関連記事
相場展望8月25日 米国株:まだ楽観的、債券:慎重、と際だった相場見解 日本株:足元の反落は「調整」の範囲
■I.米国株式市場
●1.NYダウの推移
1)8/22、NYダウ▲643ドル安、33,063ドル(日経新聞より抜粋)
・米連邦準備制度理事会(FRB)が金融引締めに積極的な姿勢を維持するとの観測が改めて強まり、幅広い銘柄に売りが出た。米株式相場は7月中旬から上昇基調が続いたため、目先の利益を確定する売りが出やすかった。
・FRBのパウエル議長は8/26、米カンザスシティー連銀主催の経済シンポジウム(ジャクソンホール会議)で講演する。「市場の利上げ減速観測を牽制し、インフレ抑制に前向きなタカ派姿勢に前向きなタカ派姿勢を改めて示す」との声が出ている。
・市場では金融引締めが思ったより長引くとの見方が広がった。米長期金利が1カ月ぶりに3%を乗せたのも投資家心理の重荷となった。
・長期金利の上昇で相対的に割高感が意識されやすい高PERのハイテクに売りが目立ちセールスフォースが大幅安、景気を冷やすとの見方から景気敏感株や消費関連銘柄も売りに押された。アマゾン、メタなど主力株が軒並み下落した。
【前回は】相場展望8月22日 米国株:長期金利再上昇、SQ通過で銘柄転換リスク 日本株:日経平均29000円目標クリアで反動に注意
2)8/23、NYダウ▲154ドル安、32,909ドル(日経新聞より抜粋)
・米連邦準備制度理事会(FRB)が金融引締めを続けるとの警戒感が根強く、売り優勢。
・パウエルFRB議長が8/26、米カンザスシティー連銀主催の経済シンポジウム(ジャクソンホール会議)で講演する。インフレ抑制のため利上げを続ける姿勢を改めて示すとの警戒感が強い。
・米長期金利が8/23に一時3.07%とほぼ1カ月ぶりの高水準を付けたのも、株式の相対的な割高感を意識させた。
・冴えない米経済指標も投資家心理の重荷となった。米SPグローバルが8/23に発表した8月の米購買担当者景気指数(PMI)は総合が2カ月連続で好不況の分かれ目となる50を下回り、2年3カ月ぶりの低水準になった。
・7月米新築住宅販売件数は6年半ぶりの低水準だった。
・NYダウは前日までの2営業日で▲930ドル余り下落したが、8/23はその間に比較的値持ちの良かったディフェンシブ銘柄が売られ、P&J、ユナイテッドヘルスが安い。原油高を背景にシェブロン+3%高、キャタピラー、ダウが上昇し、相場を下支えした。
3)8/24、NYダウ+59ドル高、32,969ドル(読売新聞)
・今週末に開かれる経済シンポジウム「ジャクソンホール会議」で、米連邦準備制度理事会(FRB)のパウエル議長が急速な金融引締めに前向きな方針を示すことへの警戒感が和らぎ、4営業日ぶりに値上がりした。
・利上げによる景気後退への懸念が弱まり、情報サービス大手のセールスフォースや、娯楽大手ディズニーなどの銘柄が買われた。
●2.米国株:大幅下落への転換か、否か? まだ見極めはできず、株式市場はまだ楽観的
1)米株式8/24の概況
・8/24のNYダウは+59ドル高、前日までの3営業日で▲1,090ドル弱の下落により、割安感が出た銘柄が買われ、相場を押し上げた。
・ただ、パウエルFRB議長の講演を控え、利上げ発言を見極めたいとする投資家の多くが様子見となり相場を押し上げる力は強くなかった。
2)米長期金利(10年物)は再反騰基調
・長期金利(10年)は8/24、3.106%と3%台に戻った。米国債券2年は3.393%と、10年物だけでなく、30年物3.315%とも「逆イールド」が発生し継続。
・2年物と10年物との「逆イールド」は、すでに1カ月以上となり、注意が必要。
3)株式相場の「楽観」と、債券市場の「慎重」さがより鮮明化
・米株式相場は「悪材料に鈍感」「好材料に敏感」に反応する状況に変化なし。
4)相場の過熱状況を表わす、ビットコインとミーム株が反落
・ビットコインは、8/16高値24,009⇒8/24安値21,355に下落。
・ミーム株も反落。
5)米SP500の下落が気になる動き、パウエルFRB議長の講演に注目
・運用指標となっているSP500は、8/22・23と2営業日で▲1%以上の下げを記録し、弱気相場の半値戻しの水準である4,232を割込み、8/24は4,140。
・米株式相場は、6月下旬から続く戻り相場が一巡したとの見方が出てきているだけに、パウエルFRB議長の講演での、「ハト派」「タカ派」発言内容に注目。
●3.米世帯の電気代支払い滞納が6世帯に1世帯の割合に増加、今後の成長リスクに(フィスコ)
●4.米、イランにより要求された全条件を却下との報道で、NY原油先物急伸(フィスコ)
●5.米住宅リセッションの新たな証拠、7月新築住宅販売はパンデミック時を下回る(フィスコ)
1)7月新築住宅販売件数は前月比▲12.6%、2016年1月以来で最低、前年比で▲29.6%減。
2)住宅ローン金利の急伸と、経済の成長減速懸念などが影響し、需要が後退したことが影響。
3)住宅建設会社の景況感もネガティブ圏に落込み、新規雇用の減速、従業員解雇も目立つ。
●6.JPモルガン、FRBの大幅利上げは9月が最後、米株高続く公算大 (ブルームバーグ)
●7.シティ、株高は行き過ぎ、インフレは続き「悪いニュースはこれから」(ブルームバーグ)
1)近い将来の金融緩和は見込んでいない。
2)企業の予想1株利益は▲10%前後縮小すると予想。
●8.米ズーム、通期売上高・利益見通しを下方修正、需要低迷で(ロイター)
●9.世界半導体市場の成長見通し下方修正、世界的な景気後退懸念で(ブルームバーグより抜粋)
1)世界半導体市場統計(WSTS)は、2022年成長見通しを従来16.3%⇒13.9%に引下げ。2023年は2019年以降で最も低い水準になる見通し。
■II.中国株式市場
●1.上海総合指数の推移
1)8/22、上海総合+19高、3,277(亜州リサーチより抜粋)
・中国の金利引下げが買い安心感を誘う流れとなった。
・銀行貸出しの指標となる最優遇貸出金利は、住宅ローン金利の指標となる5年物が4.30%となり、予想4.35%以上に引下げられた。実質的な政策金利と呼ばれる1年物に関しても、予想ほどではなかったが前回からは引下げられている。
・国内の電力逼迫問題などを不安視した売りが先行したものの、指数は程なくプラスに転じた。
・業種別では、消費関連の上げが目立ち、非鉄・エネルギーもしっかり。証券は冴えない。
2)8/23、上海総合▲1安、3,276(亜州リサーチより抜粋)
・中国経済の不透明感が投資家心理の重石となる流れ。え
・電力需給の逼迫で、経済活動が停滞すると懸念された。猛暑による電力不足で、一部地域の計画停電は延長され、工場の操業停止や商業施設の時間制限が実施されている。
・ただ、中国人民銀行(中央銀行)が金融緩和に動くなど、当局の景気下支えスタンスが材料視され、上海総合指数はプラス圏で推移する場面もみられた。
・業種別では、医薬品・銀行・保険・空運が売られ、エネルギー・発電・電力が高い。
3)8/24、上海総合▲61安、3,215(亜州リサーチより抜粋)
・中国の電力需給逼迫が不安視される流れとなった。
・国内では猛暑による電力不足で、一部地域の計画停電が延長されている。工場の稼働停止や商業施設の時間制限が実施される中、経済活動の停滞が危惧される状況にある。
・企業業績の先行き不安もくすぶる。車載バッテリー世界大手の寧徳時代新能源科技(CATL)の4~6月決算は+82%の大幅増収増益を達成したものの、EV(電気自動車)バッテリー利益率は2021年末の22%⇒15.04%に急低下した。同社株は▲5.9%安。同社株の下落がほかのハイテク・自動車関連銘柄に波及し、売りにつながった。
・業種別では、ハイテク関連・自動車関連が安く、不動産も冴えず、保険はしっかり。
●2.中国規制当局、複数の銀行に人民元売りを警告=関係筋の話(ロイター)
1)人民元は8/24、2年ぶりの安値となる6.8704元を付け、8月で▲1.8%下落した。米金利上昇に伴うドル高に加え、中国経済の鈍化を反映している。
●3.中国大規模干ばつ深刻、長江上流の水力発電不足は浙江・江蘇の工業に影響(レコードチャイナ)
●4.電力制限が中国景気の下押し圧力に、猛暑と水力発電に必要な水不足 (産経新聞)
1)四川省、長江流域での高温と水不足で、工場の操業停止やサプライチェーンへの影響。
●5.中国シャオミの4~6月純利益+280億円と前年同期比▲83%減、スマホ需要低迷(ラッセル)
●6.中国失業保険支出が膨張、6月最大の7,400億円、雇用悪化(日経新聞)
1)失業保険基金は2018年をピークに減少。新たな雇用対策が困難になる可能性もある。
●7.中国、資金難の不動産開発会社向けに特別融資4兆円計画=関係者(ブルームバーグ)
■III.日本株式市場
●1.日経平均の推移
1)8/22、日経平均▲135円安、28,794円(日経新聞より抜粋)
・前週末の米株式相場は長期金利が節目の3%に接近しNYダウは▲2%下落し、東京市場でも高PERのグロース(成長)株を中心に運用リスク回避で売り優勢だった。高値警戒感もあり下げ幅は一時▲300円を超えたが、中国人民銀行(中央銀行)の利下げや円安を支えに下げ渋った。
・米連邦制度準備理事会(FRB)の高官からは、市場の利上げ鈍化観測を牽制する発言が相次ぎ、市場では「株式相場が米利上げ鈍化の楽観シナリオを織込みすぎた反動で調整は入りやすくなっている」との指摘があった。週内で、パウエルFRB議長の講演を控えているのも買いを手控えさせた。
・売り一巡後は下げ渋ったのは、中国人民銀行が最優遇貸出金利を引下げたことや、円ドル相場が1カ月ぶりの安値を付けたことが支えとなった。
・日野自が大幅安、サイバーや東エレクが売られ、INPEX・三菱商事・三井物産が上げた。
2)8/23、日経平均▲341円安、28,452円(日経新聞より抜粋)
・前日の欧米株式市場で主要指数が下落した流れを受け、東京市場でも運用リスクを回避したい投資家の景気敏感株などへの売りが優勢となり一時▲400円近くに達した。米長期金利の上昇がグロース(成長)株の重荷になった面もある。
・8/22米株式市場では米連邦準備理事会(FRB)による積極的な利上げが続くとの見方
・欧州市場でも天然ガス高騰による物価高や欧州中央銀行(ECB)による金融引締め継続の観測が株価の重荷にとなった。
・一方、内需関連には買いが入った。政府が新型コロナの水際対策緩和を検討と伝わり、百貨店・空運・JRの鉄道株の買いを誘った。
・日野自▲6%安、ソニー・トヨタ・ファナック・キーエンスが下落、花王・郵船が高い。
3)8/24、日経平均▲139円安、28,313円(日経新聞より抜粋)
・米国の利上げへの警戒感が根強く、東京市場にも波及し運用リスクを回避する売りが、値嵩株を中心に優勢となり、5日続落は2/17~24以来の半年ぶり。
・米連邦準備理事会(FRB)が大幅な利上げを継続するとの警戒から、米市場では長期金利が8/23に一時3.07%と、およそ1カ月ぶりの高水準を付けた。
・8/26にパウエルFRB議長が講演を予定するが、市場では「インフレ抑制に向けて金融引締めに積極的な姿勢を示すとの懸念がある」との指摘があった。
・円安が進んだことや、原油先物相場が上昇したことも、国内企業の採算が悪化するとの見方から、相場の重荷になった。
・岸田首相が新型コロナの全数把握の見直しや水際対策緩和を発表したが、事前の報道内容に目新しさに欠け、相場の反応は限られた。
・コナミ・任天堂・東エレク・富士フィルム・東急が売られ、電力株・三菱重が上昇。
●2.日本株:足元の反動安は、「調整」の範囲
1)日経平均の足元の下落は、「調整」の意味合いレベル
・日経平均は、8/17高値29,222円⇒8/24安値28,313円と5営業日で▲909円安。戻り相場が急伸しただけに、この反落は「調整」水準で「反転したとは言い難く」意外性なし。
・1/5高値29,332円に接近したことで、高値警戒が意識されやすい状況を表わしたものにとどまっているというのが現状認識。
・いましばらくは、膠着状態が続くとみられる。
2)外国人先物買い手口は、まだ売り転換したとはみられない
・6月中旬から一貫して先物買いが続いてきたため、8/23・24と売り枚数が目立つ。ゴールドマンとJPモルガンの2証券の手口での売りであり、クレディスイスなど他の外資系証券は買い枚数こそ低水準だが、まだ買い状況にある。よって、外資系手口は、まだ「売り転換」と判断できない。
3)現物株をみると勢いが弱含み
・年初来高値銘柄数が減少傾向にある。
新高値 : 8/17 139銘柄 ⇒ 8/24 40銘柄
・ただ、新安値銘柄数は低調のため、日経平均は「様子見」の状況にある。
新安値 : 8/17 1銘柄 ⇒ 8/24 4銘柄
4)日本株全般としては、マイナス圧力が掛かっているとは言えない
5)買われる銘柄に変化、薬品・海運など「好配当」銘柄が上昇
■IV.注目銘柄(投資はご自身の責任でお願いします)
・4502 武田薬品 業績好調・好配当
・6962 大真空 業績好調
・7270 SUBARU 業績好調
スポンサードリンク
中島義之氏のコラム一覧
- 相場展望12月16日号 米国株: 心理的節目の大台乗せで、高値警戒・金利上昇・インフレに視点移る 日本株: 円安進行も、輸出関連株に追い風吹かず
- 相場展望12月12日号 米国株: FRBは「金利引下げに前のめり」、インフレ上昇には鈍い反応 日本株: 日米金利差が拡大し、円安が進行⇒日経平均には追い風 ボックス圏の高値にあり、海外投機筋に翻弄されない備えを
- 相場展望12月9日号 米国株: 今後の米国株を支える材料は「FRBによる利下げ」観測のみ 日本株: 今年の日経平均の上昇は事業会社の「自社株買い」が貢献大
- 相場展望12月5日号 米国株: 米景気堅調で最高値更新も、下院で共和党が僅差で勝利 年末商戦が苦戦か 日本株: トランプ・ラリーから取り残された日経平均
- 相場展望12月2日号 米国株: 米国株高は、12月上旬までか? トランプ関税大幅引上げの負の要因に着目する動きに注意 日本株: トランプ追加関税・円高で輸出関連株が下落し、日本株に暗雲
- 中島義之氏のコラムをもっと読む