ENECHANGE、EV充電の受注進捗率は目標に対し約50%を達成 売上高100億円達成に向けて寄与する見込み

2022年12月20日 17:45

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記事提供元:ログミーファイナンス

ENECHANGE、EV充電の受注進捗率は目標に対し約50%を達成 売上高100億円達成に向けて寄与する見込み

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城口洋平氏(以下、城口):はじめまして。ENECHANGE株式会社、代表取締役CEOの城口と申します。本日は、会社のカンパニーハイライトを数ページのみ簡単にご紹介させていただいたあと、EV充電事業の話をメインにご説明できればと思っています。

特に「ログミーファイナンス」を見ている個人投資家の方には当社の業績などを非常によく見ていただいていることが多いため、数字の話は私どもが公開している決算動画を見ていただき、本日は当社および日本にとって一番重要なEV充電の話を忌憚なくできればと思っています。

エネルギーの未来をつくる

城口:まず簡単に、カンパニーハイライトをご紹介します。私の創業ストーリーにもあるとおり、東日本大震災の際に、多くの日本人が「エネルギーは非常に大事な問題だ」と感じたと思いますが、私もそのうちの1人でした。ちょうど海外の大学院に留学したいと考えていたタイミングだったため、それならばエネルギー工学を学ぼうと思い、エネルギー工学の修士の学生として最初にイギリスに渡ったのがちょうど10年ほど前の2012年でした。

そこからイギリスのケンブリッジ大学で博士まで進み、5年間ほど研究者として過ごし、その研究が終わるタイミングでENECHANGEを作りました。それからロンドンに移り、日本に移り、最後に東京に来て上場しました。

逆に言いますと、私は2012年から今に至るまで、基本的にはずっとイギリスにいます。脱炭素やEVはヨーロッパ中心のムーブメントであり、脱炭素の震源地である欧州でその大きな流れを見ながら、いろいろなメッセージや教訓を日本に持ってきて、日本の脱炭素を推進することが当社の役割だと思っています。

当社はロンドンと東京にオフィスがあります。ロンドンには世界中でどのような脱炭素のトレンドが動いており、どのようになっているかを調査したり、場合によっては投資したりする、イギリス人を中心とした調査チームがいます。東京には、そのナレッジに基づく事業を実際に日本で推進し、世の中を変えていくチームがあり、このような役割分担で運営しています。

ENECHANGEは、カーボンゼロを推進する会社です

城口:世界が脱炭素になることは人類が生き残るためには必要だという中で、スライドに記載の大きな6項目を実現すれば、世界は脱炭素になると言われています。

ただし、なかなか難易度が高いものが多いです。例えば3つ目の「食を改善する」は、家畜がゲップでメタンを出すことが温室効果につながるため、代替肉や培養肉を使ったり、ベジタリアンになろうということです。

6つ目の「二酸化炭素を除去する」については、実際に僕も会社を見てきましたが、空気中から大量に空気を吸い、CO2のみを取り出して固定化するということで、地球の空気清浄機のような話です。夢物語とまでは言いませんが、比較的難易度が高い話が実際は多いです。

今の技術と経済力で何ができるのかというと、実質的には1つ目と2つ目しかありません。1つ目は、シンプルに言いますと再生エネルギーをどんどん普及させ、太陽光や風力などで電気を作る未来の実現です。2つ目は、ガソリンからEV・水素に替えていくというものです。まさにこの2つで世界の排出量の50パーセントが削減できます。

つまり、脱炭素のためには何をしたらよいのかと言いますと、現状では再生エネルギーを作り、EVに替えていくことが世界の脱炭素を実現する唯一の方法です。当社はまさにその2つに関わる、再生エネルギーの電気をお客さまに販売していくことと、EV充電を普及させていくことを行っています。

エネルギー業界に特化したSaaS事業

城口:当社は大きく分けて3つの事業を展開しています。1つ目は、電力自由化に伴う電気の切替サービスです。安いところや再生エネルギーの電気など、よりよい電気・ガスを探してもらい、選んでいただく事業を行っているのがプラットフォーム事業です。

再生エネルギーの電気が増えてくると、晴れた日はよいものの、曇りの日、もしくは夕方の日没のタイミングが一番電気が足りなくなります。そのようなやや不安定な再生エネルギーに対し、私たちの電気の使い方を調整し、変えていかねばなりません。それをAIやDXを使って行っていくのが、2つ目のデータ事業です。

3つ目は、EV充電事業です。先ほどの脱炭素化のための「交通を電化する」には、ガソリン車からEVに替えていかなければなりません。しかし、EV化が進むとガソリンスタンドに相当するEV充電インフラ網が必要です。

坂本慎太郎氏(以下、坂本):スライドのプラットフォーム事業の下部に記載の「売上高成長の最大化」が「一時的に収益性重視へ」に変更されていますが、この理由は近年にありがちな電力の卸売価格の上昇などが原因でしょうか?

城口:こちらはあえて打ち消し線を引いて残していますが、去年の12月までは売上高成長の最大化を目標に掲げており、実際に去年1年間で見ると、売上が前年比70パーセント以上とまさに驚異的に伸びていました。

一方で、今年第3四半期に会社として初めて、売上が前年同月比で減収となる経験をしました。ご推察のとおり、ウクライナ戦争の影響が非常に大きいです。今世界中でロシアからエネルギーを買えない状態になっているため、世界中のエネルギー価格が高騰し、事業が成り立たない状態になっています。

当社は電気を選ぶお手伝いが仕事であるものの、選ぶ電気がないと言いますか、電力会社は今は開店休業状態になっており、選ぶ状態ではなくなっています。そのため、新しい電気の切替の支援があまりできないため売上が増えません。ですので、コストを削減してきちんと利益を出していくことを余儀なくされており、今年1年間は収益性重視に転換しています。

ロシアとウクライナは依然戦争を続けているものの、幸いにしてやや落ち着いてきているというニュースも多方面で聞いています。しかし、簡単に言いますと、ロシアの機嫌に左右されるというのが足元の状況です。

売上高100億円の達成に向けたロードマップ

城口:当社は今からちょうど2年前の2020年に上場しました。その時の売上から「年間30パーセント程度を伸ばし続けていきます。その程度はしっかりできると思います」とお伝えしており、実際に去年は76パーセント増と、目標の2倍以上の成長を実現できました。

そのため、期初は今年も同様のペースで伸ばしていけると思っていたのですが、予期しないウクライナ戦争が2月に始まり、さすがにそのような状況ではなくなりました。

ただし、2023年の見通しはそこまで悲観的ではありません。2つ理由がありますが、1つは先ほどお伝えしたとおり、世界中でウクライナ戦争はそろそろ終わるというムードだと理解しており、回復の兆しが見えてきていることです。

もう1つは、幸いにして私たちが本日メインでお話ししているEV充電事業が順調に立ち上がってきており、日本でしっかりとEVが売れていけば、EV充電事業が伸びていく状況になっているためです。

このように、ウクライナ問題に関係なく伸びる事業が立ち上がってきていますので、2023年はそれなりによい年になるのではないかと思っています。

トンネルの先の景色にはロンドン橋がみえる

城口:当社は常に決算のストーリー資料を1枚の絵で表現しています。いろいろなことをお話ししてもすべては覚えてもらえないため、個人投資家や機関投資家の方にも1枚の絵で覚えてもらうのがわかりやすいと思っています。

今当社はトンネルの中を走っています。このトンネルはまさに業績が厳しい暗闇の中という意味で、そこを走っている車はEVです。出口もきちんと見えており、出口の先にはロンドン橋が見えています。

当社は今、EV充電で日本で初めてテレビCM、タクシー向けCMを始めています。そのテーマソングが『ロンドン橋落ちた』です。そのロンドン橋が常に先に見えています。

つまり、日本中の人たちに当社のCMを目にしてもらえる頃には、おそらくEV充電が勢いよく売れるようになってきており、結果として当社の業績が回復基調に戻ってくる日はそれほど遠くないのではないかということです。

CMは11月や12月から試験的に流し始めており、1月からは全国のタクシーやテレビで積極的に流すようになるため、おそらく来年の上半期くらいにはみなさまが目にする程度になるのではないかと思っています。

日本のEVの普及状況

城口:日本のEVの新車販売比率は3.8パーセントまで増えてきています。当社がEV充電に参入を決意した時は1.4パーセント程度でした。参入を宣言してから爆発的に上がっているため、振り返ってみれば参入のタイミングはよかったと個人的には思っています。

しかし、最終的には100パーセントにならないといけない数字であるため、3.8パーセントはまだまだ通過点でしかないという状況ではあります。

EV充電インフラ補助金

城口:岸田文雄首相および西村康稔経産大臣をはじめとし、GXこそが日本の成長の柱であると打ち出しており、国としての補助もかなり積極的に出していくかたちになっています。今年は約600億円の補助金でしたが、来年は少なくとも倍額になることが決定しており、国は最低2030年までこれ以上の手厚い支援を行っていくという話もしています。

EV充電の利用シーン

城口:EV充電の利用シーンは3つあります。まず、基本的には自宅で充電します。これが基礎充電です。例えば日光まで旅行に行く場合、日光のホテルに宿泊するためホテルで充電します。このように到着した場所で充電するのが目的地充電です。通常は一度充電すると400km程度は走れるため、日光までの距離であれば問題なく行けます。

なんらかの理由で青森まで旅行するとしますと、さすがに充電せずに行くのは無理なため、途中で高速道路のサービスエリアなどで充電します。これが経路充電です。

このように、EV充電の利用シーンは3つに分かれており、1つ目と3つ目は基本的には比較的長い時間滞在します。ホテルなども一晩滞在するため、ゆっくりじっくり充電する普通充電です。

2個目のシーンでは、例えばサービスエリアで充電するのはせいぜい10分から30分なので、急速充電になります。このように、利用シーンは3パターンありますが、充電の種類としては2種類に分かれています。

坂本:御社は前回に「とりあえず目的地充電を広げていく」とお話ししていたと思います。

城口:そのとおりです。目的地充電に取り組んでおり、「なぜ基礎充電を進めていないのですか?」というご質問をいただきました。

同じ充電器を使うため、目的地充電を手掛けるのに基礎充電を用意しない理由は、技術的にはありません。そのため、1年前に私たちがEV充電への参入を発表した時に「まずは目的地充電から始める」とお話ししましたが、1年間の準備を経て自宅の基礎充電にも参入することを先月発表しました。

ゆっくりじっくり充電するタイプに関しては、必要となるテクノロジーは一緒なので、当然両方の分野にしっかりと参入したというのが今の状況です。

増井麻里子氏(以下、増井):「充電インフラの補助金が拡大方向」というお話がありましたが、この3つの充電で全部に行き渡るものなのですか?

城口:そのとおりです。充電インフラの補助金は、それぞれに3分の1ずつ出るというようなルールは決まっておらず、全体で予算がとられているかたちです。そのため、3つの充電方法のどれでも補助金は利用可能になっています。

坂本:補助金の制度は、2030年くらいまではある程度続く見込みでしょうか?

城口:2030年くらいまでは続くと見ています。日本には、良くも悪くも単年度予算という制度があり、それが弊害にもなっています。ですので、今のところ毎年続けることが法整備的にできていないのですが、この補助金の制度は続くという見通しは言われています。

アメリカはもっと踏み込んでいます。それが続くと言われても、単年度予算だった場合、企業側からすると怖くて事業に踏み込めないため、アメリカは10年間の予算をとりました。

「アメリカはそこまで踏み込んでいるのだから、日本もそうしたらよいのではないか」という考えは、私たちからも含めていろいろなかたちで政府に多くの人が提言しています。政府からも今検討中だということはオフィシャルに発表されており、政府の資料にも出ています。

これは国のインフラを作り変えるお話なので、単年度ではなく、10年単位くらいで取り組んでいかないといけないものです。国も新しく道路を作っていくような事業であることは十分理解しているため、私はそれほど心配していません。

国内充電設備の課題

城口:日本の充電設備には、大きく2つの問題があると思います。特に私のようにロンドンに住んでいると、世界との比較で大きく2つの問題が見えてきます。

1つ目が、出力キロワット数が時代遅れというものです。つまり、充電スピードが遅いです。ゆっくりじっくり充電するのはよいのですが、少しゆっくり過ぎます。イメージで言いますと、例えば世界の携帯は5G対応なのに、日本だけいまだに3Gを使っている状態です。

坂本:かなり遅れていますね。

城口:これは致命的です。一晩充電しても満タンにならないだけでなく、半分にもならない状態です。

極端なお話しをすると、今日本に設置されている充電器は、このスタジオのライトのコンセントと同じ100ボルトの出力のものを使っている状態です。電球をつけるのと同じコンセントに、EVを差し込んでいるため、そのようなものでは充電できないというお話です。

EV充電器のアップグレード

城口:スライドはロンドンの充電器設置状況です。左側のまばらにある黄色い目印は、日本で主流となっている3キロワットの充電器の設置状況で、右側が6キロワットの充電器の設置状況です。

ロンドンも昔は3キロワットと言われる、いわゆる3Gのようなものがメインでしたが、「これでは遅い」ということで、どんどん6キロワット以上にアップグレードしていきました。今ヨーロッパは99パーセントが6キロワット以上で、日本は99パーセントがいまだに遅い3キロワットを使っている状態です。

坂本:急速充電は、何キロワットくらいなのですか?

城口:急速充電は、現在の世界のスタンダードは100キロワットです。これに対し、日本の急速充電は30キロワットです。つまり、日本は急速充電といっても急速でなければ、普通充電は3G回線状態で遅すぎて使えないという状況です。

しかし、これには理由があります。背景を見ていくと、日本は世界に先駆けてEV充電のインフラを設置していきました。2013年から2015年くらいに、「日本は世界に先駆けてEV大国になる」という勢いで、何千億円もの予算を出し、充電器をかなり設置しました。その時のものがそのまま残ってしまっている状況で、少し時期尚早でした。

世界がどうなるかまだわからない状態で、やや見切り発車的に充電設備を設置し、普通充電が3キロワット、急速充電が30キロワットになってしまい、10年経って蓋を開けてみたら、世界は普通充電は6キロワットで急速充電は100キロワットになっていたというお話です。

日本だけかなり旧世代の充電器を使用しているのは、「ブロードバンドを引く前にアナログ回線を一所懸命に引いてしまった。どうしよう」という状況になってしまっているということです。

しかし、これは悪いことではなく、多少インフラがあるため、看板などは使い回せます。「EV充電器がありますよ」という看板など基礎工事の部分は使い回しながら、徐々にアップグレードしていくことが今の日本には必要です。

加えて、マンションでの普及が遅れています。いまだに新築マンションの1パーセント未満しかEV充電器が設置されていません。ヨーロッパでは義務化されており、新築マンションには基本的に100パーセント設置されています。それが日本はいまだに1パーセント未満で、少々理解に苦しむ状況です。このあたりを解決しないと、日本のEVは普及していかないと思っています。

当社はすべて6キロワットで対応しています。日本に設置されている6キロワット充電器の90パーセント以上は、当社が設置しているものです。また、マンションへの設置にも今回参入することで、マンションへの普及が遅れているところに対して当社がしっかりと支援していくことを発表しています。

EV充電エネチェンジの実績

城口:9月末時点で約1,500台弱の受注および設置が進んでおり、来年6月までに3,000台を受注後、速やかに設置という目標を掲げています。十分にそれを前倒しで達成できるようなペースで進んでいます。

当社だけではなかなか難しいため、さまざまな会社と一緒に取り組んでいます。スライドにはすべての会社を挙げられていませんが、現時点でも約200のパートナーと一緒に進めています。わかりやすいところで言いますと楽天トラベルなどです。

先ほど日光の例を挙げましたが、ホテルが一番重要です。私もヨーロッパでEVに乗っていますが、3時間から4時間ドライブしていく先に充電器がないと困ります。そのため、私は絶対に「Booking.com」を使って「EV充電あり」で最初にフィルターをかけてホテルを検索しています。

今、日本にはフィルターがありません、なぜなら「EV充電あり」でフィルターをかけると、対象のホテルがゼロになってしまうからです。

坂本:御社が目的地充電を置いたところしかチェックされないのですね。

城口:楽天トラベルなども同じような課題意識を持たれています。そのため、今楽天トラベルに掲載されているホテルに、EV充電器を設置させていただくなどの取り組みを一緒に進めています。

坂本:例えば楽天トラベルで予約ができる宿に、「EV充電はどうですか?」と働きかけていくようなかたちですか?

城口:そのとおりです。楽天トラベルがふだんお付き合いされているホテルの担当者の方から、「EV充電は最近ニーズがありますか?」というお話があります。

坂本:それで御社が設置しにいくのですね。

パートナー経由の設置と、御社が自社で直接置いてもらうようなケースは、それぞれどれくらいの割合なのでしょうか? パートナーといっても目的地の方も、家の方も、マンションの方もいると思いますが、現状の割合でのイメージはありますか?

城口:今のところは7割くらいが自社で、3割くらいがパートナー経由だと思っています。テレビCMも放映していますし、どちらかと言いますと自社のほうをもっと増やしていきたい状況です。

一方で、例えば楽天トラベルに掲載されているホテルは3万件から4万件ほどあります。ホテルであれば台数も多いため、5台から10台くらいの注文が来れば10万円から20万円くらいの売上のポテンシャルがあるということです。そのような意味では、将来的には半々になるくらいを考えており、パートナー経由についてもかなり伸びていくと思っています。

パートナーには通常業務がある中でEVのことを少しずつ覚えていただいて設置を進めているため、自社に比べるとどうしても少し時間がかかるのですが、順調に進んではいます。

マンション向けEV充電器 チャージ3

城口:先ほどお話ししたマンションに向けて発表した当社の商品です。CMにもあるとおり、設置費用・月額費用・電気代負担が0円です。マンションは初期費用などかかると管理組合で調整しなくてはならないですし、「誰が払うのか」という問題が生じます。

EVに乗っていない方やそもそも車を持っていない方が絶対にいますので、マンションからお金を取ろうと思うと本当に進みません。シンプルに、使う人がすべて払うという仕組みにしていかないと成り立たないのです。

そのため、マンションの管理組合には一切の費用がかからず、EVの利用者たちで払っていただく仕組みを考えています。当然ENECHANGEが全部を払うわけにいきませんので、実質的にはENECHANGEが立て替えています。

つまり、当社が初期費用など何十万円もする費用を立て替え、EVを使う人から5年くらいかけて、電気代とプラスアルファの中から少しずつ回収するというかたちで進めています。EV利用者にとっても、決して法外に高い利用料金になっているわけではなく、「ガソリンと比べると十分お得ですよ」という値段で、利用できるプランになっています。

坂本:それはよいですね。私のマンションも700戸から800戸ほどある中で、EV充電器は2個から3個しかありません。無料だったらもう少し置いてほしいとなりそうですね。

城口:そうですよね。

当社としての設置基準

城口:一方で、設置基準があります。私たちは0円で置いているため、すべての場所には置けません。当然ですが、選ばせていただきます。例えば、セレモニーホールや離島などにはあまり置きません。離島にはどのような方法で誰が車で行くのかがわからないためです。

他にも、ファーストフード、スーパー、コンビニ、ラーメン屋など、滞在時間が短い施設にも置きません。基本的に3時間から4時間くらい滞在する場所でないと成り立たないためです。このように、いくつかルールはありますが、それを満たすところには原則0円で設置しています。

[米国] 2030年における普通・急速充電の設置目標

城口:先ほどお伝えしたとおり、アメリカのバイデン政権では、今後10年間くらいで10兆円などの単位でEV充電を全力で補助するという政策を発表しています。

スライドの図はマッキンゼー社が作った資料ですが、少し見にくいため要点だけお伝えします。急速充電と私たちがメインで手掛けている普通充電は、将来にわたりケースバイケースで両方必要であると説明しています。アメリカも、普通充電と急速充電は併存させる前提で、2030年までに充電器が50万基必要と言っているのです。

日本の目標は15万基です。日本は15万基、アメリカは50万基というのは、人口と国土の違いを考えれば妥当な比率です。私たちもそのような世界のトレンドとマッチしながら進めています。

EV・PHVの保有台数想定

城口:このスライドは、先ほど「日本のEVの新車販売比率は2022年に3パーセントになって、すごいではないか」とお話しした内容に関連するものです。スライドの数字は日本政府の予測で、2030年の新車販売のうち25パーセントがEVになると予想されています。

そこからたったの5年後の2035年には、50パーセントになる見込みです。今の3パーセントから約10年で50パーセントになるということで、マクロで急激に伸びるトレンドの入り口にいるという状態です。

将来売れるであろうEVの数を、設置されるであろうEV充電器の台数で割ると、だいたいスライドのようなカーブになります。

例えば、今は1台設置して利用回数が月10回あるとします。当然充電器も増えていきますが、それ以上にEVの数が増えてくるため、2030年くらいまで経つと最低でも今の3倍くらいは需要と供給の関係で使われるようになってきます。

EV充電は少し未来の事業になりますが、例えばマンションを建てた時に充電器を1回置けば、その充電器はマンションが解体されるまでの間、5年、10年とそこに残ります。

最初に一番よい場所に充電器を置けば、2035年まで放っていても伸びるトレンドですので、足元の数年間を少し我慢すれば、あとで大きな果実を回収できると私たちは見込んでおり、今は一所懸命にEV充電を設置しています。

私からの説明は以上となります。

質疑応答:撤去が始まっているEV充電器について

坂本:「すでにEV充電器の撤去が一部始まっていると聞きました。御社でもそのような動きはないですか?」というご質問です。

城口:撤去されている充電器はあります。これはよいことで、撤去されているのは3キロワットのものになります。

坂本:3キロワットの充電器をすでに撤去してしまっているのですね。

城口:3キロワットの充電器は、2013年から2015年くらいのものです。充電器は電化製品に該当するため、基本的な耐用年数は8年となります。屋外で雨水や風にさらされていることもあり、8年くらい経つと1回は変えなければなりません。そのため撤去が進んでいます。

撤去を必要としている人たちは私たちにお問い合わせいただければ、6キロワットにアップグレードするお手伝いをします。しかし、それを一切知らない人はすでに撤去を始めてしまっています。

ただし、いわゆる土木工事と同様で、マンションの建物が50年残るように、看板や基礎工事の部分などは残りますので、一度撤去してしまった場合もあらためて私たちに連絡していただければ、すぐに6キロワットの充電器を設置します。基礎の工事が完了している分、設置が簡単で安く早く行えます。

3キロワットの充電器はどんどん変えていかなければならないため、撤去自体は必ずしも悪いニュースではないと感じています。

質疑応答:競合の動きについて

坂本:御社の競合も最近は6キロワットの充電器を設置しているのでしょうか?

城口:現時点でのファクトとしては、競合に6キロワットを設置している会社はありません。いまだに3キロワットを設置しています。私は同業者として許しがたい行為だと思っています。

坂本:その気持ちはわかります。日本の企業には系列という縛りもあり、「在庫や規格などがまだ3キロワットだから」ということで、そのようになっているのではないかと勝手ながら推測しています。

城口:おっしゃるとおりです。しかし、EV充電器の設置には国から補助金が出ており、設置費用の8割くらいは国の税金による負担となります。それにも関わらず、いまだに「昔ながらの付き合いだからこの機器を売る」ということを行っています。

設置先にはホテルなどがありますが、そのようなお客さまは自身がEVに乗っていなければ、3キロワットと6キロワットの違いは説明されなければわかりません。

坂本:「EVの充電器があることに意味がある」という状態だと思います。

城口:説明しなければ「EV充電ね。わかりました」と完結してしまいます。しかし、先ほどお伝えしたとおり、3キロワットは3G回線のようなもので使い物になりません。加えて、一度設置すると8年から10年は使わなければなりません。今でさえ使えないものが、5年、10年と経てば、一層使い物にならなくなります。

さらに、その機器の設置にかかる費用は8割を税金で負担しています。このような理解できないことが数多くありますが、今はEVの黎明期だからこそこのようなことが起こっているのだと思います。

一方で、世界では完全に6キロワットがスタンダードになっています。しかし、日本のメーカーで私たちのように6キロワットを使っている会社はほとんどありません。数社あるものの、かなり高い価格が設定されています。

これは日本にマーケットがないことがそもそもの原因です。日本のメーカーは国内でしか販売していませんが、国内のマーケットはほぼないため、「6キロワットの充電器を年間100台買ってくれますか?」というかたちで販売しており、生産数が少ないため価格が高い状況でした。

少なくとも、私たちが参入するまではそのような状況で、今までそのような事業しか残っていませんでした。

一方で、私たちが提携している海外のメーカーは、6キロワットの充電器を年間5万台くらい生産・販売しています。海外の人たちのほうが圧倒的な数を世界中へ出荷しているため、安くよいものが作れます。ですので、私たちはそのような海外のメーカーと「日本での販売は私たちに任せてください」というかたちで提携しています。

その代わり、私たちは「3万台買います」と言って万単位で発注し、日本に商材を持ってきています。

質疑応答:EV充電器の開発限界について

坂本:6キロワットのあとの製品は、すでに開発されているのですか? 今は6キロワットがスタンダードですが、充電をさらに速くすることは技術的に可能なのでしょうか? 

城口:実は日本では6キロワットが限界で、それ以上の開発が難しい状況です。

坂本:それは200ボルト以上の電圧がかかるからですか?

城口:おっしゃるとおりです。例えば9キロワットや12キロワットに上げようとすると、300ボルトや400ボルトの電圧が必要になってきます。そのためには近くの電線からもう1本、線を引いてこなければなりません。

日本の電気が100ボルトや200ボルトという仕組みでできている以上、6キロワットがハードルになります。急速充電のように全部の線を新しく引くのであればよいですが、その場合は数百万円から1,000万円という単位でコストがかかってしまいます。ですので、日本や日本と電気の規格が同じアメリカでは、6キロワットがデファクトになると思います。

一方で、ヨーロッパは少し違います。ヨーロッパに旅行された方はわかるかもしれませんが、デフォルトが200ボルトで上限が400ボルトになっています。

坂本:そんなにもあるのですね。

城口:ヨーロッパにはベースとして9キロワットや12キロワットの充電器があるため、もう1段階速い状態にできます。これについては、そもそもの電気の仕組みや規格が違うため、どうしようもないところではあります。

日本は2030年や2040年という断面で見ても、おそらく6キロワットがベースのシナリオになると思います。そのため、6キロワットの充電器はゴミにならないと、自信をもって増やせます。

坂本:3キロワットの充電器は増やしてはいけないということですね。

質疑応答:EV充電器の設置費用について

増井:「EV充電設置費用はどのくらいですか?」というご質問です。

坂本:「無料で設置する」ということですが、実際のコストはどのくらいかかるのでしょうか?

城口:設置費用に関しては、実はあまり公表していません。まず、一般論の話になりますが、EV充電器の設置コストは100万円くらいです。耐用年数は8年くらいで、事業者の視点では当然ながら最低限の利回りが必要となります。

例えば、100万円の設置費用に対し、8年かけて100万円を回収しても事業は成立しません。そのようなことを踏まえ、最低でも年間6パーセントの利回りで考えると、100万円を投資して8年間で160万円を回収できれば、一応は投資回収が成り立ちます。

そのような考え方がEV充電器のベースのエコノミクスになっています。しかし、今はこれがまったく成立しません。ただし、設置費用の100万円のうち国からの補助金が8割くらいあるため、実質コストは20万円くらいになります。それにより、成立している状況です。

今は補助金によって成立していますが、あとから利用頻度が増えてくれば、20万円で設置したものでも将来非常にすごいキャッシュ・フローを生む可能性があるということです。

太陽光発電などもそうですが、補助金などがなくても普通に設置すれば儲かるようにならなければ、本質的には普及しないと私は思っています。「それはいつ実現するのですか?」という話を政府にも伝え、いろいろな議論を行っています。

アメリカも日本と同様で、EVの普及は2030年代前半くらいになると言われています。数字で表すと、新車の販売台数の40パーセントから50パーセントがEVになる見込みです。イメージとしては、ほとんどの人がEVに乗っているような状態だと思います。

しかし、スライドの下側の折れ線グラフで示しているとおり、新車の販売台数のうち40パーセントから50パーセントがEVになっても、それはあくまでもストックの数字で、日本中を走っている車のうち、EVの比率は20パーセントくらいです。

坂本:乗り換え時期によっては、「ガソリン車を買っちゃった」という人が最近伸びていますよね。同じ車に8年くらい乗る人も普通にいます。

城口:車の乗り換えには時間がかかるため、そのくらいの時差が生まれます。新車販売のEVの比率が40パーセント、50パーセントになり、在庫ベースでは20パーセントくらいがEVになってくれば、初期コストとして100万円を投資しても事業が成り立つ見込みです。おそらくその頃には、工事なども含めてもう少し費用が下がっていると思います。

逆に言いますと、それまではどうしても事業が成り立ちません。今、国から8割出ている補助金も金額が少しずつ減ってくるかもしれませんが、いずれにしても補助金は出るため、見方を変えれば今の初期の充電器は非常に安いコストで設置できていることになります。もしかすると、将来的にはうなるほどのキャッシュ・フローを生む可能性があると私は思っています。

ですので、当社としては国の補助金をいただける限り、全力で設置していきます。その代わり、変なところには設置しないというルールを決めています。

坂本:マイナスになってしまう可能性があるからということですね。社長のIRセミナーをきちんと聞けばわかると思いますが、最初は費用がかかるため、設置するごとに赤字が出ます。そこに関して投資家のみなさまには十分に理解していただきたいと思います。

獲得費用を初年度にのせ、キャッシュ・フローをあとから取っていくパターンになるため、保険などの商材も似ている気がします。機関投資家はそのようなところをかなり理解した上で買いますが、個人投資家の中には「赤字だからな」と考える人が非常に多くいます。

そのような部分ではIRが本当に大事になりますね。その赤字が将来のキャッシュ・フローを生むことがわかれば、長期的な投資がしやすいと私は思います。

城口:私たちはインフラに投資しているだけですので、当社の唯一のリスクは予想どおりにEVが普及しなかった場合ですね。

坂本:今のところは考えづらいと思います。

城口:私たちは「EVが当たり前になる」と思って投資しています。それが実現すれば、2030年代には大変儲かる会社になっていると思います。

質疑応答:EVの流行について

坂本:EVが普及しないリスクとしては、何が考えられますか?

城口:思いつかないのですよね。

坂本:普及しない可能性は低そうですね。

城口:昔はいろいろな人たちが「新しいトレンドは女子高生など若い女性からやってくる」と言い、iPhoneが出た時には日本の若い女性の多くが付け爪をつけていることを前提に、「付け爪ではタッチパネルに触れないから、iPhoneは流行しない」という論調を耳にしました。しかし、実際はまったくそのようなことはありませんでした。

うまくいかない理由を探すことは誰もが得意ですが、実行してみなければわからないことが多くあります。実際、ヨーロッパなどではすでにEVばかりが走っています。

私も2015年頃からEVに乗っていますが、乗り心地も含めてEVのほうがよいと感じています。「EVに乗り出したらガソリン車に戻れなくなる」とよく言われますが、実際にEVのユーザービリティは非常によいため、普及する未来がこない理由はないと思っています。

坂本:EVは今もよいですが、ここからさらに熟成されていきますからね。

城口:2035年は通過点に過ぎません。2050年にCO2をゼロにするためには、2035年にEVの在庫が少なくとも80パーセントくらいになっていなければ成立しません。そのようなことを考えると、新車の販売台数の比率はまだ伸びてくると予想できます。

まさに人類の存亡をかけた100年に一度の転換点で、日本政府だけでなく、世界の政府も自動車会社の人たちも注目しています。

例えば、ホンダは「電気自動車しか作らない」と言っているくらいです。あれほどの会社がコミットして取り組んでいる以上、私たちのような弱小ベンチャーはこのトレンドに全力で乗っかったほうがこける可能性が少ないと思っています。

私たちのような若いベンチャーで、なおかつある程度のオーナー企業が全力で取り組んだ場合、その結果が外れれば最悪会社は潰れ、私は自己破産するかもしれません。しかし、「別にそれでも大丈夫です」と言える人たちでなければ実現できないことです。私たちはそれくらいの覚悟を持って取り組んでいます。

質疑応答:電池の改良について

坂本:日本人の株式投資家が「電池側も良くなる」とよく話しています。全固体の話もありますが、そのような未来がくればさらにEVは売れて、御社も充電器をどんどんと提供できると思います。そのあたりの見通しについて教えてください。

城口:おっしゃるとおり、電池がどんどんと良くなってくるため、EVはさらに強くなってくると思います。海外の事業者とも話していますが、電池が良くなってくると途中で継ぎ足しする必要がないため、経路充電がなくなります。

今は移動途中で電気が足りなくなって充電していますが、家とホテルでフル充電できれば、途中で充電する必要は一切ありません。しかし、私たちが取り組んでいる目的地充電は、どのようなシナリオを考えても不要になることは考えられませんので、見通しとしては問題ないと思っています。

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