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相場展望1月22日号 米国株: 「マグニフィセント7」が主導する株高に、過熱と懸念 日本株: 日経平均は3つのエンジンで上昇も、熱狂⇒警戒への備えも
■I.米国株式市場
●1.NYダウの推移
1)1/18、NYダウ+201ドル高、37,468ドル(日経新聞より抜粋)
・NYダウは4営業日ぶりに反発した。足元で下げが目立っていたスマートフォンのアップルを中心にハイテク株が買われた。半導体受託生産の台湾積体電路製造(TSMC)が1/18に示した業績見通しが好感され、インテルなど半導体株も高かった。
【前回は】相場展望1月18日号 米国株: 株価は「熱狂」から、「息切れ」へ 日本株: 円安進行で輸出関連株上昇も、値がさ株軟弱で横ばいか
・スマートフォンのアップルはバンクオブアメリカ(BofA)による投資判断引上げを受け+3%強上昇した。BofAのアナリストは2024~2025年に生成人工知能(AI)機能を利用しやすくした「iPhone」の発売を見込み、買い替え需要が強まると予想した。アナリストが目標株価を引上げたソフトウェアのマイクロソフトにも買いが入った。
・インドの格安航空会社(LCC)から大型受注が明らかになった航空機のボーイングも大幅上昇した。半導体株が全般に買われ、NYダウの構成銘柄ではないが画像処理半導体のエヌビディアが上場来高値を更新した。アドバンストマイクロソフト(AMD)も高い。TSMCが1/18の決算説明会で示した2024年12月期通期の増収見通しを受け、業績期待が広がった。
・NYダウは寄り付き直後に▲140ドル強下げる場面があった。米長期金利が一時、前日比+0.05%高い(債券価格は安い)4.15%と約1カ月ぶりの高水準をつけた。最近発表された米経済指標が全般に景気の底堅さを示し、米連邦準備理事会(FRB)の早期利下げ観測が後退しつつある。長期金利の上昇で、株式の相対的な割高感が意識された。
・医療保険のユナイテッドヘルスが下げ、NYダウの重荷となった。医療費負担増を理由に業績見通しを引下げた同業のヒューマナの下げに連れた。
・ハイテク株比率が高いナスダック総合株価指数は3営業日ぶりに反発し、前日比+200高の15,055で終えた。交流サイトのメタなど全般に高かった。
2)1/19、NYダウ+395ドル高、37,863ドル(日経新聞より抜粋)
・1/19の米株式市場でNYダウは続伸し、最高値で終えた。人工知能(AI)の活用が企業収益を押し上げるとの期待からハイテク株や半導体関連株に連日で買いが入り、相場上昇を牽引した。米消費者の景況感の改善も、経済のソフトランディング(軟着陸)を見込んだ買いにつながった。
・多くの機関投資家が運用指標とするSP500種株価指数は続伸し、連日比+58高(+1.23%高)の4,839で終えた。2022年1月3日以来、ほぼ2年ぶりに最高値を更新した。
・エヌビディアやAMD、ブロードコムなど半導体株の上昇が目立った。交流サイトのメタがAI 向け半導体を大量に調達すると伝わり、大手ハイテク企業による半導体需要は強いとの見方を誘った。サーバーなどのスーパーコンピューターが1/18夕に四半期の業績見通しを引上げたことも追い風となった。主要な半導体関連株で構成するフィラデルフィア半導体株指数(SOX)は+4%高となり、最高値を更新した。
・幅広いハイテク株が買われ、NYダウの構成銘柄では半導体のインテルとIT(情報技術)のIBMが+3%前後上昇した。前日にアナリストが投資判断を引上げたスマートフォンのアップルも連日で買いが続いた。顧客情報管理のセールスフォースやソフトウェアのマイクロソフトも高い。
・ミシガン大学が1/19午前に発表した1月の米消費者態度指数は78.8と、ダウジョ-ンズ通信がまとめた市場予想の70.2を大幅に上回り、2年6ヵ月ぶりの高水準となった。併せて公表した1年後の予想インフレ率は+2.9%と2020年12月以来の低水準となった。米消費が落ち込まずにインフレを抑え込むことができれば「米経済は景気後退を避けられ、企業収益も成長が見込める」との声が聞かれた。
・主要株価指数が最高値をつけ「株買いのモメンタム(勢い)がさらに買いを誘った」との見方があった。買い遅れるリスクを意識した動きも出たとみられ、NYダウの上げ幅は一時+460ドルを超えた。
・もっとも、NYダウは朝方に小幅安に転じる場面もあった。シカゴ連銀のグールズビー総裁が米CNBCのインタビューで、インフレ沈静化への動きが続けば「政策金利の決定にあたって考慮に入れる必要がある」と語った。ただ、「インフレ抑制という職務を完墜する前に、何か約束することではない」とも述べ、市場の早期利下げ観測を牽制したと受け止めあっれた。米長期金利は一時4.19%とほぼ1ヵ月ぶりの水準に上昇し、株式の相対的な割高感につながる場面があった。
・ハイテク株比率が高いナスダック総合株価指数は続伸し、2022年1月以来の高値となった。
・個別銘柄では、1/19に発表した2023年10~12月期決算が市場予想を上回った保険のトラベラーズが+7%弱高となった。外食のマクドナルドやクレジットカードのアメリカンエキスプレス、銀行のJPモルガンチェースも上昇した。メタやネット検索のアルファベット、ネット通販のアマゾンなど主力株が買われた。一方、医療保険のユナイテッドヘルスやドラッグストアのウォルグリーンズは売られた。
●2.米国株:「マグニフィセント7」が主導する株高に、過熱と懸念
1)米国株相場のテーマは、「利下げ期待」から「マグニフィセント7」に転換した。
2)米株「マグニフィセント7」が主導する株高
・「マグニフィセント7」とは、(1)テスラ(2)アマゾン(3)マイクロソフト(4)アップル(5)アルファベット(6)メタ(7)エヌビディアの巨大ハイテク銘柄のことである。
3)米国株の中でも、これらのハイテク大手に投資が集中し、相場を上昇させている。そして、人工知能(AI)を巡る強気が株価上昇のエネルギーを供給し、半導体関連やNYダウなどに波及している。
4)気懸りなのは、この上昇過程の中で「過熱と警戒」が台頭し始めていることだ。すでに、アップルとテスラに売り圧力が確認されており、その動向に注目したい。
5)また、FRBによる政策金利の「引下げ」ではなく「据え置き」にも注意したい。
●3.利下げが近いとの考えは「時期尚早」=SF連銀デイリー総裁(ロイター)
1)インフレ率を米連邦準備理事会(FRB)の目標2%まで低下させるためには、「やるべきことが沢山残っている」。
●4.米・先週分新規失業保険申請件数は18.7万件、予想20.5万件を下回る(フィスコ)
■II.中国株式市場
●1.上海総合指数の推移
1)1/18、上海総合+12高、2,845(亜州リサーチより抜粋)
・自律反発狙いの買いが優勢となる流れとなった。
・上海総合指数は前日、約3年8ヵ月ぶりの安値をつけたとあって、値ごろ感から買われた。指数は一時▲2.6%安と売られたものの、引けにかけてプラスに転じた。
・中国経済の先行き不透明感が重しとなり、上値は限定されている。
・業種別では、ハイテク関連の上げが目立ち、ソーラー発電関連も物色された。複数のアナリストは「2024年~2025年にかけて、エコ発電の規模は拡大する」との分析を明らかにしている。消費関連もしっかり。金融・軍事関連・医薬・運輸なども買われた。半面、素材の一角は安く、エネルギー・不動産・公益が売られた。
2)1/19、上海総合▲13安、2,832(亜州リサーチより抜粋)
・中国経済の先行き不透明感が改めて意識される流れとなって、2020年5月以来の安値を再び切り下げた。
・1/17に公表された2023年第4四半期(10~12月)の国内総生産(GDP)成長率は予想に届かず、12月の各種統計も経済成長の鈍化を示す内容だった。
・中国政府が景気支援スタンスを強めるとの期待は根強いものの、一段の具体的な政策が打ち出されない点も不安視されている。
・資金流出も警戒された。
・株式相互取引スキームを通じたノースバウンド取引(香港⇒本土)では、依然として売り越しが続いている。ただ、指数はプラス圏に浮上する場面もみられた。
・当局の株価対策が期待されている。1/18のA株市場が後場から急反発したことに関しては、「国家隊」と呼ばれる政府系投資会社が買い介入したとの観測が流れた。
・業種別では、発電の下げが目立った。経済活動の縮小で需要も減少すると懸念された。
石炭も安く、証券も冴えない。インフラ関連・ハイテク・素材・医薬・自動車・不動産なども売られた。半面、旅行関連はしっかり。今月1/26から始まる「春運」(春節前後40日間の特別旅客輸送態勢)を前に、需要増の期待が高まっている。その他、メディア・食品・酒造・銀行の一角に買いが入り、上海市場の代表銘柄で構成される「上海50A株指数」は+0.2%逆行高した。
●2.格付け会社ムーディーズ、中国華融をジャンク級に格下げ、他の資産管理3社も(ブルームバーグ)
1)華融は、中国政府が銀行が抱える不良債権を処理するために、1999年に設立した4社の1つ。
2)他の3社は、中国長城資産管理、中国東方資産管理、中国信達資産管理。
●3.1/18、中国株が急反発、主要ETFの売買が急増(ブルームバーグより抜粋)
1)政府系ファンドの買いが、急反発の裏にあるとの憶測を呼んだ。ブルームバーグは、「過去に市場が急落したときに、そうだったように、国家隊が市場を落ち着かせるために介入した公算が大きい」と指摘した。
2)外国人投資家は中国株を売り越している。前営業日の売り越し額は約130億元と、過去1年余で最大だった。
●4.中国首相が大規模支援策を否定、中国株を買う理由は何もない(みんかぶより抜粋)
1)上海株は大幅続落で、資金流出が止まらない
・2020年4月以来、3年9ヵ月ぶりの安値をつけ、2,800ポイントの大台割れ寸前。
・中国人投資家は中国市場にこりごりし、日本株に資金を投入している。中国の日本株ETFに殺到しており、「チャイナAMC野村日経225」の取引が昨日に続き今日も一時停止となっている。
・証券時報は1/18つけの一面で、日本株ETFへの投機を控えるよう警告した。
・日本株への投資を控えたところで、その資金が中国市場に戻ってこないだろう。
2)弱い中国の経済指標
・GDPは予想に届かず、小売売上高は予想を下回り、失業率は悪化。不動産投資と新築住宅価格は前回からさらに悪化した。さらに、出生率が過去最少を記録し、少子高齢化の加速が懸念される。
3)中国首相は、政府は経済を回復のため「大規模」な景気支援策に頼らないと発言
・マーケット唯一の希望であった「大規模」支援策への期待が消滅した。
・ポジティブ材料は何もなく、もはや中国株を買う理由は何もない。中国市場からの資金流出はさらに加速し、香港株も一緒に下落するだろう。
●5.中国国務院、中国人民銀行関連法を改正し、共産党の監督強化(ロイター)
1)人民銀行は、米連邦準備理事会(FRB)など海外中央銀行と異なり、独立性は担保されておらず、金利や人民元の価値の重要な変更には国務院の承認が必要。
●6.2023年のロシア市場で、中国製自動車のシェアが49%に増加(Record China)
■III.日本株式市場
●1.日経平均の推移
1)1/18、日経平均▲11円安、35,466円(日経新聞より抜粋)
・年初から大幅な上昇が続いたことによる短期的な過熱を警戒する雰囲気が強く、利益確定売りがやや優勢となり、日経平均は3日続落した。中国・上海株式相場の下落も投資心理の重荷となった。外国為替市場での円安・ドル高を手掛かりとした輸出関連株の上昇や海外短期筋の先物買いなどで強含む時間帯も多かったが、大引けにかかて散発的な売りが出た。
・年初から続いた日経平均の急伸に、ここ数日で一服感が出ており、いったん相場は天井をつけたとの見方が上値の重さにつながった。前日の米株式相場の下落や、上海市場に上場する日本株上場投資信託(ETF)の一時売買停止が伝わったことも積極的な上値追いを見送らせた。
・上げ幅は午前に+250円を超える場面があった。米長期金利の上昇を背景に円相場が足元で1ドル=148円まで円安・ドル高が進み、輸出企業を中心に業績拡大期待が広がった。輸出用機器など輸出株が買われ、トヨタは実質的な上場高値を更新した。
・市場では「日本株の先高観が薄れたわけではないが、来週から本格化する決算発表や日銀金融政策決定会合を見極めたいと考える投資家が上値を抑えた」との声があった。
・東証株価指数(TOPIX)は3日続落した。JPXプライム150指数も3日続落した。
・個別銘柄では、三井物産・伊藤忠は売られた。東京海上・SMC・セブン&アイ・ネクソンも安い。一方、アドテスト・ホンダ・ブリヂストンは買われた。
2)1/19、日経平均+497円高、35,963円(日経新聞より抜粋)
・日経平均は4日ぶりに反発し、1990年2月以来となる33年11ヵ月ぶり高値となる。前日の米株式市場で主要株価指数が上昇した流れを受け、東京市場でも株価指数先物を中心に買いが優勢となった。一時は節目の36,000円を上回り、上げ幅は+600円を超えた。
・前日の米株式市場でNYダウなど主要株価指数が上昇した。アップルやエヌビディアなどハイテク関連が買われた。米ハイテク株高の流れを受け、東京市場では値がさの半導体関連などが買われ、指数を押し上げた。外国為替市場で円安・ドル高が進んだことも輸出関連を中心に追い風となった。
・午前の買い一巡後は上値の重い展開が続いた。節目の36,000円を上回る場面では、利益確定や戻り待ちの売りが出やすかった。午後に入ると、週末を控えた持ち高調整の売りも出て上値を抑えた。
・東証株価指数(TOPIX)とJPXプライムは反発した。
・個別銘柄では、半導体装置の東エレクとアドテスト、自動車大手のトヨタが株式分割後の上場来高値を更新した。ソフトバンクGやレーザーテックも高い。一方、中外薬やファナックが下落し、川崎汽船や三菱UFJが冴えなかった。
●2.日本株:日経平均は3つのエンジンで上昇も、熱狂から警戒への備えもお忘れなく
1)日経平均は大幅上昇しているが、そのエンジンは3つあり、
(1)人工知能(AI)への期待を背景にハイテク半導体関連株。
(2)円安を追い風に自動車株など輸出関連株。
(3)多額の投資資金を吸収できる業績向上期待ができる大型株。
に集中している。
2)その要因は、
・米国の
(1)米半導体関連の上昇。
(2)人工知能(AI)の成長期待。
(3)FRBの政策金利低下期待。
・日本の
(4)中国含む海外投資家による株買い。
3)日本株市場に冷や汗
・富士通、英国・郵便会計システムで不祥事、賠償責任。
・ダイハツ、認証試験巡る不正。
4)懸念要因が膨らむ
・日本:日銀の利上げと、米国:利下げの方向にあるが及ぼす影響。
⇒日米金利差が縮小。
⇒円高。
⇒円安で輸出関連株が上昇していたが、円高反転リスク。
米国半導体関連株の急伸も、高値警戒。
5)熱狂から警戒への備えも、お忘れなく
・1/11 1/17 1/18 1/19
日経平均の値動き +608円高 ▲141円安 ▲11円安 +497円高
新高値銘柄数 244 163 56 82
新安値銘柄数 0 11 17 13
値上がり銘柄数 1,064 486 863 875
値下がり銘柄数 548 1,114 729 717
・1/19日経平均は大幅高だが、新高値銘柄数は減少傾向。しかも、値下がり銘柄数割合が増える傾向を示している。
・短期筋の海外投資家は「逃げ足」が速い。
●4.富士通、英郵便局の会計システムを巡る冤罪事件、被害者への補償を検討(NHK)
1)富士通幹部、英郵便局を巡る史上最大規模の冤罪事件「導入当初から欠落を認識」。(TBS)
2)富士通の会計システムを導入した英郵便局で、1999~2015年に起きた、窓口の現金残高と会計記録が一致せず、局長ら700人以上が詐欺や横領などの罪で起訴された。(時事通信)
●5.積水ハウス、米戸建て住宅メーカー・MDCを約7,200億円で買収(時事通信)
■IV.注目銘柄(投資は自己責任でお願いします)
・1942 関電工 業績堅調。
・3086 Jフロント 業績好調。
・4503 アステラス薬 高配当と業績好調。
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