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相場展望8月14日号 米国株: ハイテク株、特に半導体株を中心に調整色が強まる 日本株: ゴールドマンサックスの8/10の先物大量買いに注目
■I.米国株式市場
●1.NYダウの推移
1)8/10、NYダウ+52ドル高、35,176ドル(日経新聞より抜粋)
・7月米消費者物価指数は(CPI)は前年同期比の伸び率が市場予想を下回った。米連邦準備理事会(FRB)による追加利上げへの警戒が和らぎ、株買いを誘った。NYダウの上昇幅は一時+450ドルを超えたが、午後に上げ幅を縮めた。
・7月の米CPIの上昇率は、エネルギー・食品を除くコア指数が前年同期比+4.7%と、ダウジョーンズ通信がまとめた市場予想の+4.8%を下回った。市場では「FRBのインフレ目標である+2%にはまだ遠いものの、インフレ鎮静化の傾向が強まっており、投資家心理がある程度改善したようだ」と受け止めた。
・8/10発表の週間の新規失業保険申請件数は24.8万人と、市場予想の23万人以上だった。労働需給の逼迫が和らぎつつあるとの見方もあり、FRBの追加利上げ観測の後退につながり、株買いを誘った。
・買い一巡後は上げ幅を縮めた。午後に米財務省が発表した30年物国債入札の結果が「低調」と受け止められ、米債券市場では長期金利が上昇した。相対的な割高感が意識された高PER(株価収益率)のハイテク株を中心に売りが広がった。物価の高止まりで、FRBが利上げを停止した後も高い水準にとどめるとの見方が根強く、積極的な株買いにつながらなかった面もある。「高インフレがくすぶる限りは利上げ懸念も残り続ける」との声も聞かれた。
・個別株では、映画・娯楽のディズニーが+5%高で終えた。8/9夕発表の2023年4~6月期決算で1株利益が市場予想を上回った。アナリストからは動画配信事業などに対して前向きな評価が相次ぎ、NYダウを支えた。化学のダウや半導体のインテル、工業製品・事務用品のスリーエムも買われた。ネット通販のアマゾンや交流サイトのメタなどが上昇した。半面、金融のゴールドマンサックスと製薬のメルクは売られた。
【前回は】相場展望8月10日号 米国株: 株式相場に新たな環境変化が迫る兆し 日本株: 日本株は上昇⇒一服⇒買い疲れが出る可能性
2)8/11、NYダウ+105ドル高、35,281(日経新聞より抜粋)
・ディフェンシブ株や石油株を中心に買いが入り、NYダウを支えた。一方、8/11朝発表の7月の米卸売物価指数(PPI)の上昇率が市場予想を上回った。米国のインフレ圧力が根強く、米金融引締めが長引くとの懸念につながった。米長期金利が上昇し、ハイテク株には売りが出て、相場の重荷となった。
・市場では「ハイテク株を売って、出遅れ感があった銘柄を買う循環物色が広がった」との声が聞かれた。
・7月のPPIは前月比+0.3%上昇し、ダウジョーンズ通信がまとめた市場予想の+0.2%を上回った。米連邦準備理事会(FRB)が9月に政策金利を据え置くとの観測が根強いものの、「その次の会合がある11月に利上げする選択肢を残す可能性が高い」との見方があった。物価上昇鈍化に時間がかかれば、政策金利が高止まりするとの観測につながった。朝方は売りが先行し、NYダウは▲100ドル余り下げる場面があった。
・米債券市場では長期金利が上昇(債券価格は下落)し、一時は前日比+0.06%高い4.17%を付けた。長期金利が上昇すると相対的に割高感が意識されやすい高PER(株価収益率)のハイテク株が売り優勢となった。ソフトウェアのマイクロソフトが下げ、前日に大幅高となった映画・娯楽のディズニーは▲3%安で終え、航空機のボーイングも下げ、NYダウの重荷となった。エヌビディアなど半導体関連株の下げも目立った。電気自動車のテスラや交流サイトのメタも売られた。
・一方、製薬のメルクや医薬品・日用品のJ&J、医療保険のユナイテッドヘルスなどディフェンシブ株が買われた。原油先物相場が上昇し、石油のシェブロンは+2%高となった。クレジットカードのアメリカンエキスプレスや機械のハネウェルなど景気敏感株の一角も上げた。
●2.米国株:ハイテク株を中心に調整色が強まる
1)8月に入り、ハイテク株、特に半導体株を中心に調整色を強める動きが目立つ
・米主要株価指数の推移 7/31 8/11 下落幅 下落率
NYダウ 35,559ドル 35,281 ▲278ドル安 ▲0.8%安
SP500 4,588 4,464 ▲124安 ▲2.7%安
ナスダック総合 14,346 13,644 ▲702安 ▲4.9%安
ラッセル 2,002 1,922 ▲ 80安 ▲4.0%安
フィラデルフィア半導体株 3,861 3,514 ▲347安 ▲9.0%安
2)株価調整の要因
・決算発表シーズンが終わり、好材料が乏しくなった。
・市場参加者が夏季休暇入り。
・FRBによる「金利引き上げ停止・引下げ」の期待感で株式相場を支えてきたが、色あせてきた。
・資金の流れが、「現金」「債券」に向かい、「株式」から流出がみられる。
・米国の金利が上昇傾向にあり、高水準にある株価にとって割高感が意識される。
米金利の推移 7/31 8/11 上げ幅 上昇率
10年物国債利回り 3.959% 4.158% +0.199% +5.0%
2年物国債利回り 4.766 4.892 +0.126 +2.6
●3.元・債券王のグロース氏、米国債・株式共に「割高」と一刀両断(ブルームバーグより抜粋)
1)米10年債利回りは4.5%前後が適正だと述べた。現在の水準は4.16%前後。現在の10年債利回りは、過去の関係を踏まえるとなお低すぎる。
2)米財政赤字の拡大で、債券市場には供給圧力が強まると指摘。米国債の強気派の主張は「やや見当違いだと思う」と語った。
3)株式益回りと債券利回りの差で測る株式のリスクプレミアムが歴史的な低水準にあると指摘。株価が割高なことを示唆していると述べた。
■II.中国株式市場
●1.上海総合指数の推移
1)8/10、上海総合+10高、3,254(亜州リサーチより抜粋)
・中国経済対策の期待感が相場を支える流れとなった。
・景気持ち直し遅れを示唆する指標の発表が相次ぐなか、当局は景気支援スタンスを強めるとの見方が広がっている。前日に発表された7月の物価統計が予想以上に落ち込んだことで、市場からは「金融緩和の余地が広がった」との声が聞かれた。
・ただ、全体としては上値が重い。米中関係悪化が警戒されている。バイデン大統領は8/9、先進半導体やAI(人工知能)、量子技術など3分野を対象に、米国の企業・個人が中国に投資することを制限する大統領令に署名した。
・指数は安く推移する場面がみられた。
・業種別では、石油や石炭などエネルギーの上げが目立つ。原油高が追い風。昨夜のWTI原油先物が+1.8%高と続伸し、一時は約9カ月ぶりの高値を付けた。エアラインや空港の旅行関連も高い。中国当局は8/10、日本や米英韓などに向け中国人の団体旅行を解禁すると発表した。旅客増の期待が広がった。不動産・医薬品・公益・素材なども買われた。半面、消費関連は冴えない。銀行・ハイテクの一角も売られた。
2)8/11、上海総合▲65安、3,189(亜州リサーチより抜粋)
・新規材料の乏しいなかで、投資家の慎重スタンスが強まる流れとなり、約3週間ぶりの安値水準に落ち込んだ。
・米長期金利の上昇や、先端技術分野巡る米中対立、中国の景気持ち直し遅れなどが不安材料として改めて意された。また、来週は7月の中国経済指標などが集中して公表されるため、結果を見極めたいとする投資家のスタンスも買い手控えにつながった。8/15 鉱工業生産、小売売上高、中期貸出金利、金融統計など指数は徐々に下げ幅を広げた。
・業種別では、保険・証券の下げが目立ち、ITハイテクも安く、消費関連も冴えず。エネルギー・公益・素材・インフラ関連・不動産も売られた。
●2.バイデン米大統領は8/10、中国の弱い経済成長を「時限爆弾」と表現(ロイター)
●3.外資の対中国直接投資、4~6月期は約7,100億円と過去最大の落ち込み(共同通信)
1)1998年以降で最少額、前年同期比▲87.1%の減少率=中国政府8/10発表。
●4.パナソニック、家庭用エアコンの国内生産10⇒40%に、中国から移管(JBpress)
●5.中国不動産「碧桂園」は1~6月期で▲1兆円の赤字、恒大集団より影響が深刻か(読売新聞)
1)景気減速に伴うマンション販売の減少が主因。
2)米ドル建て社債の利払いを8/10期日にできず。資金繰りが大幅悪化。
株価は8/11終値、1香港ドル割れの0.98香港ドル、1月高値から▲70%下落(ブルームバーグ)
■III.日本株式市場
●1.日経平均の推移
1)8/10、日経平均+269円高、32,473円(日経新聞より抜粋)
・日銀の金融緩和姿勢などを背景に外国為替市場では144円台と約1カ月ぶりの水準まで円安が進み、自動車やインバウンド(訪日外国人)関連銘柄が買われた。
・日経平均は朝方、前日の米株安に連れて▲200円近く下げる場面もあった。ただ、企業業績の改善期待などから日本株の先高観は強く、節目の32,000円に迫る場面では押し目買いが入った。
・一部メディアで「中国政府は日本への団体旅行を解禁する方針」だと伝わり、その後正式発され、インバウンド需要の本格回復への期待から空運・鉄道・百貨店株が買われた。決算発表を受け、大きく上昇する銘柄も目立った。INPEXは+16%超高、富士フィルムは+6%超高となった。後場にかけて、外国為替市場で円安が進む局面では幅広い銘柄に買いが広がった。
・寄り付き直後に日経平均は下げる場面もあった。8/9の米株式相場でハイテク株が大きく下げた流れを引き継ぎ、東エレクなど日経平均の指数への寄与度が大きい半導体関連銘柄が売られた。米政府が先端半導体などの分野で、中国への投資を規制する方針を示したのが嫌気された。
・個別株では、ファストリ・セコム・ホンダが上昇し、オリンパス・セコム・ソニー・リクルートが下落した。
2)8/11、祝日「山の日」で休場
●2.日本株:ゴールドマンサックスの8/10の先物大量買い以降に注目
1)株価先物8/10は、ゴールドマンサックス(GS)と野村の一騎打ち
・8/10 日経平均 +269円高
外資先物買い合計 +9,304枚買い・・GSは+9,352枚買と一手買い
野村は▲5,842枚売で対抗
GSの先物の大量買いで、日経平均は思わぬ上昇をみせた。
・ただ、GSを除く外資系は模様眺めであり、外資全体の動向に注目したい。GSが株価上昇の先駆者となるか、一人舞台なのか?
2)日本株の推移 7/31 8/10 下落幅 下落率
・日経平均 33,213円 32,473円 ▲740円安 ▲2.2%低下
TOPIX 2,322 2,303 ▲ 19安 ▲0.8%低下
・日経平均は米国株安の影響で値がさハイテク株が売られ下落したが、TOPIXは横ばい。このところ値上がりが目立った米国株は下落傾向にあるが、米国株に連れ高しなかった日本株が堅調な動きを示す。この現状をみたGSが、日本株に目を付けて8/10の買いにつながった可能性がある。
3)ただ、日本株市場も「夏季休暇」入りとなり、注意したい
・8月は決算発表シーズン終盤から、海外勢を中心に夏季休暇に入る市場参加者が多くなる。過去の8月は、海外投資家が売り越す傾向があり、相場の重荷になる場合がある。
・ただ、夏枯れの時期に「暗躍する」短期筋もあり、思わぬ株価上昇となる可能性もある。それだけに、GSの動きに注目したい。
●3.GDP年3.1%増の予測、3四半期連続プラスの見込み=民間10社平均(読売新聞)
■IV.注目銘柄(投資は自己責任でお願いします)
・4004 レゾナック 業績反転期待
・4967 小林製薬 業績・訪日客期待
・8242 エイチ・ツー・オー 中国団体客期待
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