相場展望10月24日号 米国株: トランプ氏勝利⇒米国はインフレ・金利上昇、中国経済は奈落へ 日本株: 円安も、短期筋の先物売り浴びせ・米国株安を受け下落に転換

2024年10月24日 10:55

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■I.米国株式市場

●1.NYダウの推移

 1)10/21、NYダウ▲344ドル安、42,931ドル
 2)10/22、NYダウ▲6ドル安、42,924ドル
 3)10/23、NYダウ▲409ドル安、42,514ドル

【前回は】相場展望10月21日号 米国株: 大統領選挙日の11/5までは堅調な米国株式相場が続くと予想 日本株: 「選挙は株高」という経験則は、今回は有効か?
     

●2.米国株:トランプ氏が勝つと、米国はインフレ・金利上昇、中国経済は奈落へ

 1)米国経済に対する強気な見方が広がり、米国長期金利が上昇
  ・米国・国債利回り上昇で、10/21のNYダウ下落。
   金利高に対して相対的な割高感が警戒されNYダウは利益確定目的の売りが出た。
   10/21、NYダウは終値で▲344ドル安、42,931ドルと反落した。
  ・円相場は、10/23に一時1ドル=153円台まで円安・ドル高が急伸した。

 2)米国長期金利の先高観が、株価にとって重しになっていく
  ・米国10年長期金利の推移
    08/05  3.788%
    10/18  4.083
    10/22  4.208
    10/23  4.248:8/5比+0.46%上昇・上昇率+12.1%高

 3)トランプ候補の掲げる政策は「インフレ圧力」高い⇒FRBの再利上げリスク上昇
  ・米国大統領選の投開票が11/5と迫っている。中西部の7州でトランプ候補が若干ではあるが優位とみられ、大統領選に勝つ確率が増している。そのため、改めてトランプ氏の大統領選で掲げる政策に注目が集まっている。その評価は「インフレ圧力を高める」との懸念が強まった。

  ・10/23の米国株式市場は、マクドナルドの食中毒発生で一時▲7.5%安と大幅に下落して相場の地合いが悪化した。そこに、トランプ候補の大統領選優位との見立てがでて、「インフレ圧力の再加速」⇒「FRBの再金利引上げ」観測が浮上した。

  ・その結果、金利高で相対的に割高感が意識される半導体株やハイテク株が多いSOX株価指数やナスダック総合指数が売られ、NYダウまで波及した。
    10/23の主要株価指数の動き
      NYダウ      ▲409ドル安  ▲0.96%安
      ナスダック総合   ▲296安     ▲1.60%安
      半導体株(SOX)  ▲ 59安     ▲1.14%安
      S&P500      ▲ 53安     ▲0.92%安

  ・下落幅が大きかったのは、直近まで最高値を更新した後だけに、高値警戒から持ち高調整や利益確定目的の売りが出やすい環境にあったため。

 4)米国株は高値圏から下落リスクがある
  ・NYダウの推移
    08/05  38,703ドル
    10/18  43,275(史上最高値) :8/5比+4,572ドル高・+11.8%高
    10/23  42,514        :10/18比▲761ドル安・▲1.7%下落

  ・NYダウは8/5からの上昇幅に対し、まだ▲16.6%反落であり、さらなる下落が見込まれる。

 5)トランプ政権が再誕生となれば、米国は「インフレ再加速」、中国「輸出2%減」
  ・トランプ候補は、対中国の関税を60%引上げを公約している。その結果、米国は中国からの輸入価格が上昇し物価上昇圧力となる。中国では、米国向け輸出価格上昇で、輸出が▲2%低下するという試算もある。

  ・中国の経済成長エンジンの4つのうち、まだ唯一のプラスである「輸出」が止まる可能性がでてきた。トランプ氏が米国大統領になった場合の対中国の関税を予定通り実施されると中国経済は息の根を止められるリスクがある。中国経済の蘇生はますます遠のくことになりそうだ。もちろん、世界経済の成長にとっても大きな問題となろう。

●3.米国大統領選後に「米国景気後退のリスクはない」=ブラックストーンCEO(ブルームバーグ)

 1)米国経済が非常に好調なうえ、両候補ともに多くの景気刺激策を表明のため。

●4.緩やかな利下げを予想、雇用悪化なら迅速化も=米ミネアポリス連銀総裁(ロイター)

●5.今後も追加利下げ継続、QT終了は急がず=ダラス連銀総裁(ロイター)

 1)QT=金融の量的引締め。
 2)FRBの資産規模は、ピーク時に9兆ドルだったが、足元で7兆1,000億ドルまで減少。

●6.FRBは経済の軟着陸達成へ利下げ継続が必要=サンフランシスコ連銀総裁(ロイター)

●7.ボーイング、7~9月期決算は▲9,400億円赤字、深まる苦境、ストライキ(朝日新聞)

 1)開発中の新型機の納入延期、防衛宇宙部門の開発計画変更、ストライキが響く。

■II.中国株式市場

●1.上海総合指数の推移

 1)10/21、上海総合+6高、3,268 
 2)10/22、上海総合+17高、3,285
 3)10/23、上海総合+16高、3,302

●2.中国「独身の日」商戦がスタート、消費冷え込みで低調見通し(ロイター)

●3.中国の景気刺激策、内需を押し上げるのに不十分、米国財務長官ら指摘(ロイター)

●4.ジャパンディスプレイ、中国の有機EL工場建設、いったん白紙に(NHK)

■III.日本株式市場

●1.日経平均の推移

 1)10/21、日経平均▲27円安、38,954円 
 2)10/22、日経平均▲542円安、38,411円
 3)10/23、日経平均▲307円安、38,104円

●2.日本株:円安進行も、短期筋の先物売り浴びせ・米国株安を受け下落に転換

 1)日経平均は8/5を底に上昇したが、10/18を天井に下落に転じた可能性
  ・日経平均の推移
    08/05   31,458円
    10/15   39,910   :8/5を底に+8,452円高・+26.8%高
    10/23   38,104   :10/15比▲1,806円安

  ・10/23は高値から▲1,806円安、上げ幅の▲21.3%反落で、先行き安を示唆。

 2)短期投機筋の海外投資家による株式先物への売りが継続
  ・要因は、日本の衆院選で与党・自民党と公明党の議席が過半数割れのおそれがあるとの報道を受け、嫌気し売り優勢が継続。
  ・中長期筋の海外投資家は、日本株から離れ続けている。

 3)米国半導体株安が波及と米国金利上昇が重荷に
  ・フィラデルフィア半導体株(SOX)指数が下方傾向強まる。
  ・米国経済の底堅さを背景に、米国10年金利は上昇基調にある。

 4)円安が加速、10/23米国で「153円台」、輸出関連株が物色も、限定的な買いか?
  ・米国長期金利が上昇し、日米金利差が拡大⇒円安が進展。
  ・約3カ月ぶりとなる円安水準。
  ・日米金利差の推移    8/5     10/18   10/22   10/23
    日米金利差    ▲3.010%差  ▲3.112  ▲3.232  ▲3.270
    ・日米金利差による円安で株高も、他の要因で日経平均は上がらず、株価の下支え程度の限定的な力強さとなる可能性がある。

 5)米国NYダウの軟調が日経平均にも波及するとみる
  ・米国株は、FRBの金利引下げ期待で8/5以降、大幅な株高となった。日本株も、米国株の上昇に引っ張られて、日経平均は+8,452円上昇した。しかし、短期筋の海外投資家は株価先物を中心に利益確定目的の売り優勢を継続した。日経平均は短期筋の海外勢の売りに押されて下落した。

  ・それに追い打ちをかけるように、米国株が長期金利の上昇を背景に下落に転じた。

  ・米国株下落への転換が日本株にも波及し、日経平均の下げに追い打ちをかけると予想する。

●3.東京メトロ、2018年以来となる10/23の大型上場で時価総額1兆円超(NHK)

 1)公募価格は1,200円、上場初値は1,630円、10/23終値は1,739円。

●4.アサヒ、ビールや酎ハイなど酒類など全商品の4割を値上げ(日経新聞)

 1)ビール類の値上げは2023年10月以来、1年6カ月ぶり。

●5.ニデック、9月中間期は営業利益1,210億円と過去最高、円高で為替差損▲273億円を計上し前年同期比▲28.5%減(時事通信)

■IV.注目銘柄(投資は自己責任でお願いします)

 ・4480 メドレー    業績好調。
 ・4502 武田薬品    業績好調。
 ・6902 デンソー    業績好調。

著者プロフィール

中島義之

中島義之(なかしま よしゆき) 

1970年に積水化学工業(株)入社、メーカーの企画・管理(財務含む)を32年間経験後、企業再生ビジネスに携わる。 現在、アイマックスパートナーズ(株)代表。 メーカーサイドから見た金融と企業経営を視点に、株式含む金融市場のコメントを2017年から発信。 発信内容は、オープン情報(ニュース、雑誌、証券リポート等々)を分析・組み合わせした上で、実現の可能性を予測・展望しながらコメントを作成。http://note.com/soubatennbou

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