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相場展望3月20日号 米国株: 首脳会談は、ヘビ(プーチン氏)に睨まれたカエル(トランプ氏) 日本株: 騰落レシオ(6日)は日経平均の下げを示唆 国民の生活をみない日銀は必要か?
■I.米国株式市場
●1.NYダウの推移
1)3/17、NYダウ+353ドル高、41,841ドル
2)3/18、NYダウ▲260ドル安、41,581ドル
3)3/19、NYダウ+383ドル高、41,964ドル
【前回は】相場展望3月17日号 米国株: 反発か、調整の深化か、分岐点にある 日本株: 日経平均はNYダウと比べて「割高感」、短期投機筋に注意
●2.米国株:電話首脳会談は、ヘビ(プーチン氏)に睨まれたカエル(トランプ氏)
1)トランプvsプーチン電話会談で、プーチン氏がトランプ氏を手玉に
・双方のエネルギー施設への攻撃停止のみ合意。
・トランプ氏が提案したウクライナ30日間の停戦は、拒否されて実現せず。
・ロシア大統領府とホワイトハウスの声明はいずれも、両国の経済的・政治的協力の可能性がむしろ強調された。
・トランプ氏はウクライナ停戦交渉で焦り、ロシアのプーチン氏が要求する大幅な譲歩に同意する懸念が増した。
2)ロシア株式市場は、経済制裁の緩和などロシア有利な交渉を織り込んで急騰
・ロシアMICEX指数の推移
1/09 854
2/03 922
2/28 1,142 トランプvsゼレンスキー首脳会談決裂
3/18 1,259 トランプvsプーチン電話会談
3/19 1,228
ロシア株価指数は1/9⇒3/19で+43.7%高した。
・この間のロシア株価値動きはNYダウやナスダック総合でも遥かに及ばない。
・米国・ロシア・日本の主要株価指数の推移
1/09 3/19 騰落率
NYダウ 1/10 41,938 41,964 +0.06%高
ナスダック総合 1/10 19,161 17,750 ▲ 7.363%安
ロシアMICEX 1/09 854 1,228 +43.793%高
日経平均 1/09 39,605 37,751 ▲ 4.681%安
・3/18の電話会談で、プーチン氏はその時間に他の用件を入れて対応し、遅刻した。プーチン氏は主導権を取るため「遅刻する手法」を好む。遅刻することで、相手を焦らし、交渉を優位に進めるという古典的手法を好む。かつて、安倍首相もプーチン氏の遅刻で5.5時間、会見の山口県のホテルの玄関前で待たされたことがあった。ウクライナ侵略で中国支援を受けた後、習近平・総書記がモスクワを訪問した時は、プーチン氏は遅刻せずに出迎え、会談後は異例にも習氏が乗った車を玄関前まで出て最後まで見送っている。
・今回のトランプ氏は電話首脳会談の事前打ち合わせのため大使をモスクワに派遣したが8時間も待たせた。そのため、このプーチン氏の電話会談における遅刻作戦は、予測された。この遅刻で、停戦を勝ち取ろうとしたトランプ氏の焦りを呼び込んだ。結果、30日停戦どころか、ロシアに都合のよう相互のエネルギーインフラ施設の攻撃停止という部分停戦のこぢんまりとした合意にとどまった。加えて、プーチン氏はトランプ氏に停戦への宿題を課した。
(1)ロシアへの経済制約の解除
(2)ロシアへの経済協力
(3)ウクライナのNATO加盟の放棄
(4)米国のウクライナへの軍事支援と軍事情報の提供禁止
(5)EUからのウクライナ安全保障のための軍隊派遣禁止
(6)制圧ウクライナ地域の「ロシア領承認」
(7)アイスホッケーの米国・ロシア戦のロシアでの開催を提案
トランプ氏の脅しによる取引(ディール)は不発どころか、プーチン氏の手玉に取られたことになる。
・とりわけ、プーチン氏からアイスホッケーの米国とロシアの試合設定を提案したのは、プーチン氏の余裕の発言であり、それだけトランプ氏を低くみたということになる。
・トランプ氏は会談後「順調に進展」と簡単なコメントしか発していない。饒舌なトランプ氏とは思えないぐらい口が重い。
・現に、電話首脳会談後にロシアはウクライナのキーウ含む火力発電所などに大規模なドローン(無人機)攻撃を実行し破壊した。プーチン氏がトランプ氏に対しさらに大きな譲歩を迫っている証左である。
・ロシアMICEX指数の急騰は、プーチンvsトランプ氏首脳会談のプーチン氏の圧勝を織り込んで急伸していたと思われる。
・特に、トランプvsゼレンスキー大統領の2/28首脳会談決裂で、ロシア有利になるとみてロシア株価が上昇した可能性が高い。
・さらに、トランプ氏との電話会談も手練手管のプーチン氏の足元にも及ばないと見込んでロシアが勝利するとみて大幅な株価上昇につながった可能性が高い。
3)トランプ氏は、米国のソフトパワーの凋落を促進し、米国を小さくしている
・トランプ米国政権は、予算削減の一環で3/15に政府系メディア職員1,300人以上を休職扱いをした。
・トランプ米国政権によるVOAなど政府系メディアの解体を促進している。
・解体される政府系メディア
・ボイス・オブ・アメリカ(VOA)
米国のニュースを、40以上の言語でオンライン、ラジオ、テレビを通じ配信してきた。
・ラジオ自由アジア(FRA)
中国や北朝鮮などアジア向け放送。
・ラジオ自由欧州・ラジオ自由(RFE・RL)
ロシアやウクライナなど東欧諸国向け放送。
・これらのニュース番組は独裁政権下で暮らす人々に情報を提供してきた。
・これらの政府系メディアは、
・中国・北朝鮮・カンボジアなどの人権侵害を明るみに出してきた。
・ウイグル族など抑圧された少数民族の窮状を伝えてきた。
・番組を中止すれば、独裁政権や軍事政権の拡大を助けるだけだ。
・報道の自由がない中国、ロシア、北朝鮮、カンボジア・ミャンマー・ラオスなどは放送撤退を大歓迎をし、撤収指示したトランプ氏を称賛した。
・中国共産党系機関紙「環球時報」は、「うその工場」としてVOAの閉鎖を歓迎した。
・中国が勢力圏を拡大する中、これまで米国が築き上げてきたソフトパワーが大いに揺らぐことになる。(ロイター)
・これではトランプ氏の言う「米国第一」の実現ではなく、米国は凋落への道を歩むことにつながる。
●3.FRB、2会合連続で金利据え置き、米国政権関税でインフレ再燃を警戒(毎日新聞)
1)2月の米国消費者物価指数は前年同月比+2.8%上昇で、FRBの目標+2.0%をやや上回る水準だった。ただ、トランプ政権はメキシコ、カナダに25%、中国に20%の関税を発動したのに加え、全ての国から鉄鋼・アルミニウム製品にも25%の関税を発動。米国輸入業者が小売価格に関税コストを転嫁することで、多くのモノの値段が上昇する恐れが出ている。
●4.米国連邦政府機関、地裁判決を受け、大量解雇の職員の復職進める(ロイター)
1)トランプ米国政権は3/18、仮採用の連邦政府職員約2.5万人を解雇したと認めた。
●5.カナダ・トロント市、テスラ営業車購入補助打ち切り、対米国貿易摩擦で(ロイター)
●6.NY連銀製造業指数、3月は▲20.0に低下、予想▲1.9だった(ブルームバーグ)
1)2年ぶりの大幅な落ち込み(ロイター)
●7.米国小売売上高、2月は前月比+0.2%増加、市場予想+0.6%増を下回る(ブルームバーグ)
1)米国の成長見通し巡る懸念に拍車
・13分野のうち7分野で減少、自動車やガソリンなどが落ち込む。
・個人消費の後退を巡る懸念が強まりそうだ。雇用不安から消費者が貯蓄を厚くして備えるとみられ、成長がもっと弱くなるリスクが高まっている、との見方が出ている。
●8.OECD、世界成長予測を下方修正、貿易障壁や高い不確実性で(ロイター)
1)今年の成長率予想を+3.1%、来年を+3%に下方修正。
2)米国とカナダは急減速、メキシコは景気後退入り、日本も引下げ。米国の成長率は来年は+1.6%増と予測、新型コロナ流行初期を除く2011年以来の低水準に減速すると予測。
■II.中国株式市場
●1.上海総合指数の推移
1)3/17、上海総合+6高、3,426
2)3/18、上海総合+3高、3,429
3)3/19、上海総合▲3安、3,426
■III.日本株式市場
●1.日経平均の推移
1)3/17、日経平均+343円高、37,396円
2)3/18、日経平均+448円高、37,845円
3)3/19、日経平均▲93円安、37,751円
●2.日本株:騰落レシオ(6日)は日経平均の下げを示唆 国民の生活をみない日銀は必要か?
1)日経平均3/17~18の大幅高は、海外投機筋の先物主導による上昇
・併せて、空売りが大きく減少したことが、上昇を後押しした。
・空売り比率の推移 3/14 3/17 3/18 3/19
42.4 35.7 36.4 35.9
2)日銀は必要か? 日本経済の実態が見えない・見ようとしない日銀
・日銀の発言「物価上昇の勢いは徐々に弱まる」。日銀の物価目標は+2%とし、上昇の勢いが弱まわると説明を続けてきた。
・しかし、物価上昇率は、12月+3.0%、1月+3.2%と増勢を強めている。円安がもたらす輸入物価の上昇も、日銀は気にも留めなかった。コメを含む食料品の値上がりにも、目を向けようとしない。企業の価格転嫁が続いており、物価高騰の終息もみえない。
・国民の生活の苦しさを見ない日銀は、国民にとって必要か?日銀法に日銀の果たすべき役割が記載されている。日銀は立つ位置を見極めるべきではないか。
3)円が下落して150円台に接近
・円相場の推移
3/13 147.74円/ドル
3/19 149.53
・日銀は3/19の金融政策決定会合で金利据え置きを決定した。そのため、日本・米国の10年債金利の差が拡大する可能性がある。そうなれば、円相場は一段と「円安」に推移する可能性が増す。
・円安方向に推移すれば、業績向上が期待される自動車など輸出企業の株価にとって追い風となりやすい。
4)日経平均は、騰落レシオ(6日)が急伸しており、下落懸念がある
・騰落レシオ(6日)の推移
3/14 89.01
3/17 123.16
3/18 162.12
3/19 220.95
・3/18には162.12を付けた翌3/19に日経平均は▲93円安と下落した。それだけに3/19の220.95は高水準なだけに、翌営業日3/21は警戒したい。
・米国株高の様子次第によって、下落幅が影響を受けるものと思われる。
5)ボックス圏が上値38,000・下値36,000円に、下方にシフトする可能性
・最近まで日経平均は38,000~40,000円のボックス圏相場で推移してきた。
・今回、底値37,000円割れしたため、次のボックス圏は36,000~38,000円にシフトする可能性が出てきた。
・トランプ関税の悪効果が及ぼす状況を見極めたい。
●3.4月の電気・ガス料金が再び値上がり、政府補助金終了のため(FNN)
1)電気代は東京電力で3月より+309円高、東京ガスは+139円高。
●4.スーパーのコメ平均価格は5キロ当たり4,077円、前年同月比約2倍に(NHK)
1)1年前は2,045円で2,000円以上上昇。今週は前週より+125円の値上がり。
■IV.注目銘柄(投資は自己責任でお願いします)
・5444 大和工 業績成長期待
・6702 富士通 業績好調
・9432 日本電信電話 業績回復期待
著者プロフィール
中島義之(なかしま よしゆき)
1970年に積水化学工業(株)入社、メーカーの企画・管理(財務含む)を32年間経験後、企業再生ビジネスに携わる。 現在、アイマックスパートナーズ(株)代表。 メーカーサイドから見た金融と企業経営を視点に、株式含む金融市場のコメントを2017年から発信。 発信内容は、オープン情報(ニュース、雑誌、証券リポート等々)を分析・組み合わせした上で、実現の可能性を予測・展望しながらコメントを作成。http://note.com/soubatennbou
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