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中国レアアース輸出規制への対抗手段は?
Photo:中国の磁石技術禁輸検討を報じる日経4月6日1面記事 ©sawahajime[写真拡大]
日本経済新聞は、4月6日付で「中国がレアアースを戦略物資に位置付けて、輸出禁止の検討に入った」と報道した。だが果たして、中国の思惑通りに行くかどうか。
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●EV車シフトの背景
昨今のEV車シフト騒動のきっかけは、中国である。
内燃機関技術では、日本には勿論のこと、欧米先進国には未来永劫追いつけない現状を、EV車なら構造が簡単で、部品工業企業の裾野が貧弱でも対応可能だと、強権政治によって「土俵変換」を企てた。
●欧州勢の思惑
当初、欧州勢は日本の「ハイブリッド車」に対抗して、「クリーンディーゼル車」を推進しようとしたが、技術面で劣り、アメリカ市場での厳しい規制回避を不正で誤魔化そうとしたVWが、「排ガス偽装」事件を引き起こした。
その結果、ディーゼルエンジンに対する忌避反応が起こると、日本に屈服することを潔しとせず、中国のEV車転換の尻馬に乗った。技術面から、中国に負ける筈が無いと考えたのだろう。
そして、一気にEV車押しの空気が醸成されたのである。
●ロシアのウクライナ侵略戦争の影響
平和な時代の、地球温暖化に関する脱CO2議論は、ロシアによるウクライナへの侵略戦争勃発以降、風向きが変わってきた。
暴虐なロシアに対する制裁に関連して、エネルギー問題が起こった。
ドイツは、メルケル前首相により、ロシアの天然ガスに依存するパイプライン「ノルドストリーム」を利用して、原子力発電を廃止するといった政策に舵を切っていたが、電力逼迫の苦境に追い込まれた。
現時点では、世界的にも電力事情との関係もあって、EV車に対する見直しの機運も見受けられる。
●尖閣諸島中国漁船衝突事件の教訓
2010年9月7日午前に、尖閣諸島中国漁船衝突事件が発生した。
沖縄県・尖閣諸島付近で操業中であった中国漁船と、違法操業として取り締まりを実施した日本の海上保安庁との間で発生した一連の事件だ。
尖閣漁船事件、中国漁船衝突事件とも呼ばれるが、一般的には「sengoku38」こと一色正春氏によって明るみに出た、「中国漁船体当たり事件」として認識されている事件である。
この事件に関連して、逆切れした中国側は、複数の税関での通関業務を意図的に遅滞させることで、レアアースの日本への輸出を事実上止めた。
しかし一時的に日本側に支障が出たが、結果として技術面でカバーして、苦境を克服した。
技術力が無ければ、白旗を上げるしか無いが、従来のレアアースの使用量を減少させることにより、逆に中国側は輸出量が減少して泣きを見ることになった。
●中国の輸出規制への対応策は?
結論から言えば、日本や欧米が、EV車シフトという愚策を止めれば良い。
日本や欧米には、以前から永年に渡り蓄積して来た、EV車に比較しても却って環境に優しい「内燃機関技術」があり、それを支える広い部品供給を可能とする裾野が存在する。
しかし中国は、目論んだEV車転換で孤立すれば、内燃機関搭載の車両に関連する技術が劣っており、有り余るレアアースを持て余すのが関の山だ。
ハイブリッド車に使用するレアアースは、中国以外から調達すれば良いのだ。
●対抗策は極めて有効
事実、冒頭記事が掲載された同じ日に、同紙17面には、「レアメタル、国際価格急落」との記事が掲載されている。
「最大需要地の中国車向け振るわず」として、「マグネシウム22カ月ぶり安値 リチウム58%安」とある。
もし日米欧が一旦EV車に対する補助金制度を停止するなりすれば、ただでさえ「自動車」としては「未完成なくせに割高」なEV車が主要供給先である、日米欧のEV車を製造するメーカーという需要先を失い、レアアース価格は下落する。
●環境に対する影響
客観的に見れば、ハイブリッド車よりも環境負荷が大きいとされるEV車だから、一旦過熱したブームを抑えて元に戻しても、地球温暖化への影響は、殆ど変わらないだろう。
EV車は、全ての「自動車」がカバーする分野の内の、「域内運送」や「域内移動」といった限定的なパートを担うのが、本来のあるべき姿であって、自動車地図を塗り替えるだけの経済性能も環境性能も持ち合わせていないのだから。(記事:沢ハジメ・記事一覧を見る)
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