相場展望10月5日号 米国株: 長期金利上昇は、株価の割高感意識を誘発し重荷へ 日本株: 10/5は自律的反発が期待できるが、「一時的」に注意

2023年10月5日 11:41

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■I.米国株式市場

●1.NYダウの推移

 1)10/2、NYダウ▲74ドル安、33,433ドル(日経新聞より抜粋
  ・10/2の米株式市場でNYダウは続落し、前週末比▲74ドル安と約4カ月ぶりの安値で終えた。足元の米景気の底堅さなどから米連邦準備理事会(FRB)の金融引締めが長期化するとの観測が強まった。米長期金利が一時、約16年ぶりの高水準を付け、高金利が米景気を悪化させるとの見方が株式相場の重荷となった。
  ・10/2の米債券市場で長期金利が一時、週末比+0.13%高い4.70%と、2007年10月以来の水準に上昇した。10/2午前発表の9月の米サプライマネジメント協会(ISM)製造業景況指数が49.0と、市場予想48.0を上回り、好不況の境目とされる50に近づいた。米政策金利と長期金利が一定の間、高い水準にとどまり、米経済活動を押し下るとの懸念が広がった。
  ・9/30夜には11月半ばまでの米連邦政府のつなぎ予算が成立し、米政府の一部機関の閉鎖は回避された。ただ、2024年会計年度の本予算は成立しておらず、財政の方針を巡る与野党の隔たりも大きい。米議会や財政運営への不透明感は残り、つなぎ予算の成立を材料とした買いは限られた。米政府閉鎖が回避され、市場では「FRBが11月の利上げに動きやすくなった」との声もあった。
  ・NYダウは▲280ドルあまり下げる場面があった。米長期金利の上昇基調が強まった場面で、売りが勢いづいた。半面、引けにかけては下げ渋った。今週は10/6の9月雇用統計などFRBが政策運営で重視する指標の発表が相次ぐ。米景気や雇用の現状を見極めたいという市場参加者が多かった。
  ・個別銘柄では、工業製品・事務用品のスリーエムや航空機のボーイングなど景気敏感株への売りが目立った。金融のゴールドマンサックスや石油のシェブロンなども下落した。一方、9月下旬の下げがきつかったスマートフォンのアップルやソフトウェアのマイクロソフトなどハイテク株の一角には買いが入った。ゴールドマンサックスが最も買い推奨する「コングクション・リスト」に追加した画像処理半導体のエヌビディアが高い。ネット検索のアルファベット(グーグル)の上げも目立った。

【前回は】相場展望10月2日号 米国株: インフレ再加速と金利高を懸念し、下落基調へ明確に転換 日本株: 堅調に推移も、外国人の強い先物売りもあり、波乱含みへ

 2)10/3、NYダウ▲430ドル安、33,002ドル(日経新聞より抜粋
  ・10/3発表の米経済指標が労働市場の需給引締りを示した。インフレ鎮静化には時間がかかり、米連邦準備理事会(FRB)の金融引締めが長引くとの観測が強まった。長期金利は連日でおよそ16年ぶりの高水準を付けた。株式の相対的な割高感を意識した売りが膨らみ、約4カ月ぶりの安値で終えた。
  ・1日の下げ幅としては、3/22の▲530ドル以来の大きさとなった。10/3発表の8月の米雇用動態調査(JOLTS)で非農業部門の求人件数が961万件と、市場予想890万件を上回った。債券市場では長期金利が4.8%台に乗せる場面があった。
  ・午後に入ると、次第に株売りが増え、NYダウの下げ幅は▲500ドルを超える場面があった。底堅い雇用指標を受け、「9月の米雇用統計が労働市場の需給引締りを示し、金利高と株安が一段と進む可能性が意識された」との見方があった。
  ・FRB高官は相次いで、高い政策金利を維持する考えを示しており、長期金利が上昇しやすくなっている。10/3にはクリーブランド連銀のメスター総裁が現在の経済状況が続けば、11/1に結果を公表する次回の米連邦公開市場委員会(FOMC)で利上げをする可能性に言及したと伝わった。アトランタ連銀のボスティック総裁は利上げに消極的ながらも、高い金利を長期にわたって維持すべきだとの見方を示した。
  ・長期金利の上昇で、株式の相対的な割高感が意識され、高PER(株価収益率)のハイテク株が下げた。ソフトウェアのマイクロソフト、顧客情報管理のセールスフォースが売られた。高金利の長期化が景気に悪影響を及ぼすとの懸念から、消費関連株や景気敏感株にも売りが出た。クレジットカードのアメリカンエクスプレスやホームセンターのホームデポ、建機のキャタピラーが下落した。
  ・ハイテク株比率が高いナスダック総合指数は5営業日ぶりに反落した。前日比で▲1.86%と約4カ月ぶりの安値となり、下落率は8/4の▲1.87%以来の大きさとなった。主力銘柄が総じて売られ、半導体のエヌビディア、ネット通販のアマゾン、電気自動車のテスラが下げた。

 3)10/4、NYダウ+127ドル高、33,129ドル(日経新聞より抜粋
  ・米長期金利の上昇(債券価格は下落)が一服したうえ、朝発表の米雇用指標が労働需給の緩和を示したとの受け止めが広がり、株買いにつながった。一方、10/6発表の9月の米雇用統計の内容を見極めたいとの雰囲気もあり、積極的な株買いは手控えられた。米財政運営を巡る不透明感が投資家心理の重荷となっており、NYダウは下げに転じる場面があった。
  ・10/4の米債券市場で長期金利は4.7%台で推移した。米東部時間の10/4未明に4.88%と連日でおよそ16年ぶりの高水準を付けた後で利益確定や持ち高の債券買いが入った。金利の低下で、相対的な割高感が薄れた高PER(株価収益率)のハイテク株を中心に、株を買い直す動きが入った。
  ・10/4朝発表の9月のADP全米雇用リポートでは非農業部門の雇用者数が前月比+8.9万人増と、ダウジョーンズ通信がまとめた市場予想+16万人増を大きく下回った。労働市場の軟化を示す内容との見方が広がった。
  ・同日発表の9月の米サプライマネジメント協会(ISM)の非製造業(サービス業)景況感指数は53.6と、市場予想53.7にほぼ並んだ。8月の54.5から低下したものの、好不況の境目とされる50を上回った。個別事項では「新規受注」や「雇用」が減速した。
  ・市場では「本当に高インフレが減速し、労働需給も緩和してきているのかどうかを見極めるためには、10/6発表の9月雇用統計がカギとなるだろう」との声が聞かれた。
  ・米連邦議会下院は10/3、野党・共和党トップのマッカーシー議長の解任動議を可決した。9/30に成立したつなぎ予算の期限となる11月中旬までに、それ以降の追加予算が成立するかどうかは不透明な状況にある。
  ・メディアによると、下院は10/11にも新議長選出の採決を実施する方向で調整している。後任候補者が複数浮上しているものの、市場では「政府機関の一部閉鎖への可能性がやや高まっており、短期的に市場参加者の不安を誘っている」との見方も出ている。
  ・個別銘柄では、ソフトウェアのマイクロソフトや顧客情報管理のセールスフォースが上昇。小売のウォルマートやスポーツ用品のナイキ、製薬のメルクも高かった。画像処理半導体のエヌビディアやネット通販のアマゾン、電気自動車のテスラなどが買われた。一方、通信のベライゾンや映画・娯楽のディズニーは安かった。原油価格が下落し、石油のシェブロンも売られた。

●2.米国株:長期金利上昇は、株価の割高感意識を誘発し重荷へ

 1)米長期金利が16年ぶりとなる高水準で、株価には相対的割高感が出て重荷となる
  ・米経済の底堅さを示す経済指標があり、インフレの再加速が懸念される中、金融引締めが長期化するとの観測が強くなっている。
  ・米長期金利は、10年物が10/3に4.75%と、2007年8月以来の水準にまで上昇。
  ・労働市場では、8月求人件数が961万件と69万件増で、雇用の逼迫を示す。
  ・インフレ率は低下どころか再上昇する懸念が高まっており、11月にFRBは利上をする可能性がある。WTI原油先物は10/4に84.39ドルに急落(前日は89.23ドル)したが、一過性であろう。

 2)米主要株価3指数は10/3、そろって急落
  ・NYダウ      5/31以来の安値引け。
   ナスダック総合  同上。
   SP500      6/1以来の安値引け。

 3)10/4の米国株は反発して上昇したが、「下げ基調の中の一時的反発」とみる
  ・米金利の上昇はまだまだ高くなる。
  ・10/4の上昇は、長期金利の急伸したことの一服を好感したのものに過ぎない。
  ・政府機関の一部閉鎖は9/30の議会合意で救われたが、下院議会での議長解任の騒ぎをみると、問題を先送りしたに過ぎない。

●3.米下院議長解任で年内の政府機関一部閉鎖の可能性(ロイター)

 1)格付けには影響なし=フィッチ

●4.世界のヘッジファンド、9月に銀行株を積み増し=モルガンS(ロイター)

●5.米8月求人件数は961万件と、予想外に増加(ロイター)

●6.アトランタ連銀総裁、米追加利上げの「緊急性」なし、でも利下げはまだ(ロイター)

●7.クリーブランド連銀総裁、景気現状維持なら次回会合で利上げ行うだろう(ロイターより抜粋

 1)FRBが2%に設定するインフレ目標は、2025年末までに達成するだろう。

 2)利下げは、近いうちに実施されるとは考えていない。

 3)政策金利は、ピークかピークに近い水準にある可能性が高いと指摘。

●8.米下院、マッカーシー下院議長の解任を決議、史上初(ロイター)

 1)議会は、政府予算案の可決やウクライナ向け追加支援の検討など急務に直面する中で、未知の領域に置かれた。

■II.中国株式市場

●1.上海総合指数の推移

 1)10/2、祝日で休場

 2)10/3、同上

 3)10/4、同上

■III.日本株式市場

●1.日経平均の推移

 1)10/2、日経平均▲97円安、31,759円(日経新聞より抜粋
  ・米政府機関の閉鎖はいったん回避されたものの、米連邦準備理事会(FRB)は当面、政策金利を高い水準でとどめるとの見方を背景にした米長期金利の先高観がくすぶる中で、売りが優勢だった。
  ・日経平均は午後に入ると上げ幅を縮小して、下げに転じた。市場で目立った直接の売り材料は指摘されていないが、株価指数先物に売りが出たのにつれて、現物株にも下げ圧力がかかり、日経平均は今日の安値で取引を終えた。
  ・日銀が10/2発表した9月の全国企業短観経済観測調査(短観)は、企業の景況感を示す業況判断指数(DI)が大企業・製造業でプラス9と、2四半期連続で改善した。ファナックなど設備投資関連の一角が買われて相場を支えた。一方、先行きの見通しでは非製造業で弱含みとなった。足元の円安・原油高を受けたコスト高への懸念も再燃する中で、小売や食料品の一角には売りが出た。
  ・個別銘柄では、東エレク・ソフトバンクg・KDDI・中外薬が下落した。一方、アドテスト・ファナック・レーザーテク・スクリンが上昇した。

 2)10/3、日経平均▲521円安、31,237円(日経新聞より抜粋
  ・米長期金利が16年ぶりの水準に上昇したのを背景に、国内外で相対的な割高感が意識されやすい株式を売る動きが広がった。資源関連を中心に幅広い銘柄に売りが出て、日経平均の下げ幅は一時▲600円を超え、終値では6/1以来4カ月ぶりの安値となった。
  ・10/2の米債券市場では金融引締めの長期化観測を受け、長期金利が一時4.70%と16年ぶりの水準に上昇した。長期金利の上昇を嫌気する形で、10/2の米NYダウは続落し、約4カ月ぶりの安値で終えた。10/3のアジア市場では、香港ハンセン指数など主要株式市場の下落が目立ち、東京市場でも運用リスクを避ける動きが活発化した。
  ・日本株市場の調整が続く一方、外国為替市場での円安・ドル高基調は継続しており、ドル建てで日本株市場の水準をみるとされる海外投資家の視線は厳しくなっている模様だ。市場では「4~5月の株価上昇局面で買いを入れていた海外の長期投資家がバリュー(割安)株にいったん利益確定売りを出したようで、株安に拍車をかけた」との声が聞かれた。
  ・特に足元で堅調だった割安銘柄の代表格である自動車株を売る動きが強く、指数を下押しした。割安株で構成する東証株価指数(TOPIX)バリュー指数の下落率は▲2.06%と、成長株で構成するTOPIXグロース指数の下落率▲1.25%よりも大きかった。
  ・個別銘柄では、ファストリ・東エレク・ダイキンなど値がさ株が安い。トヨタ・マツダなど自動車株の下落も目立った。INPEX・ENEOSなど資源関連株の下げもきつかった。一方、東ガス・ラインヤフーが高く、ソニー・イオンが買われた。

 3)10/4、日経平均▲711円安、30,526円(日経新聞より抜粋
  ・米長期金利が連日で16年ぶりの水準に上昇したのを背景に、国内外で相対的な割高感から株式を売る動きが広がり、5/17以来およそ5カ月ぶり安値を付けた。
  ・10/3の米債券市場で長期金利は一時4.81%まで上昇した。同日発表の米雇用指標が労働需給の逼迫を映し、米金融引締めが長期化するとの見方が強まった。長期金利上昇が嫌気され10/3の米株式市場で主要3指数がそろって大幅安となり、10/4のアジア市場では香港ハンセン指数など主要株式相場が下げ、日本株への売りを誘った。国内の長期金利が上昇したことも相場の重荷だった。
  ・10/4の東京市場では東エレク・アドテストなど値がさの半導体関連株に売りが膨らみ、日経平均を下押しした。外国為替市場では円安・ドル高が進行しており、海外投資家からドル建て日経平均のパフォーマンス悪化を警戒した売りが出ているとの見方もあった。このところ堅調だったバリュー(割安)株を売る動きも目立ち、銀行株や自動  車株が大幅安となった。
  ・午前の東証株価指数(TOPIX)が前日比▲2.01%安で終え、下落率は日銀が上場投資信託(ETF)を買い入れる基準と市場でみられている▲2%を超えた。実施すれば3/14以来となる。ただ、日銀の買い観測は市場で広がらず、日経平均は大引けにかかて下げ足を速めた。
  ・個別株では、ファストリ・ソフトバンクGなど値がさ株が安い。トヨタ・ホンダ・SUBARUなど自動車株の下げも目立った。三菱UFJ・住友不も売られた。一方、資生堂が高く、オリンパス・ヤマハが買われた。

●2.日本株:今日は自律反発が期待できる地合い、でも「一時的」に注意

 1)今日「10/5は反動高」か
  ・日経平均が9/15の33,533円から一気に▲3,007円安・▲9.0%と急落しており、値ごろ感から反発を示してもよい状況にある。
  ・米株価は10/4に、金利上昇の一服や雇用逼迫の緩和兆しと経済の堅調さを示す経済指標から反発した。この米株価の上昇を受け、日本株も買い直される可能性がある。
  ・海外投資家も売り疲れており、売り一服で買い直しされる可能性がある。
  ・10/4の株価先物市場で、海外投資家は合計では売り優勢だったが、一部の海外証券会社の株式先物手口では「買い転換」している。

 2)テクニカル指標からみた「反動高」予想の要因
  ・空売り比率の高水準が続いており、正常値に戻る可能性がある
      10/2    10/3   10/4
      41.6%    47.8    47.1
   10/4に日経平均は▲711円安と大幅下落したが、「空売り比率」は前日比で若干であるが低下している。これは10/4の下げが現物株の売り急ぎが急落を主導したことを示す。日経平均が反発すると、わずかな買いでも、買い戻しを誘発しやすい。
  ・騰落レシオ(6日)が急低下しており、反発が期待できる
      10/3   10/4
      68.95   41.56
  ・ドル建て日経平均が10/4に204ドルと下げ、日本株に割安感が出た。
  ・WTI原油先物価格が下落。
      10/3   10/4
      89.23ドル 84.39

 3)ただ、この自律反発があったとしても、「一時的な上昇」となる可能性があることに注意
  ・チャートをみると、下げ止まったとは言い難い。まだ下落途中の様相を示しているように見える。
  ・株式相場は堅調を示してきたが、株価の基調は「軟弱局面入り」に注意。
           10/2    10/3   10/4
   新高値銘柄数   56     7    5  新高値数が急減
   新安値銘柄数  45   138   216  新安値数が急増
   株価指数を牽引してきた銘柄が減少・新安値数が増加と、弱気相場に転換か。

●3.政府と経済界が意見交換し、半導体など重要物資の工場立地を後押し(NHKより抜粋

 1)開発規制されている「市街化調整区域」でも、工場建設許可の規制緩和。

 2)道路や工業用水などインフラ整備。

●4.クスリのアオキ、第1四半期の営業利益は66.6億円黒字、前期比48.8%増(フィスコ)

■IV.注目銘柄(投資は自己責任でお願いします)

 金利高見通しで銀行・保険株に買い
 ・2579 コカ・コーラ    業績回復期待。
 ・6302 住友重       増配期待。

著者プロフィール

中島義之

中島義之(なかしま よしゆき) 

1970年に積水化学工業(株)入社、メーカーの企画・管理(財務含む)を32年間経験後、企業再生ビジネスに携わる。 現在、アイマックスパートナーズ(株)代表。 メーカーサイドから見た金融と企業経営を視点に、株式含む金融市場のコメントを2017年から発信。 発信内容は、オープン情報(ニュース、雑誌、証券リポート等々)を分析・組み合わせした上で、実現の可能性を予測・展望しながらコメントを作成。http://note.com/soubatennbou

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