相場展望10月30日号 米国株: 厳しい試練が続く株式市場、底値は30,000ドル割れも視野? 日本株: 買い手の海外投資家と証券自己部門が売り転換、買い手不在

2023年10月30日 10:24

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■I.米国株式市場

●1.NYダウの推移

 1)10/26、NYダウ▲251ドル安、32,784ドル(日経新聞より抜粋
  ・NYダウ構成銘柄ではないが、10/25夕発表の7~9月期決算を材料に交流サイトのメタが売られた。年初来での上げを保つ大型ハイテク株全般に割高感が意識され、ソフトウェアのマイクロソフトやスマートフォンのアップルなどに売りが波及し、NYダウは5月下旬以来の安値で終えた。
  ・メタは▲7%近く下げる場面があった。2023年7~9月期決算は市場予想を上回る増収増益だったものの、決算説明会で中東情勢が広告需要に与える影響に言及し、業績不透明感が広がった。前日には10/24夕に決算発表したネット検索のアルファベットが急落していた。経営環境の厳しさから市場の期待ほどには業績の見通しが盤石ではなく、「割高感が意識された」との声があった。
  ・朝方発表の7~9月期の米実質国内総生産(GDP)速報値は前期比年率+4.9%増と、4~6月期の+2.1%増から強まり、ダウジョーンズ通信がまとめた市場予想の+4.7%を上回った。
ただ、金融引締めが続く中で、高成長が続くとみる参加者は少なかった。7~9月期の米個人消費支出(PCE)物価指数のエネルギー・食品を除くコア指数の伸びは年率+2.4%と、4~6月期の+3.7%から鈍化し、インフレ減速基調を示したと受け止められた。
  ・米債券市場で長期金利は一時、前日比▲0.12%低い4.83%に低下した。株式の相対的な割高感が薄れたとの見方から、NYダウは上昇に転じる場面があった。ただ、足元の米景気の強さや米国債の需給懸念から米長期金利は高止まりする可能性が高い。10/26未明には5%に近付く場面もあり、金利の低下を手掛かりとした買いは続かなかった。
  ・個別株では、マイクロソフトが▲4%弱、アップルは▲2%強下げた。スポーツ用品のナイキやクレジットカードのビザなど消費関連株も売られた。電気自動車のテスラや画像処理半導体のエヌビディアの下げが目立った。一方、10/25夕発表の7~9月期決算で売上高などが市場予想を上回ったIT(情報技術)のIBMが上昇した。

 2)10/27、NYダウ▲366ドル安、32,417ドル(日経新聞より抜粋
  ・中東情勢が一段と悪化するとの警戒感が高まり、投資家のリスク回避目的の売りが出て、3月以来の安値で終えた。市場予想を下回る決算など悪材料が出た個別株の下げがきつく、指数を押し下げ、NYダウの下げ幅は一時▲400ドルを超える場面があった。
  ・イスラエル軍の報道官は10/27、パレスナ自治区ガザへの地上作戦を「今夜、拡大する」と述べたと伝わった。本格的な地上侵攻が始まることへの懸念が強まり、「地政学リスクの高まりを意識した売りが膨らんだ」。周辺国の原油供給に悪影響が及ぶとの見方から原油相場が上昇し、米国のインフレ圧力が高まるとの観測が広がったのも相場の重荷となった。
  ・10/27にミシガン大学が発表した10月の消費者調査によれば、1年後の予想インフレ率は+4.2%と、5月以来の高水準となった。米連邦準備理事会(FRB)は来週に米連邦公開市場委員会(FOMC)を開く。原油高とあわせ、金融引締めが長期化することへの警戒感が意識されやすかった面もある。
  ・個別株では、石油のシェブロンが▲7%弱下げた。7~9月期決算で1株利益が市場予想を下回ったことが嫌気された。金融のJPモルガンチェースはダイモン最高経営者(CEO)が保有する同社株を一部売却する方針を示し、売り材料視された。バイオ製薬のアムジェンや通信のベライゾンなどディフェンシブ株の下げも目立った。半面、7~9月期決算が市場予想を上回った半導体のインテルは大幅高となった。スマートフォンのアップルやソフトウェアのマイクロソフトといったハイテク株も買われた。前日発表した7~9月期決算が市場予想以上だったネット通販のアマゾンが大幅高となった。前日に下げた交流サイトのメタも買い直され、指数を支えた。

●2.米国株:厳しい試練が続く株式市場、NYダウの底値は30,000ドル割れも視野?

 1)SP・VIX恐怖指数が上昇傾向にあり、米国株の不透明感が増す
  ・VIX恐怖指数の推移 10/2 10/11 10/17 10/27
             17.61 16.09 17.98 21.27
 2)金2,017ドルに上昇、中東情勢の地政学リスクを反映
  ・金価格の推移(NY)
   05/04 2,058ドル
   10/05 1,833:5/4高値から▲225ドル下落、▲10.9%下落。
   10/27 2,016:中東情勢の悪化で急騰、最高値更新を窺う。

 3)NYダウは、3/13の31,819ドルを底に上昇⇒8/1の35,630が天井⇒下落基調へ
  ・NYダウの推移
   03/13 31,819ドル
   08/01 35,630:+3,811ドル上昇、+11.9%上昇
   10/27 32,417:▲3,213ドル天井から下落
  ・後、▲598ドル下落すると、3/13からの上昇分を完全帳消しとなる。
  ・今回の下落の要因は、
   ・長期金利上昇で割高感が意識されたハイテク株の下落が主導。
   ・中東情勢の地政学リスクの高まりで、金などの安全資産にシフト。
   ・原油価格上昇によるインフレ再上昇の懸念。

 4)NYダウの底値予想
  ・底値(1)直近の上昇開始地点である3/13の「31,814ドル」
   底値(2)中期的上昇開始した2022年9/30の28,726からの上昇分+6,905の▲61.2%安した「30,405ドル」
   底値(3)2022年9/30時点の「28,726ドル」

 5)FRBの政策金利「上昇停止」が確認できるまで、米国株式は不安定な状況が続く可能性がありそうだ。なお、中東情勢の沈静化には時間を要すると思われる。また、ウクライナの戦闘状況も2024年も継続するだろう。リスク資産の株式相場は、しばらく厳しい試練が続きそうである。

●3.米国世帯の12.8%が食料不安で、2023年に急増、インフレなど背景に(日経新聞より抜粋

 1)2022年の10.2%から+2.6%上昇。

 2)新型コロナウイルスのパンデミック中に政府が配布を決めた特別手当の打ち切りや、インフレによる食品の値上がりが影響した可能性がある。

 3)人種別では、黒人世帯の22.4%、ヒスパニック系世帯の20.8%、白人9.3%が食料不安を経験。

●4.米GDP、7~9月期は+4.9%増、約2年ぶりの高い伸び、個人消費堅調(ロイターより抜粋

 1)景気後退懸念にもかかわらず、底堅い労働市場を背景に堅調な個人消費が主導し、市場予想の+4.3%(年率換算)増も上回った。

●5.米9月コア個人消費価格指数は前年比+3.7%、予想+3.7%・8月+3.9%(フィスコ)

 1)2021年5月以来で最低の伸び。

●6.ドイツ、10/27も続落し、1月上旬の安値を更新(日経新聞)

■II.中国株式市場

●1.上海総合指数の推移

 1)10/26、上海総合+14高、2,988(亜州リサーチより抜粋
  ・中国の金融支援スタンスが好感される流れとなった。
  ・中国人民銀行(中央銀行)は先週10/20にリバース・レポを通じて巨額の資金供給(7,330億人民元、約15兆2,830億円)を実施して以来、連日で市中に資金を供給している。
  ・米長期金利の上昇などを嫌気して売られる場面がみられたものの、終盤に入り再び買い優勢となった。
  ・業種別では、発電の上げが目立ち、銀行も高く、医薬品・自動車・エネルギー・軍事関連なども買われた。半面、不動産は冴えず、インフラ建設関連・素材・半導体が売られた。

 2)10/27、上海総合+29高、3,017(亜州リサーチより抜粋
  ・中国企業の成長持続が好感される流れとなり、6営業日ぶりに心理的節目の3,000を回復した。
  ・朝方公表された中国工業企業の利益総額は、今年9月に前年同月比+11.9%増となり、8月の+17.2%増に続いて2ヵ月連続で2桁成長を維持した。ただ、上値は重い。
  ・中国では来週10/31、10月の製造業PMIなどが公表される。内容を見極めたいとするムードも漂っている。
  ・業種別では、医療機器の上げが目立ち、バイオ製薬も高い。半面、金融は冴えない。情報電子・石炭も売られた。

●2.縮小深刻な香港株式市場、不透明な中国経済と規制が直撃(ロイター)

 1)香港は、アジアの主要な金融センターと世界第2位の経済大国・中国への玄関口というかつての面影を失いつつある。

 2)外国人投資家は、中国の不透明な政策や不動産市場の低迷、民間企業への取締り強化などによって孤立感を強めていると見做し、投資を減らしている。

●3.中国・碧桂園「支払い不履行」と認定、世界の金融機関の委員会(共同通信)

■III.日本株式市場

●1.日経平均の推移

 1)10/26、日経平均▲668円安、30,601円(日経新聞より抜粋
  ・前日の米ハイテク株安の流れを引き継ぎ、東京市場では半導体関連株が下落。国内長期金利の先高観も重荷となり、株価指数先物に運用リスクを回避する売りが出て、下げ幅は一時▲700円を超えた。米長期金利の上昇や決算発表した大手ハイテク株の下げが響き、ハイテク株比率の高いナスダック総合指数が▲2%強安、主要な半導体関連銘柄で構成するフィラデルフィア半導体株指数(SOX)は▲4%強下げて終えた。
  ・これを受けて東京市場でも東エレク・アドテスト・村田製作所などへの売りが目立った。米株価指数先物が日本時間10/26の取引で軟調に推移すると、株価指数先物に海外短期筋とみられる売りが出て、日経平均は下げ幅を広げた。
  ・10/26の国内債券市場で長期金利が上昇し、指標となる新発10年物国債の利回りは0.885%と、2013年7月以来、約10年3ヵ月ぶりの高水準を付けた。有利子負債の重さが意識される不動産株に売りが出た。
  ・日銀による長短金利操作(イールドカーブ・コントロール=YCC)の再修正への思惑が支えとなった銀行や保険株の一部には下値で買いが入った。電力や食料品など業績が景気動向に左右されにくいディフェンシブ株の一部が物色された。
  ・個別株では、ソフトバンクG・安川電・ソニーが下げた。一方、関西電・テルモ・大林組は上げた。

 2)10/27、日経平均+389円高、30,991円(日経新聞より抜粋
  ・前日の米株式相場は下落したが、前日の日経平均が▲668円安と大きく下げていたこともあり、自律反発を狙った海外短期筋による株価指数先物への買いが優勢だった。米長期金利の上昇一服のほか、半導体関連株やアジア株式相場の上昇も追い風となり、終日高い水準で推移した。日経平均の上げ幅は+470円を超え、節目の31,000円を上回る場面があった。
  ・日本時間10/27の取引でハイテク株が多い米ナスダック100株価指数の先物が堅調に推移し、東エレク・アドテストなど東京市場の半導体関連株も軒並み高となった。米半導体大手のインテルが米国時間10/26の取引終了後の発表した決算内容が好感され、時間外取引で大幅高となったことが連想買いを誘った。
  ・来週は日米で金融政策決定会合が開かれる。結果次第で相場が急変する可能性があるため、結果を見極めたいとの雰囲気が一段の上昇を抑えた。日経平均は前引けにかけて一方的に上げ幅を拡大したが、午後は高い水準での一進一退が続いた。31,000円を下回る水準では国内勢の押し目買い意欲が強いとの見方が聞かれた。一方、31,000円を上回る水準では戻り待ちの売りも出やすかった。
  ・個別株では、富士通が大幅高。ファストリやソフトバンクG、京セラなど値がさ株が上昇した。信越化・スクリン・日東電工も買われた。一方、武田が大幅安。キャノン・日立建機も下げも目立った。ソニーやエーザイも売られた。

●2.日本株:日本株上昇を牽引した海外投資家と証券自己部門が売りに転じたが、受け皿となる新たな買い筋が見えない

 1)海外投資家の売り転換
  ・海外投資家は買残高ピーク9兆円から売りに転換も、▲36.1%しか解消せず(10/20現在、買残高は1月1週からの累計で、現物株+先物の合計)
  ・売り圧力はまだまだ残っている。
  ・海外投資家の買残高の推移
   01月01週(1/)▲0兆4,391億円売残
   08月5週(09/21)+8兆8,144億円買残
   10月2週(10/13)+5兆6,268億円買残
   ▲3兆1,876億円減少、解消率▲36.1%
  ・売り圧力がまだ5.6兆円(63.9%)残っていると言える。

 2)証券自己部門9/29買い残高ピーク5.0兆円から売り転換も、10/20現在3.3兆円残
  ・証券会社自己部門の買い残高の推移
   01月1週 ▲0兆3,071億円売残
   09月4週 +5兆0,272億円買残
   10月3週 +3兆2,926億円買残
   ピーク比▲1兆1,736億円減少、解消率▲34.5%
  ・売り圧力が依然として3.3兆円もあり、動向に注目したい。

 3)夏までは、買い筋は海外投資家+証券自己部門で、売り筋は年金基金+個人現金であった。

 4)現状は、買い筋が売り転換し、相場を支える新たな買い筋が見えない状況が続き、相場は軟調傾向ある。

 5)底値予想をチャートからみると、
  ・底値(1)10/04 30,526円
  ・底値(2)01/04 25,716円
  となる。
  ただ、新たな買い筋が登場する、海外投資家と証券自己部門の売り止めがあるまで日経平均は不安定な状況が続くとみる。

●3.キオクシア、米半導体大手ウエスタン・デジタル(WD)との統合「白紙化」(共同通信)

 1)キオクシアに間接出資する韓国SKハイニックスから同意得られず。

●4.中部電力、4~9月期純利益+3,115億円と過去最高(名古屋テレビ)

■IV.注目銘柄(投資は自己責任でお願いします)

 ・7085 カーブス  業績好調。
 ・7733 オリンパス 業績回復期待。
 ・9519 レノバ   業績好調。

著者プロフィール

中島義之

中島義之(なかしま よしゆき) 

1970年に積水化学工業(株)入社、メーカーの企画・管理(財務含む)を32年間経験後、企業再生ビジネスに携わる。 現在、アイマックスパートナーズ(株)代表。 メーカーサイドから見た金融と企業経営を視点に、株式含む金融市場のコメントを2017年から発信。 発信内容は、オープン情報(ニュース、雑誌、証券リポート等々)を分析・組み合わせした上で、実現の可能性を予測・展望しながらコメントを作成。http://note.com/soubatennbou

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