相場展望5月9日号 米国株: インフレ再加速の兆しが続くと、FRBは政策金利引上げも 日本株: 「円安」の長期トレンドは変わらず

2024年5月9日 11:29

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■I.米国株式市場

●1.NYダウの推移

 1)5/6、NYダウ+176ドル高、38,852ドル
 2)5/7、NYダウ+31ドル高、38,884ドル
 3)5/8、NYダウ+172ドル高、39,056ドル 

【前回は】相場展望5月6日号 米国株: 戻り歩調だが、バフェット氏は米国株投資から離れる傾向 中国株: 過剰生産能力が適正規模まで縮小するまで苦難が続く 日本株: 揺らぐ日経平均、3本柱に変化の兆し


●2.米国株 : インフレ再加速の兆しが続くと、政策金利引上げの可能性高まる

 1)米労働市場には逼迫感が減速の兆しと、インフレ再燃も根強く、強弱感が併存
  ・労働市場の逼迫感が減速

  ・米4月雇用統計で非農業部門雇用者数が予想を下回る。

  ・平均賃金の伸びが減速の兆し。

  ・根強いインフレ再燃の恐れ
   ・米4月ISM製造業景況指数の支払価格が2022年6月来で最高となる上昇。
   ・米4月ISM非製造業(サービス業)の仕入れ価格も1月来で最高となる上昇。
   ・家賃は、昨年+8.2%上昇⇒今年1年で+9.7%上昇の見通し。
   ・住宅価格は、昨年+2.6%⇒今年は+5.1%上昇する見通し。
   ・住宅ローン金利も、1年後8.7%⇒3年後は9.7%の見通し。

 2)米政策金利は高水準ながら、インフレが再加速となる可能性が高まる
  ・5/15発表の米消費者物価指数(CPI)に注目。

 3)米FRBのインフレ目標+2%を達成には、現状の政策金利では不十分
  ・米3月消費者物価指数(CPI)は前年比+3.5%、予想+3.4%・2月+3.2%。
  ・3月の指数は、予想を上回り・2月からも上昇。

 4)米FRBの政策金利は、「再利上げ」の可能性高まる
  ・米債券市場では、金利が上昇傾向を示す。
   米国債券2年・10年利回りの推移  
              5/7     5/8   上昇幅
    2年債利回り    4.830% ⇒ 4.841%  +0.011%
    10年債利回り   4.457  ⇒ 4.498   +0.041
  ・金利動向を反映しやすいナスダック総合株価指数の推移
    ナスダック総合     5/7       5/8
               ▲16ポイント安  ▲29  5/6比▲0.28%下落
    NYダウは5/6比で+0.53%上昇ながら、金利高でナスダックは▲0.28%下落。

 5)5/8の米株式市場は、市場心理が改善しNYダウは上昇も、ハイテク株には割高感
  ・来週5/15発表の4月米消費者物価指数(CPI)と金利動向などを意識した動きが見受けられた。
  ・また、1~3月期の決算発表シーズンも今週でほぼ終了する。好決算を好感して株価が上昇した時期を終えると、次は好材料が乏しくなる。このため来週以降は、持ち高調整や利益確定売りで下に押されやすい局面も想定しておきたい。

●3.インフレとの戦い終了には一段の需要抑制が必要=リッチモンド連銀総裁(ロイターより抜粋

 1)昨年は経済が急成長し雇用が増加、同時に移民が増加し生産性が急上昇したためインフレ率が急低下した。

 2)今後のインフレ鈍化の進展は、FRBの目標+2%を上回る水準で停滞する可能性があり、インフレ率が目標に回帰するには「需要がもう少し抑制する必要がある」と述べた。インフレ率の着実な低下の再開が確認されるまで待つ必要がある。

■II.中国株式市場

●1.上海総合指数の推移

 1)5/6、上海総合+35高、3,140
 2)5/7、上海総合+7高、3,147
 3)5/8、上海総合▲19安、3,128

●2.中国住宅販売のメーデー連休中は、前年比▲47%減少=民間調査(ロイター)

 1)新型コロナ禍前の2019年の連休時期の水準を▲30%下回った。大都市の広州と上海では▲60%以上の落ち込みとなった。

 2)中国当局は住宅部門のテコ入れ措置を強化しているが、アナリストの多くが政策が断続的で短期的で限定的な影響にとどまる政策と見ている。

■III.日本株式市場

●1.日経平均の推移

 1)5/6、祝日「こどもの日」の振り替え休日で休場
 2)5/7、日経平均+599円高、38,835円
 3)5/8、日経平均▲632円安、38,202円

●2.日本株 : 「円安」の長期トレンドは変わらず

 1)「円安」の長期トレンドは変わらず
  ・政府・日銀の為替介入は4/29と5/2の2回で、計8兆円投入。
   いずれも、介入の直後は円高⇒やがて円安へ。
  ・日銀の植田総裁が発言する度に、「大幅円安」を3回も招いた。
  ・日米の金利差が広がった状態が続くとの見方
  ・日米金利差の推移 4/1   4/17  4/22  4/30  5/7  5/8
            3.581%  3.711  3.723  3.819  3.596  3.634
  ・短期筋が円を売って、ドルを買う動きは止まらない。
  ・日本企業が円を借入れ、ドル建て資産が増加。
  ・個人も為替取引で「円売り・ドル買い」を増加。
  ・ソニー銀行も、円を転換しドル建て定期預金で8%利回りと営業。
  ・政府・日銀の為替介入は瞬間的であり、円売り勢を儲けさせるだけ。
  ・円相場の「円安⇒円高」の転換点は、「FRBの利下げ」時点と見る。
  ・つまり、今年終盤~来年の年初以降から「日米金利差が縮まる」と予想する。

 2)5/7の日経平均は+599円高したが、半導体株など一部銘柄
  ・5銘柄で日経平均の上昇分の70%を押し上げた。
            日経平均の寄与度  上昇した株価 株価上昇率
    東エレク     179円       +1,830円   +5.23%
    ファーストリテイ 127        +1,290    +3.16
    ソフトバンクG   56        + 285    +3.66
    アドバンテスト   30         + 115    +2.25
    TDK        28        + 285    +4.10
      合計     420                +1.57(日経平均)
 3)5/8日経平均▲632円安、半導体株の反落は少なく、下落銘柄の幅が広がる
  ・日経平均寄与度の高い上位5銘柄の下落寄与は35%
             日経平均下落寄与 下落した株価 下落率
    ファーストリテイ  ▲93円      ▲950円   ▲2.26%
    東エレク      ▲55       ▲560    ▲1.52
    ソフトバンクG    ▲27       ▲137    ▲1.70
    信越化       ▲24       ▲149    ▲2.52
    テルモ       ▲23       ▲87     ▲3.26
     合計       ▲222円

 4)特別清算日の週の水曜日は、思惑で動く特別の日
  ・5/8の下げ幅が▲632円安と大幅安となったのは、短期筋の海外勢が「先安」を見ていることを示唆している可能性がある。

 5)3月期決算発表シーズンは5/10(金)がピークアウト、来週以降の株価に注意
  ・来週以降は好材料が乏しくなるため、株価は不安定となりやすい。格言「5月に売れ」のシーズンイン始まる。

●3.日銀・植田総裁は国会で5/8、「円安が物価に与える影響にリスクを意識する必要」(NHK)

 1)植田総裁は5/7、岸田首相と総理官邸で会談し、意見交換をした。

●4.トヨタ、2024年3月期決算の営業利益5兆3,529億円、日本の上場企業では初(NHK)

 1)要因は、ハイブリッド車を中心に販売好調と円安で利益押し上げ。

 2)2025年3月期の営業利益は3兆5,700億円の見通し。

●5.丸紅、2024年3月期営業利益は前期比▲18.9%減の2,763億円(フィスコ)

 1)2025年3月期純利益は前期比+1.8%増の4,800億円を見込む

●6.川崎汽船、総額1,000億円を上限とする自社株買いを決議、原則消却(ロイター)

 1)2025年3月期の配当は83⇒85円に引上げ

●7.飯野海運、2024年3月期経常利益は前期比+4.5%増の218億円、増配も(フィスコ)

 1)2025年3月期経常利益は前期比▲33.5%減の145億円

■IV.注目銘柄(投資は自己責任でお願いします)

 ・4383 ラスクル   業績好調
 ・6187 LITALICO   業績堅調
 ・6869 シスメックス 業績堅調

著者プロフィール

中島義之

中島義之(なかしま よしゆき) 

1970年に積水化学工業(株)入社、メーカーの企画・管理(財務含む)を32年間経験後、企業再生ビジネスに携わる。 現在、アイマックスパートナーズ(株)代表。 メーカーサイドから見た金融と企業経営を視点に、株式含む金融市場のコメントを2017年から発信。 発信内容は、オープン情報(ニュース、雑誌、証券リポート等々)を分析・組み合わせした上で、実現の可能性を予測・展望しながらコメントを作成。http://note.com/soubatennbou

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