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相場展望3月17日号 米国株: 反発か、調整の深化か、分岐点にある 日本株: 日経平均はNYダウと比べて「割高感」、短期投機筋に注意
■I.米国株式市場
●1.NYダウの推移
1)3/13、NYダウ▲537ドル安、40,813ドル
2)3/14、NYダウ+674ドル高、41,488ドル
【前回は】相場展望3月13日号 米国株: 米国株上昇が止まった? SOXの昨年夏・安値割れが焦点 日本株: 3/14株価先物の特別清算(SQ)後の、日経平均に注目 コメ騒動、勃発の可能性あり
●2.米国株:反発か、調整の深化か、分岐点にある
1)金、3/14に値で初の3,000ドルに乗せる
・3/14終値で3,001ドル。
・米国経済の後退懸念が増し、物価上昇でインフレ懸念へのリスク回避で「金」に資金が流入し金価格が上昇した。
2)トランプ関税で翻弄されたが、3/14は一息を付けて大幅反発
・このところNYダウはトランプ関税による不透明感で▲2,000ドル急落。このため、3/14のNYダウは+674ドル高と急反発した。
・ただ、あくまで自律反発狙いの買いで上昇しただけ、と思われる。個別銘柄をみるちと値下がりしていた銘柄を買い戻す動きが目立った。
・今週の下落幅は▲1,300ドルあまりとなり、2週連続で▲1,000ドルを超える下落となっている。
・投資家心理は改善した
・ウクライナ戦争終結に向かって一時停戦期待が高まる。
・つなぎ予算の上院での可決で政府機関の一部閉鎖が回避される可能性が高まった。
・週末を前に、持ち高調整の動きが出て、買い戻しが入った。
・トランプ高関税が、米国景気減速やインフレ再加速への警戒感は依然として強い。このため、まだまだ眼を離せない。
3)反発か、調整の深化か、分岐点にある
・3/14の米国株式市場は大幅反発した。
・つなぎ予算の上院可決で、政府機関の一部閉鎖の回避を好感。
・大幅下落後の値ごろ感があった。
・しかし、NYダウとS&P500種株価指数は「調整局面」入りの目安とされる▲10%前で浮上した。これを意識して、調整局面入り「回避」との見方が出てきた。
・だが、ナスダック総合や半導体株指数(SOX)は▲10%を大きく下回る水準にあり、大幅反発した3/14終値でも依然として▲10%を下回ったままである。
・米国株に垂れ込む(1)米国景気(2)トランプ関税(3)ウクライナ地政学リスクなど世界的リスクと不確実性が、投資家から高揚感を奪う状況に陥っている状況にあることは変わらない。
4)米国消費者は関税で、長期的な大幅物価上昇を見通し
・ミシガン大学3月消費者信頼感指数は57.9と、前月65.7から大幅悪化した。予想は63.1だった。2022年11月以来となる低い水準に低下した。
・1年先期待インフレ率は前月4.3%⇒今月4.9%に上昇した。
・トランプ関税による決着は、短期終息は考えにくく、長期化懸念が強い。
・消費者は不安が増し、物価上昇圧力を長期的なものと捉えているもよう。
5)トランプ氏の一貫性を欠く関税政策が、投資家の動揺を招いている
・米国債の利回り推移 2/3 3/3 3/13 3/14
・10年債利回り 4.555% 4.155 4.268 4.316
02年債利回り 4.249 3.950 3.957 4.021
・米国経済は物価上昇・インフレ率上昇傾向にあるのも関わらず金利が低下方向にある。
・債券トレーダーは、米国経済が失速しリスク拡大のサインを発信している。
・そのため、相場の流れに変化があり、米国株を売って⇒欧州株・中国株・
・米国株売り・ドル売り ⇒ ・欧州株・中国株・円・ユーロ買い
・「金」の買い
・米国債の買い
に投資資金が向かっている。要するに、「米国売り」が目立っている。
・トランプ氏は「米国に富を取り戻す」と語り、当面の悪化懸念は一時的として現状を見ない姿勢をしている。果たして、そういう現実を見ないで未来を語っておれるのも、あと数カ月内だろう。高関税政策が失敗したと受け止めたときは、すでに失った時間を巻き戻せなくなっている。事態の深刻さに気が付いたときは、中国とロシアなどが蘇生を始めている。そのように思える現状認識である。
●3.米国上院は3/14、つなぎ予算を可決(ロイター)
●4.米国2月卸売物価指数(PPI)前年同月比+3.2%上昇、1月は+3.7%(ロイター)
1)足元では物価上昇圧力が緩和しているが、トランプ政権による関税措置に伴う影響が、今後数ヵ月以内に物価指数に反映され始めるとの見方がある。
●5.EU産ワインやシャンパンに関税200%も、トランプ氏が対抗措置表明(共同通信)
●6.トランプ経済政策の不支持率56%=CNN調査(ロイター)
1)CNNの世論調査は3/6~9に実施、トランプ大統領の経済政策が国民から評価されていないことが、明らかになった。
2)マスク氏を肯定的評価は35%、否定的評価は53%と、不人気ぶりが高かった。
■II.中国株式市場
●1.上海総合指数の推移
1)3/13、上海総合▲13安、3,358
2)3/14、上海総合+60高、3,419
■III.日本株式市場
●1.日経平均の推移
1)3/13、日経平均▲29円安、36,790円
2)3/14、日経平均+263円高、37,053円
●2.日本株:日経平均はNYダウと比べて「割高感」、短期投機筋に注意
1)日経平均は、NYダウと比べて「割高感」
・日経平均・NYダウの推移
2/3 3/14 下落幅 下落率
日経平均 38,520円 37,053 ▲1,467円安 ▲3.8%安
NYダウ 44,421ドル 41,488 ▲2,933ドル安 ▲6.6%安
・トランプ関税というバズーカ砲の影響もあり、本場の米国株と比べて日本株の底堅さが目立つ。
・しかし、輸出で経済が成り立っているのが日本である。日本のGDPが609兆円と膨らんだが、生産力が高まったのではなく、インフレでGDPが成長したのであり、見せかけのGDP成長である。このインフレの恩恵を一番受けたのは政府の歳入である。消費税収入が増え、賃金アップの約半分を政府が召し上げている。国民の懐が豊かにならない限り、この活況は風船に過ぎない。
2)株価先物の特別清算(SQ)後の海外短期筋の動きに注目
・SQ前に大きく米国株、それもハイテク関連株が大急落した。
・株価先物が主導して、日経平均も下げた。ただ、米国・ハイテク株の急降下と比べると、日本株はリゾートにいるようだ。
・値ごろ感から買い戻しの機運が芽生え、海外短期筋は日経平均の上げ相場を主導すると思われる。気を付けたいのは、海外投機筋は頃合を見計らって利益確定の売りに転換するためだ。
3)海外投資家は売り越し継続
・海外投資家の投資推移
現物株 先物 合計
・3月第1週 ▲1,016億円売 ▲ 3,124 ▲ 4,140
・3月1週までの3週間 ▲8,720 ▲1兆3,349 ▲2兆2,069
・年初から3月1週累計 ▲6,247 ▲3兆0,482 ▲3兆6,729
・海外投資家は年初から一貫して売り越し基調である。ただ、短期投機筋は大きく下げたら買い戻し⇒反応が良ければ買い上がり⇒頃合をみて売り浴びせ、の動きが顕著に見受けられる。
・しかし、短期投機筋の年初からの動向をみると、基本的に「日本株は売り」スタンスである。彼らは、「日本で売って、欧州・中国では買い」にシフトしているようにみえる。
・証券会社の自己部門は、3月第1週で年初から▲2兆3,953億円も売り越し高を膨らませている。証券会社の自己部門でさえ、大きく売り越しているため、慎重なスタンスが求められていると思われる。
4)日本の自動車への関税は除外されず、すべての国が対象=米国商務長官
・日本は貿易立国で成り立っている。その輸出の3割が自動車が占めている。自動車産業は経済のすそ野が広く、春闘での賃上げのリード役となっている。それだけに、自動車産業の揺らぎが、日本全体に及ぼす影響は大きい。
・トランプ関税が及ぼす影響は大きい。そのため、負の影響を受けにくいリスク回避の運用にならざるを得ない。
・日本の政権、政治家は今こそ必死に働く時節である。新しい、若いリーダーの出現が待たれる。
●3.日本原子力研究開発機構、世界初の劣化ウラン蓄電池の開発に成功(時事通信)
1)リチウムイオン電池よりも大型化が可能で、バナジウム蓄電池よりも高効率。
2)劣化ウランの用途にも活用できる。
●4.キャノン、発行済み株の2.8%・1,000億円上限に自社株買い(ロイター)
1)期間は3/14~2026年1/30まで。
●5.コメ関税撤廃なら、カリフォルニア米カルローズ米が5kgが1,295円に(FNN)
1)実際の関税率は204.3%で、撤廃されれば農家に深刻打撃か
●6.トランプ大統領、自動車貿易で「米国車を受け入れない」と日本を名指しで批判(読売新聞)
■IV.注目銘柄(投資は自己責任でお願いします)
・3038 神戸物産 業績好調
・6902 デンソー 業績好調
・7733 オリンパス 業績好調
著者プロフィール
中島義之(なかしま よしゆき)
1970年に積水化学工業(株)入社、メーカーの企画・管理(財務含む)を32年間経験後、企業再生ビジネスに携わる。 現在、アイマックスパートナーズ(株)代表。 メーカーサイドから見た金融と企業経営を視点に、株式含む金融市場のコメントを2017年から発信。 発信内容は、オープン情報(ニュース、雑誌、証券リポート等々)を分析・組み合わせした上で、実現の可能性を予測・展望しながらコメントを作成。http://note.com/soubatennbou
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