れ

 1)11/4の米国株はAI関連株が割高だと警戒され売りが広がり、総崩れ
  ・11/4、米国主要株価指数の動向
     NYダウ      ▲0.53%安
     S&P500種    ▲1.17
     ナスダック総合 ▲2.04
     半導体株(SOX) ▲4.00

  ・AIバブルの警戒感が高まって下落した模様。
    ・特に、AI関連のモメンタム株であるマグニフィセント・セブン株価指数(超大型ハイテクの7銘柄で構成)は、▲2.01%安。構成銘柄の7銘柄のうち、6銘柄が下落した。
    ・銀行大手のモルガン・スタンレーとゴールドマン・サックスの最高経営責任者(CEO)は、株式市場の株価調整リスクを警告している。この流れが続くか、注目。

  ・なお、翌11/5の米国株は反動高で、持ち直した。
    ・NYダウ+0.48%、ナスダック総合+0.65%、半導体株+3.02%と上昇。
    ・ただ、AI株高騰への警戒感が払拭されたと見るのは早計だろう。クリスマスの年末商戦が前年比マイナスとなる予測もあり、そうなった場合、米国株相場への影響を見極める必要がある。

 2)米国金利が低下、質への逃避で米国株売り⇒米国債買いで資金が流入したため
  ・米国10年債利回りの推移
   ・米国10年債の利回りが11/4の4.07%⇒3.8~3.6%に低下の方向にある。
     ・米国株式相場の下落により投資資金は、株式⇒安全資産の債券へ資金流入が見られる。

  ・米国株の割高から警戒心が高まり、株売り⇒国債買い
     ・米国株価は▲10~▲15%の下落を予想するストラテジストがいる。
     ・リスク回避姿勢が一段と強まれば、安全資産の債券需要が高まると予想。

 3)NY市長に当選したマムダニ・ショックに警戒、トランプ氏に逆風
  ・11/4投開票の3つの米国地方首長選で民主党候補者が勝利した。
     ニューヨーク市長に、民主党の急進左派のゾーラン・マムダニ氏。
     バージニア州知事に、民主党・中道派のアビゲイル・スパンバーガー氏。
     ニュージャージー州知事に、民主・中道派のマイキー・シェリル氏。

  ・民主党候補は物価上昇やエネルギー価格など家計を守る経済政策を訴えてきた。

  ・トランプ氏にとって逆風。
    ・トランプ氏の支持率は、今年3月の47%⇒11/2には43%と低下。
    ・トランプ政権が期待を下回っているとの回答が6割を超えた。
    ・政府機関の一部閉鎖は10/1から始まったが、過去最長だったトランプ第1期政権時代の35日を既に上回り、事態打開の目途がたっていない。例えば、航空管制官の自宅待機により、航空管制機能が低下し航空機運航に支障をきたしている。

 4)恐怖指数(VIX)が上昇し、株式相場の変動に身構える動きが見られる
  ・VIX指数の推移   10/27  11/3  11/4  11/5
     VIX指数    15.79  17.17  19.00  18.01

 5)米国で好調なのは「米国株式相場」、家計は苦しさが増し米国経済に注目
  ・米国の国内総生産に占める「消費支出」は7割程度にある。その消費支出の動向を示すのが「年末商戦」である。ところが、今年の年末商戦は前年比「▲5%減」という予測が出てきた。

  ・11/4投開票の地方主要選挙で、トランプ政権の基盤・共和党が3戦3敗となった。トランプ政権で生活が苦しくなったという声が増えている。にもかかわらず、トランプ政権は、11/1から低所得者向けの「SNAP」(フード支援)の停止を発表した。SNAPの昨年の支給者は約4,200万人と、米国人口の1割を超える規模である。トランプ政策の「減税」は、富裕層に厚く・低所得者に厳しいという内容だ。トランプ関税もあり、インフレ率は目標である2%を大きく上回ったままだ。

  ・トランプ氏の掲げた「米国ファースト」はウソで、「トランプ・ファースト」ではないかとの怨嗟の声が上がり始めている。

●3.トランプ氏の関税措置、米国最高裁で審理へ(unbranded Lifestyle)

 1)5月、下級裁判所は「トランプ関税措置は、権限を逸脱したと判決」した。
 2)8月、連邦巡回控訴裁判所は、7:4で適法でないと判決した。トランプ氏は最高裁に上訴した。

●4.米国10月ISM製造業景況指数は48.7、予想49.5・9月49.1(フィスコ)

■II.中国株式市場

●1.上海総合指数の推移

 1)11/3、上海総合+21高、3,976
 2)11/4、上海総合▲16安、3,960
 3)11/5、上海総合+9高、3,969

●2.中国、+24%の対米国関税を1年間停止へ、+10%の関税は維持(ロイター)

●3.中国製造業活動の拡大ペース鈍化、貿易の不確実性を反映=民間調査(ブルームバーグ)

 1)10月の製造業購買担当者景況指数(PMI)は50.6、9月の51.2から低下。予想の50.7からも下回る。新規輸出受注が急減し、外部環境の不確実性が生産拡大を抑制。

■III.日本株式市場

●1.日経平均の推移

 1)11/3、祝日「文化の日」で休場
 2)11/4、日経平均▲914円安、51,497円
 3)11/5、日経平均▲1,284円安、50,212円

●2.日本株:今後、日経平均は「W型」で、しばらく動くと予想

 1)日経平均は11月に入って2日間で▲2,199円下落
  ・日経平均の11月の株価動向
     10/31  52,411円
     11/05    50,212
     差引  ▲2,199円安

  ・10月月間+7,479円高の反動と、米国株のAI過熱による下落を受けて反落。

 2)日経平均寄与度
  (1)11/4、日経平均▲914円安の下落寄与上位5銘柄で▲958円安と▲104.8%占めた
   ・日経平均下落寄与上位     寄与度   下落幅
      ソフトバンクG     ▲385円安  ▲1,905円安
      アドバンテスト    ▲365    ▲1,355
      ファーストリテイ   ▲132    ▲1,630
      TDK         ▲39     ▲78
      リクルート      ▲37     ▲364
        合計      ▲958

  (2)11/5、日経平均は▲1,284円安、下落寄与上位5銘柄▲1,071円安と▲83.4%占有
   ・日経平均下落寄与上位     寄与度   下落幅
      ソフトバンクG      ▲505円安  ▲2,520円安
      アドバンテスト     ▲346    ▲1,295
      東京エレクトロン    ▲142    ▲1,420
      TDK          ▲41    ▲82
      フジクラ        ▲37    ▲1,095
        合計        ▲1,071

  (3)相場牽引は、相変わらず「海外短期筋による先物とAI関連の少数銘柄買い」続く
   ・11/4午後には、海外短期筋による先物売りが下落幅を広げた。

   ・11/5は、米国ハイテク株売りを背景に、海外短期筋が下げ相場に拍車をかけた。ただ、日経平均が▲2,400円近辺から、値ごろ感から買いが入り、下げ幅の半分程度まで持ち直した。

   ・年金基金や機関投資家の益出しのための売りは継続している。

   ・11/6は、2日間で▲2,199円安の反動から、買い優勢となると見る。しかし、米国株の先行き不透明感や、日本株の急伸への過熱感があり、頭を冷やして株式相場を見極めたい流れが出てくる可能性がある。したがって、本日11/6は朝高の後は、慎重なスタンスで反落すると予想。

 3)個別銘柄で見ると「10/27」に天井を打ち、その後下落している銘柄が目立つ
  ・11/5、日経平均は一時50,000円台を割り込む。

 4)11/5、日経平均は大幅安も、下落銘柄数は7割にとどまる
  ・日経平均は全面安とならなかったため、まだまだ底堅い動きが続くと見る。
  ・しばらくは、日経平均は「W型」の動きとなると予想する。

 5)11/5は日経平均は▲1,284円安と大幅安となったが、日本株の総崩れを示唆せず
  ・新高値・新安値銘柄数は、38:37と拮抗している。
  ・日経平均の大幅安にもかかわらず、値上がり銘柄数は420もある。値下がりは1,145にとどまっている。
  ・このため、日本株の総崩れを示唆していないと見る。

 6)11月相場は、前月10月の日経平均が+7,479円高と大幅上昇した反動が出る可能性
  ・問題は、今後の米国株動向の影響を受けやすいことにある。
  ・米国は年末商戦入り「クリスマス商戦」を迎える。年間で最大の商戦である。調査によると今年の年末商戦は▲5%減を見込むリポートもある。
  ・今年の年末商戦が不発となれば、米国景気の後退が現実化する。そうなれば、米国株式相場にとってマイナスの影響を及ぼすと思われる。
  ・11月の日本株相場は経験則では「強気」月間であるが、上記の要因で「慎重」なスタンスが望まれそうだ。

●3.新明和工業、通期純利益を下方修正、上期は前年同期比▲28%減(日経新聞)

●4.サントリー、来年4/1出荷分から最大20%の値上げ(日経新聞)

●5.任天堂、2026年3月期営業利益予想を3,200⇒3,700億円に上方修正(ブルームバーグ)

●6.三菱自動車、タイ第3工場の休止決定、需要減や中国勢との競争激化で環境悪化(ブルームバーグ)

■IV.注目銘柄(投資は自己責任でい願いします)

 ・3776 ブロードバンドタワー  業績好調
 ・5991 ニッパツ        業績好調期待
 ・8354 ふくおかFG      業績好調

著者プロフィール

中島義之

中島義之(なかしま よしゆき) 

1970年に積水化学工業(株)入社、メーカーの企画・管理(財務含む)を32年間経験後、企業再生ビジネスに携わる。 現在、アイマックスパートナーズ(株)代表。 メーカーサイドから見た金融と企業経営を視点に、株式含む金融市場のコメントを2017年から発信。 発信内容は、オープン情報(ニュース、雑誌、証券リポート等々)を分析・組み合わせした上で、実現の可能性を予測・展望しながらコメントを作成。http://note.com/soubatennbou

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