相場展望4月3日号 米国株: トランプ関税で、世界経済は大荒れの様相を深める 日本株: 「相互関税」を、日本再生のチャンスと捉えて行動しよう!

2025年4月3日 12:55

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■I.米国株式市場

●1.NYダウの推移

 1)3/31、NYダウ+417ドル高、42,001ドル
 2)4/01、NYダウ▲11ドル安、41,989ドル
 3)4/02、NYダウ+235ドル高、42,225ドル

【前回は】相場展望3月31日号 米国株: トランプ関税は(1) 家計を貧しく (2) 経済減速と、二重苦へ導く 日本株: 海外短期投機筋の損失覚悟の売りで、超下落幅を予想

●2.米国株:トランプ関税で、世界は混とんへ

 1)3/31、NYダウは反発も、ハイテクのナスダックは小幅続落⇒方向感が不透明
  ・NYダウは、消費関連や景気業績が左右されにくいディフェンシブ銘柄が買われ反発した。ハイテク株比率が高いナスダック総合指数は、トランプ関税策が(1)インフレ(2)景気悪化につながると懸念され、続落し相場の重荷となった。
  ・4/01、NYダウは景気指標の悪化で▲11ドル安、ナスダックは+150高と自律反発
  ・4/02、米国株は上昇したが、自律反発の範囲内であり、いつ下落に転じるか注視。

 2)米国株を牽引してきたテスラ、エヌビディア株が変調⇒次の主力株が見えない
  ・テスラ
    ・2025年販売台数の減少予想で、アナリストが評価を引下げ。
      ・反マスク氏の旋風が吹きあがり、テスラ不買運動が高まる。米国、ドイツなど。
      ・中国でもBYDに売り負け始めた。

  ・エヌビディア
    ・高値から▲3割安
    ・中国の地政学リスクの高まりで、売上が制約。
    ・人工知能(AI)関連需要の先行き不透明感が増す。

 3)トランプ関税で景気・インフレ懸念が増す⇒安全資産「金」への逃避・株安見通し
                    1/2     4/2
  ・恐怖指数(VIX)が、上昇     17.93    21.51
  ・金価格が、3,100ドルを上回った 2,671ドル  3,190
  ・主要株価指数が、下落
    NYダウ          42,392ドル  42,225
    SOX(半導体株)      5,121     4,320
   ・今まで株式相場を牽引してきた半導体株指数の下落が大きい。

 4)「相互関税」4/2発表で、市況は大荒れの様相を深める
  ・内容は、(1)各国一律10%、(2)特定の国に相互関税を適用。

  ・相互関税の国別の上乗せ関税率
     ・日本24%、中国34%、インド26%、EU20%、台湾32%、韓国25%、インドネシア32%、ベトナム46%、タイ36%、スイス31%、英国10%

  ・トランプ第1次政権でも2018年、2019年と関税引上げを行った。米国でも、物価上昇とサプライチェーン(供給網)の混乱が起こった。今回は全世界を相手に関税引上げをしたため、トランプ第2次政権ではさらなる困難を引き起こすのは必至。米国も大きな跳ね返りが襲う可能性が大となろう。

 5)トランプ米国大統領の人気下落を州判事選挙で証明、中間選挙に向け前途多難
  ・ウィスコンシン州判事選挙で、リベラル派が勝利し、トランプ氏やマスク氏が応援した候補が負けた。

  ・トランプ氏が大統領就任して約1カ月半が経過、矢継ぎ早の政策を出してトランプ氏への圧倒的支持を得ようと図ってきた。
    ・ガザ地区の和平
    ・ロシアによるウクライナ侵略戦争の停戦
    ・関税(鉄鋼・アルミ、自動車、相互関税)政策
    ・カナダ、グリーンランドの領有
    ・呼称「メキシコ湾⇒アメリカ湾」の変更
    ・パナマ運河の管理権の回復

  ・ウィスコンシン州最高裁判事選挙は、トランプ氏の政策の評価を見るうえで重要な事案だと見られてきた。
     ・それだけに、共和党は全国選挙並みの体制を組んで、共和党派の候補に肩入れしてきた。マスク氏は有権者に1人当たり100万ドル(約1.5億円)の小切手が当たるという手法を導入した。これは、トランプ氏が米国大統領選挙において実行した手法と同じだ。
     ・マスク氏の手法は、「立派な買収」である。有権者を馬鹿にしている。「金」で選挙に勝てるほど、選挙は甘くない。

  ・結果、ウィスコンシン州最高裁判事はリベラル派が4対3と多数派を維持することとなった。保守派候補を支持したトランプ大統領やマスク氏にとって「敗北」となった。

  ・ウィスコンシン州は米国のラストベルト地域にあり、大統領選挙ではこの州で勝利した人物が大統領に就任している。また、トランプ氏が1月に就任後の政策に対する「信任投票」といえる。それだけに、このウィスコンシン州最高裁判事の選挙は、重要であった。今後、2026年の中間選挙、2028年の大統領選挙・上下議会選挙を占う判事の選挙となっただけに、トランプ氏は不満が増すと思われる。

●3.マスク氏、政権ポストから近く退任も、トランプ氏が側近に明かす=報道(ロイター)

●4.トランプ側近、大半の輸入品に20%程度の関税案を起草=ワシントン・ポスト(ロイター)

●5.米国・民主党・上院議員は、トランプ氏の中国との通商関係など見直し要求(ロイター)

 1)2001年以降、米国製造業の雇用が▲430万人失われた。中国との貿易問題に関する民主党・共和党による政策決定に「欠落」があったと主張した。また、中国の世界貿易機関(WTO)加盟に道を開いた、2000年の決定についても見直しの必要があると指摘した。

●6.米国大使館、取引先にDEI禁止の順守を指示し、スペインらの反発を受ける(ロイター)

●7.アップルとマスク氏が衛星拡張計画を巡り対立(QuickMoney)

●8.トランプ「鉄鋼・アルミ」関税に、EUが対応策を発表(ニューズウィーク)

 1)トランプが課す関税に、EUも黙っていない。欧州委員会は鉄鋼貿易制限措置を厳格化し、流入量の▲15%削減計画を発表。

■II.中国株式市場

●1.上海総合指数の推移

 1)3/31、上海総合▲15安、3,335
 2)4/01、上海総合+12高、3,348
 3)4/02、上海総合+1高、3,350

●2.中国3月製造業PMIは50.5に上昇、1年ぶり高水準、新規受注が好調(ロイター)

 1)3月製造業購買担当者景気指数(PMI)は50.5と、2024年3月以来の高水準となった。新規受注が生産を押し上げ、貿易を巡る不透明感が高まる中でも、中国経済に安定化の兆しがみられた。
 2)2月の50.2から上昇した。景況拡大・縮小の分かれ目となる50を、2カ月連続で上回った。
 3)米国の関税引上げを見越した海外からの駆け込み需要も寄与した。

●3.中国の銀行が消費者融資金利を引上げ、不良債権増加懸念で方針を転換(ロイター)

 1)中国建設銀行、中国招商銀行、中国銀行、華夏銀行などは+3%と4/1から引上げ。
 2)中国では米国との貿易摩擦が激化する中、消費者信用を拡大し需要を押し上げようとしており、銀行は先月、貸出金利を過去最低となる2.5%程度に引下げていた。
 3)中国では消費者信頼感が依然として脆弱であり、金利上昇は借入意欲を抑制する可能性があると、アナリストは警告している。

■III.日本株式市場

●1.日経平均の推移

 1)3/31、日経平均▲1,502円安、35,617円
 2)4/01、日経平均+6円高、35,624円
 3)4/02、日経平均+101円高、35,725円

●2.日本株 : 「相互関税」を、日本再生のチャンスと捉えよう

 1)4/2(日本時間4/3、午前4時)にトランプ米国大統領からの発表「相互関税」待ち
  ・米国関税政策の不確実性で前途に暗雲。

 2)米国通商代表部、日本の高関税と非関税障壁の撤廃を要求
  ・米国通商代表部、日本の自動車・デジタル規制批判、コメ・魚介類の高関税を指摘した。
  ・さらに、米国は、日本の関税率だけでなく、非関税障壁で日本への輸出が阻害しているとも指摘。
    ・特定品目の高関税:コメ・魚介類・乳製品・ミネラルウオーター・
              フルーツジュースなど。
    ・不透明な規制:米国産の市場アクセスを制限している。
    ・非関税障壁:米国の自動車安全基準認証を受け入れていない。

 3)日本には「相互関税を24%」を課す
  ・トランプ氏の言い分
    ・日本は米国に対して、(1)高関税を課すだけでなく(2)非関税障壁を含めると平均して46%もの関税を課してきた。米国産のコメには700%もの関税を課してきた。米国の安全基準を満たしている米国車を、非関税措置をして買わない。だから、日本で走っている車の94%が日本車となっている。

  ・トランプ氏は自動車の関税を各国一律25%の関税を徴収するとし、4/3午後から実行するとした。

  ・昨年の日本の経済成長率は+0.1%上昇であった。ところが、自動車25%関税だけで、日本全体の成長率を▲0.2%引下げる。それに加えて、24%の相互関税を上乗せされれば、2025年の日本経済は沈没寸前まで追い込まれる可能性がある。

  ・永田町では、自民党などが中心になって「政治ごっこ」で遊んでいる場合ではない。民間企業も「フジテレビ」に似た企業も多い。今こそ「昭和の敗戦」で焼け野原から日本を再生した「魂」を蘇らす時期である。この苦難を「チャンス」にしたい。

●3.日本国債が世界最大の損失を記録、日銀の金融政策亜正常化で金利上昇(ブルームバーグ)

 1)日本の国債は、過去12カ月で▲5.2%下落し、世界44ヵ国の国債市場で最悪のパフォーマンスとなった。下落は6年連続で、1990年以来最大の落ち込みとなった。
 2)最近は、米国金利が低下する中で、円金利が上昇する場合がかなり見られる。10年債利回りが3/28に+1.54%となったが、+2%まで上がると見込む。

●4.3月日銀短観、大企業・製造業DIは+12と悪化し、2024年3月以来の低水準(朝日新聞)

 1)原材料価格の上昇、米国などの通商政策も悪化、海外需要も伸び悩んだ。
 2)大企業・非製造業DIは+35と、2期ぶりに改善、価格転嫁も進捗した。

●5.JR九州+15%とJR北海道+7.6%、4/1から鉄道運賃を値上げ(NHK)

●6.ポンジュース、6月出荷分から値上げ、円安で輸入コスト高騰(FNN)

●7.味の素AFG、7/1から家庭用コーヒー176品目を25%~最大55%値上げ(ロイター)

●8.4月から値上げは4,225品目(日テレ)

 1)昨年の2人世帯での値上がり負担は約9万円だった。

■IV.注目銘柄(投資は自己責任でお願いします)

 ・9432 日本電信電話    業績回復期待
 ・9514 エフオン      業績好調
 ・9843 ニトリ       業績堅調

著者プロフィール

中島義之

中島義之(なかしま よしゆき) 

1970年に積水化学工業(株)入社、メーカーの企画・管理(財務含む)を32年間経験後、企業再生ビジネスに携わる。 現在、アイマックスパートナーズ(株)代表。 メーカーサイドから見た金融と企業経営を視点に、株式含む金融市場のコメントを2017年から発信。 発信内容は、オープン情報(ニュース、雑誌、証券リポート等々)を分析・組み合わせした上で、実現の可能性を予測・展望しながらコメントを作成。http://note.com/soubatennbou

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