相場展望3月13日号 米国株: 米国株上昇が止まった? SOXの昨年夏・安値割れが焦点 日本株: 3/14株価先物の特別清算(SQ)後の、日経平均に注目 コメ騒動、勃発の可能性あり

2025年3月13日 11:53

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■I.米国株式市場

●1.NYダウの推移

 1)3/10、NYダウ▲890ドル安、41,911ドル
 2)3/11、NYダウ▲478ドル安、41,433ドル
 3)3/12、NYダウ▲82ドル安、41,350ドル

【前回は】相場展望3月10日号 米国株: 「強国復活」目指すトランプ氏が「米国を引き落とす」懸念 日本株: 海外投資家の日本株離れ・米国ハイテク株安で、軟調懸念

●2.米国株:米国株上昇が止まったか? 米国SOXの昨年夏安値割れが焦点

 1)米国株上昇が止まったか? 米国SOXの昨年夏の安値割れが焦点
  ・米国主要株価指数の推移
            11/04  高値    3/12  高値比  11/4比
   ・NYダウ    41,794 12/04 45,014 41,350  ▲3,664 ▲ 8.1%安 
    ナスダック総合 18,179  02/16 20,173 17,648  ▲2,525 ▲12.5%安
    S&P500     5,712 02/19  6,144  5,599  ▲ 545 ▲ 8.8%安
    半導体株(SOX) 4,973 01/22  5,469  4,481  ▲ 988 ▲18.0%安

  ・米国株を主導したテスラは3/10に222.15ドルと最高値から 半値となった。なお、3/12終値は248.09ドルに値戻しした。

  ・ナスダック総合は18,000割れ、高値から3/10現在では ▲13%安。
   ・2月下旬から値を崩し、3/6には高値から▲10%下落し「調整局面」入り。さらに値を崩す。

  ・フィラデルフィア半導体株指数(SOX)の史上最高値は昨年7/10の5,904であったが、3/12現在は4,481と▲18%安ですでに調整局面入りしている。

  ・NYダウとS&P500が▲8%台と、▲10%安に迫っている。

  ・なお、SOXの直近最安値は昨年8/7の4,426で、この水準を下回るかが焦点となると見ている。この水準を下回ると、NYダウやS&P500も▲10%割れとなり、米国株は総崩れとなる可能性があり得る。

 2)トランプ発言・関税で景気後退懸念が増し、リスク回避で大幅安
  ・トランプ大統領、景気後退を明確に否定しなかったと受け止められ、投資家はリスク回避へのスタンスが強まり、3/10の米国株は大幅下落。
  ・3/10の主要株価指数(前日比)
     NYダウ      ▲890ドル安  ▲2.07%安
     ナスダック総合   ▲727     ▲3.99
     S&P500     ▲155     ▲2.68
     半導体株(SOX) ▲224     ▲4.83

 3)昨年の大統領選挙以降、米国株高を牽引してきたテスラ株が大きく下落し投資家心理を冷やす
  ・テスラ株価
    2024年12/17  479.86ドル
    2025年03/07  262.67
       03/10  222.15:12/17最高値から▲53.7%下落。
       03/12  248.09

  ・テスラ1~3月期販売台数見通しは、競争激化で43.7⇒36.7万台に下げた。

  ・テスラCEOのマスク氏は、政府効率化省(DOGE)との両立は難しいと語る。

 4)トランプ米国政権の不確実性が売りを誘い、ハイテク株に一段の下げ余地

 5)基軸通貨としての「ドルの信認に懸念」が増す
  ・ユーロ高と円高・ドル安の進展
  ・欧州株と中国株に買いvs米国株売り

●3.米国2月消費者物価指数(CPI)は前年比+2.8%上昇、予想+2.9%(ロイター)

 1)関税導入で、今後数ヵ月で多くの物品でコスト高が見込まれる。
 2)変動の激しい食品とエネルギー除くコア指数は前年比+3.1%上昇、予想3.2%

●4.ウクライナ停戦に前向きなメッセージ受け取る、実現はロシア次第=トランプ氏(ロイター)

●5.米国大統領表明、EUが関税報復なら「対応」へ(ロイター)

 1)EUは、鉄鋼とアルミニウムを巡る米国の関税に対抗し、4月から260億ユーロ(283.3億ドル)相当の米国製品に関税を課すと発表した。

●6.メキシコ大統領「即時報復せず」、相互関税発動の4/2を見極める(ロイター)

●7.米国景気後退の確立40%、相互関税なら50%超に=JPモルガン幹部(ロイター)

●8.米国、鉄鋼・アルミ25%関税を3/12発動、1,500億ドルに対象拡大(ロイター)

 1)例外や免税措置はなく、産業界と消費者双方のコストが上昇する恐れ。
 2)EU、米国関税に来月から報復措置へ280億ドル相当の製品に(ロイター)

●9.米国抜きでEU・NATO軍部の会合、ウクライナ停戦後の支援巡り(ロイター)

●10.カナダ、米国と貿易戦争激化なら石油輸出制限も=エネルギー相(ロイター)

●11.米国教育省、職員の半数を一時帰休に、トランプ大統領の要請に対応(ロイター)

●12.米国のメルトダウンを警戒、世界のトレーダーがリスク回避(ブルームバーグ)

 1)米国のリセッション(景気後退)懸念が全体に広がっている。
 2)トランプ氏の「米国第一主義」政策が、逆に米国資産からのシフトを加速。
 3)米国株売り⇒(1)中国株・欧州株に乗り換え(2)円、ユーロの買い・ドル売り
  ・ユーロは2月安値から約+7%上昇し、香港の中国株指数は+20%上昇。欧州株をも選好。

●13.トランプ政権は支離滅裂で、同盟国に無礼で、中国にチャンスを与える=ターンブル元豪首相(Newsweek)

●14.米国の提案をウクライナが受入れ「30日停戦」、情報共有と軍事支援再開(朝日新聞)

●15.米国1月求人件数、23万件増、雇用減も今後の労働需要は鈍化か(ロイター)

 1)関税を巡る不透明感や、政府の積極的な歳出削減により経済活動が急減速する恐れがあるため、今後数ヵ月で労働需要は弱まる公算が大きい。

●16.米国政府高官、カナダへの鉄鋼関税50%見送り表明、わずか半日で撤回(毎日新聞)

●17.トランプ氏、カナダ産鉄鋼・アルミ関税を25⇒50%に引上げ、3/12適用(ロイター)

 1)カナダで最大の人口を抱えるオンタリオ州が3/10、米国の関税措置への報復として、ニューヨーク、ミシガン、ミネソタの3州に供給する電力に25%の追加料金を課すと発表したことを受けた措置としている。
 2)これに対し、カナダ・オンタリオ州のフォード首相は、米国の関税措置が「完全に撤廃」されるまで譲歩しないと表明した。
 3)トランプ大統領の発言を受け、米国市場でアルミ価格は1トン=9,900ドルを突破し、最高値を更新した。

●18.米国政府効率化省に業務の情報開示命令、「異常な秘密主義」と米国地裁(ロイター)

 1)政府効率化省に対し、運営に関する記録の公開を命じた。

●19.米国の対外援助、8割が打ち切り、国務長官が表明(共同通信)

 1)「米国第一」の政策に沿わないため打ち切り。(時事通信)

●20.米国経済に危険信号、消費と物価に警戒感=フィラデルフィア連銀総裁(ロイター)

●21.マスク氏、「ウクライナに提供中のスターリンク遮断」(中央日報)

●22.トランプ氏、「米国の半導体事業を台湾・韓国に盗まれた」と再度主張(ハンギョレ新聞)

●23.「F35 戦闘機にキルスイッチ」導入予定でドイツが懸念(産経新聞)

 1)「米国の判断で機能停止できる」

●24.「ウクライナに武器を提供するべきだ」と米国共和党重鎮のグラム上院議員(テレ朝)

■II.中国株式市場

●1.上海総合指数の推移

 1)3/10、上海総合▲6安、3,366 
 2)3/11、上海総合+13高、3,379
 3)3/12、上海総合▲7安、3,371 

■III.日本株式市場

●1.日経平均の推移

 1)3/10、日経平均+141円高、37,028円
 2)3/11、日経平均▲235円安、36,793円
 3)3/12、日経平均+25円高、36,819円

●2.日本株:3/14朝の株価先物の特別清算(SQ)後の、日経平均に注目 コメ騒動、勃発の可能性あり


 1)高配当銘柄に注目
  ・トランプ氏の高関税政策による(1)景気後退(2)物価上昇(インフレ)の先行不透明感が増し、米国株価は大きく下落している。
    ・NYダウは昨年12/4高値から約▲8%と大きく下落している。調整局面入りとされる▲10%下落に迫っている。
    ・NYダウがこの水準で踏みとどまれるか、注目したい。

  ・トランプ氏の高関税政策の跳ね返り効果は、今後数カ月で表面化する。

  ・株価の先行きが見通しにくいときの、運用銘柄として高配当銘柄に着目したい。
  
 2)株価先物の特別清算日(SQ)を3/14に控え、思惑買いが3/11にあり大きく買い戻された。
  ・3/11の日経平均は午前に前日比▲1,050円程度と大幅下落した後、約800円ほど買い戻され、終値は▲235円安で終えた。
  ・この大幅値戻しを主導したのは、海外短期筋だ。3/14の株価指数先物の特別清算(SQ)を控え、海外短期筋による思惑的な買い上がりがあったようだ。
  ・SQ後も、海外短期筋が先物主導で買い上がってくるか見極めたい。
  ・したがって、SQが通過した後の日経平均の値動きに注目したい。

 3)「コメに700%の高関税」と米国大統領報道官が日本を名指し批判
  ・日本は輸入米を年77万トンまで関税ゼロで受入れるミニマムアクセスの仕組みを設けている。この枠を超えた輸入米に対し、1キロ当たり341円の従量税を課している。
  ・米国大統領報道官は、この輸入枠の上限を超えた部分に対する341円に注目して日本を批判した。大統領報道官は「報道官」であり、政治家でもなければ政府高官でもない。この報道官としての立場での発言こそ、トランプ政権の特徴をよく表している。
  ・トランプ米国政権は、「中国の戦狼外交」とよく似ている。中国の戦狼外交の先端を走っていたのが、中国の報道官であった。トランプ氏は、中国の習近平・共産党総書記に親近感を持った発言をしている。中国は戦狼外交の結果、世界各国から孤立化して、現在は報道官を左遷し外交姿勢を修正してきている。
  ・トランプ氏は、いつまで「米国版戦狼戦略」を続けるのか、注視したい。

 4)政府は、高騰コメ価格の「高値固定」を狙っているのか、コメ騒動勃発か
  ・石破政権は、1年前比で約2倍の価格となった主食のコメ価格を引き下げる目的で、備蓄米のうち21万トンの放出を決めた。
  ・しかし、放出に当たって「高値で入札した業者」に落札するという。この放出価格決定方式では、高値となったコメ価格は下がらない。むしろ、「コメ価格の高値固定化」を図っている、としか思えない。
  ・まして、放出量も国民が食べる量の数日分でしかない。石破政権は、本気で高騰したコメ価格を引き下げようとはしていない。コメの流通業者は、この高値のコメ価格をさらに上昇させる方向に動くだろう。
  ・石破政権・農林水産省は、本気で国民の生活を見ていない。農業者や農業関係業者の方を見て運営しているとしか思えない。ならば、官庁の名称を事実にあわせて「農林水産業者省」にすべきだ。
  ・国民の主食であるコメだが、政府のこの調子ではますます「投機化」して行く可能性が高くなると見る。このままでは、国民は「安倍政権の方が暮らしやすかった」という声が反発となって出そうだ。今夏の参院選挙に注目。

●3.2月の企業物価指数、前月比+4.0%上昇、コメ価格上昇などが要因(NHK)

 1)要因は、コメ価格・弁当などの飲食料品も上昇、さらに銅やアルミニウムが値上がりした。
 2)日銀は、国際資源価格の動向や、人件費の上昇分を商品や製品の価格に転嫁する動きが広がるか注視するとしている。

●4.高関税「日本は除外されず」経産相、米国政府と協議継続(時事通信)

 1)3/12に発動される予定の鉄鋼・アルミニウムに対する25%の関税措置。
 2)「日本除外の前向きな回答は得られず」(NHK)

●5.ホンダ、中国でエンジン生産を半減へ、EVシフトを加速(共同通信)

 1)ホンダの中国販売は低迷が続き、2024年の販売台数は前年比▲3割減の85万台と、10年ぶりの低水準に落ち込んだ。

●6.マクドナルド、4割の商品を値上げ、ハンバーガーで20円アップの190円(読売新聞)

■IV.注目銘柄(投資は自己責任でお願いします)

 ・4502 武田薬      業績好調
 ・4568 第一三共     業績好調
 ・7733 オリンパス    業績好調

著者プロフィール

中島義之

中島義之(なかしま よしゆき) 

1970年に積水化学工業(株)入社、メーカーの企画・管理(財務含む)を32年間経験後、企業再生ビジネスに携わる。 現在、アイマックスパートナーズ(株)代表。 メーカーサイドから見た金融と企業経営を視点に、株式含む金融市場のコメントを2017年から発信。 発信内容は、オープン情報(ニュース、雑誌、証券リポート等々)を分析・組み合わせした上で、実現の可能性を予測・展望しながらコメントを作成。http://note.com/soubatennbou

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