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水素エネルギーフォーラムに行ってきた 水素エンジン車の未来は
●COP3でのBMW水素エンジン車
「京都議定書」が採択された1997年12月、国立京都国際会議会館で開催された「第3回気候変動枠組条約締約国会議(地球温暖化防止京都会議、COP3)」に、BMWは水素エンジン車を展示していた。
【こちらも】水素エンジン車耐久レース完走の意義
筆者が初めて「水素エンジン車」に接し、ここで入手したBMWのパンフレットの、「宇宙で一番クリーンなエネルギーは、太陽光発電で得た電気を用いて、水を電気分解して取り出した水素だ」(原文英語・筆者訳)との文言に触れたのだが、それは強烈な印象を残した。
●イワタニ水素エネルギーフォーラム
2月6日、グランフロント大阪で開催された「第16回イワタニ水素エネルギーフォーラム」に行ってきた(写真1参照)。
筆者は以前からEV車に対しては批判的で、自動車の将来は「燃料電池車(FCV)」と「水素エンジン車」に向かうと常々言っている。
このフォーラムに参加して、世間が正しく水素社会に向かっていることが確認出来て、有意義であった。配布資料の転載可否の問題もあるので、詳細内容は直接「岩谷水素エネルギーフォーラム」で検索されたい。
●水素社会の早期実現へ
水素社会に至るには、水素インフラの充実が欠かせないと同時に、自動車だけでなく社会全体で水素を活用することによる、水素需要の拡大が必要だ。需要拡大に伴う量産による価格低下が、大きな普及要因となる。
現時点では、内燃機関搭載車の販売を認めないとまで、極端な方針を打ち出していたEUも、土壇場に「e-フュエルは認める」とか、方針変換をした。
EV車だけに限定した社会は、現実の問題としては存在しないであろうことは明白である。そんな状況であるにも拘わらず、内燃機関を否定するのは正気の沙汰ではない。
●水素活用は日本が先行
自動車の水素を主燃料とする動力源としては、「燃料電池」と「水素エンジン」がある。
水素インフラが早期に整備されれば、EV車の様な未完成な技術の車両を、不自由を忍んで利用する必要は無くなる。
EV車では実現が困難な、「コンボイ」に登場する様な大型トラクターに関しては、燃料電池を搭載した車両の開発が進んでいる。
トヨタ自動車とダイムラートラックの資本提携により、日野自動車と三菱ふそうトラック・バスが経営統合し、いすゞとUDトラックス連合も27年をめどにホンダと共同開発したFCトラックの投入を目指している。
国内二輪メーカー4社も5月17日、水素燃料エンジンについて、二輪車向けの研究開発で協業すると発表した。月内にも研究に特化した研究組合を設立する。
既に産業界では、水素に関連するいろいろな取り組みが始まっている。
●水素を燃料とするエンジンは日本が独走
水素を燃料とする「水素エンジン車」は、ガソリンエンジン車の延長上にあり、構造上水素と非常に相性の良いロータリーエンジンは、世界で唯一、マツダが実用化している。
RE(ロータリーエンジン)が従来型エンジン(レシプロエンジン)と較べて水素との相性が良いのは、レシプロエンジンの場合は、高温になる燃焼室で着火性の強い水素を扱うのに対して、REは吸気ポートと燃焼室と排気ポートが完全に分離している点にある。
吸入した着火性の強い水素が、別の場所にある燃焼室へ移動してから点火されて爆発するのだから優位性は明白だ。
既にトヨタは、世代の「内燃機関」に位置づけられるべき「水素エンジン」で耐久レースに参戦した「ORC ROOKIE Racing Corolla H2 concept」により、富士24時間レースで完走を果たしている。詳しくは『水素エンジン車耐久レース完走の意義』(2021年6月18日付)も参照願いたい。
加えて、トヨタはこのレースでは「気体の水素」を用いたが、5月26・27日の「スーパー耐久富士24時間レース」には、「液体水素GRカローラ」が初参戦して完走を果たしている。
内燃機関としての「水素エンジン車」も、着々と実績を積み重ねているのが現状である。
いつも言っているが、人命を預ける「自動車」は、技術レベルが低い国々で勝手に造るべきではない。一部の自動車先進国と日本が、安全性が確立された車を全世界に供給すれば良いのだ。
日本メーカーがこの分野を席捲することも夢ではない。(記事:沢ハジメ・記事一覧を見る)
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