相場展望5月17日 日本株の下落率大きい原因は『日銀ETF購入の変化』 これは、日銀による『テーパリング(金融の段階的縮小』

2021年5月17日 08:39

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■I.米国株式市場

●1.NYダウの推移

 1)5/13、NYダウ+433ドル高、34,021ドル
  ・NYダウは一時+550ドル超の上昇。(時事通信)
  (1)インフレ懸念が後退
  (2)金利の上昇が一段落
  (3)雇用指標の改善
 で安心感が広がり、買い戻しが先行し、大幅反発した。

【前回は】相場展望5月13日 ハイテク主導の米国株式市場の終焉の始まりか? 日経平均の急落でも、動かない日銀ETF買い今日は?

 2)5/14、NYダウ+360ドル高、34,382ドル(フィスコ)
  ・長期金利低下で、ハイテク株が大幅回復した。
  ・疾病対策センター(CDC)がワクチン接種後にマスク不要と決定し、運輸保安局が空港利用者数がパンデミック以降で最高に達したと発表したことを背景に、経済活動再開ペースの加速を期待して、買いに拍車がかかった。
  ・セクター別では、半導体・同製造装置・エネルギー・旅行などが大きく上昇した。

●2.欧米の経済正常化後の展開を見極める段階に入ってきた

 1)米FRBのテーパリング(金融緩和の段階的縮小)の議論再燃の注目点
  (1)6月のFOMC(米連邦公開市場委員会)
  (2)8月のジャクソンホール会議

 2)欧州ECBも経済回復でテーパリング可能性示唆

 3)米株での注目点
  (1)米株はバリュー株が優勢となる展開が続いているが、経済正常化後は成長性が鈍化する可能性がある。
  (2)労働市場は、雇用統計が示したものより、実質的には強いという見方ができる。そのため、米連邦準備制度理事会(FRB)の金融政策の判断基準「雇用の強さ」を鑑みると、『テーパリング』を意識せざるを得なくなるので注意したい。

●3.インフレ説は「一時的」が、なお優勢で市場は平静取り戻す(ブルームバーグ

 1)米消費者物価指数(PPI)の大幅な上昇が衝撃を与えたが、投資家は米国の物価圧力が一時的なものだというFRBの説をまだ退けていない。
 
 2)5/12発表の物価統計は、コア指数の前月比上昇が1982年以来の最大の大きさだった。今後5年のインフレ期待を示す5年物ブレークン・イーブン・レートは発表後に一時2005年以来の高水準を付けたが、その後に上昇幅を縮めた。

 3)長期の米国債利回りも今年の最高値には達していない。

●4.米・4月生産者物価指数(PPI)は前月比+0.6%と、予想+0.3%・3月+1.0%(フィスコ)

 1)前月比は、予想から上回ったが、3月比では鈍化した。

 2)前年比では、+6.2%と伸びは3月+4.2%から予想以上に拡大し、少なくとも2010年来で最大。変動の激しい燃料や食品を除いたコアPPI指数は前月比+4.1%と、3月+3.1%から伸びが拡大した。

 3)ドルの上昇も一服した。

 4)4月PPIは、予想を上回りインフレ圧力を新たに示唆(ブルームバーグ)
  ・変動の大きい食品とエネルギーを除くコアPPIは、前月比+0.7%上昇と市場予想の+0.4%を上回った。

●5.米・先週分新規失業保険申請件数は47.3万件と、予想49.0万人を下回り、改善(フィスコ)

 1)前回49.8万人からも改善した。
  ・予想以上に減少し、パンデミック以降で最小を更新した。(ブルームバーグより抜粋
   企業の信頼感が高まり、事業活動の制限で空席となっていたポストを埋める動きが広がっている。
  ・ワクチン接種が広がり、消費需要が上向く中、労働市場の改善は続き、経済活動の促進に寄与している。
   制限措置がさらに緩和されるのに伴い、雇用は引き続き加速すると見込まれている。

 2)失業保険継続受給者数は365.5万人と、前回370万人から減少し改善した。(フィスコ)

●6.米疾病対策予防センター(CDC)、ワクチン接種が完了後、マスクの着用必要なし(フィスコ)

●7.米テスラはビットコインでのテスラ車購入を利用停止、ビットコインは一時5万ドル割れ(共同通信)

●8.割高なハイテク株の行方、ウォール街が試算、結果は厳しい内容(ブルームバーグ)

 1)インフレ懸念の高まりを背景に、ハイテク株が売られている。

 2)ハイテク株のバリュエーションが、過去の平均水準に後退した場合の検証。
  (1)1995年以降の平均に戻った場合、▲37%下落するリスクがある。
  (2)2020年の新型コロナ感染拡大前7年間の平均に後退した場合、さらに▲24%縮小する。

 3)米10年国債利回りが1.7%⇒2%に上昇した場合、SP500指数はさらに▲8%下落する。SP500指数のバリュエーションは、「ハイテクバブル絶頂期と同程度の極端な水準にある」と見受けられる。

●9.社債市場にインフレ懸念浸透、最大ETFの空売り比率が21.5%と過去最高(ブルームバーグ)

●10.冴えない米30年債入札結果(フィスコ)

 1)米財務省は270億ドル規模の30年債の入札を実施した。結果は、入札前の金利を上回り、応札倍率も2.22倍と前回2.47倍を下回り、需要は低調だった。

 2)冴えない結果を受けて、10年債利回りは1.66%⇒1.68%まで再び上昇した。

■II.中国株式市場

●1.上海総合指数の推移

 1)5/13、上海総合指数▲33安、3,429(亜州リサーチ)
  ・国内金融機関の新規融資が予想以上に縮小し、通貨供給量の伸び率も予想を大幅に下回っている。金融当局は新型コロナ禍の対策で実施した緩和措置を縮小しつつある、との見方が広がり、投資家のセンチメントが悪化する流れとなった。
  ・業種別では、非鉄・鉄鋼・化学品など素材関連と消費財の下げが目立った。医薬品は高かった。

 2)5/14、上海総合指数+60高、3,490
  ・中国人民銀行(中央銀行)の資金供給、米長期金利の上昇一服、アジア株の反発を受けて、約2カ月ぶりの高値水準を回復した。
  ・金融株が相場を牽引し、薬品株も急伸した。

●2.中国・アリババ、巨額罰金支払いが業績を圧迫し、1~3月期は上場来の営業赤字(ロイター)

 1)独占禁止法違反として180億元(約3,050億円)の罰金で、2019年売上高の約4%に相当し、営業損益は▲76.6億元(約▲1,300億円)の赤字となった。

 2)アリババ株価5/13、▲6%安、赤字転落を嫌気し、規制強化も警戒して下落した。

■III.日本株式市場

●1.日経平均の推移

 1)5/13、日経平均▲699円安、27,448円
  ・米国株安で投資家心理が冷え込み、日経平均の寄与度の高い値嵩株から売られた。
  ・コロナ感染増も重荷となり、日経平均は2020年末の27,448円まで下落し、年初来の上昇分を消してしまった。
  ・新興株のジャスダックは2カ月ぶり、マザーズは9カ月ぶりの安値。(日経新聞)
  ・米生産者物価指数(PPI)5/13公表やFRB高官の発言に警戒くすぶる(ロイター)
 
 2)5/14、日経平均+636円高、28,084円
  ・米でNYダウが4日ぶりに上昇して、投資家の心理が改善したことが押し上げる要因となった。
  ・3日間で2,000円以上も値下がりした反動で、ハイテク関連を中心に、大きく値を上げた。

●2.順調な企業業績の回復

 1)EPS(1株当たり利益)は、4/01 1,299円 ⇒ 5/14 1,950円と急上昇。
 2)PER(株価収益率)は、  4/01 22.61倍 ⇒ 5/14 14.40倍と急低下し、株価割高感は薄れる。

●3.日米株価は高値から下落したが、その特徴は『日本株の割負け』

 1)理由
  (1)米国発のインフレ懸念
  (2)米国株連動に加え、日本発の日銀ETF購入の変化 

 2)日米主要株価指数の推移
  NYダウ    5/07 34,777ドル ⇒ 5/12 33,587ドル  ▲3.42%下落
  ナスダック総合 4/26 14,138   ⇒ 5/12 13,031     ▲7.83
  SP500     5/07  4,232   ⇒ 5/12  4,063    ▲3.99
  日経平均    2/16 30,467   ⇒ 5/13 27,448    ▲9.99
  TOPIX     3/12  2,012   ⇒ 5/13  1,849    ▲8.10

 3)外資系先物手口の買残高は減少
  (1)5/14、日経平均+636円高でも、外資系は先物で▲9,503枚の売り越し。買残枚数も+154,997枚と、2/25の+283,641牧から最小の買残枚数と減少。
  (2)外資系の日本株先物市場からの縮小が目立つ展開にある。

 4)日経平均は国内勢の買い仕掛けで保っているが、東証の売買比率が3分の2を占める外資系の買い転換が無い限り、国内勢だけで相場を維持する力は限定的となろう。

●4.日経平均は5/10~13の3日間で崩れ、▲2,070円下落の「戻り相場」で5/14に+636円反発

 1)注意信号第1弾は、4月21日安値の28,419円への下落だったが、歯止めにならず。

 2)注意信号第2弾は、5月13日の27,448円と、先行き下値リスクを強めかねない水準にまで、落ち込んだ。

 3)5/14からの当面の戻りで半値戻しの28,500円を超えるか否か? に注目したい。 

 4)超えられなければ、下値目途はコロナショックからの13,915円上昇に対し、
  (1)3分の1調整ならば、25,800円(200日移動平均線 26,364円)
  (2)半値調整ならば、23,500円

 5)日本株は、米国株次第であり、NYダウやナスダック総合の動向に注目が必要。

●5.今回の日本株落ち込みが大きかった原因は、『日銀のETF購入に対する変化』で、日銀による日本的な『テーパリング(金融の段階的縮小)』ではないか?

 1)日銀ETF買いが途絶え、値嵩株が大幅下落したため、日経平均とTOPIXの乖離狭まる。そのため、日経平均の値下がり率が、TOPIXを上回った。要因は、日経平均を牽引してきた、寄与度の高い値嵩株が集中的に売られ、下げを主導。ソフトバンクG、ファーストリティリング、東京エレクトロン、アドバンテストなど。

 2)黒田・日銀総裁は5/13、参議院財政金融委員会で「ETF買い入れに関して、数日間で株価がどれだけ下がったなど機械的ルールで行っているわけでない」と発言した。

 3)では、過去、TOPIXが前場引け値で前日比▲0.5%あるいは▲1.0%と下落した日の後場に定額購入していた事実に対して、どのような説明をするのか?ETF購入に当たっては、内規に従って恣意性無く実施していたということだったが、その内規は無いと主張するのか?その場しのぎの場当たり的な発言が目立つように映る。ひいては日銀に対する信頼感がゆらぐ原因を作っているのではなか。
 
 4)外資系の日本株に対する不透明感からの「買い撤退」の原因はそのあたりにあるのかもしれない。

●6.企業動向

 1)東急     東急百貨店と文化村を一体的に再開発、2023年春から休館(産経新聞)
 2)石油資源開発 カナダのシェール権益を売却、脱炭素化の進展で(時事通信)
 3)キオクシア  旧:東芝メモリは1兆円規模の投資、新工場棟は23年稼働(河北新報)
 4)7&I     物言う株主・米バリューアクトは4.3%相当の3,800万株(1,745億円)の株式保有と発表。(ブルームバーグ)

●7.企業業績

 1)ニコン    21/3月期純損失▲344億円赤字、前年は+76億円黒字(NHK)
         22/3月期純利益+160億円黒字を見込む
 2)ホンダ    21/3月期純利益+6,574億円黒字、前年比+44.3%増 (日刊自動車新聞)
         22/3月期は、同水準を確保。

■IV.注目銘柄(投資は自己責任でお願いします)

 ・7733 オリンパス 業績堅調
 ・6301 コマツ   増益基調
 ・4502 武田薬品  コロナワクチン受託製造

著者プロフィール

中島義之

中島義之(なかしま よしゆき) 

1970年に積水化学工業(株)入社、メーカーの企画・管理(財務含む)を32年間経験後、企業再生ビジネスに携わる。 現在、アイマックスパートナーズ(株)代表。 メーカーサイドから見た金融と企業経営を視点に、株式含む金融市場のコメントを2017年から発信。 発信内容は、オープン情報(ニュース、雑誌、証券リポート等々)を分析・組み合わせした上で、実現の可能性を予測・展望しながらコメントを作成。

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