相場展望11月20日号 米国株: クリスマス商戦を追い風に走り出した米国株、12月中旬まで 日本株: 米国株高を追って海外投資家・証券自己部門が買い転換

2023年11月20日 12:16

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■I.米国株式市場

●1.NYダウの推移

 1)11/16、NYダウ▲45ドル安、34,945ドル(日経新聞より抜粋
  ・決算発表で市場予想を下回る見通しを発表した銘柄を中心に売られ、NYダウの重荷となり、5営業日ぶりに反落した。このところの相場の上昇が続いた後で、主力銘柄の一部には利益確定や持ち高調整の売りも出やすかった。
  ・ネットワーク機器のシスコシステムズは▲10%弱下げた。前日夕に四半期決算と同時に示した通期の売上高見通しが市場予想を下回った。小売のウォルマートも11/16朝に四半期決算と併せて発表した通期の1株利益見通しが市場予想以下だったことが嫌気され、▲8%安となった。市場では「IT(情報技術)と消費関連の企業の業績に対する先行懸念が市場心理」の悪化につながったとの声が聞かれた。
  ・今週発表が相次いだ10月の米消費者物価指数(CPI)による利上げ局面が終わったとの見方が広がった。NYダウは直近4営業日で+1,000ドル余り上昇し、前日には8月中旬以来の高値で終えていた。短期的な過熱感が意識されやすく「株買いが一服してもおかしくない」との見方が出ていた。NYダウの下げ幅は▲170ドルを超える場面があった。
  ・もっとも、売り一巡後は取引終了にかけて下げ渋った。朝発表の週間の新規失業保険申請件数は市場予想以上に前週から増えたうえ、前回分も小幅に上方修正された。労働需給の逼迫が緩和していると受け止められ、FRBの金融引締めの長期化観測が一段と後退した。米債券市場では長期金利が低下し、株式の相対的な割高感が薄らいだことが投資家心理の支えとなった。
  ・個別銘柄では、ドラッグストアのウォルグリーンズや航空機のボーイングが安い。米原油先物相場が大幅に下落し、業績懸念から石油のシェブロンや建機のキャタピラーも売られた。半面、アナリストが投資判断を引上げた半導体のインテルは+7%弱高となった。外食のマクドナルドのほか、ソフトウェアのマイクロソフトやスマートフォンのアップルも上昇した。ネット検索のアルファベットや画像処理半導体のエヌビディアが買われた。

【前回は】相場展望11月16日号 米国株: インフレ鈍化⇒金利低下⇒株高も、急騰後の反落に注意 日本株: 「突出して上昇」した株価の、「反落リスク」に目配り

 2)11/17、NYダウ+1ドル高、34,497ドル(日経新聞より抜粋
  ・米連邦準備理事会(FRB)の利上げ局面が終了したとの見方が相場を支えた。半面、前日にかけ大きく上昇した反動で利益確定売りも出た。
  ・サンフランシスコ連銀のデイリー総裁は11/17の講演で、経済見通しの不確実性を踏まえてFRBは「待つという大胆さ」が必要だと述べ、追加利上げに慎重な姿勢を示した。金融引締めが米景気を冷やすとの警戒感が後退し、株買いを誘った。
  ・米債券市場では長期金利が4.4%台前半と、前日終値4.43%とほぼ同水準で推移。未明には一時4.37%とおよそ2ヵ月ぶりの低水準を付けた。今週は10月の米消費者物価指数(CPI)など物価指標がインフレ鈍化を示し、長期金利が低下傾向にある。株式の相対的な割高感が薄れたのも相場を押し上げた。
  ・もっとも、NYダウの上値は重かった。今月のNYダウは前日までに+1,900ドル弱上昇し、短期的な過熱感が意識された。心理的節目の35,000ドル近辺では、利益確定売りが出た。ボストン連銀のコリンズ総裁は米CNBCのインタビューで「追加利上げは選択肢から外していない」との認識を示したのも相場の重荷だった。
  ・個別株では、ドラッグストアのウォルグリーンズやクレジットカードのアメリカンエキスプレス、建機のキャタピラーが上昇した。ネット通販のアマゾンや交流サイトのメタが上昇した。半面、ソフトウェアのマイクロソフトとスポーツ用品のナイキは下げた。

●2.米国株:クリスマス商戦に向けて走り出した米株式市場⇒12月中旬まで継続か

 1)米国株式市場はクリスマス商戦も加わり、一層の株高になると予想
  ・環境も改善し、安心感が広がり、ポジティブとなる。
  ・インフレ鈍化・・・10月米消費者物価指数(CPI)の鈍化。
  ・米長期金利低下・・FRB利上げ警戒感の後退。
  ・つなぎ予算通過・・政府機関閉鎖回避。
  ・底堅い貴人消費・・10月米小売売上高が市場予想を上回った。

 2)NYダウは、上昇ロケットが再点火し、次の節目は35,400ドル
  ・次の節目35,400ドルを超えると、10/27底を起点に上昇した波動に戻る。
  ・8/1高値は35,630ドルで、11/17は34,497ドルであり、乖離は1,133ドル。
  ・NYダウの推移 8/1    10/27  11/17
          35,630ドル 32,417 34,991
   下落幅▲3,213上昇幅+2,574:戻り率80.1%
  ・SP500指数の戻り率も85.7%であり、全値戻りの可能性が高まる。

 3)懸念材料
  ・7~9月期決算発表で業績や見通しが振るわなかった銘柄への売りが重荷。
  ・このところの大幅上昇で、利益確定や持ち高調整の売りが出やすい。
  ・米10年物金利が11/17、米利上げ終了観測で4.43%まで低下。米長期金利が3%台まで低下すると、米景気後退(リセッション)の可能性が増すと予想されるため、株価反落の恐れが出やすくなる。

●3.FRB高官発言(フィスコ)

 1)クリーブランド連銀メスター総裁
  ・インフレは鈍化したが、物価目標2%を完全に回復するには時間を要する。

 2)クック理事
  ・ソフトランディングは可能だが、確かではない。
  ・エネルギー価格の急激な上昇リスクは、インフレの鈍化を遅らせる可能性が
ある。

●4.米失業保険の継続受給者数は前週比+3.2万人増の186.5万人、2年ぶり高水準(ブルームバーグ)

 1)職探しの長期化を示唆。

 2)米先週分の新規失業保険申請件数が予想以上に増加(フィスコ)
  ・米労働市場逼迫緩和が利上げ終了観測を強める。

●5.10月米消費者物価指数は+3.2%上昇、上げ幅縮小し、5ヵ月連続で+3%台(朝日新聞)

●6.欧米インフレで、サンタの袋は軽めか(ロイター)

 1)懐具合の寂しい消費者が食品や生活必需品の購入を優先し、玩具は後回し。サンタクロースの運ぶクリスマスプレゼントは少なめになるかもしれない。

●7.バフェット氏のバークシャー、GM株投資から撤退、HP株の保有も減らす(ブルームバーグより抜粋

 1)7~9月期は7銘柄を売却し、保有株式数を減らした。ゼネラルモーターズ(GM)、アクティビジョンの全株式を手放し、HPなどへの投資を縮小した。

 2)投資額は前期比▲10%減の3,128億ドル(約47兆3,500億円)。

 3)1~9月の売却益は236億ドル。確保した資金の多くが米短期国債に向けられ、手元資金は過去最高の1,570億ドル。

■II.中国株式市場

●1.上海総合指数の推移

 1)11/16、上海総合▲21安、3,050(亜州リサーチより抜粋
  ・売り圧力が意識される流れとなった。
  ・上海総合指数はこのところの上昇で、約1ヵ月ぶりの高値水準を回復していた。
  ・米中関係の改善期待もやや薄れた。米ホワイトハウスは11/15(日本時間11/16午前)、「バイデン大統領と中国の習近平・国家主席は幅広い問題を率直で建設的に協議した」と報告した。ただ、バイデン大統領は記者会見で、習近平・国家主席を「独裁者」と呼ぶなど不協和音が漂っている。
  ・指数は下げ幅を広げた。
  ・業種別では、ハイテク関連の下げが目立ち、医薬も冴えず、素材・消費関連・インフラ関連・不動産なども売られた。半面、メディア関連はしっかり、銀行の一角も買われた。

 2)11/17、上海総合+3高、3,054(亜州リサーチより抜粋
  ・経済対策への期待感が相場を支える流れとなった。
  ・景気鈍化懸念が強まるなか、中国当局は景気刺激策を強める見通しだ。専門家や関係者の話として、預金準備率の年内引下げや、不動産支援に向け大規模な低金利資金の投入などが実施されるという。
  ・米中対立の緩和期待がやや後退するなか、指数は安く推移していたが、引けにかけてプラスに転じた。
  ・業種別では、医薬の上げが目立ち、部品や完成車などの自動車もしっかり。素材・半導体・証券・空運なども買われた。半面、エネルギーは冴えない。原油安が重しとなった。昨夜のWTI原油先物は▲4.9%安と続落し、約4ヵ月ぶりの水準に落ち込んだ。通信・ネットワーク・銀行・保険・公益・メディア・娯楽も売られた。

●2.中国新築住宅価格、10月は4ヵ月連続で下落(ロイターより抜粋

 1)10月の不動産販売(床面積ベース)は前年比▲20.33%減少した。

 2)10月に住宅価格が下落したのは70都市中56都市。9月の54都市から増加した。北京・深圳・広州の主要3大都市はすべて値下がり。

 3)資金繰り難に陥る不動産開発業者が増えるなか、消費者は住宅購入に慎重な姿勢を崩していない。

 4)中国人民銀行は都市部の住宅改築や手頃な価格の住宅供給のために、少なくとも1,370億ドルの低金利融資を提供する計画。

 5)国家統計局報道官は「不動産市場はまだ調整と変革の段階にあり、景気回復は紆余曲折を経る」と述べた。

●3.中国国家統計局11/15公表、10月小売売上高は前年同月比+7.6%増加(ロイター)

 1)ゼロコロナ政策で行動制限されてマイナス成長だった前年の反動という側面が大きい。不動産市場も低迷し不透明感も根強い。

 2)10月鉱工業生産は+4.6%増と、前月の+4.5%を上回った。

 3)不動産開発投資は、1~10月で▲9.3%減と、1~9月の▲9.1%減からマイナス幅が拡大した。中国恒大集団や碧桂園など多くの開発会社が経営危機に直面している。

■III.日本株式市場

●1.日経平均の推移

 1)11/16、日経平均▲95円安、33,424円(日経新聞より抜粋
  ・前日まで日本株の上昇が続いたため、短期的な過熱感を意識した売りが優勢だった。ただ、前日の米株高や円安・ドル高を背景に主力銘柄の一角には買いも入り、下げ幅は限られた。
  ・前日まで日経平均は3日続伸し、11/15は今年最大の上げ幅となった。今日は主力の半導体関連を中心に利益確定売りが出やすかった。11/16にアジア株や米株価指数が軟調に推移しとことも日本株の重荷となった。午前に下げ幅は▲200円を超えた。
  ・午前には上昇する場面もあった。前日の米株式市場で主要株価指数が上昇したことが追い風になった。外国為替市場で前日に比べて円安・ドル高が進み、自動車など輸出関連の一角に採算改善を意識した買いが入ったことも支えになった。午後にかけては下げていた主力の半導体関連に買いが入り、日経平均は下げ幅を縮小した。
  ・個別銘柄では、半導体関連のアドテストが下げ、KDDI・第一三共も安い。一方、リクルートが大幅高となり、トヨタ・三菱UFJも買われた。

 2)11/17、日経平均+160円高、33,585円(日経新聞より抜粋
  ・安く始まったが、米追加利上げ観測の後退を受けて短期志向の投資家を中心に株価の先高観が一段と強まるなか、株価指数先物への断続的な買いが日経平均を押し上げ、今日の高値圏で終えた。7/3の年初来高値33,753円以来、4ヵ月ぶりの高値を付けた。
  ・日経平均は9/15の直近高値33,533円を上回ると、海外ヘッジファンドなどによる先物買いに弾みがついた。市場では「11月下旬から12月上旬にかけて中間配当の再投資による買いが見込まれる。今回は増配した企業が目立ち、例年以上に再投資の金額が増えそうなことも株価を押し上げた」との声が聞かれた。
  ・午前は前日終値を下回って推移する場面が目立った。日経平均は1月に入ってからの上げ幅が前日までで約+2,500円に達するなど過熱感が強く、前日の米NYダウの下落をきっかけにした利益確定売りが先行した。午前には著名投資家ウォーレン・バフェット氏が率いる米投資会社場バ-クシャ-ハザウェイによる円建て債「グローバル円債」の発行額が1,220億円に決定。ただ、発行額が市場の期待を下回り、日本株への影響が小さいとの見方が広がったことも売りを促した。
  ・個別株では、信越化・KDDIが高く、中外薬・富士フィルム・デンソーが上昇。一方、ファストリ・ソフトバンクG・スクリンが安く、アサヒ・住友不・ソニーが下落した。資生堂や安川電も売られた。

●2.日本株:米国株高と海外投資家・証券会社自己部門の買い転換を追い風にして加速

 1)7/13高値33,753円に、11/17の33,585円とあと+168円上昇で肩を並べる

 2)海外投資家と証券会社自己部門が「買いに転換」し、日経平均を上昇に主導
  ・海外投資家は8月5週に買残がピーク、その後、10月4週まで売り転換した。
   8月9週(~9/1)買残 ⇒ 10月4週(~10/27)
   +8兆8,144億円      +4兆8,406:▲3兆9,738億円売越
   その後、買い戻しに再転換している。
  ・証券会社自己部門も9月4週に買残がピークで、10月4週まで売越。
   9月4週の買い残高(~9/29) ⇒ 10月4週(~10/27)
   +5兆0,272億円         +2兆8,800億円:▲2兆1,472億円売越
   その後、買い越に転換。

 3)懸念材料
  ・短期的な過熱感に警戒。
  ・ストキャスティクスSLOWが11/17に91と、高値圏の70を超えた。
  ・円の動向が、円高に転換する可能性に注目。
  ・日米10年金利の差が、縮小傾向に転換した。
  ・輸出関連企業の業績に負の影響。

 4)日本株は米株式相場と関連性が高いため、株価上昇に「追い風」
  ・米国株はクリスマス商戦とインフレ鈍化・金利低下を織り込んで、上昇予想。
  ・日本株も米国株の上昇を追い風にして、動意付くと予想。

●3.内閣府発表、7~9月期GDP、年率▲2.1%減、3四半期ぶりのマイナス成長(毎日新聞)

 1)物価高を背景に、個人消費ふるわなかったことが要因。
  ・GDPの過半を占める個人消費が前期比▲0.04%減、2四半期連続のマイナス。
  ・物価上昇で食料品の販売が低迷したことが響いた。

 2)設備投資など内需も弱い。

●4.公的年金2年連続目減りへ、2024年▲0.4%引下げ、物価高騰に苦しむ家計に打撃(共同通信)

●5.アサヒ、金融機関9社が政策保有株を一斉売却、最大1,943億円規模(読売新聞)

■IV.注目銘柄(投資は自己責任でお願いします)

 ・2146UT業績向上期待。
 ・6370栗田工業 堅調な業績。

著者プロフィール

中島義之

中島義之(なかしま よしゆき) 

1970年に積水化学工業(株)入社、メーカーの企画・管理(財務含む)を32年間経験後、企業再生ビジネスに携わる。 現在、アイマックスパートナーズ(株)代表。 メーカーサイドから見た金融と企業経営を視点に、株式含む金融市場のコメントを2017年から発信。 発信内容は、オープン情報(ニュース、雑誌、証券リポート等々)を分析・組み合わせした上で、実現の可能性を予測・展望しながらコメントを作成。http://note.com/soubatennbou

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