相場展望3月24日号 米国株: 世界をリードしてきた「民主主義」「人権」が漂流する米国 日本株: トランプ関税が4/2に「相互関税」を導入するが、内容が焦点

2025年3月24日 12:18

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■I.米国株式市場

●1.NYダウの推移

 1)3/20、NYダウ▲11ドル安、41,953ドル
 2)3/21、NYダウ+32ドル高、31,985ドル

【こちらも】相場展望3月20日号 米国株: 首脳会談は、ヘビ(プーチン氏)に睨まれたカエル(トランプ氏) 日本株: 騰落レシオ(6日)は日経平均の下げを示唆 国民の生活をみない日銀は必要か
    

●2.米国株 : 世界をリードしてきた「民主主義」「人権」が漂流する米国

 1)NYダウ株は3/13を底に反発したが、本格反騰になるか分岐点にある
  ・S&P500は、NYダウよりも一歩進み、切り返し中と思われる。
  ・4/2発動見込みの「相互関税」の内容が緩やかなものになれば、「反騰は色濃くなる」もよう。米国経済への影響が和らぐため。

 2)トランプ政権の政策を巡る警戒が重し
  ・トランプ政権が、問題を引き起こしているのは「関税」だけではない。

  ・不法移民の強制退去、ウクライナなどから受け入れた移民の送還問題。

  ・財政赤字解消のための政府職員の一方的な解雇。

  ・裁判所命令を無視した法律の執行。

  ・同性愛者の解雇。

  ・同盟国に対しても恫喝。

  ・今まで米国の敵対国との親和政策。

  ・行政・司法・議会の三権分立を破壊する「帝王」的行動。
   ・トランプ政権の政策に同意しない裁判所判事に対して制裁を求める言動。
   ・議会の承認・同意なしに「大統領令」ですべて政策進行。

  ・今まで長年、築き上げてきた秩序を壊して、人々を不安に陥れる政策。「米国第一主義」にもかかわらず、米国民ですら「ディール(取引)」の対象にして混乱させている。米国が長年にわたって世界をリードしてきた「民主主義」「人権」はどこに行ってしまったのだろう。

 3)「相互関税」が4/2に発動されると警戒感の強まり、株式相場を抑えるか?
  ・トランプ大統領は4月発動予定の相互関税について「関税は基本的に相互的だが柔軟性がある」と指摘した。この発言を受け、リスク回避の動きが後退した。

  ・3/21、NYダウは一時▲500ドル程度下げていたが、指摘を受け下げ幅を縮小し、終値は+32ドル高で終えた。

  ・トランプ氏は関税に関して「強硬」と「柔軟」を交互に繰り返している。相手の反応を見ながら発言を変えている。トランプ氏としては「ディール(取引)」しているつもりなのだろう。

  ・最初は、世界各国の首脳は驚いていたが、慣れてきた。今や、トランプ氏の決断に「お手並み拝見」といった状況にみえる。
    ・カナダ新首相は、最初の海外訪問を米国ではなく欧州を選んだ。
    ・EUは、即時の報復措置を抑え、様子をみてから発動すると言い換えた。
    ・メキシコ大統領も同様に報復を遅らせるとした。
   加えて、トランプ氏の方針は「二転三転」し、方向感が見えにくくなってきている。

  ・米国株式市場も3/21、怯えることなく、様子見の雰囲気が強まった。

  ・トランプ関税に「慌てて行動すると、付けこまれる」と認識を深めたようだ。

  ・どうやら、トランプ氏の関税を使った「恫喝交渉」の底の薄さがみえてきたようだ。

  ・米国株式市場も冷静さを取り戻しつつある。しかし、トランプ関税は程度の差こそあれ、米国の物価上昇(インフレ上昇)と背中合わせにある。株式相場に負をもたらす金利上昇とも密接につながってくるのは間違いない。トランプ氏の次の一手「相互関税」の内容次第で株式相場は動くとみる。緩和的な相互関税と報道されてきたが、結論を待ちたい。

●3.「ウクライナ領土分割の協議」へトランプ大統領(共同通信)

 1)ウクライナ東部、南部4州とクリミアの帰属を決める。

 2)ウクライナは領土の一切の分割には応じない立場。ウクライナは一時停戦の交渉を優先し、領土分割の交渉は持ち越す方針だ。

●4.トランプ氏、「対中国赤字1兆ドル削減に関税活用」、USTR代表が来週協議(ロイター)

 1)米国の対中国貿易赤字削減に関税を活用する方針を示し、グリア米国通商代表部(USTR)代表が来週、中国側と協議すると明らかにした。

●5.トランプ氏、米国教育省を廃止へ、3/20に大統領令署名=ホワイトハウス(ロイター)

 1)トランプ氏と顧問のイーロン・マスク氏は、国際開発局(USAID)など政府機関の解体を議会の承認なしに進めようとしているが、教育省廃止は、トランプ氏が閣僚級機関の閉鎖を試みる初めての事例だ。

 2)議会による立法なしには教育省を廃止することはできない。共和党は上院で53対47の多数派を占めているが、閣僚級機関の廃止のような重要法案の成立には60票が必要であり、民主党議員7人の賛成が必要となる。上院民主党は教育省の廃止を支持する兆しを見せていない。

 3)トランプ氏は教育省を「大掛かりな詐欺」と呼び、廃止を選挙公約に掲げていた。第1次政権でも廃止を提案したが、議会は動かなかった。

●6.トランプ氏、関税影響に合わせて「FRBは利下げした方が良い」(ロイター)

 1)「正しいことを行え」とトゥルース・ソーシャルに書き込んだ。

●7.トランプ政権、不利な判決を出す裁判所に「最高裁が対応を」司法攻撃を強める(ロイター)

 1)米国ホワイトハウスのレビット報道官は3/19、トランプ政権の政策を差し止める連邦裁判所の判事を「アクティビスト」と非難し、連邦最高裁がそうした判事を統制すべきだとの認識を示した。トランプ大統領やマスク氏含めた政権幹部は、政権に不利な判決を下す裁判所への攻撃を強めている。

 2)これに対し、最高裁のロバーツ長官が「政権は適切でない」との異例の反論をする事態となっている。

●8.米国FBI、国内テロ対策部門を縮小へ、暴力的過激派の監視弱体化(ロイター)

●9.相次ぐテスラへの放火、トランプ大統領「テロリストだ」、議会占拠襲撃より深刻(読売新聞)

 1)米国では、連邦政府の人員や予算の大幅削減を進めるマスク氏に対して、有権者の反発が広がり、テスラ車の不買運動や放火事件が起きている。

■II.中国株式市場

●1.上海総合指数の推移

 1)3/20、上海総合▲17安、3,408
 2)3/21、上海総合▲44安、3,364

●2.中国若年失業率、2月は16.9%、2カ月連続で上昇(ロイター)

 1)16~24歳の学生を除く都市部若年失業者は2月で16.9%と、1月の16.1%から上昇した。上昇は2カ月連続となった。

 2)25~29歳の失業率も6.9%から7.3%へと上昇。30~59歳の失業率も4.0%から4.3%に上昇した。

 3)失業率は、職探しを諦めた求職者を考慮しておらず、農村部の失業も含まれていない。

■III.日本株式市場

●1.日経平均の推移

 1)3/20、祝日「春分の日」で休場
 2)3/21、日経平均▲74円安、37,677円  

●2.日本株:トランプ関税が4/2から「相互関税」を導入するが、内容が焦点

 1)今週は、3月決算企業の配当取りを意識した買い優勢を予想

 2)日経平均はNYダウと比べて、やや「割高感」があり、買いにくい状況にある

 3)例年3月下旬から4月の期間中、日経平均は買い優勢となる傾向がある
  ・3月末の株価を意識した「お化粧買い」で、買い意欲が高まる
    ・日経平均は今年に入ってから米国半導体株の下落を受け、下落していた。
    ・日経平均の推移
       12/27   40,281円
       03/21   41,985
    ・日経平均は、3/21に12/27比で▲2,604円安・▲6.46%と大きく反落している。
    ・そのため、3月末の株価を意識した「買い」が優勢となろう。
     ・投資信託も年金基金、機関投資家も「買い賛成」の状況となる。
     ・企業も自己株式の購入し、株価上昇に寄与する。
     ・証券会社(自己部門)は大口の売り越しをしているため、3月末決算を意識した買い戻しをするとみられる。

  ・4月は例年、海外投資家の現物買いが恒例となっている。
    ・昨年4月の海外投資家の現物株の推移
     ・昨年4月第1週   +1兆1,821億円買
         第2週   +5,955億円買
         第3週   ▲5,925億円売
         第4週   +2,159億円買

  ・したがって、来週以降、4月終盤にかけて、日経平均は強含むと思われる。

 4)トランプ関税で(1)物価上昇(2)景気後退(3)円高となることを懸念して、今年に入ってから米国・日本ともに株価は下を向いていた
  ・トランプ大統領は、日本を名指しして批判してきた。
    ・米国との貿易で、日本は大きな黒字となり、米国は赤字。
    ・日本は貿易を有利にするため「円安・ドル高」の為替操作をしている。
    ・日本は米国車を買わない。

 5)トランプ関税が4/2から「相互関税」を導入するが、内容が焦点
  ・どうやら、相互関税の対象国を選別して適用するとの報道がある。日本が適用対象となるか否か?に注目したい。適用除外となった場合、日本株は上昇風が吹くとみる。

●3.NISA投資56兆円、政府目標を達成(朝日新聞)

 1)2022年時点の28兆円を5年かけて56兆円に増やす目標を掲げたが、3年前倒しで実現した。

●4.三菱自、台湾鴻海にEV車を生産委託し協業、ホンダ・日産自にも拡大か(共同通信)

●5.ソフトバンクG、米国の半導体設計会社「アンペア」を約9,700億円で買収へ(NHK)

 1)需要が高まるAIやデータセンター向け半導体などの開発力を高め、事業の強化を図るねらい。

■IV.注目銘柄(投資は自己責任でお願いします)

 ・4568 第一三共   業績好調 
 ・8766 東京海上   業績好調
 ・9508 九州電力   業績回復基調

著者プロフィール

中島義之

中島義之(なかしま よしゆき) 

1970年に積水化学工業(株)入社、メーカーの企画・管理(財務含む)を32年間経験後、企業再生ビジネスに携わる。 現在、アイマックスパートナーズ(株)代表。 メーカーサイドから見た金融と企業経営を視点に、株式含む金融市場のコメントを2017年から発信。 発信内容は、オープン情報(ニュース、雑誌、証券リポート等々)を分析・組み合わせした上で、実現の可能性を予測・展望しながらコメントを作成。http://note.com/soubatennbou

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