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相場展望8月12日 決算シーズン終了⇒市場は冷めた反応に留まる 夏後半~秋初旬は調整?
■I.米国株式市場
●1.NYダウの推移
1)8/09、NYダウ▲106ドル安、35,101ドル(日経新聞)
・コロナ警戒し、景気敏感株に売り。中国など世界的な新型コロナの感染拡大を受け、景気の不透明感を嫌気した売りが優勢だった。
・米長期金利の上昇に伴う利ザヤ改善期待から金融のGサックスが買われた。
・良好な米雇用統計も相場を下支えした。(DZHフィナンシャルリサーチ)
【前回は】相場展望8月9日 米雇用統計改善は、株式市場にとっては負のサイン 量的緩和の縮小⇒カネ余り相場ピークが近づく?
2)8/10、NYダウ+162ドル高、35,264ドル(日経新聞より抜粋)
・米議会上院は1兆ドル規模の超党派で提出したインフラ投資法案を8/10可決。道路や橋、高速インターネットなどの整備を含むインフラ投資法案の成立には、下院を通過する必要があるが、実現に向け前進したとして市場で好感された。
・米景気回復を支えるとの期待が浮上し、素材や資本財など景気敏感株が買われた。恩恵を受けると見られる建機のキャタピラー、化学のダウが+2%上昇した。米金利が上昇し銀行株が買われ、割高感のあるハイテク株は下落した。
・調査会社が半導体メモリの価格低下予想を示し、半導体関連株が売られた。
3)8/11、NYダウ+220ドル高、35,484ドル(日経新聞)
・NYダウは2日連続で過去最高値を更新、一方、ハイテク株の多いナスダック総合は続落した。
・7月米消費者物価指数(CPI)は市場予想を下回った。過度なインフレ懸念が和らぎ、米連邦準備制度理事会(FRB)が早期にテーパリング(量的緩和の縮小)に動くとの見方が後退した。
・加えて8/10、米議会上院で超党派による1兆ドルのインフラ投資法案が可決され「インフラ1兆ドル効果」を期待して、前日に続いて景気敏感株とインフレ投資関連株が買われ上昇した。
・金利上昇で利ザヤ改善が期待できる銀行株も買われた。
●2.米国株式はまちまち、NYダウはインフレ懸念後退で最高値、ナスダックは高値警戒で続落
1)米国株式はまちまち、インフレの過度な警戒感が薄れNYダウ最高値を更新したが、ナスダックは半導体メモリの価格低下予想から半導体関連株が売られ続落した。
2)ハイテク大手5社の最近の株価は軟調 ⇒ 高値警戒感の表れ
・10年国債利回りは1.335%で底から上昇傾向にあるが、まだまだ低水準圏内にある。
・さらに期待インフレ率を控除した実質10年国債利回りはマイナス金利である。よって、金利上昇のためハイテクは逆風との解釈はできない。
・むしろ、ハイテク株の軟調は、高値警戒感の表れが原因と思われる。
3)NYダウは史上最高値を更新しているが、要因は「インフレ懸念が和らぎ後退した」とのことだが、「カネ余り」効果が発揮され株価上昇したと思われる。
・ただ、米株式市場への資金流入額は最近は減少傾向にあり、資金動向に注目したい。
4)FRBのテーパリング後退との観測が流れ、直近のNYダウは上昇しているが、果たして信じてよいものか?
・NYダウ上昇は、「インフレ懸念和らぐ」が根拠だが、その理由は正しいのか?CPIが前月比で上昇率が+0.5%と、6月の+0.9%から減じたことを根拠にしている。しかし、前年比で見ると+5.4%も上昇しており、稀に見る高水準である事実を無視している。
・FRBは2020年のパンデミックによる景気後退を回復軌道に乗せるために、超緩和な資金供給をしてきた。その資金供給量は、景気回復に必要なボリュームの2倍にも膨らんでいるという。そうであれば、インフレの高進は避けて通れない。つまり、早かれ遅かれ、テーパリングと金利上昇は必然性を帯びると見ている。早く金融政策の転換をしないと、谷が一層深くなると思われる。現にFRB高官のタカ派発言が増加していることには、金融政策の転換が迫っていることを示唆している。
●3.米7月CPIは+0.5%の上昇で前月から鈍化、物価は依然として高止まり(ロイターより抜粋)
1)7月消費者物価指数(CPI)は前月比+0.5%上昇(市場予想と同じ)し、6月の+0.9%上昇から鈍化した。7月の前年同月比は+5.4%上昇した。
2)ただ、供給網の混乱が続いていることや、経済活動が回復する中で旅行関連の需要が大きいことから、全体の物価は依然として、歴史的に見て高い水準にある。
3)米連邦準備制度理事会(FRB)は、ここ数ヵ月間、大規模な債券買い入れの縮小と利上げ時期を検討しており、物価上昇圧力を注視している。
●4.米6月JOLT求人件数が1,007.3万件(予想927・5月920.9)と、過去最高(フィスコ)
1)強い雇用統計の結果に加えて、労働市場のスラックの改善が明らかになれば、FRBの早期緩和縮小観測が一段と強まるだろう。
2)7月雇用統計は非農業部門雇用者数が2ヵ月連続で90万件増となったほか、失業率が低下、賃金の上昇、労働参加率の上昇と良好な内容となった。加えて、労働市場の一段の改善を示す結果となったため、市場はFRBの2022年初旬の緩和縮小を織り込み始めた。
3)パウエルFRB議長は、金融緩和の縮小に慎重姿勢だ。だが、FRB高官から「速やかに債券購入ペースを鈍化すべき」と主張する意見がある。
カプラン米ダラス連銀総裁: 資産購入額が過剰であり、速やかに購入を縮小を。
9月FOMCで緩和縮小を発表、10月開始を支持。
ウォラーFRB理事 : 7~8月の雇用統計の結果で、9月までに緩和縮小を。
クラリダFRB副議長 : 資産購入縮小した後、2023年の利上げを予想。
ボスティック米アトランタ連銀総裁:雇用急増で9月緩和縮小、2022年利上げ開始を予想。
ローゼングレン米ボストン連銀総裁:9月に国債購入縮小計画発表、秋実施すべき。
バーキン米リッチモンド連銀総裁 :労働市場なお改善余地、物価は利上げ条件達成
ジョージ米カンザスシティ連銀総裁:異例なFRBの金融緩和を戻す時が来た。
●5.米・中小企業楽観度指数、7月は再び低下、人材確保や供給停滞に苦慮(ロイターより抜粋)
1)米国の中小企業の業界団体である全米独立事業者協会(NFIB)が8/10発表した、7月中小企業楽観度指数は99.7と、前月から▲2.8低下し、6月上昇分をほぼ打ち消した。
2)NFIBのエコノミストは、「中小企業経営者は米経済の力強さについて自信を失いつつあり、雇用創出の減速を予想している」と述べた。
■II.中国株式市場
●1.上海総合指数の推移
1)8/09、上海総合+36高、3,494
・経済指標が下振れしたため、景気テコ入れ期待が高まる流れとなった。7月貿易統計は、輸出と輸入の伸びが予想以上に前月から鈍化している。経済回復ペースの腰折れを回避するため、当局は景気対策を強めるとの見方が浮上した。
・朝方公表された、7月中国物価統計は、消費者物価指数(CPI)と生産者物価指数(PPI)がそれぞれ予想を上回った。
・業種別では、金融株が上げを主導、不動産株も高く、食品飲料・小売・メディア・エネルギー・医薬品・空運株なども買われた。反面、半導体株は冴えない、自動車・金鉱・防衛関連株も売られた。
2)8/10、上海総合+35高、3,529
・中国の経済対策に期待感が先行する流れとなった。
・経済指標下振れを背景に、金融緩和と景気テコ入れ策を出すとの見方が広がった。
・業種別では、銀行株が上げを主導し、不動産・保険証券・医薬品・公益・防衛関連株が買われた。反面、半導体株が冴えない。
3)8/11、上海総合+2高、3,532
・経済回復ペースの遅れが警戒される中、中国当局による景気対策の期待と、資金流入の期待も高まる状況にある。
・コロナ感染が拡大し、行動規制が強化されることを不安視され、上値が重かった。
・業種別では、不動産の上げが目立ち、銀行・インフレ建設関連・海運株もしっかり。反面、消費関連セクターは冴えなく、医薬品・ハイテク・証券株は売られた。
●2.中国7月PPIは前年比+9%に加速し経済を圧迫、CPIは減速(ロイターより抜粋)
1)中国統計局8/9発表、7月生産者物価指数(PPI)は前月から上昇が加速し、前年比+9.0%と予想+8.8%を上回った。6月は+8.8%だった。原材料価格の高騰に苦しむ企業に一段と圧力がかかっている。
2)消費者物価指数(CPI)は前年比+1.0%伸びで、6月+1.1%から減速した。7月予想は+0.8%だった。政府の今年の目標+3%前後を大きく下回っている。変動の大きい食品やエネルギーを除いたコアCPIは前年比+1.3%上昇。前月6月は前年比+0.9%の上昇だった。
3)中国経済は、新型コロナ禍からほぼ回復したものの、企業はコモディティー価格高や世界のサプライチェーン寸断の影響を受け、回復が失速。自然災害や感染力の強い新型コロナの変異株の広がりも影を落とす。
4)中国経済は、今年+8%を超える成長を記録しそうな勢いだが、新型コロナ禍からの回復に伴い、アナリストは、
(1)急増した需要はピークアウトしたと指摘。
(2)サプライチェーンの目詰まりや感染力の強い新型コロナの変異種の広がりを背景に成長は鈍化すると予想している。
●3.香港の米領事館、「米企業に香港を立ち退くよう提案」(フィスコ)
●4.ゴールドマン・サックスは8/8、リポートで中国経済成長率を大幅に下方修正(日経新聞)
1)デルタ型感染拡大で、7~9月期中国実質国内総生産(GDP)の伸び率を大幅に下方修正した。年間の成長率予想も引き下げた。
2)中国ではデルタ型感染拡大で、当局が省をまたぐ移動制限を呼びかけ、大型イベントが一時中止されたと伝わった。
3)中国税関総署が8/7発表した7月貿易統計で輸出の伸びが6月から大幅に減速した。
■III.日本株式市場
●1.日経平均の推移
1)8/09、祝日のため休場。
2)8/10、日経平均+68円高、27,888円(日経新聞)
・好決算銘柄に買いが入り一時+300円超となったが、買い一巡後は利益確定売りや戻り待ちの売りが出て伸び悩んだ。
・デルタ株感染拡大や国内政局など、先行きへの懸念は根強い。反面、日本株の割安感が意識され、下値は限られた。
3)8/11、日経平均+182円高、28,070円
・米NYダウ上昇を背景に景気敏感株が買われ、決算発表を手掛かりにした物色が相場を押し上げた。上値では利益確定売りや戻り待ちの売りも目立った。
・前日の米半導体株指数の下落で、アドテストやスクリンなど日本の半導体関連株に売りが波及したことも相場の重荷となった。
●2.好決算発表が相次ぐも、株価反応は冷めている ⇒ 8月後半~秋初旬に調整の可能性
1)決算発表後の株価反応のパターン
・市場予想上回る好決算 : 発表時は急伸するが、その後は売られ一時高で終わる。DICなど。
・市場予想通りの好決算: 売られる。日本電産など。
・市場予想下回る : 急落。キリン、任天堂など。
2)市場の関心は、決算シーズン⇒衆院総選挙をにらんだ政府の経済対策へ。
3)8月後半~秋初旬に調整となる要因。
・好決算が相次いでも株高不発、失望で売り込まれる可能性。
・夏季バカンス入りで市場参加者減少し、買いが入りにくい。バカンス入りのためのポジション縮小で、売られやすい地合い。
・米ジャクソンホールでのパウエルFRB議長講演を控え、様子見姿勢が強まる。経験則では、金融政策の変更時期は新年を展望した、秋が多い。
●3.6月貿易経常収支+9,051億円の黒字、米中向け輸出伸び6.1倍(NHK)
1)米国向けの自動車、中国向けの半導体製造装置の輸出が大きく伸びた。
●4.国の借金は過去最高の1,220億円(6月末)(時事通信)
1)コロナ対策の歳出や、高齢化で膨らむ社会保障費の増加を税収では賄えず、借金依存が続いている。
●5.政府は、新築住宅の太陽光発電の義務化を検討、2030年に6割目標 (毎日新聞)
●6.企業業績
1)冨士ソフト 1~6月期純利益は前年同期比+20.3%増46.3億円、増配(フィスコ)
1~12月期の予想純利益は据え置き。
2)安田倉庫 4~6月期純利益+22.3%増の5億円。 (フィスコ)
2022年3月期予想の純利益は前期比▲6.9%減の26億円と据え置き。
3)アンジェス 1~6月期純損失▲74.5億円(前年同期▲19億円)。 (フィスコ)
新型コロナのワクチンと治療薬の2軸で開発。
4)DIC 2021年12月通期純利益+220億円と前年比+66%増 (日経新聞)
5)ソフトバンクG 4~6月期純利益+7,615億円、前年同期比▲39.4%減(ロイター)
通期見通しを開示していない。
この時期としては、4年ぶりの減益。(NHK)
ファンドを通じて保有する株式の時価総額の20%を占める中国企業を巡り、中国政府がIT企業への規制強化しており、中国企業への新たな投資を当面、抑えていく方針を明らかにした。
6)キリン ミャンマー関連で▲214億円の減損を計上、事業撤退否定(ロイター)
7)楽天 6月中間期は最終赤字▲654億円(前年同期▲274億円)(読売新聞)
携帯基地局投資の先行投資が重荷となった。
●7.企業動向
1)三菱電機 英国の配電システム会開発会社を買収(時事通信)
■IV.注目銘柄(投資は自己責任でお願いします)
・2127 日本M&Aセンター M&A仲介。業績見通し良好。
・4661 オリエンタルランド ワクチン接種進展に期待、集客力強い。
・1414 ショーボンド 橋梁・道路などインフラ補修工事。国土強靭化。
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