相場展望11月22日 株式相場は、好決算発表終わり、次の視点へ 米FRB議長人事は今週発表、インフレ対策影響

2021年11月22日 09:25

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■I.米国株式市場

●1.NYダウの推移

 1)11/18、NYダウ▲60ドル安、35,870ドル(日経新聞)
  ・ネットワーク機器のシスコシステムズの8~10月期決算に失望し、▲6%安と大幅下落し、NYダウを一時▲276ドルまで押し下げた。
  ・反面、エヌビディア・AMDなどの半導体株の一角に買いが集まり、下げ渋った。
  ・完全自動運転の電気自動車を2025年にも発売すると伝わったスマートフォンのアップルが+3%上昇し、2カ月ぶりに上場来高値となり、NYダウを下支えした。

【前回は】相場展望11月18日 米国株の注目、決算⇒債務上限・予算・インフレ 日本株、外国人の買い仕掛け不発?個別物色へ

 2)11/19、NYダウ▲268ドル安、35,601ドル(日経新聞より抜粋
  ・新型コロナ感染再拡大で、欧州景気の回復が遅れるとの見方が、投資家心理の悪化につながり、NYダウは3日続落した。
  ・旅客需要の伸び悩みが意識され、航空機のボーイングが「787」に新たな不具合が見つかり出荷遅れになると報じられ大幅安となり、1銘柄でNYダウを▲80ドル余り下げ重荷になった。
  ・オーストラリア政府が11/19、全土で11/22からロックダウン(都市封鎖)の実施に踏み切ることで、新規感染者が急増しているドイツなど他の主要国でも同様の厳しい規制が導入されるとの観測が強まった。
  ・米国でも北東部や中西部でも感染者数が増えており、冬場の感染急増が懸念されている。
  ・原油先物相場が一時、1カ月半ぶりの安値を付け、石油のシェブロンが売られた。
  ・米長期金利が低下し、利ザヤ悪化懸念からJPモルガンなどの金融株も下落した。
  ・空運のユナイテッド航空、クルーズ船のカーニバルなどレジャー関連銘柄の売りが目立った。
  ・一方、長期金利低下で割高感が和らぐとして、高PER(株価収益率)のハイテク株が買われた。

●2.NYダウ、決算発表終了で下落転換の可能性?

 1)7~9月期決算発表シーズン終了で好材料出尽くしのため、上昇一服。

 2)NYダウの推移
  ・9/30底値  ⇒ 11/08高値 ⇒  11/19終値
   33,843ドル   36,432       35,601
     上げ幅+2,589ドル高   下げ幅▲831ドル安
     上昇率+7.65%高     下落率▲2.28%安
  ・9/30⇒11/08の上昇幅に対して、11/19時点で▲32.1%下落で、下落途上か?

 3)ハイテク株が多いナスダック総合と、SP500指数は高値圏を維持

 4)懸念材料の深まりによる株価変動に注目
  (1)インフレ高進の継続
  (2)FRB金融政策の転換可能性の高まり
   ・金利引上げ時期の早期化と、
   ・資産購入の減少ペースの加速(現状は毎月1,200億ドル⇒来年6月ゼロ)
   ・資産本体の縮小
  (3)好材料(巨額財政支出法案など)は明らかになり、材料出尽くしとなる恐れ 
   ・新型コロナ感染再拡大の影響に注意。

●3.株式市場に影響する、インフレ対応で揺れるFRB次期議長人事は今週発表、注目

 1)誰が米FRB議長になっても、
  (1)インフレ高進の対策
  (2)FRB資産縮小の加速
  (3)利上げの早期化
  に取組まざるを得なくなる。このままではFRBはインフレ対策に対して、後手に回る。雇用改善を前面にインフレを無視したFRB金融政策の転換は、FRBが自ら招いて窮地に立たされた結果ともいえる。

 2)インフレ高進対策を照準にしたFRB金融政策への転換
  (1)10月米消費者物価指数(CPI)は、1990年以来の大幅上昇
  (2)予想インフレ率は、8年ぶりの高水準
  FRBはインフレの鈍化予想を想定してきたが、その自信が揺らいできた。

 3)米国では物価上昇で、ランチでも軽食でさえ2,000~2,500円に跳ね上がってきた。物価上昇のため、家計支出の縮小に追い込まれている米国民が多くなっている。国民のインフレへの不満が大統領支持率低下に影響を及ぼすようになってきた。多くの国民は、インフレ・物価の抑制対策を望んでいる。失業率は4.6%まで低下してきており、雇用対策ではなく、インフレ・物価上昇抑制が急務となった。
  ⇒ 来年2月の次期FRB議長選出に当たり、『インフレ対策』できるFRB議長というのが条件に加わったと見る。

 4)今週発表予定のFRB議長人事が、株式市場に大きな影響を与えるので、注目したい。

●4.インフレ対策への不満からFRB人事が重みを増しそう(フィスコより抜粋

 1)バイデン大統領は、10月米消費者物価指数(CPI)が約30年ぶりの大幅な伸びになったことを受け、すかさず『物価抑制は最優先課題』 だとアピールした。

 2)来年の中間選挙を前に、インフレへの不満が政権の懸念材料となっていることが読み取れる。となると、週内にも決定するという米連邦準備制度理事会(FRB)の次期議長人事が一段と重みを増してきたと考えられる。

 3)現在有力視されているのは、
  ・パウエル議長の再任
  ・ブレイナード理事の昇格
   ブレイナード氏はハト派と見られているが、バイデン政権は次期FRB議長に、より踏み込んだインフレ対応を求める可能性がある。

●5.米FRBクラリダ副議長「物価高を警戒し、量的緩和縮小の加速も」 (共同通信)

 1)クラリダ氏は、物価高に関し「上向きのリスクがある」と警戒した。

 2)FRBが11月から着手した量的緩和の縮小ペースが速まれば、事実上のゼロ金利緩和の解除時期も前倒しされる可能性がある。

●6.ウォーラーFRB理事「雇用の増加とインフレで、テーパリング加速を支持」(DZH)

●7.JPモルガン予想、FRBの利上げ開始時期は2022年7~9月期から (ロイター)

 1)2022年見通しリポートで、
  (1)米連邦準備制度理事会(FRB)は、来年7~9月期に0.25%利上げ
  (2)その後、3カ月ごとに0.25%ずつ利上げ
  (3)少なくとも実質金利がゼロになるまで利上げを行う

●8.アックマン氏、FRB政策は『典型的なバブル』で、『迅速な引き締め必要』(ロイターより抜粋

 1)米著名投資家のウィリアム・アックマン氏は11/18、米連邦準備制度理事会(FRB)の超緩和的な金融政策が「典型的なバブル」を生み出したとして、インフレ抑制に向け迅速な金融引き締めが必要との認識を示した。

 2)アックマン氏は、格付け会社S&Pグローバル・レーティング主催の会合で、不動産や芸術作品、株価の高騰に触れ、『すべての指標が赤信号を発している』としFRBが近く利上げに動く必要があると想定している、と述べた。

●9.米失業保険申請件数26.8万件に改善、労働力不足が雇用増の重石(ロイター)

 1)新型コロナ感染拡大前の2020年3月半ばの申請件数25.6万件近くまで改善した。

●11.アップル、2025年までに自動運転車製造を目標(フィスコ)

●12.NY原油が大幅反落し76ドル台、コロナ再拡大で需要減懸念(毎日新聞)

●13.米下院で1兆7,500億ドル(200兆円)の大型歳出法案可決、上院で曲折も(ロイター)

 1)バイデン氏にとって11/15の総額1兆ドル規模のインフラ投資法成立に続く前進。

●14.米コロン死者数は昨年を上回る

●15.欧州

 1)ドイツ、新型コロナ感染抑制のためワクチン無接種者の都市封鎖検討(フィスコ)
 2)オーストリア、欧州発のワクチン接種義務化と全国外出制限(TBS)

■II.中国株式市場

●1.上海総合指数の推移

 1)11/18、上海総合▲16安、3,520(亜州リサーチより抜粋
  ・中国経済の回復ペースの鈍化が改めて警戒される流れとなった。
  ・新型コロナ感染拡大が直近では減少しているものの、中国は各地で移動制限が強化されている。
  ・株式相場では大きく売り込む動きは見られない。
  ・米中関係の悪化懸念が薄らぐ中、産業サプライチェーンの正常化が期待されている。
  ・業種別では、消費関連が安く、医薬品も冴えず、不動産・ハイテク・運輸・金融が売られた。

 2)11/19、上海総合+39高、3,560(亜州リサーチより抜粋
  ・安寄りした後、買われる流れになり、約3週間ぶりの高水準になった。
  ・新型コロナ感染の落ち着きが改めて材料視された。中国政府は強制検疫(隔離)がない香港からの渡航者受け入れについて、12/17の開始計画から前倒しして、12月第1週に開始する模様と、伝わった。
  ・米中関係の改善期待も支え。クリントン元米国務長官は11/19、「バイデン政権は対中制裁関税の一部撤廃を見込んでいる」との認識を示した。
  ・業種別では、不動産の上げが目立ち、消費関連株も高く、素材・エネルギー株もしっかり、ハイテク・金融・公益・運輸・インフラ関連・医薬品も買われた。

●2.中国恒大集団、格付け会社S&Pの指摘「デフォルトの可能性は依然高い」(ロイターより抜粋

 1)中国の不動産会開発大手・中国恒大がデフォルト(債務不履行)する可能性が依然高いと11/18に指摘した。来年3月と4月に総額35億ドルのドル建て債が償還を迎えるため。

 2)S&Pはリポートで、恒大は
  (1)新築住宅を販売する能力を失っている。
  (2)主要事業モデルが事実上破綻した。
  ため、債務を完全に返済する可能性は低い。

●3.香港株式市場で11/19、アリババの期待外れの決算が嫌気され、中国のテクノロジー株が売られた(ブルームバーグ)

 1)アリババは、7~9月期決算で売上高が市場予想に届かず、税引き後利益が約6,200億円と、前年同期比▲27%減少した。アリババは今春、独占的慣行の是正を中国当局から命じられ、同業他社との競争が激化し、業績が圧迫されたと見られる。(時事通信)

■III.日本株式市場

●1.日経平均の推移

 1)11/18、日経平均▲89円安、29,598円(日経新聞より抜粋
  ・前日の米株式相場の下落を受け、運用リスクを回避したい投資家の売りが優勢だった。
  ・前日まで上げが目立った銘柄を中心に利益確定の売りも出やすかった。
  ・アジア市場の香港や上海の株式相場が下げると、日本株も売りが膨らみ日経平均の下げ幅は一時▲280円を超える場面があった。
  ・14時に日経新聞が「政府が11/19に閣議決定する経済対策の規模が財政支出で55.7兆円程度となったことが、分かった」と報じた。40兆円規模となるという市場予測を上回るとの受け止めから、経済活動を刺激するとの期待から急速に下げ渋り、日経平均は上昇に転じる場面があった。
  ・「財政支出の規模は大きいが、国内消費の刺激には懸念がある」との見方もあり買い一巡後は大引けにかけて、日経平均は再び下げた。
  ・原油など資源価格の下落で、鉱業・石油・ゴムの素材株の下げが目立ち、海運も大きく下げた。

 2)11/19、日経平均+147円高、29,745円(日経新聞より抜粋
  ・前日の米株式市場の流れを受け、値嵩の半導体株に積極的な買いが入った。東京エレク・アドテスト・太陽誘電の上昇が目立ち、3銘柄で日経平均を+100円超押し上げた。
  ・岸田首相は、新たな経済対策について財政支出が56兆円程度、事業規模が79兆円程度と明らかにした。事前報道で伝わっていたが、相場の一定の下支え要因との見方があった。
  ・米株価指数先物が堅調に推移したのも支援材料となった。
  ・ただ、その後の物色の範囲が限定的で上値を追う雰囲気に乏しく買いの広がりが見られず、上値は限られた。欧米で新型コロナ感染が再拡大しており、日本でも少し遅れて同様の傾向をたどるパターンを警戒する市場参加者が多い、との指摘があった。
  ・富士フィルム・ガイシ・SUMCO・ホンダが買われ、サイバー・ソフトバンクGやNECが売られた。

●2.日本株は、29,500円の攻防か?

 1)日経平均の動向
  ・10/20終値  11/04    11/16   11/19
   29,255円  29,794   29,808   29,745
  ・好決算という材料にもかかわらず、日経平均は30,000円に壁を越えられない。一部外資系が買い仕掛けをしても、外国人勢が結束することもない。
  ・9/14高値30,670円⇒10/06安値27,282と下げ幅は▲3,388円。に対し、戻り幅は+2,290円(11/16時点)と、下げ幅の+67.6%を達成した。11/17以降は強気な相場とは言い難い。

 2)今後の材料
  (1)懸念材料
   ・原油高・電気ガス値上がり・物流費上昇とコストアップ要因が目白押し。
   ・価格転嫁の値上げ発表の増加。
   ・消費者の買い控え予想。
  (2)好材料
   ・コロナ感染者数減少による経済正常化と、消費の戻り期待。
   ・政府の巨額経済対策効果の期待。

 3)好決算発表シーズン終了となるが、30,000円越をにらみ、29,500円当たりの攻防を予想する。外国人投資家では、買い仕掛けしたい向きもあるが、強弱感があり、動向に要注目したい。

●3.政府の経済対策規模が、財政支出で55.7兆円との報道11/18で国内景気回復期待高まる

 1)経済対策は、給付金が膨らむ形になると、株式相場に与える効果は一時的になる可能性がある。(ブルームバーグ)

 2)中長期的な潜在成長率の引上げや、企業業績の改善に繋がらなければ持続性に乏しく、短期間で株式相場に消化される可能性がある。

●4.政府は11/19決定の経済政策に、経済安全保障で5,000億円基金を設立し、AI・量子技術・宇宙開発・半導体生産などを支援(読売新聞より抜粋

 1)経済安全保障の強化に向けて、先端的な重要技術の研究開発や実用化の支援のため5,000億円の基金を作る方針を固めた。

 2)人工知能(AI)・量子技術・宇宙開発が念頭にあり、日本が今後も国際競争力を保つために必要とされる。政府は、今年中に関連するシンクタンクを作る予定で、大学など研究機関を支援する。

 3)経済安全保障は、国益のために欠かせない経済的な分野を自前で確保・維持する意味がある。
  ・「産業のコメ」と言われる半導体も重要分野で、現在は国内需要の6割強を台湾や中国からの輸入に依存している。
  ・政府は、国内生産の拡大を目指し、台湾積体電路製造(TSMC)が熊本県で計画している工場の建設に対しても補助金を出す方向だ。

●5.ソフトバンクGの英アーム売却を巡り、米連邦取引委員会(FCC)が懸念示す(日経新聞)

●6.日本政府は石油備蓄の初放出を検討、米国など関係国と協調(FNN)

 1)備蓄放出要請で、11/19ニューヨーク市場の原油先物価格▲3ドル近く下落(朝日新聞)

●7.企業動向

 1)クボタ   インド農機メーカーを1,406億円で株式追加取得し子会社化(ロイター)
 2)製パン各社 政府が小麦売り渡し価格を+19%と大幅値上げ、電気ガス・物流費・人件費の増加が背景。(NHK)
 3)日本電気硝子 オール酸化物の全個体ナトリウム電池、負極をガラス化(日刊工業)
 4)アイシン  電動化対応で2025年までに2,700億円投資(日刊工業)

●8.企業決算

 1)HIS   2021年10月通期決算最終利益▲530億円赤字の見通し(Fuelle)
 2)JTB    2021年9月中間決算純利益+67億円黒字に転換(共同通信)
        本社ビルなど売却で特別利益+300億円超、前年同期▲781億円赤字

■IV.注目銘柄(投資は自己責任でお願いします)

 ・4612 日本ペイント  業績堅調。
 ・6289 技研製     業績堅調。

著者プロフィール

中島義之

中島義之(なかしま よしゆき) 

1970年に積水化学工業(株)入社、メーカーの企画・管理(財務含む)を32年間経験後、企業再生ビジネスに携わる。 現在、アイマックスパートナーズ(株)代表。 メーカーサイドから見た金融と企業経営を視点に、株式含む金融市場のコメントを2017年から発信。 発信内容は、オープン情報(ニュース、雑誌、証券リポート等々)を分析・組み合わせした上で、実現の可能性を予測・展望しながらコメントを作成。http://note.com/soubatennbou

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