相場展望7月20日 米国: 決算発表シーズン・インで株価には追い風 日本: 米国株を上回る買い優勢だったが、調整傾向

2023年7月20日 13:01

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■I.米国株式市場

●1.NYダウの推移

 1)7/17、NYダウ+76ドル高、34,585ドル(日経新聞より抜粋
  ・前週発表の6月の米消費者物価指数(CPI)などの物価指標がインフレ鈍化を示し、米連邦準備理事会(FRB)が7月を最後に利上げを終了するとの観測が強まった。米景気の大幅な悪化を回避できるとの楽観が相場を支えており、幅広い銘柄への買いが続き、昨年11月下旬以来、約7カ月ぶりの高値を付けた。
  ・朝方にNY連銀が発表した7月の製造業景況指数は+1.1と、市場予想0.0を上回った。個別指標では新規受注が小幅に改善した。一方、価格指数の低下が目立ち、ディスインフレ(インフレ鎮静化)の基調を示したと受け止められた。
  ・NYダウは寄り付き直後は一時▲90ドルほど下げた。中国国家統計局が7/17に発表した2023年4~6月期の実質国内総生産(GDP)が市場予想を下回った。主要な米株価指数が直近の高値圏で推移し、NYダウは前週に+774ドル上昇していた。利益確定や持ち高調整の売りが出る場面があった。
  ・下げは続かず、午後には一時+150ドルあまり上昇した。前週末に、JPモルガンチェースなど金融大手が発表した決算が全般に底堅い内容だった。今週は動画配信のネットフリックスや電気自動車のテスラなどハイテク大手の業績発表が本格的に始まる。「市場予想を上回る決算や楽観的な業績見通しが目立つ可能性が高い」との声があった。ピックアップトラックの生産を始めたテスラが上げた。一方、通信のベライゾンは大幅安だった。

【前回は】相場展望7月17日 米国: インフレは再加速が濃厚⇒金利引上げ圧力増す 日本: 日経平均はダブルトプを形成し、「下落」を示唆

 2)7/18、NYダウ+366ドル高、34,951ドル(日経新聞より抜粋
  ・これまで発表された2023年4~6月期決算で市場予想を上回る内容が相次いでいる。投資家心理が改善しており、金融株などを中心に幅広い銘柄に買いが広がり、2022年4月以来、1年3カ月ぶりの高値で終えた。NYダウの7日続伸は2021年3月以来、2年4カ月ぶりとなる。
  ・金融大手の モルガンスタンレーとバンクオブアメリカが7/18に発表した4~6月期決算で売上高に相当する純営業収益と1株利益が市場予想を上回り、いずれも株価は上昇した。7/19に決算発表を控える同業のゴールドマンサックスにも買いが及んだ。
  ・アナリストが投資判断を引上げた医療保険のユナイテッドヘルスの上昇が目立った。ソフトウェアのマイクロソフトは+4%高となり、最高値を更新。交流サイトのメタなどが、人工知能(AI)関連の提携拡大を相次いで発表したことが好感された。建機のキャタピラー、バイオ製薬のアムジェンも上げた。半導体のエヌビディア、電気自動車のテスラも買われた。一方、機械のハネウェル、クレジットカードのビザが下げた。
  ・7/18発表の6月米小売売上高は前月比+0.2%増と、市場予想+0.5%を下回る。自動車・同部品を除いた売上高も+0.2%増と、市場予想+0.3%増を下回る。消費の減速が景気の悪化を示すとの受け止めから、取引開始直後は小幅に下げる場面があった。一方、「消費の減速はインフレ鈍化につながり、米連邦準備理事会(FRB)の利上げが長引くとの懸念を和らげる」との声もあった。

 3)7/19、NYダウ+109ドル高、35,061ドル(日経新聞より抜粋
  ・今後、発表を控える主要企業の4~6月期決算が想定を上回る結果になるとの期待が相場を支えた。インフレの減速を背景に米連邦準備理事会(FRB)の利上げ長期化に対する懸念が後退しており、買いが続いている。
  ・7/19に発表した金融のゴールドマンサックスは主力の投資銀行部門が苦戦し、大幅な減益となったものの、株価は上昇して終えた。経営陣が事業環境に改善の兆しがあるとの見方を示し、業績の底入れ期待が高まった。同業のJPモルガンチェースも買われ、投資家心理を支えた。
  ・株高が続いているのはFRBの金融引締めが米景気を冷やすとの懸念が和らいでいるのが大きい。FRBは6月に年内あと2回の利上げを示唆したが、市場では1回にとどまるとの見方がある。
  ・相場の上昇についていこうと急いで買いを入れる投資家も増え、株高に弾みがついた。通信のベライゾンや顧客情報管理のセールスフォースの上昇が目立った。映画・娯楽のディズニーも高い。
  ・もっとも、NYダウは上値の重さも意識された。上げ幅は前日までの7日間で+1,200ドルに達し、利益確定売りも出やすい。電気自動車のテスラや動画配信のネットフリックスといった大手ハイテク企業の決算発表が取引終了後に控え、様子見の投資家も多かった。ソフトウェアのマイクロソフトや航空機のボーイングが下落した。

●2.米国株:

 ・4~6月期決算発表シーズン・インで株価には追い風
 ・インフレ再加速には注意深く見守りたい
  1)4~6月期決算発表シーズンを迎え、業績期待相場が始まる
   ・決算発表で、金融大手の業績改善を手掛かりに買い優勢となった。その波及効果で、今後に予定される決算発表会社まで株価が上昇している。
   ・そういった点から、「期待値」優先買いが見られる。
   ・この場合、期待値から買いを集めた銘柄は、決算発表ともに材料出尽くしとして売り浴びせられる懸念があるので、注意したい。

  2)インフレ再加速の芽に注目
   ・ロシアの穀物合意停止の影響で、小麦など食料品が急騰している。
   ・原油市場も、減産などで75ドル台まで上昇している。
   ・銅も同様に上昇傾向にある。
   ・中国によるパラジウムなどの輸出規制で、希少金属の価格が急伸している。
   ・米国の労働市場の需給は若干鈍化傾向が見られるものの、賃金上昇が続き、求人件数も鈍化は見られるものの求人倍数は高く、逼迫が続いている。

  3)米国の過剰流動性は減少傾向にあるが、株式市場には潤沢な資金で支えている
   ・しばらくは、この潤沢は資金に支えられて、株式相場は堅調が続く模様。

●3.ロシアの穀物合意停止、世界的な食糧インフレを助長する恐れ=IMF(ロイターより抜粋

 1)国際通貨基金(IMF)は7/19、ロシアが黒海経由の穀物輸出合意の履行を停止したことで、世界の食料安全保障の見通しが悪化し、特に低所得国にとっては食糧インフレを助長するリスクがあると述べた。

 2)ロシア、ウクライナ行きの船舶はすべて武器運搬船とみなす⇒小麦先物+9%高

■II.中国株式市場

●1.上海総合指数の推移

 1)7/17、上海総合▲28安、3,209(亜州リサーチより抜粋
  ・中国景気の回復遅れが改めて意識される流れとなった。
  ・取引時間中に公表された各種経済指標で、今年4~6月期の国内総生産(GDP)成長率が+6.3%にとどまり、1~3月期の実績+4.5%は上回ったものの、市場予想+7.1%は下回った。また、6月の各種統計では、鉱工業生産が上振れる半面、小売売上高は予想に届いていない。国内消費の弱さが指摘されている。もっとも、下値を叩くような売りは見られない。当局は追加の経済刺激策を打ち出す・・との観測が一段と高まっている。

 2)7/18、上海総合▲11安、3,197(亜州リサーチより抜粋
  ・前日の軟調な地合いを継ぐ流れとなった。
  ・中国景気の回復遅れが投資家心理の重しとなっている。
  ・前日公表された中国の経済指標では、今年4~6月期の国内総生産(GDP)成長率が前年同期比+6.3%にとどまり、市場予想+7.1%を下回った。また、消費や不動産の関連統計も総じて弱い内容となっている。ただ、下値は限定的。
  ・中国景気の持ち直しをサポートするため、当局は経済対策を強めるとの期待も根強い状況だ。
  ・中国商務部は7/18、家計消費の促進に向けた一連の支援策を発表した。市場の一部では、預金準備率の引下げ観測も浮上した。
  ・業種別では、ITハイテクの下げが目立ち、医薬品も安い、発電・電力も安い。半面、自動車はしっかり、空運も高い、不動産・海運・素材も買われた。

 3)7/19、上海総合+1高、3,198(亜州リサーチより抜粋
  ・中国当局の景気支援スタンスが相場を支える流れとなった。
  ・中国工業情報化部の報道官は7/19、自動車・電子・鉄鋼など10大重点産業の安定成長に向けた活動計画の策定と実施を強化する方針を明らかにした。
  ・それより先、国家発展改革委員会は7/18、下半期も消費の回復・拡大に向け、政策ツールを拡充させていく方針を表明した。
  ・もっとも上値は重い。中国景気の持ち直し遅れや、人民元安の進行が懸念されている。指数は安く推移す場面見られた。
  ・業種別では、不動産の上げが目立ち、海運もしっかり、エネルギー・娯楽・素材・銀行・証券も買われた。半面、ハイテクは冴えない、医薬品・発電・電力設備・消費関連も売られた。

■III.日本株式市場

●1.日経平均の推移

 1)7/17、祝日「海の日」のため休場

 2)7/18、日経平均+102円高、32,493円(日経新聞より抜粋
  ・東京市場が休場だった7/17の米株式相場の上昇を引継いで高く始まり、朝方は上げ幅を+300円超に拡大する場面があった。ただ、その後は上値の重さがめ目立ち、午後の日経平均は一時下落に転じた。
  ・7/17の米株式市場でNYダウが7カ月半ぶり高値を付けた。米連邦準備理事会(FRB)が7月を最後に利上げを停止するとの観測から、ハイテク株を中心に買われた。短期筋を中心にリスク選好が高まり、東京市場でも値がさの半導体関連株などに買いが先行した。
  ・朝高後は戻り待ちの売りに押され、次第に伸び悩んだ。7/17発表の中国4~6月期国内総生産(GDP)の伸びが市場予想を下回ったことを受け、香港や上海の株式相場が下落して始まると、日経平均は急速に上げ幅を縮めた。
  ・三菱UFJ・村田製が買われ、エーザイの上昇が目立った。一方、楽天が売られ、OLC・花王が下げた。

 3)7/19、日経平均+402円高、32,896円(日経新聞より抜粋
  ・前日の米株式相場の上昇で、投資家心理が上向き、東エレクなど値嵩株を中心に買いが優勢となった。東京外国為替市場での円安・ドル高も自動車など輸出関連株を押し上げた。
  ・米主力企業の4~6月期決算で市場予想を上回る結果発表が相次いでいることから、7/18の米株式市場ではNYダウなど主要3指数が揃って年初来高値を更新した。東京市場でも投資家が運用リスクをとる動きが強まり、ファナックやダイキン、信越化など幅広い主力株に買いが入った。
  ・日銀の植田総裁が7/18、持続的・安定的な2%の物価目標の達成に「まだ距離がある」との見方を示した。日銀が7/28~29に開く金融政策決定会合で政策修正に動くとの観測がやや後退した。
  ・7/19の東京外国為替市場で円は139円台前半まで下落し、トヨタや日産自などの自動車株に買いが入った。取引終了にかけて、海外投資家からと見られる買いが強まり、日経平均とTOPIXともにこの日の高値で終えた。
  ・日経平均の指数寄与度が高いファストリとソフトバンクGが上げ、アステラスと第一三共も買われた。川崎汽船など海運株の上げも目立った。半面、電通とサイバーが下落し、みずほFGは年初来高値更新後に売られた。

●2.日本株:

 ・米国株を上回る株価上昇だったが、一服傾向
 ・植田日銀総裁は「黒田・前総裁の3期目」
  1)日経平均の上昇は、スピード違反から一服へ
   ・日経平均はNYダウを追い抜くような買い優勢だったが、さすがに一服か。現在は株価調整の過程から、下げ過ぎによる自律反発の買いがあり得る。
   ・ただし、新高値を更新するという勢いが得られるか、自律反発の範囲内にとどまるかについて要注目。

  2)日本株も4~6月期決算発表シーズン・インを迎える
   ・中国景気の回復出遅れが目立ち始め、欧州の景気鈍化の影響を見極めることが大きな課題になってきた。
   ・日経平均の急上昇のなかに、企業業績相当分をどの程度織り込んだのか?見通すことも肝要。
  
  3)日銀は当面、大規模緩和を継続する見込み
   ・植田・日銀総裁は、「黒田総裁の3期目」と、見た方がよさそう。黒田総裁の方針継続が「植田方針」のようだ。
   ・東京株式市場は、「揺り籠」に入ったままであろう。日銀総裁の動向が、株式相場に与える影響はないと見る。
  
  4)外国人投資家の株式先物手口は買いが継続中
   ・7/19の日経平均+402円高は、空売りが薄いなか、するすると上昇した感じ。売りが薄かった分だけ、力強い上昇とはいいがたい面がある。
   ・ただ、外国人投資家の買いは7/6から一貫した買い基調である。
   ・外国人投資家の先物買い基調からすると、7月4~6月決算発表の買い仕掛けが続行中と見られる。

  5)米国株では物色の流れが変わる兆し
   ・7/19の米国株は上昇したが、半導体株指数(SOX)は下落した。日本株相場の物色の流れに変化があるのか、要注目。

●3.日銀総裁、「持続的な2%の物価目標達成を巡る前提が変わらない限り、金融政策を巡るストーリーは変わらず」(フィスコ)

●4.日銀政策修正観測の後退で、円売り強まる、140円が視野に(為替ドットコム)

●5.日本政府、ロシアへの乗用車輸出禁止を大幅強化へ、来週にも閣議決定(NHK)

 1)排気量1,900CC超のガソリン車・ディーゼル車・ハイブリッド車・電気自動車でロシアで人気が高い日本の中古車も含まれる。昨年の輸出額6,039億円。

■IV.注目銘柄(投資は自己判断でお願いします)

 ・4568 第一三共     業績好調。
 ・7276 小糸製作所    業績好調。

著者プロフィール

中島義之

中島義之(なかしま よしゆき) 

1970年に積水化学工業(株)入社、メーカーの企画・管理(財務含む)を32年間経験後、企業再生ビジネスに携わる。 現在、アイマックスパートナーズ(株)代表。 メーカーサイドから見た金融と企業経営を視点に、株式含む金融市場のコメントを2017年から発信。 発信内容は、オープン情報(ニュース、雑誌、証券リポート等々)を分析・組み合わせした上で、実現の可能性を予測・展望しながらコメントを作成。http://note.com/soubatennbou

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