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相場展望7月21日 過度なインフレ懸念後退で株価反発も、慎重さが肝要 中国経済のひずみが日本経済に及ぼす影響に注視
■I.米国株式市場
●1.NYダウの推移
1)7/18、NYダウ▲215ドル安、31,072ドル(日経新聞より抜粋)
・朝方は主要企業決算など好材料に反応した買いが先行し、一時+350ドル強上昇。ただ午後、アップルが人材採用を抑制すると伝わると、企業業績を警戒し下落した。
・米株で時価総額最大のアップルが業績悪化に備え始めたと受け止められ、ハイテクに売りが広がり、アップル▲2%安、マイクロソフト、アルファベットの下げが目立った。
・景気敏感のビザ・ハネウェル・スリーエムや、ディフェンシブのメルクが売られた。原油高を受けシェブロンは買われた。
【前回は】相場展望7月18日 米FOMCの利上げ、中国経済減速と失業率に注目 日本株は4~6月期決算発表シーズン入りに注視
2)7/19、NYダウ+754ドル高、31,827ドル(日経新聞より抜粋)
・インフレ加速を背景に米連邦準備制度理事会(FRB)の急激な利上げが米景気を冷やすとの警戒感が後退し、景気敏感やハイテクなど幅広い銘柄に短期的な戻りを見込んだ買いが入った。
・前週末にミシガン大学発表の消費者の5年先の期待インフレ率が低下した。足元でガソリン価格も低下し、インフレ懸念がやや和らいでいる。市場ではFRBが7月の米連邦公開市場委員会(FOMC)で通常の4倍に当たる+1%の利上げを決めるとの見方が薄れた。相場が上昇基調に転じるなかで、流れに乗り遅れまいとする投資家の買いが強まった。
・市場では、「強かったインフレ懸念が弱まり、買いの好機と捉える投資家が増え始めた」との声があり、「相場の底入れ期待が高まり、中長期的な上昇基調に転じる可能性もないではない。運用成績で負けられない機関投資家が買いを入れざるを得なかったのではないか」との見方も聞かれた。
・主要企業の4~6月期の決算発表シーズンに入っているが、売上高や1株利益などが市場予想を上回る例が多く、想定よりも底堅くなるとの見方が投資家心理を上向けた。
・ボーイングやゴールドマンサックスが+6%上げ、ダウ・キャタピラー・ナイキが上昇。
3)7/20、NYダウ+47ドル高、31,874ドル(日経新聞より抜粋)
・市場予想を上回る米企業の決算発表が相次ぎ、業績悪化の懸念が和らいだ。
・動画配信のネットフリックスの決算が好感され、ハイテク関連を中心に買われた。セールスフォース+5%高、アップル・マイクロソフトも上昇した。
・原油など国際商品相場の下落基調でインフレ懸念が和らぎ市場ではFRBの利上げが加速するとの観測が弱まり、弱気相場は底入れしたとの期待も買いにつながった。
・業績が景気の影響を受けにくいディフェンシブ銘柄が幅広く売られ、重荷になった。メルク・ベライゾン・ユナイテッドヘルスがいずれも▲3%下落した。
●2.米国株:過度なインフレ懸念が後退し株価大幅反発も、慎重なスタンスが肝要
1)強力なインフレ懸念で株価は大幅下落していたが、世界経済の先行きを示唆すると言われる「銅」価格をはじめ、WTI原油先物価格など国際商品先物指数が下落したのを受け、インフレ懸念が和らいだ。
2)NYダウなど米国主要株価指数は、インフレ懸念後退を受けて、大幅下落に対する反発をしている。その要因は、企業決算発表シーズンに入ったが、想定よりは良い業績の例が多く、銅価格の下落を受け、投資家心理の改善が見受けられる展開となってきた。その展開をテコに短期筋の強力的な買い主導で、株価が反発したため、今まで様子見していた機関投資家が追随の買いをしているのが現状のようである。
3)しかし、景気後退(リセッション)を示唆する米長短金利が逆転する「逆イールド」が継続しているには変わりはない。米FRBの政策金利の到達目標は3.5~5.0%と見られるなか、FRBのインフレ抑止のための利上げは始まったばかりであり、道半ばである。景気敏感とハイテク関連銘柄が買われ、ディフェンシブ銘柄が売られている。今回の反発が短期筋の買い主導である点を考慮すると、「大幅下落に対する一時的な自律 反発」である可能性がある。慎重なスタンス堅持が、良さそうであると思われる。
●3.ゴールドマンサックスは、インフレ懸念が後退との認識は尚早 (ブルームバーグ)
1)インフレ急低下と、当局への金融政策の引締め圧力後退を見込むには早過ぎる。
2)金融環境の引締めがまず必要、株価はその後に底入れ。
●4.ゴールドマンサックスやアップル、新規の従業員採用ペースを減速へ (フィスコ)
1)アップルは支出も減速
●5.米金融大手の全6社、4~6月期は景気後退に備えた貸倒れ引当てで大幅減益(時事通信)
1)大幅減益(前年同期比約30%減益)要因
・融資の焦げ付きに備えた貸倒引当金の繰入れなど、不良債権処理費用が増大。
・企業の債券・株式発行やM&Aの低調で、手数料収入の落込み。
●6.ゴールドマンの社長は、FRBのインフレ対応の利上げに「感心」(ブルームバーグより抜粋)
1)FRBは、顕著なインフレを抑制するため、非常に積極的かつ適切に動いている。
2)利上げの最終到達点は3.5%半ばを想定。その水準になれば、経済がリセットされ、そこから成長していけるだろう。
●7.ブラックストーンの予想、米利上げは長期化し、政策金利5%近くに上昇(ブルームバーグより抜粋)
1)インフレが米経済により深く根付いているため、金融引締めサイクルは長期化し、インフレ抑制のために2023年まで利上げを5%近くまで続ける可能性がある。
2)住居や賃金、米経済のなかの一般的なキャパシティ制約を見ると、インフレ率はさらに高まると思われる。したがって、金融当局による大幅で長期的な対応が必要になる。
3)7月の利上げ幅は、+0.75%を見込んでいる。
●8.世界最大の鉱山会社BHP、世界景気の先行きの混乱見通し(ブルームバーグより抜粋)
1)世界最大の鉱山会社BHPは7/19、コスト増加に加え、鉄鉱石や銅の需要に逆風が吹いているとして、資源業界の先行きにさらなる混乱が待ち構えているとの見通し示す。
2)BHPは、(1)ウクライナでの戦争 (2)欧州のエネルギー危機 (3)世界的な金融引締め のなかで「世界経済の全体的な成長減速」を警告した。コスト圧力が向こう1年間続くと予想した。
3)中国での需要後退や先進国のリセッション(景気後退)入り予想の広がりを背景に、商品価格はここ数カ月、下落している。鉄鉱石の価格は先週、1トン当たり100ドルを割込んだ。一方、コスト高にも直面し、(1)労働市場のタイト化 (2)サプライチェーン制約 (3)インフレ圧力の遅れた影響が、2023年中続くと予想される。需要面では、「中国でかなりの逆風がある」との認識を示した。
●9.米国株、機関投資家は出口に殺到し、金融危機以降でも変動激しい1年か(ブルームバーグより抜粋)
1)機関投資家が1年にわたって出口に殺到した結果、米株式市場の基盤は弱まり、相場は急変動しがちになっている。
2)米国株は弱気相場入り後に、時価総額で最大▲15兆ドル(約▲2,070兆円)を失った。
3)企業の決算発表シーズンよ、米連邦公開市場委員会(FOMC)を月内に控え、トレーダーも全面的に大規模な取引に消極的となっている。米証券取引所の株式の売買高は先週、今年最低水準に減少した。
■II.中国株式市場
●1.上海総合指数の推移
1)7/18、上海総合+50、3,278(亜州リサーチより抜粋)
・中国経済対策への期待感が相場を支える流れ。
・中国人民銀行(中央銀行)総裁は、「より強力な景気支援」で中国経済を支えると表明
・これまでも中国当局は、景気腰折れを回避するため、財政・金融政策を強化している。
・中国の不動産ローン問題の過度な警戒感が薄らいだことや、急ピッチな米利上げの懸念が薄らいだことも好感され、指数は中盤から上げ幅を広げた。
・業種別では、不動産の上げが目立ち、エネルギーもしっかり。反面、医薬品が冴えない。
2)7/19、上海総合+1高、3,279(亜州リサーチより抜粋)
・不動産ローン問題の不透明感後退が相場を支える流れとなった。
・中国当局は、ローン不払いが発生している事態を重視し、一時的なローン返済猶予を検討していると報じられた。
・中国で新型コロナ感染者数が増加しており、行動抑制も強化されている。実体経済に対する悪影響が危惧される状況で、株価の上値は重い。
・業種別では、銀行・不動産の上げが目立ち、エネルギーもしっかり。電力設備が安い。
3)7/20、上海総合+25高、3,304(亜州リサーチより抜粋)
・中国経済対策の期待感が引続き支えとなる流れ。
・景気腰折れを回避するため、当局は産業支援や消費拡大など各種対策を実施している。
・中国人民銀行(中央銀行)は、銀行貸出し指標となる7月最優遇貸出金利を市場予想通り前月から据え置かれた。
・業種別では、ITハイテク関連の上げが目立ち、銀行もしっかり。自動車は冴えない。
●2.投資家の中国離れが進む、習主席の政策など、あまたのリスクを警戒(ブルームバーグ)
1)あまたのリスク
・不安定な不動産市場から派生するリスク
・ロシアのプーチン大統領と習主席の蜜月関係
・予測できない規制当局の取締り
・厳格なゼロコロナ政策によって引き起こされた経済損失
・地政学的リスクの復活
・ガバナンスのリスクの高まり
●3.米WSJ紙、中国当局は滴滴出行に巨額罰金か(約1,400億円超)(時事通信より抜粋)
1)データ保護違反などを理由に、同社の調査を進めていたが、近く終了する見通しという。
●4.中国の複合機「国産化」方針、高速鉄道で技術流出の前例で、懸念深める日系企業(読売新聞より抜粋)
1)中国は2015年に産業育成策「中国製造2025」を打ち出した。外国企業に技術移転を促すとともに、ハイテク製品を中心に一段の国産化を進める内容で、複合機に関する新方針もその一環と見られる。
2)「複合機を突破口に自動車や半導体、電池など幅広い分野に広がりかねない」(在中国企業関係者)との懸念もある。
■III.日本株式市場
●1.日経平均の推移
1)7/18、祝日「海の日」で休場
2)7/19、日経平均+173円、26,961円(日経新聞より抜粋)
・米株式市場が前2営業日で上昇し、日本株にも買いが入り、6/28以来の高値となった。取引時間中としては27,000円台に乗せる場面もあったが、長続きしなかった。手掛かりに欠け、方向感の乏しい展開となった。
・市場では、「株式指数先物に散発的に買いが入ったと見られるものの、現物株の注文は少ない」という指摘があった。一部には相場に順張りする商品投資顧問(CTA)が先物に買いを入れたとの声もある。
・後場は、戻り待ちの売りや、利益確定売りが上値を抑えた。
・米企業業績を見極めたいとのムードから、積極的な買いが手控えられたとの意見もある。
・商品先物相場の上昇を受け、鉱業・石油石炭・海運が高く、ディフェンシブが売られた。
・ファストリが4日続伸、ダイキン・ソニーが高く、医薬品・エムスリー・任天堂が下落。
3)7/20、日経平均+718円高、27,680円(日経新聞より抜粋)
・米インフレ懸念が和らいだとの見方から、前日の米株式相場が大きく上昇し、東京市場でも運用リスクを取りやすくなった投資家の買いが優勢となり、6/10以来の高値。
・上海などアジアの株式相場も堅調で、リスク選好のムードが広がった。
・欧州中央銀行(ECB)の理事会などを控えて様子見ムードが広がりやすいうえ、目立った買い材料がないなかで、短期筋の買いが相場を押し上げた。
・日経平均がチャート上で200日移動平均を上回り、相場の先高感を意識した追随買いも 入ったようだ。
・東エレク・ファストリ・ダイキン・ソフトバンクGが上昇し、IHI・長谷工が下落。
●2.日本株:中国経済のひずみが、日本経済に及ぼす影響に注視
1)中国の新型コロナ再感染は収まっていない。しかも、中国指導部は「ゼロコロナ政策を堅持」したままである。ゼロコロナ政策が、中国経済成長に大きな負の影響を及ぼしているが、政策に変更は秋の共産党大会まではないようである。つまり、中国の年間経済成長目標は、「5.5%前後」の達成は困難が濃厚と見る。
2)加えて、中国GDPの20~25%を占める不動産関連業界は、住宅ローン不払い運動が全国的に拡大している。この混乱の広がりは、中国の共産党一党独裁体制の揺さぶりにつながる恐れもある。
3)中国依存度の堅い日本経済にとって、コストアップをもたらす円安もあり、日本株価に及ぼす影響に注視したい。
●3.日銀政策決定会合7/20~21、物価見通しは上方修正、金融大規模緩和は維持(時事通信)
●4.企業動向
1)オイシックス シダックスを持ち分法適用会社へ、筆頭株主のファンドから80億円で株取得(読売新聞)
2)東亜建設 シンガポール、トゥアス港の建設工事を追加受注(NNA)
3)パナソニック 家庭用電化製品75品目を8月から3~23%値上げ(朝日新聞)
4)キーコーヒー レギュラーコーヒーなど60品目を10/1から5~20%値上げ(時事通信)
昨年10月以来の値上げで、豆の高騰と円安が影響
●5.企業業績
1)日本電産 4~6月期純利益+413億円、前年比+23.5%、過去最高益(共同通信)
■IV.注目銘柄(投資はご自身の責任でお願いします)
・2267 ヤクルト 業績堅調
・2802 味の素 業績堅調
・9503 関西電力 原発再稼働期待
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