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相場展望7月3日号 米国: 10年債金利「4%」超で、資金は「株式⇒債券」へ流出か 日本: 日本株上昇の牽引役・海外投資家、6月3週で売り越し転換
■I.米国株式市場
●1.NYダウの推移
1)6/29、NYダウ+269ドル高、34,122ドル(日経新聞より抜粋)
・6/28公表のストレステスト(健全性審査)の結果を受け、銀行株が買われた。
・朝方発表の経済指標が米経済の底堅さ示したことも、主力株の支えとなった。一方、ハイテク株とディフェンシブ株の一部には売りが出た。
・米連邦準備理事会(FRB)は6/28公表したストレステストの結果で、米国内で相対的に規模の大きい23行すべての銀行が不況時にも規制上必要な自己資金を維持できるとの見解を示した。金融システム不安を巡る警戒が和らぎ、JPモルガンチェースやコールドマンサックスが買われた。
・米商務省が6/29発表した2023年1~3月期の実質国内総生産(GDP)は前期比で+2.0%増(年率換算)だった。個人消費が上振れするなど米景気の底堅さが示された。週間の新規失業保険申請件数も市場予想ほど多くなかった。
・クレジットカードのビザ、機械のハネウェル、建機のキャタピラーといった消費関連株や景気敏感株が上昇した。電気自動車のテスラは小幅高だった。半面、顧客情報管理のセールスフォース、ソフトウェアのマイクロソフトが下げた。大型ハイテク株には買われ過ぎの指摘もあり、売りが出やすかった。半導体のマイクロンが中国向け売上高で不透明感が重く▲4%超下げた。
【前回は】相場展望6月29日 米国: 市場は過剰流動性の時代⇒資金不足⇒株式市場は困難な道へ 日本: 慎重な運用スタンスを!!
2)6/30、NYダウ+285ドル高、34,407ドル(日経新聞より抜粋)
・6/30発表の5月米個人消費支出(PCE)物価指数の伸びが鈍化し、米国のインフレに対する懸念が和らいだ。スマホのアップルは時価総額が2022年1月以来1年半ぶりに3兆ドルを超え、主要ハイテク銘柄への投資意欲の強さを示したと受け止められた。
・PCE物価指数は前年同月比+3.8%上昇と、4月+4.3%から伸びが鈍化した。変動の大きいエネルギー・食品を除くコア指数は+4.6%上昇し、小幅ながら4月や市場予想の+4.7%を下回った。
・米連邦準備理事会(FRB)が重視するPCE物価指数がインフレ鈍化傾向を示したと受け止められ、米利上げ長期化観測がやや後退した。同指数が「インフレ高止まりを示すとの警戒感があった」といい、買い安心感につながった。
・アップルはシティーが6/29付けリポートで、投資判断「買い」で銘柄調査を開始したしたことも好感され、+2%高で終えた。ハイテク株全般に買いが波及し、ソフトウェアのマイクロソフトも上げた。
・一方、6/29発表した3~5月期決算で1株利益が市場予想に届かなかったスポーツ用品のナイキは売られた。
・NYダウの6月上昇幅は+1,499ドル(+4.6%)で、月間の上げ幅は昨年11月以来の大きさとなった。多くの機関投資家が運用目標とするS&P500株価指数は続伸、6月は+6.5%、2023年上半期では+15.9%上昇した。
・電気自動車のテスラや動画配信のネットフリックスなどが上昇し、エヌビディアなど半導体関連も買われた。
●2.米国株:10年債利回りが節目4%超で、資金が「株式⇒債券」に流れる可能性
1)10年債金利が「4%」を超えるか? 「株売り・債券買い」の可能性が増す
・米10年債利回りの推移・・・金利は着実に上昇し、節目の4%に接近。
5/3 6/1 6/30
3.334% 3.595% 3.838%
・節目とは、債券市場に資金流入する水準。
・この節目を抜いて金利が上昇すると、債券市場でも十分な受取金利が発生すると受け止められる模様。さすれば、リスクある株式より、債券に大量の資金が流入するとみられる。
・つまり、金利が4%を超えると、「株式は売られる」可能性が増すと予想する。
2)金利上昇の方向
・米6月連邦公開市場委員会(FOMC)の前回分議事録要旨の公開されるが、タカ派的な内容が予想される。
・米7月FOMC(7/25~26)で、政策金利が+0.25%引き上げの確率が高い。
・今後発表される米経済指標は、米経済が堅調であることを示す可能性が強い。
・金利ストラテジストも金利上昇を見込んでいる。ダドリー前NY連銀総裁も、4.5%は「控え目な見積もり」との発言あり。
3)金利上昇が株式市場に与える影響
・景気減速と金融コスト上昇で、企業業績が悪化する1つの要因となる。
・相対的に割高感が増すハイテク株・成長株が売られる傾向が強い。ただ、金融セクターは利ザヤ拡大で買われる傾向がある。しかし、リセッションとなれば金融株は貸倒れリスクが増し、売られる。
・株式市場から資金が流出しやすく、株式相場にとって負の要因となる。
●3.米5月中古住宅販売成約数は前月比▲2.7%減と、4月▲0.4%を下回る(フィスコ)
●4.アップル時価総額440兆円、世界初の3兆ドル、5年弱で3倍に(読売新聞)
●5.独6月消費者物価指数(CPI)は前年比+6.8%上昇、予想+6.7%を上回る(ロイター)
1)今年に入ってから上昇率の鈍化傾向が続いていたが、ここにきて拡大に転じた。
■II.中国株式市場
●1.上海総合指数の推移
1)6/29、上海総合▲7安、3,182(亜州リサーチより抜粋)
・人民元安の動きが不安視される流れとなった。
・足元の外国為替市場で、対米ドルの元安が続いている。国有銀行による買い支え観測を受けて6/27には一時元高に振れたものの、翌6/28には再びその上昇分を帳消しにする水準まで落ち込んだ。6/29も弱含みで推移している。資金流出が警戒される状況だ。
・また、明日6/30に6月中国製造業購買担当者景気指数(PMI)が公表されることも気懸り材料として意識された。
・中国経済対策の期待感が相場を支えたため、下値は限定的であった。
・業種別では、不動産の下げが目立ち、消費関連の一角も冴えず、発電も安い。半面、ハイテク関連は物色され、軍事関連も高く、医薬品・自動車も上げた。
2)6/30、上海総合+19高、3,202(亜州リサーチより抜粋)
・中国の景気支援スタンスが好感される流れとなった。
・中国国務院は6/29の常務会議で、家電など「住居消費」の拡大を図る方針を確認した。住居消費分野は川上・川下産業チェーンのすそ野が大きいとしたうえで、的を絞った措置によって消費を刺激し、景気回復につなげる考えという。
・ただ、上値は重い。中国景気の回復遅れが意識されている。朝方公表された6月の中国製造業PMIは49.0となり、小幅ながら前月48.8から上向いたものの、景気判断の境目となる50は3カ月連続で下回った。また、非製造業PMIは53.2となり、前月54.5と市場予想53.5を下回った。
・業種別では、ハイテクが上昇、医薬品も高い、銀行・証券もしっかり。半面、電力は冴えない。メディア・娯楽・通信ネットワーク・酒造が下落。
●2.中国の預金者、収入減と住宅値下がり見通しで、悲観強まる=人民銀調査(ブルームバーグ)
●3.オランダ、半導体製造装置の対中輸出をさらに規制、ASMLは順守へ(ブルームバーグ)
●4.中国経済の勢いが一段と鈍化、PMIが示唆する支援策強化の声拡大(ブルームバーグより抜粋)
1)中国経済の勢いが6月に一段と鈍化した。製造業の購買担当者指数(PMI)が6月は49と、5月48.8から若干改善したが、経済活動の節目である50を3カ月連続で下回った。
2)中国の個人消費が減速し、住宅の回復は息切れ気味、輸出は低調、インフラ投資も抑制的となっている。中国人民銀行(中央銀行)は今月、10カ月ぶりの利下げに踏み切り、金融緩和姿勢を示している。ただし、下げ幅は期待外れ。
3)利下げの恩恵を受けるのは国有企業などに限られる。需要の縮小が続き、外需の悪化ペースも加速している。小規模・民間企業への圧迫が強まる一方、非製造業ではより大幅な人員削減もみられる。
●5.中国は「バランスシート不況」で政府の経済刺激策が必要に=野村総研クー氏 (ブルームバーグ)
1)日本の1990年以降のデフレと同様で、資産価格や経済成長に対する懸念から、消費者が「負債を減らそうとしている」と述べた。
2)消費者の「借入、消費意欲が減退」しているため、経済の需要が低迷している。
●6.中国の6月製造業景況感は、3カ月連続で節目割れ、需要不足で景気回復鈍化(産経新聞より抜粋)
1)6月は49.0、前月から+0.2改善したものの、好不況を判断する節目の「50」を3カ月連続で下回った。
2)習政権の統制強化の影響を受けて、不動産などが低迷している。
3)輸出向けの新規受注は46.4と、前月から▲0.8低下した。米欧諸国の景気減速懸念も響いている。
●7.中国では改正・反スパイ法を施行で官製メディアが宣伝強化、「映画ではない」(時事通信より抜粋)
1)改正反スパイ法は、適用範囲を拡大し、摘発機関の権限を強化した。報道機関などに対し、「社会に向けて反スパイ宣伝教育を行わなければならない」と規定。
2)摘発対象となる行為が曖昧で、外国人らの間で当局の恣意的な運用に懸念が高まる。官製メディアのキャンペーンが始まっている。
●8.米国の中国反スパイ法に対する反応(時事通信より抜粋)
1)米国省は6/30、「不当な拘束リスクがある」と警告し、中国への渡航見直しを改めて勧告した。
2)在中国米国商工会議所は4月に約100社調査、9割が米中関係に「悲観的」回答。
3)米国は中国依存リスクの低減を加速も。
■III.日本株式市場
●1.日経平均の推移
1)6/29、日経平均+40円高、33,234円(日経新聞より抜粋)
・前日の米ハイテク株高を受けて、東京市場でも値がさの半導体関連株などが堅調に推移し、指数を押し上げた。
・半導体メモリー大手の米マイクロンが発表した2023年3~5月期の決算で、売上高などが市場予想ほど落ち込まなかったのを受け、東京市場でも半導体株に買いが波及し、東エレクは年初来高値を更新した。
・外国為替市場で円相場が144円/ドル台半ばまで下落するなか、輸出採算の改善期待を背景とした精密機器株や電気機器株の上昇も目立った。
・根強い日本株の先高観から海外短期筋とみられる断続的な買いが株価指数先物に入り、日経平均の上げ幅は一時+300円を超えた。もとっとも、買い一巡後は急速に伸び悩んだ。日経平均は前日に+600円超上昇していたとあって、高値警戒感による利益確定売りも出やすかった。大引け直前には小幅ながら下げに転じる場面もあった。
・三菱UFJは年初来高値を更新した。楽天・日産自・スズキも上昇した。
2)6/30、日経平均▲45円安、33,189円(日経新聞より抜粋)
・四半期末で機関投資家のリバランス(資金の再配分)に絡んだ売りによる需給悪化が意識された。ただ、午後は先高観などから押し目買いが入り、下げ渋った。
・リバランスの売りや、7月上旬の上場投資信託(ETF)分配金捻出に伴う売りの増加などに加え、週末・月末を意識した利益確定売りに押された。前日の米金利上昇を受け、割高感が強まった値がさのハイテク株が下落し、日経平均は朝方に下げ幅が一時▲300円を超えた。
・ただ、午後に下げ渋った。日本株の先高観が強いことや、6/30のアジア株式市場で上海株などが堅調に推移したことで押し目買いが入った。足元の円安・ドル高進行による企業業績の改善期待も一定の支えになった。
・「今日は需給的な警戒感が意識されやすい日だったが、下値で押し目を買いたいと考える投資家の多さが下げ幅を限定的にした」との声があった。
・日経平均は月間では6カ月連続で上昇した。月間での続伸は2012年8月~2013年4月の9カ月以来となる。
・東エレク・信越化・三井物・第一三共・セブン&アイ・ネクソンが安い。一方、ファストリ・オムロン・郵船は上昇し、前日に決算を発表した高島屋は大幅高となった。
●2.日本株:日本株上昇の牽引役・海外投資家が6月3週に売り越し転換
1)ついに海外投資家の現物株買い筋が「6月3週に売り越しに転換」
・6月3週(6/19~23)の日経平均は▲925 円安だったが、その真犯人は今まで現物株買い継続の海外投資家による▲3,605億円の売り越しだった。
・これで、海外投資家は先物筋と現物株筋が「売り」に揃い踏みした。
・ますます、海外投資家の売買動向に注視したい。
2)今週の注目材料
・7/3 6月日銀短観、米6月ISM製造業景気指数
・7/5 米FOMC議事録要旨
・7/6 米6月ISM非製造業景気指数、米5月JOLTS求人件数
・7/7 5月家計調査、5月景気動向指数、米6月雇用統計
●3.日本郵政 楽天株で▲851億円の損失計上へ、携帯電話事業の不振(共同通信)
1)楽天に1,500億円出資、取得は1株1,145円、保有割合は8%超。
2)今期の純利益は前期比▲44%減の+2,400億円黒字を見込む。(ブルームバーグ)
■IV.注目銘柄(投資は自己責任でお願いします)
・6289 技研製 新規受注拡大期待。
・6523 PHC 業績好調。
・7203 トヨタ 半導体不足緩和で生産回復、円安効果で業績拡大期待。
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