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相場展望2月24日号 米国株: トランプ米国丸は「地図のない航海」をしているようだ 日本株: 日経平均はボックス圏相場底値から、下放れるか注目
■I.米国株式市場
●1.NYダウの推移
1)2/20、NYダウ▲450ドル安、44,176ドル
2)2/21、NYダウ▲748ドル安、43,428ドル
【前回は】相場展望2月20日号 米国株: トランプ大統領による覇権国化でロシア・中国の仲間入り、同盟国へは脅し 日本株: トランプ関税強化で自動車から始まる日本の空洞化へ警戒
●2.米国株:トランプ米国丸は「地図のない航海」をしているようだ
1)米国個人消費の先行き懸念とトランプ関税に対して警戒感が広がる
・小売大手のウォルマートの業績見通しが市場予想を下回ったことで、米国の個人消費の先行きへの懸念が高まった。
・トランプ関税で、世界貿易は縮小し、世界経済にマイナス圧力が増す。米国への輸出依存度が高い各国ではトランプ関税が適用されると、貿易が低下し、経済は沈滞、消費は抑制、販売競争が激しくなり価格は低下する。その悪影響は、米国への輸出依存度が低い国々へも波及する。
・米国の輸出も、購買力が低下した世界各国に対して低下する。米国の輸出依存度の高い企業業績は業績悪化し、米国経済に負をもたらす。
2)イーロン・マスク氏が率いる政府効率化省の強引な推進で、失業者増加
・イーロン・マスク氏が率いる米国政府効率化省(DOGE)の強力推進で、政府部門の大量人員削減を急激に進めている。この行為は、米国の失業者を増やすことになる。米国の国内総生産(GDP)の3分の2は、サービス部門である。失業者の増加は、消費支出を減らすため、サービス部門が低下する。
・DOGEの最高責任者が曖昧でよいのか?トランプ大統領は、責任者はイーロン・マスク氏だと言う。マスク氏は、大統領上級顧問であり、DOGEの権限は有さず・DOGEの職員ではない、と言う。DOGEは、政府雇用者の大規模削減と政府機構の機能停止などを、急激に推進している。まして、議会での議論なく、個人の強力なリーダーシップで決断・推進をしている。近代国家である米国が、議会もありながら討議・合意せず、個人の判断で推し進めるという「独裁者か王」のような振る舞いが許されるのか?
3)米国ではトランプ関税によるインフレ懸念が増す。
・トランプ氏は、インフレへの対処として「関税で得た歳入を、所得税廃止で補う」と公言した。つまり、物価上昇に対して、所得税を廃止することで、個人の可処分所得には影響させない、という考えである。この発言を裏返すと、「インフレ加速を認めた」ことになる。
4)米国がスタグフレーションに陥る可能性が増す
・米国経済がスタグフレーション(景気後退とインフレが同時進行)に陥る可能性が論じられるようになったのは要注意。過去、スタグフレーションになったケースでは、その退治は相当な困難が待ち受けていた。「経済回復と物価抑制」を同時に成し遂げなければならないからである。
5)トランプ米国丸は「地図のない航海」をしているようだ
・米国は、同盟国を敵にまわし、敵対国のロシア・中国と船団を組む動きを強めている。マスク氏は、ヒットラーに親近感を持つドイツの政党に総選挙支持をした。そして、ドイツの現政権を批判した。その政党は、2/23の総選挙で第2党に躍進した。トランプ氏は、ロシアのプーチン氏の言い分を自分の言葉で、ウクライナのゼレンスキー大統領を非難した。
・今までの同盟国を非難し、敵側にあったロシア・中国に立つ位置にすり寄ったとみられる。
・トランプ丸は、地図のない航海を始めたように映る。副船長のマスク氏は、DOGEの職員ではないと発言し、トランプ丸に乗船しながら救命胴衣を身に着けているようだ。
●3.米国大統、自身を「王」に見立てる(FNN)
1)トランプ氏、NY市「渋滞税」認可取り消しで「王様万歳!」と自画自賛
・ホワイトハウスは王冠をかぶったトランプ氏のイラストをSNSに投稿。
●4.効率化省「責任者はマスク氏」と米大統領が発言、政府の公式見解と矛盾(ロイター)
1)トランプ政権の「政府効率化省(DOGE)」の責任者イーロン・マスク氏の正式な立場を巡り、矛盾。
・トランプ大統領の発言
・私は政府効率化省を創設する大統領令に署名し、イーロン・マスクという人物を責任者に任命した、と述べた。
・マスク氏の発言
・ホワイトハウス職員及び大統領上級顧問であり、DOGEに対する権限を有さず、DOGE職員でない、と法廷提出文書に記載した。
2)マスク氏は、企業経営での利益と、政府経費を削減する取り組みとの間に多くの利益相反があるとの批判を受けている。
・ホワイトハウスによると、利益相反が起きればマスク氏は辞職する考えを表明していると言う。
●5.米国経済に「スタグフレーション」リスク=セントルイス連銀総裁(ロイター)
1)このところの経済指標でインフレ期待の上昇傾向が示されているとし、景気停滞と物価上昇が同時に起きるスタグフレーションに米国経済が陥るリスクを指摘した。
2)成長鈍化と高インフレが同時に起これば、連邦準備理事会(FRB)は雇用と物価を巡る二重の債務を達成するうえでジレンマに直面し、難しい舵取りを迫られる。
3)インフレ率が現在の水準にとどまったり、インフレ期待が上昇すれば、「基本シナリオと比べて、一段と制約的な金融政策が適切になる可能性がある」と述べた。
●6.年内0.5%利下げ予想、広範な不確実性も存在=アトランタ連銀総裁(ロイター)
●7.トランプ関税、「コロナ禍規模の衝撃」なら物価懸念=シカゴ連銀総裁(ロイター)
1)トランプ大統領が表明している広範な関税措置の導入で、コロナ禍級の供給ショックが引き起こされれば、インフレが悪化する可能性を懸念していると述べた。
●8.米国失業保険申請件数0.5万件増の21.9万件、小幅増で労働需要の底堅さ示唆
1)コロナ禍前の水準付近での推移が続き、労働需要が底堅いことを示唆した。(ブルームバーグ)
●9.米国2月総合購買担当者景気指数(PMI)は50.4と、前月52.7から低下(ロイター)
1)2023年9月以来となる低水準。
2)トランプ政権が掲げる関税措置と、連邦政府の大規模な支出削減に対する懸念が高まっている可能性が示された。
3)内訳は、
・サービス業PMIが、49.7と前月の52.9から低下。拡大と縮小の分岐点となる50を2年半ぶりに下回った。予想は53.0だった。
・製造業PMIは、51.6と前月の51.2から、やや上昇した。予想の51.5をやや上回った。
●10.トランプ氏、「関税が巨額収入なら、所得税廃止も可能」と明かす(東和日報)
●11.米国インフレ率は速いペースで上昇し、金利を長期に高水準継続(ブルームバーグ)
1)食品とエネルギーを除いた米国個人消費(PCE)コア価格指数は、1~3月に+2.6%に上昇すると予想されている。前月時点では+2.5%上昇と見込んでいた。
2)PCE総合価格指数と、米国消費者価格指数(CPI)は今年はより速いペースで上昇するとみられる。
3)これに伴い、米国連邦公開市場委員会(FOMC)は今年7月まで追加利下げを実施できないと予想している。
●12.バフェット氏が率いるバ―クシャ―社は10~12月営業利益+71%増、金利上昇で(ブルームバーグ)
■II.中国株式市場
●1.上海総合指数の推移
1)2/20、上海総合▲0.76安、3,350
2)2/21、上海総合+28高、3,379
●2.中国首相、的を絞った景気刺激策に意欲、消費促進に重点(ロイター)
■III.日本株式市場
●1.日経平均の推移
1)2/20、日経平均▲486円安、38,678円
2)2/21、日経平均+98円高、38,776円
●2.日本株:日経平均は38,000円の攻防を予想、ボックス圏相場から下放れるか注目
1)金利上昇が急ピッチ
・長期金利の推移
10年国債金利 1/06 1.115%
2/03 1.245
2/19 1.416
2/20 1.442
2/21 1.411
・高田・日銀審議委員が2/19の講演で「金利上昇のタカ派発言」をして、長期金利は急伸した。それに伴い、円高・株安が進んだ。
2)2/21、日経平均は+98円高も、内容が悪い
・新高値19銘柄に対し、新安値61銘柄。値上がり銘柄数は556に対し、値下がりは1,031。
・相場全体の地合いが悪いなか、一部の値がさ株の上昇が寄与してプラスを確保できた。
3)海外投機筋は売り主導
・海外の短期投資筋は、単発で株価先物の買い戻しをするものの、基本スタンスである株価先物売りは継続している。
・この売りスタンスは、日経平均が38,000円近くまで続くと思われる。
・チャート的には日経平均の上値の重さが意識され、米国株式市場の様相をみると、海外投機筋による先物主導での売りが継続する可能性がある。
4)長期金利上昇で、円相場は円高が進行
・円相場の推移
2/21日本時間 150.49円
2/21米国時間 149.28円
+1円21銭も円高となった。
・日本の長期金利の上昇が続くとみる。したがって、円相場は上昇するだろう。
・株式は、・輸出関連株は売られやすい。
・銀行・保険株は買われやすい。
5)日経平均は38,000円割れの攻防を予想、ボックス圏相場から下放れるか注目
・2/24祝日「天皇誕生日」で休場。翌2/25は、前日のNYダウの反発次第となるが、日経平均は弱いとみる。
・2/21の日経平均の終値は38,776円。最近の日経平均は40,000円~38,000円のボックス圏で動いている。このため日経平均は後▲700円あまりの下げ余地がある。
・2/21のNYダウは▲748ドル下落した。このため日経平均は38,000円を試しに行く可能性が高い。
・相場を取り巻く環境と材料をみると、ボックス圏を下放たれる可能性がある。
●3.日産自、ムーディーズはBaa3⇒投機的格付けのBa1に引下げたと発表(ブルームバーグ)
1)ホンダとの共同持ち株会社設立交渉が破談になって以降、格付け会社による格下げが相次いでいる。
●4.農林中金、外国債券などで▲1.9兆円の巨額赤字、理事長辞任(共同通信)
■IV.注目銘柄(投資は自己責任でお願いします)
・2413 エムスリー 業績堅調
・6141 DGM森精機 業績堅調
・7898 ウッドワン 黒字転換
著者プロフィール
中島義之(なかしま よしゆき)
1970年に積水化学工業(株)入社、メーカーの企画・管理(財務含む)を32年間経験後、企業再生ビジネスに携わる。 現在、アイマックスパートナーズ(株)代表。 メーカーサイドから見た金融と企業経営を視点に、株式含む金融市場のコメントを2017年から発信。 発信内容は、オープン情報(ニュース、雑誌、証券リポート等々)を分析・組み合わせした上で、実現の可能性を予測・展望しながらコメントを作成。http://note.com/soubatennbou
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