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相場展望1月9月号 市場に再浮上する「利上げ停止・利下げ期待」、FRBは「利上げ継続」と2極化
■I.米国株式市場
●1.NYダウの推移
1)1/05、NYダウ▲339ドル安、32,930ドル(日経新聞より抜粋)
・1/5発表の雇用統計が米労働市場の底堅さを示し、米利上げが長期化するとの見方から売りが優勢となり一時▲457ドルまで下げた後は、下げ幅を縮めた。
・昨年12月のADP全米雇用リポートで非農業部門の雇用者数は前月比+23.5万人増と市場予想+15.3万人増を大きく上回った。
・週間の米新規失業保険申請件数は市場予想を下回り、昨年9月以来の低水準となった。
・米労働市場の逼迫が高インフレを長期化させ、米連邦準備制度理事会(FRB)による
・米長期金利が一時3.78%と前日終値3.69%から上昇した。金利上昇時に割高感が意識されやすい高PER(株価収益率)のハイテク株が売られ、ソフトウェアのマイクロソフトや顧客情報管理のセールスフォースが下げた。利上げが景気を下押しするとの警戒感から、機械のハネウェルなど景気敏感株も下洛。原油高を受けて石油のシェブロンが買われ、製薬のメルクや通信のベライゾンなどディフェンシブ株の一角が上昇し相場を支えた。人員削減を発表したネット通販のアマゾンや電気自動車のテスラ、エヌビディアなど半導体株も総じて安かった。
【前回は】相場展望1月5月号 米国3大課題: (1) 業績悪化 (2) 逆金融相場 (3) 景気後退 日本株は「売られ過ぎ」の場面⇒自律反発期待
2) 1/06、NYダウ+700ドル高、33,630ドル(日経新聞より抜粋)
・朝方発表の12月米雇用統計で賃金インフレの減速が確認された。米連邦準備理事会(FRB)による金融引締めの長期化への懸念が和らぎ、幅広い銘柄が買われた。
・12月米雇用統計では非農業部門の雇用者数が前月比+22.3万人増と、市場予想+20万人増を上回った。一方、平均時給は前月比+0.3%増と、市場予想+0.4%増を下回った。賃金インフレの鈍化が示されたことを受け、「FRBが高水準の政策金利を長く維持するとの警戒が和らいだ」との声が聞かれた。
・米景気悪化を背景にFRBが金融引締めの手綱を緩めやすくなるとの観測も株買いを後押しした。
・1/6午前に米サプライマネジメント協会(ISM)が発表した12月の非製造業景況感指数は49.6と前月56.5から低下し、市場予想55.1も下回った。好不況の境目とされる50を下回ったのは2020年5月以来。「経済指標の弱含みは早期のFRBの金融引締め減速や利下げにつながるとの見方が株高を誘った」という。
・一連の経済指標の発表を受け、米長期金利は一時3.5%台後半と前日終値3.72%から大幅に低下し、株式の相対的な割高感も和らいだ。
・景気敏感株への買いが目立ち、化学のダウ・航空機のボーイングが+4%高となった。スポーツ用品のナイキ・クテジットカードのビザなど消費関連株も高い。ハイテク株ではスマホのアップルが+4%上昇した。エヌビディアやブロードコムなど半導体関連株の上げも目立った。米食品医薬品局(FDA)がアルツハイマー病治療薬の申請承認を認めると発表したバイオ製薬のバイオジェンは+3%高。
●2.米国株:株式市場にまたも浮上する「利上げ停止・利下げ」期待、FRBは「利上げ」継続と2極化
1)年初の株式相場は、米国上昇・日本下落で始まる
・株価などの推移 12/30 ⇒ 1/6 差異 騰落率
NYダウ 33,147ドル 33,630 +483ドル高 +1.5%高
日経平均 26,094円 25,973 ▲121円安 ▲0.5%安
ナスダック総合 10,460 10,569 +109安 +1.0%高
SP500 3,839 3,895 + 56高 +1.5%高
米半導体株指数 2,532 2,636 +104高 +4.1%高
米10年債金利 3.879% 3.560 ▲0.319%低下
日10年債金利 0.410% 0.500 +0.09%上昇
金利「逆イールド」▲0.549% ▲0.698 長短金利差が▲0.149%拡大
2)米国株上昇の要因
・株式市場では、「利上げ停止・利下げ期待」論が高まる。
・米国株式市場では、米経済指標の発表を受けて、景気後退懸念が薄らぐ。
・賃金上昇率が+4.6%と、予想+5.0%から伸びが鈍化。
・強い景気を意識(失業率3.5%、予想3.7%と歴史的低水準、雇用者数の予想を上回る増加)。
・長期金利(10年)が、上記指数を反映して▲0.319%低下した。
・結果、米株式市場では、景気後退について「軟着陸(ソフトランディング)」論が強まり、「ハードランディング」論が薄らいだ。このため、FRBによる「利上げ観測」は、「停止・利下げ」論が優勢となる。
・長期金利低下を受け、金利に対して割高感が薄れた高PER(株価収益率)のハイテク株が牽引して米国株式相場は上昇した。
・ハイテクを代表するフィラデルフィア半導体株指数(SOX)は+4.1%高。NYダウは+483ドル高・+1.5%高(1/6は+700ドル高)。
3)だが、FRBは「金利引上げ」継続中であり、株式市場の「楽観」論とは相違し2極化
・クックFRB理事は「インフレ率は依然として高水準にあり、非常に懸念される」と述べているように、FRBは従来通り「金利引上げ」論を継続している。
・株式市場は「インフレ率鈍化」といっても、12月失業率は3.5%と予想3.7%を下回っており、新規失業保険申請件数は減り、雇用者数は前月比+22.3万人と予想+15万人増であり、労働市場は逼迫した状態は継続している。たまたま、平均時給の上昇率が+4.6%に前月から鈍化したとはいえ、好評価するに値するほどの鈍化ではない。また、+4.6%自体が高い伸び率であり、賃金上昇がもたらすサービス価格高騰に対してセーブする水準でない。
4)したがって、株式市場の「楽観論:利上げ停止・利下げ」は期待できないと思われる。
・米債券市場は、「景気後退」とみている。それは、「逆イールド」の拡大に反映されている。米国の長期10年債金利と短期2年債利回りの差は再び拡大に転じている。
逆イールド : 12/30 ▲0.549% ⇒ 1/6 ▲0.698%
・冷静な判断をすると評される債券市場の見方を、無視しない方がよい。
5)年初からの株高は、12月大幅下落の反動高「自律反発」の枠内とみる。したがって、リスクの見定めが必要と思われる。
・なお、SP500が2年連続となる下落は1928年以降で4回起きている。4回とも、2年目の下落率が大きく、▲24%安となっている点を忘れないようにしたい。
●3.米雇用統計、2年ぶりの低い雇用の伸び、賃金も予想外の鈍化(フィスコより抜粋)
1)12月非農業部門雇用者数は22.3万人、予想20.0万人を上回る、11月26.3万人
2)12月失業率は3.5%、予想3.7%・11月3.7%。
3)12月平均時給は前年比+4.6%、予想+5.0%・11月+4.8%。
●4.米12月ISM非製造業景況指数は予想外の49.6、予想55.0・11月56.5 (フィスコ)
●5.米12月ADP雇用統計は23.5万人、予想+15.0・11月+12.7万人を上回る(フィスコ)
●6.米先週分新規失業保険申請件数20.4万件、前週比▲1.9万件減少(フィスコ)
1)昨年9月来で最低、労働市場の強さが示され、利上げ継続観測が強まり、ドル高へ。
●7.米セントルイス連銀ブラドー総裁の発言「タカ派色弱める」(DZHフィナンシャルリサーチより抜粋)
1)「インフレは依然として高すぎるが、緩やかになっている」「2023年にはインフレが緩和するだろう」
2)金利低下し、株価下げ幅を縮小、ドル高・円安に転換。(フィスコ)
●8.台湾調査会社、1~3月期のNAND価格は前期比▲10~▲15%下洛(NNAアジア経済ニュース)
1)調査会社によると、NAND型は昨年7~9月期から価格は急落、サプライヤーは積極的に減産している。
● 9.サムスン電子、10~12月期の営業利益▲69%減、通年も▲16%減(聯合ニュース)
●10.ゴールドマン、2023年もバリュー株優位と予想、実質金利は高止まりへ(ブルームバーグ)
■II.中国株式市場
●1.上海総合指数の推移
1)1/05、上海総合+31高、3,155(亜州リサーチより抜粋)
・前日までの好地合を継ぐ流れとなり、約3週間ぶりの高値水準を切り上げている。
・中国リオープン(経済再開)の進展期待が支援材料だ。新型コロナを巡っては、首都・北京を含む中国の大都市で、感染拡大ペースが鈍化し、人出が回復傾向を示している。「ゼロコロナ」政策解除による感染拡大の波がピークを迎えた可能性がある、との見方も浮上した。
・中国経済対策に対する期待感も根強い。
・中国人民銀行(中央銀行)は1/4、「2023年は各種の金融政策ツールを適時に実施し、合理的で潤沢な流動性を維持する」と発表した。
・また、中国各地で地方版「両会」(人民代表大会と政治協商会議)が相次ぎスタート。複数の主要都市は、2023年のGDP成長目標を5%以上に設定している。2022年1~9月GDP成長率は3.0%だっただけに、成長支援に向けた動きも加速すると予想された。
・業種別では、消費関連の上げが目立ち、医薬品・不動産・インフレ関連などが買われた。
2)1/06、上海総合+2高、3,157(亜州リサーチより抜粋)
・中国のリオープン(経済再開)進展が引続き材料視され、前日までの好地合を継ぐ流れ。
・中国政府は1/5、中国本土と香港・マカオの往来を正常化すると表明。足元では、首都・北京を含む中国の大都市で、新型コロナの感染拡大ペースが鈍化し、人出も回復傾向を示している。
・ただ、株価の上値は重い。株式指数はこのところの上昇ピッチが速かったこともあり、売り圧力が意識された。指数はマイナス圏で推移する場面もみられた。
・業種別では、ハイテクの上げが目立ち、石炭・公益などがしっかり。医薬品は安い。
●2.中国春節、コロナ緩和で海外旅行が前年比6.5倍に、日本は行き先3位(共同通信)
●3.米Dellが中国製チップの使用を2024年までに削減・停止へ(GIGAZIN)
1)中国での生産の50%を中国国外に移す計画も。
■III.日本株式市場
●1.日経平均の推移
1)1/05、日経平均+103円高、25,820円(日経新聞より抜粋)
・金融引締めの懸念が後退する中、前日の欧米株が上昇した流れを引き継いだ。一時+200円超上げる場面もあったが、日銀の政策修正を巡る不透明感が重荷となり、上げ幅を縮小した。
・1/4に発表されたフランスの2022年12月の消費者物価指数(CPI)が市場予想を下回る伸びとなるなど、ユーロ圏ではインフレ減速の兆しが出ている。
・米経済指標も低調で、当局による金融引締めに対する過度な警戒が和らぎ、前日の欧米市場では金利が低下する中株価が上昇。日本株にも買いが波及した。半導体関連などの大型グロース(成長)株が大きく上げ、指数の上昇に寄与した。
・週初めに129円台まで進んだ円高・ドル安が一服し、132円台まで円安が進んだことも株価を下支えした。
・もっとも、上げ一巡後は伸び悩む展開となった。日銀の金融政策の修正の行方が見通しにくく、「欧米株の上げに、日本株が連動しづらい状況となっている」との見方があった。前日に上げていた銀行株や保険株は金利低下を受けて軟調な動きが目立った。
・楽天・東エレク・Z・AGC・日本電産・村田製が上昇。りそな・第一生命・京成が下落。
2)1/06、日経平均+153円高、25,973円(日経新聞より抜粋)
・朝方は前日の米株式市場の下落を受けて売りが先行したが、最近の下落傾向で値ごろ感が強まったとみた海外短期筋による買いが次第に優勢となり、一部の値嵩株が買われたほか、円安を支えとした自動車株の上昇も目立ち、上げ幅は一時+200円を超えた。
・節目の26,000円を上回る水準では戻り待ちの売りに押された。日本時間今晩に2022年12月米雇用統計の発表を控える。また、東京市場では3連休ということもあって、午後は高い水準ながら膠着した相場展開となった。市場では「米雇用統計の内容次第で相場が荒れる可能性が高く、リスクは取りづらい」という声があった。
・東エレク・第一三共・ソフトバンクG・ソニー・ホンダが上昇し、NTT・安川電・花王・任天堂が下洛した。
●2.日本株:1/5以降は堅調さをみせるが、強気はリスク
1)日経平均はここのところ上昇も、新高値銘柄数が少なく、弱気もみせる⇒強気はリスク
・ 1/4 1/5 1/6
日経平均 ▲377円安 +103円高 +153円高
年初来高値銘柄数 32 7 9
年初来安値銘柄数 61 66 59
・証券会社自己部門では「売り」継続、これでは日経平均は上昇基調にはなれない
証券自己部門の売買は、12/2の週から12/23週まで▲8,192億円の売越し。
・証券会社自体が12月は「日本株売り」となっている。したがって、1月データの公表が待たれる。
・なお、外国人投資家は「売越し基調」が続き、「買い転換」は確認できていない。
●3.再び値上げラッシュ、値上げ予定7,390品目の半数以上が2月に集中 (NHK)
1)値上げの時期は今月から4月までとなり、品目数は昨年同時期の約1.6倍に増大。
2)加工食品3,897品目、調味料1,417、酒類・飲料1,446、菓子526、原材料・パン104。
●4.日本マクドナルド 店頭販売商品の8割を1/16から値上げ、昨年3月と9月も値上げ(NHK)
●5.企業動向
1)塩野義 コロナ飲み薬「ゾコーバ」、中国で年間1億人分を生産へ(読売新聞)
中国で3月末にも承認の可能性=手代木社長(ブルームバーグ)
2)ナカバヤシ 中国製造事業(浙江省)から撤退(時事通信)
■IV.注目銘柄(投資は、ご自身の責任でお願いします)
・2326 デジタルアーツ 業績堅調。
・2685 アダストリア 業績好調。
・4307 野村総研 業績堅調。
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