相場展望4月20日 米国株: 信用不安の確率が高まる恐れ⇒景気後退へ 日本株: 決算発表時期到来、株価跳ねたら利益確定を

2023年4月20日 11:03

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■I.米国株式市場

●1.NYダウの推移

 1)4/17、NYダウ+100ドル高、33,987ドル(日経新聞より抜粋
  ・米経済指標の改善を受けて、景気の先行き不安が和らいだ。半面、主力企業の決算発表を控え、買いの勢いは乏しく、NYダウの上値は重かった。
  ・4/17発表の4月ニューヨーク連銀製造業景況指数は10.8と、3月の▲24.6から改善しダウジョーンズ通信がまとめた市場予想の▲15も上回った。これを受けて、景気敏感株の一角が買われ、航空機のボーイングや工業製品・事務用品のスリーエムが上昇した。消費関連のホームセンターのホームデポも高かった。
  ・NYダウは下げに転じる場面もあった。経済指標の上振れで米連邦準備制度理事会(FRB)が利上げを続けやすくなるとの見方が意識され、相場の重荷となった。
  ・今週は大手金融のほか動画配信のネットフリックスや電気自動車のテスラなど大手ハイテク企業の決算発表が予定されている。投資家心理を左右する可能性もあり、内容を見極めようと様子見の投資家も多かった。
  ・医療保険のユナイテッドヘルスや石油のシェブロン、バイオ製薬のアムジェンは下落。韓国サムスン電子が自社のスマホに通常使用する検索エンジンをグーグルからマイクロソフトの「ビング」に切替えることを検討していると伝わり、グーグル親会社のアルファベットが下落した。

【前回は】相場展望4月17日号 米国株: 直近高値に接近⇒反落リスクに注意信号点滅 日本株: 日経平均は高値圏を回復、「過熱感」示唆

 2)4/18、NYダウ▲10ドル安、33,976ドル(日経新聞より抜粋
  ・決算発表を受け、金融のゴールドマンサックスと医薬・日用品のジョンソン・アンド・
ジョンソン(J&J)が下落し、指数を押し下げた。個別では値動きの出る銘柄はあったものの、相場全体の方向感は乏しかった。
  ・NYダウは下げて始まった。4/18に2023年1~3月期決算を発表したゴールドマンサックスは、売上高にあたる純営業収益が市場予想を下回ったことが嫌気された。2023年1~3月期が最終赤字となった医薬・日用品のJ&Jも安く、重荷となった。
  ・一方、主力小型機の増産計画に変更がないと伝わった航空機のボーイングは上昇した。ただ、NYダウを構成する30銘柄のうち、上昇と下落がいずれも15となった。「主力企業の決算が出そろうのを待ちたいとの投資家が多く、相場は方向感が定まらなかった」との声が聞かれた。
  ・アトランタ連銀のボスティック総裁は4/18、米CNBCの番組で米連邦準備制度理事会(FRB)の利上げはあと1回想定していると述べた。ただ、発言に新鮮味がないうえ、市場の関心が決算に向かっているため、材料視されにくかった。
  ・ハイテク株が多いナスダック総合は小幅に反落したが、アナリストが投資判断を引き上げた半導体のエヌビディアは上昇した。

 3)4/19、NYダウ▲79ドル安、33,897ドル(日経新聞より抜粋
  ・米主要企業の決算発表が本格化する中、来週にかけて相次ぐ大手企業の発表内容を見極めたい雰囲気が強く、積極的な売買が手控えられた。
  ・英国のインフレ指標が市場予想を上回り、インフレ圧力の根強さを背景に欧米の中央銀行の金融引締めが続くとの観測も、株式相場の重荷となった。
  ・NYダウの構成銘柄ではないが、4/18夕に発表した四半期決算で売上高の実績と見通しが市場予想に届かなかった動画配信のネットフリックスが▲3%下げた。
  ・4/19夕に発表を控えていたIT(情報技術)のIBMや電気自動車のテスラも下落し、投資家心理の重荷となった。「輸送や製造業、ハイテク大手などの決算を見て、米景気の動向を確認したい」との声も聞かれた。
  ・4/19発表の3月の英国消費者物価指数(CPI)上昇率は前年同月比+10.1%と、ダウジョーンズ通信がまとめた市場予想+9.8%を上回った。英国債利回りが上昇し、米国債にも売りが波及した。米長期金利は前日終値の3.57%を上回って推移し、株式の相対的な割高感が意識されやすかった。
  ・医療保険のユナイテッドヘルスやドラッグストアーのウォルグリーンなどディフェンシブ株の一角が売られ、NYダウの重荷となった。映画娯楽のディズニーやホームセンターのホームデポといった消費関連株も安い。反面、4/19朝に市場予想を上回る四半期決算を発表した保険のトラベラーズは+6%高、前日に売られた医薬・日用品のJ&Jや金融のゴールドマンサックスは反発した。スマホのアップルも買われ、NYダウを下支えした。ネット通販のアマゾンや画像処理半導体のエヌビディア、決算が好感されたインテュイブサージカルなど医療機器関連株の上げが目立った。

●2.米国株:ついに米国で始まった信用収縮、過剰流動性で潤った傘は吹き飛ばされるか ⇒ 米国景気後退へ

 1)イエレン米財務長官は、「銀行による貸し渋り・貸し剝がし」が行なわれていることを
認めた。そして、その効果は「FRBの利上げ」に匹敵すると述べた。
  ・米国では地方銀行の経営破綻が相次ぎ、信用不安が急速に広がったため、銀行は信用不安を払拭するために健全経営を示す必要に迫られ、貸出の厳格化や貸し剝がしを実行している。
  ・米景気後退が長期化する可能性があり、信用不安が深まれば、必要以上に疑心暗鬼に陥る可能性がある。

 2)2023年世界経済成長率2.8%では不十分
  ・米地方銀行の相次いだ破綻、巨大金融会社クレディスイスの経営問題で一気に信用不安が広がった。
  ・米当局による破綻2行の預金の全額保護、ライバルのUBSによる救済買収で、信用不安による動揺は一息ついたというのが現状である。
  ・株式市場は、信用不安問題が解決したというように受け止め、株価は楽観的になり上昇している。
  ・しかし、本当に信用不安問題は収束したのだろうか?はなはだ心許ない。金融市場は信用不安問題を受けて、銀行による自己保全策が深く進行している。つまり、銀行自身が取付け騒ぎとならないように、資本充実や不良債権縮小といった事業規模の縮小を図り始めている。すなわち、信用縮小である。考えられる銀行の自己保存策
  ・貸出条件の厳格化
  ・貸し剝がし
  ・貸倒引当金の積み増し
   現在は米国の地方銀行を中心に信用縮小が始まっており、米金融大手までは及んでいない。預金者は自己保全の動きとして、預金を地方銀行から引き出して、大手銀行に移し始めている。大手銀行は、預金増加で信用を増強している。しかし、この波は、いずれ大手金融機関にまで及ぶだろう。
  ・米金融サービス会社チャールズ・シュワブ、前年比で銀行預金が▲30%減少、自社株買い停止、株価は年初来で▲37%下落(ブルームバーグ 4/17)大手銀行も、貸出条件の厳格化と貸し剝がしに向かうという悪いスパイラルに落ち込むリスクが台頭してくると思われる。
  ・そういう状態になった場合、IMFは世界成長率が2.8⇒1.0%に落ち込むシナリオを想定しているようだ。
  ・信用リスクによる経済成長落ち込みに対応するには、現在の見通しである2.8%では小さ過ぎる。

 3)新型コロナによる経済収縮の対策として、世界主要各国の中央銀行は超大規模な金融緩和策で対処してきた。結果として「急激な高インフレ」を発症させてしまった。
  ・新型コロナ収束に伴う経済成長の回復と、インフレ退治のため、米国・欧州の中央銀行は2022年から健全化政策に転換した。
  ・すなわち、膨張した信用の縮小である。

 4)実は、先進国の中央銀行によるインフレ退治のため、中央銀行の膨張した資産縮小つまり「信用収縮」が、ゾンビ型で生き残ってきた米地方銀行やクレディスイスを破綻に追い込んだともいえるだろう。
  ・米中央銀行のFRBは、新型コロナ対策として5兆ドルもの資金を市場に供給した。1年前から回収し始めたがまだ1兆ドル強しか回収できていない。すなわち、まだ4兆ドル程度の資金回収が行なわれる可能性がある。
  ・ゾンビ企業の淘汰は始まったばかり。先進国の中央銀行の膨張した資産圧縮もスタートした初期である。融資拡大を図ってきた銀行も、膨らんだ貸出を縮小する転換点を迎えた。FRBやECBなどの中央銀行による流動性膨張と低金利策で生き残ってきた企業の整理が始まろうとしている。

 5)株式市場は、新型コロナの中央銀行の膨張策と低金利策の恩恵を大きく享受した。
  ・株式市場に流れ込んだ中央銀行からの資金もまた回収される運命にある。
  ・企業業績も無関係ではいられない。
  ・当然ながら、信用収縮の影響は、楽観的な株式市場にも襲い掛かるだろう。
    

●3.イエレン氏、米追加利上げが不要になる可能性、銀行破綻で銀行融資が引締め(ロイター)


●4.セントルイス連銀ブラード総裁(フィスコ)

 1)FRBは利上げ継続を、米景気後退に陥らず。

 2)労働市場は非常に堅調。堅調な労働市場は経済の大部分を占める消費の堅調さにつながる。2023年後半にリセッションに陥ると予想する時期ではない。

●5.アトランタ連銀ボスティック総裁(フィスコ)

 1)FRBはあと1回の利上げの公算。

●6.米4月住宅市場指数(NAHB)は45と、予想に一致(フィスコ)

 1)予想通り4カ月連続で上昇、9月来で最高、ただ活動縮小を示す50割れは9カ月連続。

●7.クレディ・スイスのファンド約300本から3/23~4/6で3,350億円流出(ブルームバーグ)

 1)買収発表から3週間の流出額は、7,500億円に達した。

■II.中国株式市場

●1.上海総合指数の推移

 1)4/17、上海総合+47高、3,385(亜州リサーチより抜粋
  ・先週の好地合を継ぐ流れとなった。
  ・中国景気の持ち直し期待が続く中、投資家心理も上向いている。4月に入り報告された中国経済指標では、製造業PMIや貿易、金融などで予想を上回る内容が相次いだ。
  ・なお、国家統計局はあす4/18、第一四半期のGDP成長率や3月の各種経済統計(小売売上高、鉱工業生産)を公表する。注目のGDP成長率に関しては、前四半期(2.9%)と2022年通年(3.0%)を上回る4.0%で着地する見通しだ。
  ・指数は引けにかけて上げ幅を広げ、昨年7/5以来、約9カ月ぶりの高値水準を回復。
  ・業種別では、エネルギーや金融の大型株が牽引。消費関連もしっかり。素材・公益・運輸・医薬品・不動産が買われた。半面、ハイテクは冴えず、メディア関連も売られた。

 2)4/18、上海総合+7高、3,393(亜州リサーチより抜粋
  ・不安材料を織り込む流れとなったが、約9カ月半ぶりの高値水準を切り上げた。
  ・中国経済回復ペースの鈍化が警戒され指数は弱含みで推移したが、後場途中から上昇。取引時間中に公表された経済指標はまだら模様。第1四半期GDP成長率や3月小売売上高は予想を上回ったものの、3月鉱工業生産や1~3月の固定資産投資などは予想に届かなかった。
  ・景気持ち直しを後押しするため、当局は支援策を続けるとの期待が高まっている。
  ・業種別では、消費関連の上げが目立ち、銀行・保険もしっかり。半面、不動産開発関連は冴えず、医薬品・公益・素材・半導体は売られた。

 3)4/19、上海総合▲23安、3,370(亜州リサーチより抜粋
  ・新規材料が乏しい中、売り圧力が意識される流れとなった。
  ・中国重要経済指標の発表は前日でほぼ一巡した。上海総合指数は前日まで3日続伸し、足もとでは約9カ月半ぶりの高値となった。また、主要企業の決算報告が進む中、業績動向を見極めたいとするスタンスも買い手控え、につながった。
  ・業種別では、消費関連の下げが目立つ。長城汽車の総裁は、国内の新エネルギー自動車(NEV)市場における競争激化に懸念を示した。「中国NEVメーカーで実質的に黒字を確保している企業は実質ゼロだ」と指摘した。不動産も安く、医薬品・エネルギー・素材・インフラ関連・運輸が売られた。

■III.日本株式市場

●1.日経平均の推移

 1)4/17、日経平均+21円高、28,514円(日経新聞より抜粋
  ・自動車や銀行、景気敏感株の一角に買いが入り、3/9以来の高値になった。一方、上値では利益確定売りも出て、相場は下落する場面も目立った。
  ・日経平均が7日続伸するのは2022年7月以来。米金融当局が5月も利上げを続けるとの観測を背景にした米長期金利の上昇で為替市場は円相場が134円台に下落するなど円売り・ドル買いが膨らんだ。輸出採算の改善期待からトヨタ・ホンダをはじめ自動車株などが買われた。
  ・JPモルガンチェースなど米銀大手の決算が好調だったのを受けて、東京市場でも三菱UFJなどへの買いに波及した。米景気に対する過度な警戒が和らいだとの見方からファナックなど景気敏感株の一角も上昇した。もっとも、米国では今週も主要企業の決算発表が相次ぐとあって、日経平均の一方的な上値追いにはつながらなかった。前週末に急伸したファストリや、商社株の下げが目立った。
  ・アステラス・TDK・オリンパス・ソフトバンクGが上昇した。一方、資生堂・トレンド・伊藤忠が下落した。

 2)4/18、日経平均+144円高、28,658円(日経新聞より抜粋
  ・米景気の先行き懸念が和らぎ、景気敏感株の一角に買いが入った。日経平均の8日続伸は2022年3月中旬以来で、2022年8月22日以来およそ8カ月ぶりの高値水準となり、年初来高値を更新した。
  ・4/17発表の4月のニューヨーク連銀製造業景況指数が市場予想を上回り、同日の米株式相場が上昇したことが投資家心理の支えとなった。東京市場は7割超の銘柄が上昇し、銀行株や保険株を始め幅広い銘柄に買いが入った。
  ・一方、年初来高値を上回って目先の達成感も意識されやすく、利益確定売りが上値を抑えた。台湾積体電路製造(TSMC)の設備投資減額報道を背景に、東エレクやアドバンテストなど値嵩の半導体関連株に売りが出たのも相場の上値を重くした。
  ・高島屋・三越伊勢丹・イオン・エムスリー・テルモが買われた。半面、信越化・太陽誘電・スクリーン・INPEXは売られた。

 3)4/19、日経平均▲52円安、28,606円(日経新聞より抜粋
  ・日経平均は前日に年初来高値を更新しており、これまで上昇していた主力銘柄を中心に利益確定目的の売りが出た。為替相場が134円台の円安水準で推移したことから、日本株を積極的に売る動きはなく、下値は堅かった。
  ・日経平均は前日まで8日続伸し、この間に+1,200円近く上げていた。急ピッチで上昇してきたため、4/19はり利益確定の売りを出す投資家が多かった。電子部品の一角に売りが目立ち、午前には日経平均の下げ幅が▲120円を超える場面があった。
  ・保険株が堅調で相場の下値を支えた。米金融不安の和らぎを映して見直し買いが入った。前日の米株式相場と同様に、日経平均も方向感を欠き、朝方には小幅に上げる場面もあった。
  ・オリンパス・TOTO・安川電が下げ、一方、板硝子・クレセゾン・京成が上昇した。

●2.日本株:「買われ過ぎ」局面入り接近見通しのため、利益確定時期到来を予想

 1)テクニカル指標は「買われ過ぎ」を示している。
              4/3   4/19 
  ・騰落レシオ25日   103.79  133.26
         6 日    72.84  159.71
  ・ストラスティクス   4/10   4/19
    FAST        15    94
    SLOW        33    94

 2)3月期決算企業の決算発表が5月上旬まで本格化し、好決算銘柄の上昇が相場を牽引する流れになると予想する。
  ・半面、決算内容が予想に届かない銘柄は売られる展開となろう。
  ・米企業の1~3月決算発表のピークは日本より早く迎える。
  ・このため、米株式との連動性が高い日本株は、早めの利益確定売りに注意したい。

●3.企業業績

 1)FDK   2023/3期営業利益+7.0⇒+7.5億円に上方修正(フィスコ)
 2)大成建設 2023/3期営業利益+970⇒+547億円に下方修正(フィスコ)

■IV.注目銘柄(投資はご自身の責任でお願いします)

 ・2801 キッコーマン 業績堅調。 
 ・4452 花王     業績堅調期待。
 ・6367 ダイキン   中国回復期待。

著者プロフィール

中島義之

中島義之(なかしま よしゆき) 

1970年に積水化学工業(株)入社、メーカーの企画・管理(財務含む)を32年間経験後、企業再生ビジネスに携わる。 現在、アイマックスパートナーズ(株)代表。 メーカーサイドから見た金融と企業経営を視点に、株式含む金融市場のコメントを2017年から発信。 発信内容は、オープン情報(ニュース、雑誌、証券リポート等々)を分析・組み合わせした上で、実現の可能性を予測・展望しながらコメントを作成。http://note.com/soubatennbou

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