相場展望10月13日号 米国株 (1) 中国に100%追加関税 (2) 政府機関一部閉鎖で景気懸念 日本株: (1) 公明党連立離脱 (2) 米国の中国関税で、高市トレード逆回転 ⇒ 日経平均先物は「▲2,887円下落(CFD日経平均)」 ⇒ 連休明けの10/14、東京株式市場は大荒れを予想

2025年10月13日 15:07

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■I.米国株式市場

●1.NYダウの推移

 1)10/09、NYダウ▲243ドル安、46,358ドル
 2)10/10、NYダウ▲878ドル安、45,479ドル

【前回は】相場展望10月9日号 米国株: 政府一部閉鎖で米国景気に不透明感、金が4,000ドル突破 日本株: 高市トレードで「円安」進行、152円台乗せ、円高転換に備えを

●2.米国株 : トランプ「中国に100%追加関税」、政府機関一部閉鎖で景気に懸念

 1)10/10、トランプ発言「中国に大幅関税引上げ」をきっかけに大幅利益確定売り
  ・NYダウの推移
    04/08  37,645 1番底
    04/21  38,170  2番底
    10/03  46,758ドル  4/8を底に+9,113ドル高、史上最高値を更新。
    10/10  45,479    10/3比▲1,279ドル安・▲2.73%下落。
                    5日連続となる下落となった。
                   この下落幅は大きな意味を持つ可能性がある。
    ・チャートでみると、10/10の▲878ドル下落により、4/21の2番底からのNYダウ上昇支持線を下に抜けた。それだけに、今後のNYダウの動向に眼を離せなくなった。

  ・米国10/10、主要株価指数の下落状況
     主要株価指数  下落幅    下落率
    NYダウ     ▲878ドル安・▲1.90%下落
    ナスダック総合  ▲820安  ・▲3.56%
    S&P500種    ▲182   ・▲2.72%
    半導体株(SOX ) ▲432   ・▲6.33%

  ・暗号資産市場で過去最大の強制的清算、トランプ氏の対中国追加関税の表明を受け
   ・ビットコイン、119,000ドルを割り込んだ。

 2)米国・恐怖指数(VIX)は過熱感を示す20%を10/10に突破
  ・恐怖指数(VIX)の推移
    10/01  16.29
    10/09  16.43
    10/10  21.66

  ・今後の米国株の急落を示唆している可能性がある。

 3)米国政府機関閉鎖の悪影響は、米国経済の全体に波及も打開策は見えず
  ・トランプ政権は、連邦職員から▲4,100人以上の解雇を始めた。
  ・政府機関閉鎖で、空港で働く航空管制官が減り、米国航空機の運航に支障が出始めるなど政府サービスが低下し、米国景気への悪影響が及び始めている。
  ・トランプ政権は、閉鎖期間中の給与の保証を明言せず、所得減⇒消費支出の減少と米国景気のマイナス懸念が増えている。

 4)トラアンプ氏は「TACO」と揶揄されるぐらい「揺れ動く」のが特徴
  ・「TACO」は、「Trump Always Chickens Out」(トランプはいつもビビッてやめる)の頭文字をとった言葉。

  ・米国株市場の動揺でトランプ氏は自己の資産の目減りをみて、政策転換したことがあるため、トランプ政策は彼の気持ちの動きがポイントとなる。

  ・今年4月からのトランプ関税発表時は、金利が上昇し・債券価格も急落した。トランプ氏の個人資産は債券保有が多いため、資産は大きくの目減りした。トランプ氏は自らの関税政策の誤りに気が付いた。ベッセント財務長官の説得もあり、発表後十数時間で関税政策に「猶予期間」を設けるなど、修正した。これにより、市場は急反発した。米国株は急速に反発し、下げ幅を取り戻した。債券価格も上昇した。トランプ氏は個人資産の目減りを回復できた。

  ・トランプ氏の個人資産は債券保有が多い。
    ・10/10の米国債券市場は、リスク回避の債券買いで、米国10年債利回りは4.03%と前営業日の4.14%から低下した(債券価格は高い)。
    ・米国債券利回りの推移
               10/9   10/10    利回り低下幅と低下率
      02年債利回り   3.593%  3.527  ▲0.066%低下・▲1.84%低下
      10年債利回り   4.138   4.034  ▲0.104   ・▲2.51%低下
      30年債利回り   4.723   4.639  ▲0.084   ・▲1.78%低下
   このため、今年4月の関税発動表明時とは様相が相違する。今回は逆に、金利低下でトランプ氏の個人資産は増えていると思われる。したがって、トランプ氏の対中国関税引上げ策は実施されると思われる。

 5)利下げ観測の強まりが株価上昇の支えとなる可能性
  ・市場では「米国連邦準備理事会(FRB)の公開市場委員会(FOMC)で利下げ」観測が高まり、株価上昇を支える可能性がある。

●3.中国商務省、米国の100%追加関税に「対抗措置」を示唆(ABEMA TIMES)

●4.米国連邦職員の解雇、政府機関閉鎖のさなかに開始、行政管理局予算局長(ブルームバーグ)

 1)閉鎖期間中の大規模解雇は、現代史上で初めて。数千人になる見通し。
 2)連邦職員、必須業務など従事の3分の2は業務継続、残りは自宅待機している。連邦職員の大半は給与の支払いを受けられずにいる。

●5.トランプ大統領、中国のレアアースの輸出規制に反発し、関税大幅引上げと首脳会談中止を示唆(共同通信)

 1)最近の中国に関し、「非常に敵対的になっている」ともSNSに書き込んだ。

●6.JPモルガンのダイモンCEO、向こう半年~2年で大幅調整リスクと警告(ロイター)

 1)ダイモン氏は、関税、移民、地政学、トランプ大統領の税制・歳出政策が及ぼす影響の全容は不透明と指摘し、米国経済の見通しに慎重な姿勢を示した。

■II.中国株式市場

●1.上海総合指数の推移

 1)10/09、上海総合+51高、3,933
 2)10/10、上海総合▲36安、3,897

●2.米国、中国に+100%の追加関税、11/1付け、トランプ氏が表明(ロイター)

 1)併せて、全ての重要な米国製ソフトウェアで輸出規制を適用すると表明した。

●3.中国、米国半導体大手アルルコムを独禁法違反の疑いで調査開始(NHK)

●4.中国に寄港する米国船舶に手数料、米国・中国首脳会談前に対抗措置か(NHK)

■III.日本株式市場

●1.日経平均の推移

 1)10/09、日経平均+845円高、48,580円
 2)10/10、日経平均▲491円安、48,088円

●2.日本株:(1)公明党の与党離脱に(2)トランプ対中国関税100%が加わり、激震走る

  ⇒ 日経平均先物は10/10深夜、「▲2,887円安(CFD日経平均)」
  ⇒ 連休明けの10/14、東京株式市場は大荒れを予想

 1)日経平均10/9~10の特色
  (1)10/9、日経平均は+845円高も、上位5銘柄で寄与+712円高と84.26%を占めた
   ・日経平均上位寄与5銘柄  寄与額    株価上昇高
      ソフトバンクG    +476円   +2,355円高
      ファーストリテイ   +128    +1,580
      東京エレクトロン  +45    +445
      ファナック      +35    +208
      フジクラ       +28    +820
       合計       +712

   ・ソフトバンクGの1銘柄だけで、日経平均上昇の56.33%を占めた。日経平均は大幅上昇したが、1銘柄の上昇が大きなウエートで、「いびつ」さが目立つ。

  (2)10/10 、日経平均▲491円安、日経平均下落寄与5銘柄で▲301円安と▲61.30%
   ・日経平均マイナス寄与上位5銘柄  寄与額    株価下落幅
      ソフトバンクG       ▲145円安   ▲720円安
      アドバンテスト       ▲ 46     ▲170
      東京エレクトロン      ▲ 43     ▲420
      TDK         ▲ 35     ▲70
      ソニー           ▲ 32    ▲187
        合計       ▲301円安

  (3)注目点
   ・過熱感を示す200日移動平均は10/9時点で23%と、基準値20%を上回る。何かの負の要因の発生で、株価大きく下落する素地が生じた。
   ・海外短期投機筋は10/10朝のSQ算出後に、売り転換して下げ幅を拡大した。海外投機筋はSQにかけ買い上がっていたため、10/10の売り転換で株価は急落した。

 2)10/10以降、「高市トレード」は逆回転か?⇒高市トレードは削げ落ちる?
  ・ベースとして、最近の急速な株高による過熱感から、売り優勢となる地合いがあった。
  ・そこに、公明党の連立離脱を受け、政局不安が高まり、先物は10/9、前日比で一時▲1,270円安と大幅な下落となった。日経平均先物は終値ベースで前日比▲1,180円安。
    先物: 10/9 48,800円 ⇒ 10/10 47,620円 前日比▲1,180円安 
  ・公明党が連立離脱すれば、衆院議席は自民党196と過半数の233に37届かない。総理大臣の指名選挙は、1回目の投票で過半数を到達しなければ、上位2人の決選投票となる。つまり立憲148・維新35・国民27と野党3党で210議席になる。公明党の24が野党連合に加われば、234議席となり過半数をかろうじて超える。野党の話し合いによっては、玉木首相の可能性が出てくる。
  ・ただ、野党間の信頼は低いため、野党が一致するのは極めて難しい。そのため、過半数に達していないが自民党総裁が決選投票で首相に選ばれる芽がある。

 3)トランプ氏は、中国のレアアース輸出再規制に激怒し、関税を+100%に引上げ
  ⇒ 米国株に激震が走り10/10にNYダウ▲878ドル安・▲1.89%安
  ⇒ 10/14の日本株は(1)自民・公明の離脱(2)中国関税で激震に見舞われるだろう

  (1)日経平均先物は10/10夜、「▲2,887円安(CFD日経平均)」となった。連休明け10/14の東京市場に激震が襲うと見込まれる。
   ・日経平均先物の推移
            先物価格      下落幅
     10/09(日本) 48,800円
     10/10(日本) 47,620    10/9比 ▲1,180円安
                    (日経平均は▲491円安)
     10/10(米国) 45,201  10/10(日本)比▲2,419円
                     10/09(米国)比▲3,599円

   ・10/14の日経平均は、先物価格から推測すると▲2,784~▲2,887円の下落を意識した値動きになると思われる(10/11日本時間)。もっとも、10/13の米国株式市場の状況に影響されるが、大幅な下落が待ち受けているのは間違いがない。

  (2)円相場が急激な円高へと転換
   ・円相場の推移
      10/01(米国) 147.07円
      10/09(米国) 153.07
      10/10(日本) 152.59
      10/10(米国) 151.18

   ・円高は、自動車など輸出関連株には逆風、日経平均にも負の連鎖を及ぼす可能性がある。

 4)中国のレアアース規制強化で、日本は中国依存度を下げた
  ・2010年の尖閣諸島での中国漁船衝突事件を受け、中国は日本向けレアアースの輸出規制という報復をしてきた。
  ・日本は政府主導でレアアースの脱中国を推進した。
    ・オーストラリア企業などへの投資の多様化。
    ・研究開発を進め、レアアースの消費量の削減。
  ・結果、・中国依存を2010年の90%⇒50%台後半まで削減。
      ・レアアースの消費量を、モーターの使用で50%以上削減するなど、レアースの回収技術の向上もあって、40%以上削減するのに成功した。
  ・課題は、深海にあるレアアースの回収技術の確立が進んでいないことがある。2ナノ半導体のように国策として政府資金を投入して、早期に進捗を進める必要がある。

●3.関係急激に悪化、自民党・公明党26年目の別れ、「政治とカネ」につまずき手遅れに(産経新聞)

●4.円急落で日銀の早期利上げ観測が再燃も、高まる物価の上振れリスク(ブルームバーグ)

 1)自民・高市総裁、行き過ぎた円安を誘発するつもりはない。

●5.ファストリ、米国関税の逆風でも5期連続営業最高益へ、中華圏も増益計画(ブルームバーグ)

 1)売上は年間3兆5,642億円と世界2位のH&Mに肉薄、純利益4,330億円(WWD)

■IV.注目銘柄(投資は自己責任でお願いします)

 ・1942 関電工     業績好調
 ・4911 資生堂     黒字転換
 ・6902 デンソー    業績好調

著者プロフィール

中島義之

中島義之(なかしま よしゆき) 

1970年に積水化学工業(株)入社、メーカーの企画・管理(財務含む)を32年間経験後、企業再生ビジネスに携わる。 現在、アイマックスパートナーズ(株)代表。 メーカーサイドから見た金融と企業経営を視点に、株式含む金融市場のコメントを2017年から発信。 発信内容は、オープン情報(ニュース、雑誌、証券リポート等々)を分析・組み合わせした上で、実現の可能性を予測・展望しながらコメントを作成。http://note.com/soubatennbou

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