相場展望9月28日号 米国株: NYダウ「三尊天井」、上昇支持線34,400ドル割れで警戒 日本株: 9/27反発は「一時的」、「10月相場は荒れ展開」に注意

2023年9月28日 13:16

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■I.米国株式市場

●1.NYダウの推移

 1)9/25、NYダウ+43ドル高、34,006ドル(日経新聞より抜粋
  ・前週に下げが続いた後で、一部の銘柄に値ごろ感からの買いが入り、指数を支えた。一方、米連邦準備理事会(FRB)の金融引締めが長期化することへの警戒は根強く、指数は下げて推移する場面もあった。
  ・NYダウは前週末までの4日間で▲660ドル下落していたため、値ごろ感から買いを誘い、相場を支えた。相場の動向にはっきりした方向が出にくかったが、指数の構成銘柄でアナリストが投資判断を引上げた化学のダウの上昇が目立った。機械のハネウェルや航空機のボーイングといった景気敏感株の一部にも買いが入った。
  ・半面、NYダウは下げる場面が目立った。FRBがより高い政策金利を長期にわたって維持するとの見方から、9/25の米債券市場で長期金利が一時4.5%台半ばと、2007年10月以来の高水準を付けた。金利と比較した米国株の相対的な割高感が意識された。
  ・個別株では、ドラッグストアのウォルグリーンズや医療保険のユナイテッドヘルス、スマートフォンのアップルも上昇した。人工知能(AI)開発の新興企業と資本・業務提携すると発表されたネット通販のアマゾンが上昇、半導体のエヌビディアも買われた。一方、工業製品・事務用品のスリーエムやクレジットカードのビザ、飲料のコカコーラが下落した。

【前回は】相場展望9月25日号 米国株: インフレ再加速で、高金利が数年となる可能性 日本株: 日本株は底堅いが、外国人の先物売りに注意

 2)9/26、NYダウ▲388ドル安、33,618ドル(日経新聞より抜粋
  ・米長期金利が上昇し、株式の相対的な割高感が意識されたことが重荷となった。政府機関が一部閉鎖になるリスクも投資家心理の悪化につながり、NYダウは▲430ドル強安となる場面があった。
  ・1日の下げ幅としては、3/22の▲530ドル以来の大きさとなった。金融引締めが長期化するとの観測が広がっており、9/26の米債券市場では長期金利が一時4.56%と2007年10月以来の高水準を付けた。金利の上昇で、相対的な割高感が強まった株式に売りが出やすかった。ドルが主要通貨に対して上昇し、米企業の海外事業の収益が目減りするとの見方も、株式相場の重荷となった。
  ・今年の米連邦公開市場委員会(FOMC)で投票権を持つミネアポリス連銀のカシュカリ総裁は9/26に同連銀サイトに公開した論文で、+0.25%の利上げをした後も米経済がソフトランディング(軟着陸)できる確率が60%との見方を示した。インフレが想定以上に根強いケースについても触れており、総じて金融引締めに積極的な内容と受け止められた。
  ・米議会の予算協議が難航しており、新しい会計年度が始まる10/1までに新年度の予算案が成立しなければ、政府機関の一部が閉鎖される可能性がある。9/25には格付け会社が政府機関の閉鎖を、格付けにネガティブとの見方を示しており、市場では「米国債の格下げリスクが意識され、投資家心理の悪化につながった」との見方があった。
  ・9/26午前発表の9月の米消費者信頼感指数は前月の改定値から5.7ポイント低下の103.0と、ダウジョーンズ通信が集計した市場予想105.5を下回った。8月の新築住宅販売件数も市場予想に届かなかった。高金利のもとで米景気が悪化しているとの見方も株売りにつながった。
  ・個別銘柄では、金利上昇で高PER(株価収益率)のハイテク株が売られやすくスマートフォンのアップルとソフトウェアのマイクロソフトが下げた。建機のキャタピラーや航空機のボーイングといった景気敏感株にも売りが出た。ネット通販のアマゾンが▲4%安。米連邦取引委員会(FTC)が反トラスト法(独占禁止法)に違反した疑いで提訴し、売りに押された。ネット検索のアルファベットと電気自動車のテスラも下げた。

 3)9/27、NYダウ▲68ドル安、33,550ドル(日経新聞より抜粋
  ・米長期金利が一段と上昇し、株式相場の重荷となった。下げ幅は一時▲300ドルを超えた。金利の上昇が一服すると、株式への売りも一巡し、NYダウは下げ幅を縮めた。
  ・米連邦準備理事会(FRB)による金融引締めが長期化するとの観測が根強い。朝方発表の8月の米耐久財受注額は前月比で減少を見込んでいた市場予想に反して増加し、米経済が底堅いとの見方を誘った。
  ・原油高がインフレ再燃につながるとの懸念もある。9/27の米原油先物相場は、米国内の需要引締り観測を背景に1バレル94.17ドルと昨年8月末ごろ以来の高値を付ける場面があった。
  ・原油高や米金融引締めの長期化観測を受けて、米債券市場で長期金利が上昇。一時は前日比+0.11%高い4.64%と、2007年10月以来の高水準を付けた。相対的な割高感が強まった株式の売りにつながった。市場では「夏の相場を牽引していたハイテク株の持ち高調整の売りが続いている面もある」との受け止めもあった。
  ・金利上昇でドルが主要通貨に対して上昇している。ドル高で米企業の海外事業の収益が目減りするとの観測も、株売りを誘った。
  ・米議会の予算協議が難航し、新しい会計年度が始まる10/1までに予算案が成立しないリスクがくすぶっていることが、投資家心理に影響したとの見方もある。半面、「現時点では株式市場とあまり関係がない」との声も聞かれた。
  ・引けにかけては米長期金利の上昇が一服。金利の上昇を嫌気して売られていたハイテク株を中心に買い直す動きが広がった。
  ・朝方は買いが先行していた。9/27朝の米債券市場で長期金利が前日終値をやや下回る水準で推移しており、株式の相対的な割高感が薄れたと見た買いが入っていた。
  ・個別株では、医薬品・医療機器のJ&Jや金融のゴールドマンサックス、スマホのアップルが下落した。スポーツ用品のナイキや映画・娯楽のディズニーも安かった。アナリストから目標株価引下げを受けた電気自動車のテスラは売られた。一方、原油など資源高を背景に石油のシェブロンや建機のキャタピラーが上昇。ソフトウェアのマイクロソフトや顧客情報管理のセールスフォースも買われた。画像処理半導体のエヌビディアやネット検索のアルファベットなどが高かった。

●2.米国株:NYダウは「三尊天井」を形成、上昇支持線34,400ドル割り込む

 1)NYダウはチャート上「三尊天井」を示現、上昇支持線34,400ドルを割る
  ・「三尊天井」は売りシグナルと言われている。
  ・加えて、上昇支持線割れは、NYダウが下落基調に入ったことを示している。

 2)長期金利を代表する10年物金利の上昇が止まらない
  ・住宅ローン30年固定金利は、7%を超えた。

 3)金利上昇で債券投資のうま味が増すに対して、米国株の割高感が増大
  ・とりわけ、グロース(成長)株として急伸してきたハイテク株に対する売りがターゲットとなっている。
  ・金利上昇の天井が見えていない。そのため、ハイテク株を中心に、米国株全体に「売られやすい」状況にあると言える。

■II.中国株式市場

●1.上海総合指数の推移

 1)9/25、上海総合▲16安、3,115(亜州リサーチより抜粋
  ・模様眺めのスタンスが強まる流れとなった。
  ・中国では今週、経済統計の公表が集中する。9/27に8月の鉱工業利益、9/29に9月の財新中国製造業PMI(民間統計)、財新中国サービス業PMI、9/30に9月の製造業PMI(国家統計局)、非製造業PMIなど。そのほか、今週は中秋節・国慶節の大型連休もスタートする。(9/29~10/6、香港は10/2休場)
  ・業種別では、不動産業に売りが先行。デベロッパーを巡る流動性懸念が再び意識された。香港上場の中国恒大集団は9/24、主力子会社の恒大地産集団について、「当局による立件調査を受けているため、新規債券発行の適格基準を満たしていない」と説明した。外貨建て債務を巡る債権者との協議も難航。同社は先週9/22に、今月9/25~26に予定していた協議をさらに延期すると発表した。ハイテク株も冴えない。証券も安い。食品・酒造・素材・エネルギー・インフレ関連なども売られた。

 2)9/26、上海総合▲13安、3,102(亜州リサーチより抜粋
  ・模様眺めのスタンスが継続する流れだった。
  ・中国では今週、9/27に8月の鉱工業利益、9/29に9月財新中国製造業PMI、財新中国サービス業PMI、9/30に9月製造業PMI(国家統計局)、非製造業PMIなどが相次ぎ公表される予定だ。
  ・中秋節・国慶節の大型連休は今週からスタートする(9/29~10/6、香港は10/2休場)。
  ・株式相場は下落したが下値は限定的。当局の経済対策に対する期待感が相場を支えている。
  ・業種別では、通信の下げが目立ち、消費関連も冴えない。素材・エネルギー・銀行・インフラ建設関連・軍事関連なども売られた。半面、ITハイテクの一角はしっかり、不動産・証券も買われた。

 3)9/27、上海総合+5高、3,107(亜州リサーチより抜粋
  ・過度な景気懸念の後退が相場を支える流れとなった。
  ・朝方公表された8月の工業企業利益は+17.2%増加し、前月の▲6.7%減からプラス成長を回復した。当局が定めた2023年国内総生産(GDP)の+5%前後の成長目標は達成可能、とする声も市場の一部から聞かれている。
  ・また、外国為替市場で、対米ドルの人民元安が一服していることも買い安心感につながった。
  ・ただ、上値は限定的。
  ・中国ではこの後、9/29に9月の財新中国製造業PMI(民間集計)・財新中国サービス業PMI、9/30に9月の製造業PMI(国家統計局)と非製造業PMIなどが公表されるため、結果を見極めたいとするスタンスも漂っている。
  ・業種別では、医薬の上げが目立ち、ハイテクもしっかり。インフラ関連も物色された。エネルギー・素材・メディア・娯楽・食品・酒造なども買われた。半面、銀行・保険は冴えず。公益・運輸・自動車の一角が売られた。

■III.日本株式市場

●1.日経平均の推移

 1)9/25、日経平均+276円高、32,678円(日経新聞より抜粋
  ・朝方は、日銀の緩和継続姿勢を背景に買いが先行した。日銀の植田総裁は前週末、金融政策決定会合後の記者会見で、政策修正の時期について「到底決め打ちは出来ない」と述べ、緩和政策が当面続くとの見方が強まった。
  ・その後、前週末の米国株安が重しとなり、日経平均は下げに転じる場面もあったが、下値は堅く、まもなくプラス圏に盛り返した。前週に▲1,100円超下落していたことで、リバウンド狙いの買いが入りやすかった。時間外取引での米株価指数先物高も支えとなり、上げ幅を拡大し、後場終盤には32,722円(前週末比+319円高)まで上伸した。
  ・一巡後は一服症状ながら、大引けにかけて高値圏で推移した。
  ・個別株では、日経平均の寄与度が高い、東エレク・ソフトバンクG・アドバンスが上昇した。アステラス・エーザイ・住友ファーマなど医薬品株が堅調。7&i・三越伊勢丹・高島屋などの小売株や、キッコーマン・キリン・日清食・などの食料品株も高い。コナミ・トレンド・ネクソンなど情報通信株や、ソニー・TDK・オムロンなどの電機株も買われた。任天堂・バンナム・アシックスなどのその他製品株や、伊藤忠・三井物産・豊田通商などの卸売株も高い。

 2)9/26、日経平均▲363円安、32,315円(日経新聞より抜粋
  ・米連邦準備理事会(FRB)の金融引締め長期化観測を背景に米長期金利が上昇し、高PER(株価収益率)銘柄が多いグロース(成長)株の重荷となった。値がさの半導体関連銘柄が売られ、日経平均を押し下げた。
  ・月末に向けて国内年金などからリバランス(資産配分の再調整)を目的とした売りが出やすくなっているとの見方もあった。日経平均は大引けにかけて下げ幅を拡大し、今日の最安値で終えた。
  ・半面、国内外の長期金利上昇が追い風となる銀行や保険の一角には買いが入り相場の下値を支える場面もあった。午後は海運株の上昇も目立った。先週の米連邦公開市場委員会(FOMC)や日銀金融政策決定会合を経た後も海外勢の割安株買いは継続しているという見方が市場では出ていた。
  ・個別株では、東エレク・ファストリ・アドテスト・TDKが下落した。一方、ニデック・日本取引所・川崎汽船・商船三井が上昇した。

 3)9/27、日経平均+56円高、32,371円(日経新聞より抜粋
  ・前日の米株安を背景に朝方は幅広い銘柄に売りが先行し、下げ幅は▲300円を超え、心理的節目の32,000円を下回る場面があった。売り一巡後は押し目買いが入り下げ渋った。取引終了にかけて機関投資家による大規模な株価指数先物への買い観測を背景に、日経平均は上昇に転じ、この日の高値で終えた。
  ・9/27は9月末配当の権利付き売買の取引最終日で配当取りの買いが集まった。また、機関投資家が近く受け取る配当分を先んじて投資する「配当再投資」による先物への買いが見込まれていた。日経平均や東証株価指数(TOPIX)に連動した運用をする上場投資信託(ETF)や国内年金を中心に配当再投資による買いが入ったとの見方に加え、こうした買いが入ることを見越して先回りで短期筋が買いを入れる動きが活発化したもようだ。
  ・日銀が定例の国債買い入れオペを通知したことなどをきっかけに、国内の債券市場で長期金利の指標となる新発10年物国債利回りが低下した。金利への感応度が高い高PER(株価収益率)の一角が上昇に転じて相場の下値を支えた側面もあった。
  ・日経平均は午前中に大きく下げる場面もあった。米金利の先高観などを背景に、9/26の米株式市場でハイテク株比率の高いナスダック総合指数が4カ月ぶりの安値で終えた。投資家心理の悪化に伴う売りが午前中は優勢だった。
  ・個別株では、アドテスト・東エレクが上昇し、第一三共・エーザイも高い。一方、ニデックが売られ、郵船・商船三井・ファストリが売られた。

●2.日本株:9/27の反発は「一時的」、「10月相場は荒れ展開」に注意

 1)昨日9/27の反発は「一時的」
  ・反発した要因。
  ・9/27は9月末配当取りの権利最終日で、買いが入った。
  ・配当を原資にした再投資があった。
  ・買いの主力は年金基金を含む国内勢であったと見る。
   ただし、海外投資家は先物取引で売り姿勢を強めた。
  ・9/28以降の展開は「下落」予想し、9/27の反発は一時的。
  ・9/28以降は買いの理由よりも、売り優勢を予想。
  ・ただし、9/末までは、9月末終値の株価を意識した買いはある。

 2)10月相場は「荒れ相場」を予想
  ・8月までは強い買いエネルギーで日経平均は上昇したが、勢いに限界がある。
  ・海外投資家の年初来の買い残高が9兆円に迫り、その後伸び悩んでいる。海外投資家の日本株投入資金の動向を見ると、限界に達したと思われる。
  ・9/27の国内勢の買い意欲は一時的要因であり、継続しないと見た。
  ・短期筋の海外投資家による株価先物市場での売りが継続。
  ・9/27取引終了にかけて国内勢の買いで日本株は急伸したものの、先物市場では海外投資家の売り手口が9/27に▲15,090枚と急増していた。
  ・先週以降、海外投資家の先物売りが継続していたため、買い転換のリズムであったが、昨日は先週以降で最大の売りを記録した。
  ・証券会社自己部門の買い残高が急増し、反動に注意。
  ・本来なら証券自己部門は多額の買い残を長期保有できないはずである。しかし、年初来9月第2週(~9/15)に+4兆3,903億円の買い残高と膨張。
    1月1週 ▲3,071億円 ⇒ 9月2週 +4兆3,903億円
  ・証券自己部門も買い残高の高さを意識し、減少に転化する可能性がある。

 3)米国NYダウと比較して日経平均は買われ過ぎの状態にある
  ・現状は、金利長期上昇とインフレ再加速懸念でNYダウは下落途上にある。
  ・日本株は円安の進行という追い風を背景に、NYダウに比べ下落率が低く、堅調な動きと言える。

 4)日本市場の取引の6割強を占める海外証券会社の動向に注意したい
  ・海外投資家は米国などの相場で生じた損失を、日本株の売却益で補うという性格を持っている。
  ・米インフレ再加速と米長期金利上昇を要因とした米国株の下落で、損失を膨らませていると思われる。
  ・海外投資家の年初来買い残高が9兆円に迫り、買い残高が伸び悩んでいる現在、本国から損失補填のため日本株の売却益積み上げの指示がきたとしても普通でであろう。

 5)日本株の10月相場は「荒れ相場」の展開が予想される
  ・NYダウに比べ、日経平均は下落傾向にあるとはいえ下落率は低く堅調である。
  ・海外投資家の年初来の買い残高が上限に達していると思われ、いつ売りに転換してもおかしくない。
  ・まして、米国株式相場は、金利長期上昇で割高感でハイテク株が値を崩している。米国株で生じた損失補填として、日本株売却による売却益計上の指示が来てもおかしくない状況に突入するリスクがある。
  ・日本株上昇に海外投資家とともに買い上がった証券自己部門だが、買い残高を膨張させたものの、いつまでも維持できない。外国人の売り転換に追随して売ってくるだろう。その売りのスピードは速いと予想する。
  ・日本株はいつまでも米国株に対して「堅調」であるわけではない。「10月相場は荒れる展開」となるリスクに注意したい。

●3.三菱自動車、中国生産撤退へ合弁先と詰めの協議、ガソリン車低迷(時事通信)

■IV.注目銘柄(投資は自己責任でお願いします)

 ・3141 ウェルシア  業績堅調。
 ・4004 レゾナック  業績回復期待。
 ・8267 イオン    業績堅調。

著者プロフィール

中島義之

中島義之(なかしま よしゆき) 

1970年に積水化学工業(株)入社、メーカーの企画・管理(財務含む)を32年間経験後、企業再生ビジネスに携わる。 現在、アイマックスパートナーズ(株)代表。 メーカーサイドから見た金融と企業経営を視点に、株式含む金融市場のコメントを2017年から発信。 発信内容は、オープン情報(ニュース、雑誌、証券リポート等々)を分析・組み合わせした上で、実現の可能性を予測・展望しながらコメントを作成。http://note.com/soubatennbou

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