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相場展望2月20日号 米国株: トランプ大統領による覇権国化でロシア・中国の仲間入り、同盟国へは脅し 日本株: トランプ関税強化で自動車から始まる日本の空洞化へ警戒
■I.米国株式市場
●1.NYダウの推移
1)2/17、祝日「大統領の日」(プレジデント・デー)のため休場
2)2/18、NYダウ+10ドル高、44,556ドル
3)2/19、NYダウ+71ドル高、44,627ドル
【前回は】相場展望2月17日号 米国株: 「相互関税」が即時発動されず安心感、今後の発言に注目 日本株: 日本の自動車に関税が課されると、影響は大きい
●2.米国株:トランプ大統領による覇権国化でロシア・中国の仲間入り、同盟国へは脅し
1)トランプ大統領による覇権国化でロシア・中国の仲間入り、同盟国へ恫喝
・トランプ氏の大統領就任から1カ月のニュース「トランプ氏独特の脅し」
(1)カナダ、メキシコへの不法移民・麻薬問題で25%関税をかけると脅し
(2)パナマにも運河管理で関税賦課と脅し
(3)中国に追加関税+10%賦課、2/4実施
(4)ガザの土地所有とリゾート開発計画、ガザ住民の退去
・開発資金はサウジなどの拠出に期待。
・ガザ住民はヨルダン、エジプトなどに移転と、援助停止で脅し。
(5)ロシア・ウクライナ戦争終結交渉の会談をサウジで実施
・EUと当事者ウクライナを外して交渉。
(6)グリーンランド領有移転をデンマークに要求、関税で脅し
(7)ウクライナ鉱物資源の50%を要求
・ウクライナの安全保障には触れず。
(8)イスラエルへの強い肩入れ
(9)鉄鋼・アルミニウムに25%の関税発動
・現状の日本は関税ゼロ枠125万トンのうち輸出118万トンと実質ゼロ関税。
・日本にも鉄鋼関税適用なら、まるまる関税負担となる。
(10)自動車・半導体などにも関税引上げ
・現状の自動車関税は2.5%。
・2024年トヨタの世界販売台数は1,015万台のうち米国販売は233万台で23%を占める。米国販売の233万台のうち、日本から米国への輸出は53万台・22.7%。
・日本全体の米国向け自動車輸出は137万台。
・上記以外にメキシコ生産の自動車輸出も対象に加わる可能性がある。
(11)日本製鉄のUSスチール買収拒否、少数の株取得は投資するなら容認
(12)国際的な枠組みから脱退
・地球温暖化対策の「パリ協定」
・世界保健機関の「WHO」
(13)メキシコ湾の呼称を「アメリカ湾」に変更
・呼称変更に従わないAP通信を、大統領記者会見などから取材制限。
(14)トランプ氏、ロシアとの戦争は「ウクライナが始めた」と主張(CNN)
・ウクライナは戦争を始めていない。2022年2月にウクライナを侵略したのはロシアのプーチン大統領だ。
・トランプ氏は、ゼレンスキー大統領の支持率が「4%」だと根拠なく主張し、ウクライナ大統領選挙を行うべきだと主張。
・トランプ氏は、ウクライナが自分の指示に従う人物への交替を要求したとの受け止め。
(15)トランプ大統領、ウクライナに兵器代・5,000億ドル(約75.9兆円)の返済を要求したと、英国テレグラフが報じた。
・希土類などの鉱物資源、石油・ガス資源、港湾などインフラ使用などによる返済を要求。
・ウクライナにとって返済不能のため、「新植民地化」の要求。
(16)性は、「男」と「女」しかない
・現在の世界的なLGBT容認の流れを否定。
(17)ニューヨーク市マンハッタンの渋滞税の認可を撤回
・ニューヨーク市の公共交通機関を運営するMTA(メトロポリタン・トランスポ―テーション・オーソリティ)は渋滞税を守るために訴訟を起こすと発表した。
2)トランプ米国大統領の支持はやや低下、不支持は大幅上昇
・2/18までの世論調査では、(ロイター)
・支持 1/20 45% ⇒ 今回44%
不支持 1/20 41% ⇒ 今回51%
・大統領就任式から約1カ月を経過して不支持率が大幅増となっている。トランプ支持の岩盤層の支持はやや低下。
・大統領就任日から猛然とダッシュして大統領令に署名し、精力的に活動している。しかし、米国の裁判所の命令をも無視し、唯我独尊の世界に浸っている。トランプ氏は「法の下での活動」はどうでもよいと思っているかのようだ。民主党政権時代に就任した判事に、辞任を迫っている。
・また、最近の米国の大統領は、同盟国を大事にしてきた。しかし、米国に敵対的だったロシアや中国と接近し、覇権国化している。そして、EU、英国・カナダ・メキシコなどの同盟国に関税発動をちらつかせて恫喝する姿がみられる。
・関税を武器にした米国は、「米国第一」の旗のもとで、孤立化の途を歩み始めた。関税の同盟国などへの一律賦課は、同盟国経済に混乱をもたらす。
・米国自体は巨人であるが、同盟国があってその強さをより発揮できた。国連では人口や経済力に関係なく基本的には各国1票である。トランプ政権前でも米国は、国連総会では多数派ではなかった。同盟国が米国支持に回って支えてきた経緯がある。今後、国連総会で米国の主張は、ますます通らなくなるだろう。アフリカ諸国や小国に影響力を持つ中国に力を与えることになろう。
・米国の核が、同盟国に向かう可能性が否定できなくなった。有力国が自国を護るために「核による自衛」に推進する余地が増えた。米国の核の傘のもとでの安全保障が考えにくくなったためである。
・米国の核管理の脆弱性が、人員削減の影響で拡大
・イーロン・マスク氏のオオナタをふるった人員削減の弊害が随所に現れる。
・核管理に必須の人員をも解雇して、核が発射できないようになった。また、核管理のスペシャリストが中国・ロシアの勧誘を受ける素地をつくった。実態を知った幹部が、あわてて要員を呼び戻しているが難航している。
・トランプ関税の実施で、米国経済運営に懸念が強まるだろう
・各国から徴収した関税をすべて物価上昇抑制に注入するなら、関税がインフレを急加速させることはないだろう。
・しかし、関税収入をすべて物価上昇の鎮圧に振り向けることは不可能だ。
・つまり、トランプ関税は「物価上昇のテコ」になる。そして、インフレの再燃が米国経済を弱めることになる。関税を払う国にも、国内景気に影をもたらし国民に耐乏生活を強いる。引いては、米国の輸出も減退することになる。
●3.ロシア、トランプ氏を称賛「ウクライナ戦争の主因はNATO」(ロイター)
●4.ゼレンスキー氏、「ウクライナは単なる資源提供国にならず」と米国提案を批判(ロイター)
・ウクライナのゼレンスキー大統領は「レアアース(希土類)など同国が産出する重要鉱物に関する米国の提案は、ウクライナの安全保障が含まれておらず不公平だ」と指摘。
・「ウクライナへの鉱物資源への投資を歓迎するとしながらも、相応の見返りが必要とし、単に資源の供給国になりたくない」と述べた。
●5.トランプ氏、自動車関税「25%前後」、半導体・医薬品関税も同程度(ロイター)
●6.不況に備えよ、バフェット氏「S&P500ETF」全売却の黙示(QuickMoney)
■II.中国株式市場
●1.上海総合指数の推移
1)2/17、上海総合+9高、3,355
2)2/18、上海総合▲31安、3,324
3)2/19、上海総合+27高、3,351
●2.1月の中国新築住宅価格、前年比▲5.0%下落、前月比は2ヵ月連続で横ばい(ロイター)
1)前年比の下落率は、昨年12月の▲5.3%からやや縮小。(中国国家統計局)不動産セクターの低迷続く。
●3.トーヨータイヤ、中国の工場を売却し撤退、年間40億円のコスト削減(日刊自動車新聞)
1)中国工場の生産分は、日本とマレーシアでの生産に切り替え。
■III.日本株式市場
●1.日経平均の推移
1)2/17、日経平均+24円高、39,174円
2)2/18、日経平均+96円高、39,270円
3)2/19、日経平均▲105円安、39,164円
●2.日本株:トランプ関税強化で自動車から始まる日本の空洞化へ警戒
1)日本企業の10~12月期の決算発表は2/14でほぼ終了した。今後は、(1)1~3月期決算や(2)2025年決算予想が注目されるだろう。
2)日経平均は強さの勢いが減速
・2/18、好決算で高値続伸していたソニーが、高値を付けた後下げた。
3)トランプ関税強化で自動車から始まる日本の空洞化へ警戒
・自動車関税を現行の2.5%⇒25.0%に引上げた場合、追加関税相当分を日本企業が引き受けると▲約1.42兆円の負担増(企業収益の悪化)となる。自動車・自動車部品6.3兆円(2024年売上高)×22.5%=1.42兆円
つまり、この関税増分を米国の消費者に価格転嫁できなければ、そっくり日本の自動車関連企業の業績マイナスとなる。
・価格転嫁した場合でも、米国内製造に対して価格競争力が低下する。米国での販売不振の要因となる。
・メキシコで生産し米国への自動車・部品輸出も同様となる。
・トランプ氏の本当の要求は、「米国で生産しろ!」そうなった場合、「日本の空洞化」が進行することになる。自動車産業はすそ野が広く深い。関税増加分の1.42兆円を超え、想定以上に日本経済に影響が出る。
4)高田・日銀審議委員の「利上げ必要」発言を受け、
・日経平均の全体に、株売りを促す。
・金利高を享受する銀行・保険株は上昇。
・日銀の金利引上げは、「円高」に促進の道である。輸出関連株にとって逆風となる。日本は貿易立国で在るが故に、全体として厳しい経済運営を迫られる。
5)2/19、日経平均は株価指数先物に断続的な売りが出て、下げ幅拡大
6)日経平均は弱含みの展開へ
・2/19、プライムの値下がり銘柄数は1,000に迫る。
・日経平均がプラスの場合でも、値下がり銘柄数が多いのが目立つ。
・日銀の金利引上げ姿勢が鮮明となり、株価には逆風が吹く。
・トランプ関税の逆効果が懸念される。
●3.コメ価格、+9割高騰、2月上旬前年比、5キロ平均3,829円、農水省 (共同通信)
●4.日銀、高田・審議委員、「さらなる利上げ必要」との考え示す(NHK)
●5.物価高で、賃上げも「焼け石に水」、GDP3四半期プラスも個人消費振るわず(TBS)
1)GDPの約6割を占める「個人消費」は▲0.1%減と、コロナ禍以来初めて4年ぶりにマイナスに転じた。
2)食品の相次ぐ値上がりを背景に、支出に占める食費の割合を示す「エンゲル係数」も28.3%と、1981年以来、43年ぶりの高水準となった。
●6.トヨタ、新型FCシステムを開発、ディーゼル並みの耐久性と高出力(日刊自動車新聞)
1)2026年にグローバル展開。
●7.新光電気、官民ファンドは6,850億円でTOB(株式公開買い付け)を開始(時事通信)
●8.東京海上、2025年3月期純利益、予想8,800億円⇒1兆円に上方修正(日経新聞)
●9.GDP10~12月期、年率+2.8%増、外需が寄与、内需は弱い(ロイター)
1)景気の実態弱い、内需次第で1~3月期マイナス成長も=野村総研・木内登英
2)内需の弱さ際立つ、1~3月期から設備投資が牽引役に=農林中総合・南武志
3)2024年の年間GDPは、実質伸び率が前年比+0.1%増。
●10.富士ソフト、米国ベインはTOB見送り、KKRの価格引上げを受け(ロイター)
●11.三井物産、豪州鉄鉱石事業の権利40%取得で計8,000億円見込む(ロイター)
●12.レゾナックHD社長、今年から攻めへ、JSRの出口には関わりたい(ロイター)
■IV.注目銘柄(投資は自己責任でお願いします)
・1895 五洋建設 業績堅調
・2413 エムスリー 業績堅調
・2764 ひらまつ 業績回復
著者プロフィール
中島義之(なかしま よしゆき)
1970年に積水化学工業(株)入社、メーカーの企画・管理(財務含む)を32年間経験後、企業再生ビジネスに携わる。 現在、アイマックスパートナーズ(株)代表。 メーカーサイドから見た金融と企業経営を視点に、株式含む金融市場のコメントを2017年から発信。 発信内容は、オープン情報(ニュース、雑誌、証券リポート等々)を分析・組み合わせした上で、実現の可能性を予測・展望しながらコメントを作成。http://note.com/soubatennbou
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