関連記事
相場展望5月12日 米FRBの金融政策は『遅すぎ・緩慢』のため、バブルを産み⇒金融引締めで深刻な株価底値に誘引する可能性がある
■I.米国株式市場
●1.NYダウの推移
1)5/09、NYダウ▲653ドル安、32,245ドル(日経新聞より抜粋)
・3/8以来となる年初来安値を更新した。インフレや米連邦制度理事会(FRB)による積極的な金融引締めを警戒した売りが続き米長期金利が3.2%と2018年11月以来の水準に上昇したことも株売りを誘った。
・最近の株価急落で「追い証を迫られた投資家の投げ売りが出た」との指摘も聞かれた。
・主要3株価指数が年初来の安値を更新し、SP500は2021年3月以来の3,991となる。
・4月雇用統計は労働需給の逼迫と賃金上昇の高止まりを示した。
・海外の売り材料も重なった。中国輸出の大幅鈍化・ゼロコロナ対策が中国経済足かせ、ウクライナ戦争の欧州経済への悪影響を懸念。
・業績が中国や世界景気の影響を受けやすい銘柄の下げが目立ち、インフレが消費を抑えるとの見方から消費関連も売られ、米原油先物が大幅に下げて石油のシェブロンが下落。
【前回は】相場展望5月9日 独裁国家ロシアの連想で、中国離れ進む 米国株は、FRBのインフレ対策の進展で株価軟調局面
2)5/10、NYダウ▲84ドル安、32,160ドル(日経新聞より抜粋)
・米金融引締めへの警戒感が強く、5/11の米消費者物価指数(CPI)の発表を控えて買いに慎重な姿勢が見られ、連日で年初来安値を付けた。ただ、米長期金利の低下を受け高株価のハイテクは買い直され、NYダウを下支えした。
・NYダウは朝方に+506ドル高の後、昼に一時▲357ドル安と不安定な値動きだった。
・市場では「ウクライナ情勢の不透明感からインフレや金融政策動向を見極めづらく、買いに積極的になれない」との指摘があった。
・IBM▲4%・エムスリー・キャタピラー・金融が下落し、エヌビディア+4%上昇した。
3)5/11、NYダウ▲326ドル安、31,834ドル(日経新聞より抜粋)
・米4月消費者物価指数(CPI)の伸び率が8.3%と市場予想8.1%を上回り、価格変動の大きい食品とエネルギーを除いたコア指数も上昇率が6.2%と市場予想の6.0%を超え、FRBの積極的な金融引締めを警戒した売りに押され、連日で年初来の安値を更新した。
・NYダウは前日比▲1.0%安、ハイテク株が多いナスダック総合指数▲3.2%安、SP500指数▲1.6%安と、いずれも年初来安値を更新した。
・金利上昇局面で相対的に割高感のあるハイテクの下げが目立ち、アップル▲5%安、マイクロソフト▲3%安となり、テスラは▲8%安と急落した。
●2.米国株:遅すぎで、緩慢な「FRB金融政策の転換」は、バブルを生み、深刻な底を形成か?
1)米国株が、2020年コロナ禍以降で急騰しバブルとなった要因
・FRBは「ゼロ金利」「資産膨張」で、市場に膨大な資金供給をしたことにある。
2)FRBの金融緩和が産んだものは「高インフレ」と「壮大な超過剰流動性相場」
・FRB資産を4兆ドル⇒9兆ドルに膨張、コロナ渦対策として必要なのは2兆ドル。
・3兆ドルが過剰で、この過剰な3兆ドルが「高インフレ」を必要以上に招いた。
3)遅すぎ、緩慢なFRBの「金融引締め」
・金利引上げ:通常0.25%⇒実際0.50%⇒インフレの実態を見ると0.75%が必要。
・資産圧縮(QT):6~8月は月額▲475億ドル⇒9月以降は▲950も、遅れが目立つ。
・金利予想:金利先物市場では、2023年半ばまでに3.15%前後までの引上げを反映している。しかし、3月のインフレ率は8.5%と、40年ぶりの高水準である。現在の市場が見るFF金利誘導の最終目標は2.5%を想定している。インフレ率は非常に高く、FRBはインフレ抑制に対して今でも「かなり後手に回っている」ため金利は3.5%を予想するが、FRBの遅すぎで緩慢な政策によっては5%となる可能性もあり得る。
4)警戒材料:景気後退の中でのインフレ退治策が「毒」になる可能性
・高インフレ継続:原油は100ドル前後と高水準、物価・家賃・賃金も上昇見込み。
・長期金利上昇:FRBの金利引上げとバランスシート圧縮で、市中金利が急上昇。
・中国景気懸念:厳格なゼロコロナ対策で経済活動縮小が、中国⇒世界経済に波及。
・米国景気懸念:インフレ調整後の経済成長率はマイナス成長も予想、米景気後退。
●3.米4月消費者物価指数+8.3%、予想+8.1を上ブレ記録的高さ続く、3月+8.5%(フィスコ)
●4.米インフレ、消費者物価指数(CPI)で3月ピーク達成? を見極めへ(フィスコより抜粋)
1)市場では、米連邦制度理事会(FRB)パウエル議長が金利引上げ幅を0.75%や1%といった大幅利上げの可能性を否定したため、FRBが高インフレを制御できず、インフレ高進が警戒されている。
2)NY連銀調査によると、ガソリン価格の大幅下落期待でインフレのピークが3月との見方があるが、消費支出や雇用が高止まりすると見ており、CPIが発表される5/11に焦点。
3)ただ、中国のパンデミックによる経済封鎖でプライチェーン混乱が、一段と深刻化する可能性があるほか、ウクライナ戦争の影響で、燃料や食料品、原材料価格の上昇がインフレを一段と引上げる可能性は依然リスクとなる。同時に、米経済成長の減速の兆候も見られる。1~3月期GDPは▲0.4%と、予想外のマイナス成長に陥った。ウクライナ戦争が影響し、欧州などで景気後退入り懸念が強まる中、米国の1~6月期の経済が低成長にとどまる可能性がある。
●5.FRB高官発言
1)クリーブランド連銀総裁、「+0.75%利上げは恒久的に除外することはない」(フィスコ)
2)NY連銀総裁、「6・7月会合で+0.5%利上げは理にかなう」(ロイター)
●6.ゴールドマンS顧客向けリポート、景気後退回避でも米国株に下振れリスク(ブルームバーグ)
1)記録的なインフレ率と景気減速、物価高騰の抑制を目指す米金融当局による積極的な金融引締め策が、リスク志向やバリュエーションを圧迫するため。
■II.中国株式市場
●1.上海総合指数の推移
1)5/09、上海総合+2高、3,004(亜州リサーチより抜粋)
・自律反発狙いの買いが先行する流れとなったが、上値は重く、小幅に値上がりした。
・上海のロックダウンの長期化に伴う中国経済の回復ペース鈍化が警戒された。
・1~4月貿易統計は、輸出入総額が前年同期比+7.9%増の12兆5,800億元(約63兆2,960億円)となり、伸び率は1~3月の+13.9%増から▲6%も減速している。
・業種別では、製紙・航空機関連が高く、酒造が冴えなかった。
2)5/10、上海総合+31高、3,035(亜州リサーチより抜粋)
・中国経済対策の期待感が相場を支える流れとなった。
・コロナ渦による景気の腰折れを回避するため、政府は雇用やインフラ投資・消費振興などに向けた対策を矢継ぎ早に発表している。直近では、中国人民銀行(中央銀行)が5/9、1~3月期の金融政策執行報告を公表し、流動性を適度に保ち、実体経済を支える方針を明らかにした。
・米国の対中国圧力などを懸念した売りが先行したものの、下値は堅く、指数は程なくプラスに転じた。
・業種別では、半導体などハイテクの上げが目立ち、当局が産業育成を一段と強める思惑が広がった。家電・食品・小売がしっかり。反面、石炭・石油が冴えない。
3)5/11、上海総合+22高、3,058(亜州リサーチより抜粋)
・コロナ渦による景気腰折れを回避するため、政府は雇用やインフラ投資・消費振興に向けた対策を矢継ぎ早に発表しており、市場関係者の強気発言もプラス。
・中国証券監督管理委員会の副主席は、足元の株式市場について、各種コントロールは可能であり、外資の流入は続いているとの見解を示した。
・米国による対中国圧力の関税緩和期待も強まる。消費者物価指数はインフレが加速。
・業種別では、医薬品の上げが目立ち、ハイテクも急伸、反面、不動産が売られた。
●2.米ブラックロック、中国に強気姿勢撤回、都市封鎖で成長見通し急速悪化(ブルームバーグ)
●3.財新中国製造業PMI、2カ月連続で50を割込む、中国製造業にコロナショック再来(東洋経済より抜粋)
1)中国の製造業景況感が急速に悪化している。新型コロナ再流行で都市封鎖のため。4月財新中国製造業購買担当者指数(PMI)は46.0と、前月48.1から▲2.1低下。
●4.中国4月輸出は前年同月比+3.9%増に大幅鈍化、コロナで供給網が混乱(時事通信より抜粋)
1)前月は+14.7%増だった、貿易黒字は+511億ドル(約6兆7,000億円)。
2)厳格な新型コロナ「ゼロコロナ」対策に伴う供給網の混乱や生産の停止が響いた。
●5.WHO(世界保険機関)、「中国は、ゼロコロナ政策を修正する時期」(フィスコ)
●6.中国、4月新車販売が前年同月比▲47.6%118.1万台、コロナで混乱、EV鈍化(共同通信)
●7.日産、4月中国新車販売は前年同月比▲46%減、厳格なゼロコロナ対策が響く(時事通信)
■III.日本株式市場
●1.日経平均の推移
1)5/09、日経平均▲684円安、26,319円(日経新聞より抜粋)
・(1)米国の金融引締めによる米長期金利の上昇 (2)新型コロナ対策のため経済活動の制限が続く中国景気の先行き懸念 (3)ウクライナ情勢、などの悪材料が重荷になる。
・米雇用統計は労働市場の逼迫と、インフレ圧力を改めて確認する結果となり、米10年債利回りは+3.1%台まで上昇し、成長株を中心に金利上昇の逆風が強く意識され、エムスリー、リクルートなどが大きく下落した。
・新型コロナ感染拡大で都市封鎖など経済活動の制限が続き、中国景気の先行き懸念から、ファストリ▲6%安、コマツ▲5%安となった。
・G7でロシア産エネルギーからの依存脱却方針を受け、資源関連は逆行高となったが反面、日本経済全体にはマイナスとの見方があった。
・自社株買いのヤマダはストップ高、株主還元策検討の川崎汽船+7%超高。
2)5/10、日経平均▲152円安、26,167円(日経新聞より抜粋)
・米金融引締めへの警戒感から、株価指数先物に売りが出て、一時下げ幅が▲540円を超える場面があり、売り一巡後は上海株式相場の上昇を支えに下げ幅を縮めた。
・自動車・商社が売られ、中国の過度な警戒が和らぎ資生堂やファナックが上昇。
3)5/11、日経平均+46円高、26,213円(日経新聞より抜粋)
・朝方の売り一巡後は買い戻しが進んだが、その後、様子見で膠着感が強かった。
・市場では「4月の米消費者物価指数(CPI)を前に買いが入った」との指摘があった。
・決算発表したトヨタは一時▲5%安と、市場予想を下回り、売りが膨らんだ。ソニー・任天堂・東エレクが上昇し、村田製・太陽誘電・第一三共・塩野義が下落。
●2.日本株:現在、米国株の下落に比べ、日本株は堅調 ⇒ 日本株の下落調整を警戒
1)日本株が堅調な理由:日銀の超金融緩和策(低金利・量的緩和)継続の恩恵。米国株は、FRBの金融引締めの影響を受け下落中。
2)日本株の現状:先物市場では外人の売りが止まらず、国内勢の買いで支える構図になっているが、長続きするか?
3)今後の予想:欧米中がリードする形で世界景気は後退に向かっている。日本株は、世界の景気敏感株と言われ、米国株連動が高い。今は米国株に比べ堅調だが、早晩、飲み込まれると予想。
●3.3月消費支出が3カ月ぶりに減少、物価高が影響か、外食での飲食代が大幅減(FNN)
1)前年同月比▲2.3%減少。飲食▲15.2%、上下水道▲12.6%、ガス▲5.4%、食料▲2.5%
2)物価高を受け、支出を抑える家計が多くなった。
●4.岸田首相、ロシア産石油の原則禁輸を表明「段階的停止」、G7と連動(読売新聞)
●5.企業動向
1)スシロー 水産物・人件費高を反映し10月値上げ、1皿110円⇒120円(朝日新聞)
2) トヨタ 国内8工場で最大6日間操業停止、上海の都市封鎖で部品滞る(共同通信)
3)日清オイリオ 「日清キャノーラ油」また値上げ、昨年4月から6回目(朝日新聞)
4)塩野義 新型コロナワクチン、6~7月にも承認申請へ(朝日新聞)
●6.企業業績
1)出光興産 3月期決算純利益+2,794億円、前年度比8倍(NHK)
2)日本製鉄 3月期決算純利益+6,373億円、合併後で最高利益、値上げ効果 (NHK)
3) ワールド 来期3月決算純利益見通し+55億円、前期比+23倍(日経新聞)
4)ソニー 2023年3月期営業利益1兆1,600億円、前期比▲3.5%減予想(ブルームバーグ)
5)7商社 3月期決算は軒並み最高益、ロシア事業で損失(時事通信)
2023年3月期は三菱商事など6社が減益予想
6)任天堂 3月期決算純利益+4,776億円、前期比▲0.6%減(時事通信)
7)トヨタ 3月期決算純利益+2兆8,501億円、前期比+26.9%増、過去最高(産経新聞)
2023年3月期純利益+2兆2,600億円、前期比▲21%減 (ブルームバーグ)
原材料価格上昇が直撃
8)パナソニック 3月期決算純利益+2,553億円、前期比+54.7%増
2023年3月期純利益+2,600億円、前期比+1.8%増
■IV.注目銘柄(投資は自己責任でお願いします)
・1332 日本水産 業績好調。
・4661 オリエンタルランド 黒字化。ロナ正常化期待。
・9022 JR東海 旅客回復基調が鮮明。
スポンサードリンク
関連キーワード
中島義之氏のコラム一覧
- 相場展望11月4日号 米国株: トランプ氏と議会選で共和党勝利⇒一時的株高⇒後、金利高で株安? 日本株: トランプ氏は同盟国にも関税10%適用⇒日本は輸出減・円安
- 相場展望10月31日号 日本株: 首相は「政権維持」に集中、「政策実行は停滞」⇒株価には重荷 一方、野党の要求を優先⇒財政拡大し、株価には追い風も
- 相場展望10月28日号 日本株: 石破政権は早晩に行き詰まり短命に 投機筋の株買いの追随は慎重に
- 相場展望10月24日号 米国株: トランプ氏勝利⇒米国はインフレ・金利上昇、中国経済は奈落へ 日本株: 円安も、短期筋の先物売り浴びせ・米国株安を受け下落に転換
- 相場展望10月21日号 米国株: 大統領選挙日の11/5までは堅調な米国株式相場が続くと予想 日本株: 「選挙は株高」という経験則は、今回は有効か?
- 中島義之氏のコラムをもっと読む