相場展望9月13日 米NYダウ5日間続落が示唆するものは? 8/30起点に、『日経平均上昇&米NYダウ下落』

2021年9月13日 08:22

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■I.米国株式市場

●1.NYダウの推移

 1)9/09、NYダウ▲151ドル安、34,879ドル(日経新聞)
  ・デルタ型変異株の感染拡大による米景気の回復鈍化懸念が売りを誘った。
  ・バイデン政権が薬価引下げの包括法案を発表し、医薬株が売られたのも相場の重荷となった。バイオ製薬のアムジェン、製薬のメルク、医薬・日用品のJ&Jの3銘柄で、NYダウを約70ドル押し下げた。
  ・米新規失業保険申請件数が31万件と、市場予想以上に減少し、米雇用が伸び悩むとの懸念がやや和らいだことが、投資家心理の支えとなった。

【前回は】相場展望9月9日 米国『景気後退とインフレ、金利上昇』⇒株安懸念 日本『新首相ご祝儀相場、一服か』⇒株安の備えを

 2)9/10、NYダウ▲271ドル安、34,607ドル(日経新聞より抜粋
  ・NYダウは 5日連続の下落。
  ・新型コロナ感染拡大で、米景気の回復が鈍化するとの懸念に伴う売りが続いた。
  ・アップルが大幅に下落するなど、NYダウは持ち高調整もあり、取引終了にかけて下げ幅を広げた。アップル株価は前日比▲5.1ドル安・▲3.31%安、NYダウ寄与▲33.54ドル安。
  ・アップルは、カリフォルニア連邦地裁が課金ルール見直し命令を出したのが嫌気された。
  ・エコノミストは、新型コロナ感染で、年後半の米経済成長率の見通しを相次いで引下げている。景気動向を占ううえで、来週発表の8月小売売上高などの経済指標の内容を見極めたい市場関係者も多く、買いを見送るムードが強かった。

●2.米国株に、スタグフレーション(インフレ、景気後退)の兆しで、向かい風が吹き始めた?

 1)NYダウは5日間連続の続落。SP500とナスダック総合も連日安。
  NYダウ  9/02 35,443⇒9/10 34,607  差異▲836安、▲2.4%安
  SP500   9/02  4,536⇒9/10  4,458  差異▲ 78安、▲1.7%安
  ナスダック 9/07 15,374⇒9/10 15,115  差異▲259安、▲1.7%安

 2)米インフレ率は、経済成長率の低下見通しながらも、高水準をさらに伸ばす。米8月生産者(卸売)物価指数は前年比+8.3%と上昇し高水準。

 3)米雇用状況では、労働参加率の上昇が頭打ちし、賃金アップ率が目立つ。
  8月賃金は、前月比で+0.6%と予想外に上伸し、前年同月比で+4.3%上昇した。8月労働参加率は61.7%と、パンデミック前の63.3%を大きく下回っている。
   ⇒ 労働参加率が上昇しないのは、景気後退が始まっているからだとも解釈できる。
   ⇒ 賃金上昇は、コストアップ要因で、企業業績悪化や価格転嫁による物価上昇を引き起こす。
   ⇒ 新規雇用の減少は、経済成長や企業業績の伸長を脅かす。
   ⇒ 引いては、株式市場の上昇をも脅かすことにつながる。

 4)モルガン・スタンレーは、米国株の投資判断を「アンダーウェイト」に引下げた。
  理由は、
  (1)2021年後半の米経済見通し鈍化
  (2)新規経済政策の議会可決の不透明感
  (3)増税法案は企業業績と富裕層に打撃を与える可能性

 5)米10年国債利回りは、インフレを見込んで上昇トレンド入りか? 見極めに注視。
    米10年国債利回り 9/02 1.284%⇒9/10 1.344%

 6)上記の観点から、米国株は容易に調整(下落)する可能性がある。

●3.米8月生産者物価指数(PPI)は前年比+8.3%と、2010年来で最大伸び(フィスコ)

 1)8月予想は+8.2%と、7月+7.8%をも上回った。

 2)変動の激しい燃料や食品を除いたコアPPIは前年比+6.7%と、7月+6.2%から予想以上に拡大し、2010年以来で最大を記録。

 3)新型コロナの世界的拡大が続く中、サプライチェーン(供給網)はなお逼迫していることから、高インフレの状態はしばらく続く可能性がある。(ロイター)

●4.クリーブランド連銀総裁「年内のテーパリング開始、2022年上半期終了」支持(フィスコ)

 1)タカ派で知られるクリーブランド連銀のメスター総裁は、「2021年のインフレが高止まりしており、インフレ見通しに上方リスクが見られる」と指摘した。
  ・懸念されているデルタ変異株はリスクになり得るものの、必ずしも、経済活動を深刻に害するものではないとしている。
  ・経済成長は依然として比較的強く、雇用も増加していると楽観視している。
  ・年内にテーパリングを開始し、2022年上半期に終了することを支持する姿勢を示した。
  ・なお、同総裁はFOMC(連邦公開市場委員会)での投票権は2021年度は持たない。

 2)発言後、
  (1)米国債相場は続落し、10年債利回りは1.298%⇒1.35%まで上昇。
  (2)ドル円は、109.80円⇒109.95円まで上昇した。

■II.中国株式市場

●1.上海総合指数の推移

 1)9/09、上海総合+17高、3,693(亜州リサーチ)
  ・中国政府による中国産業の締付けなど不安材料はあるものの、経済対策に対する期待感が相場を支えている。
  ・商品相場の高止まりを手掛かりに、関連銘柄が上昇したこともプラスになった。
  ・消費者物価指数(CPI)が市場予想を下振れする反面、生産者物価指数(PPI)は上振れて13年ぶりの高水準を記録した。「卸売物価の高騰が川下産業の圧力」と一部で懸念される反面、「原材料などを扱う川上産業には追い風」との見方があった。
  ・業種別では、エネルギー・鉄鋼・非鉄など資源・素材の上げが目立つ。反面、証券は安く、ハイテク・自動車・医薬品・海運・銀行・保険は売られた。

 2)9/10、上海総合+9高、3,703(亜州リサーチ)
  ・米中首脳が電話会談したと報じられ、米中対話の再開が買い安心感を誘った。
  ・中国経済対策に対する期待感も引き続き支えとなる。
  ・中国人民銀行(中央銀行)が早ければ9月中にも預金準備率や政策金利を引下げる、との見方がある。
  ・インフラ投資も下半期に加速するとの観測が流れた。
  ・業種別では、ハイテク関連の上げが目立ち、銀行・証券も高かった。反面、エネルギー関連・自動車・公益・医薬品が売られた。

●2.中国、8月新車販売台数が大幅減、半導体不足と東南アジア新型コロナ影響(NHK)

 1)前年同月比▲17.8%減と、4カ月連続のマイナス。
 2)トヨタ▲11.9%、日産▲10.6%、ホンダ▲38.3%。
 3)中国の主要産業である自動車市場での販売減少によって、中国経済全体に与える影響に警戒感が強まっている。

●3.中国の新規人民元建て融資、8月は1.22兆元と、予想1.30兆元を下回る(ロイター)

 1)マネーサプライM2の前年比伸び率は+8.2%と、市場予想+8.4%を下回った。

■III.日本株式市場

●1.日経平均の推移

 1)9/09、日経平均▲173円安、30,008円(日経新聞)
  ・5カ月ぶりに3万円台に乗せたことで、短期的な過熱感や当面の目標達成感を背景にした利益確定売りが優勢だった。
  ・9/10に、9月の株価指数先物・オプションの特別清算指数(SQ)算出を前に、短期筋による持ち高調整などの買いは一巡したとの声も多かった。
  ・一方、新型コロナ対策の行動制限の緩和で経済が正常化に向かうとの期待が相場を支えた。
  ・足元の株価急伸で投資家心理は強気に傾いており、一段の先高観を背景にした押し目買い意欲も旺盛だった。
  ・次期政権の政策期待も根強く、今日は原発再稼働に向けた思惑から電力株が物色された。

 2)9/10、日経平均+373円高、30,381円(日経新聞)
  ・前日に日経平均が3万円の大台を維持し底堅さを確認したことから、先行きの上値余地を見込んだ投資家の買いが改めて入った。
  ・特別清算指数(SQ)算出に絡んだ買いや、香港市場急反発も支援材料になった。
  ・自民党総裁選への立候補表明が相次ぎ、日本政治の閉塞感打破の期待が高まり、出遅れ銘柄の株価修正が一気に進んだ、との指摘があった。
  ・前日の米半導体株の上昇を受けて、東京エレク、アドバンテストなどが買われた。薬品のエーザイ、中外製薬が安い。

●2.『日本株上昇 & 米NYダウ下落』傾向が8/30を起点に鮮明化

 1)日経平均の上昇が、米NYダウとの違いが際立って目立ち、日米の株価差が急縮小
            8/27終値  9/10  差異
   NYダウ(ドル)  35,455  34,607 ▲ 848 ▲2.4% 8/30から下落基調
   日経平均(円)   27,641  30,381 +2,740 + 9.9% 8/30から上昇基調
   日米差異(㌽)  ▲7,814  ▲4,226 +3,588

 2)外国人先物買残枚数は増加
             8/27    9/09   差異
   外国人先物買残枚数 141,961  168,021  +26,060 +18.4%増
  日経平均の急騰のきっかけを作ったのはシティとCスイスの買戻しの加速であるが、急ピッチの上昇で日経平均が3万円台に乗せ「過熱感もある」こともあり、SQ後の9/13の週の動向に注目したい。
 
 3)日経平均PER(株価収益率)が9/13に13.99倍まで上昇したため、日本株の割安感は解消したと見る。

 4)自民党総裁選の立候補者が出揃い経済政策等が開示されたため、短期的な過熱感が意識されやすい状況にある。

 5)売買回転の速い、短期筋の買い仕掛けとアルゴ取引による高騰が、日経平均を急騰させたと思われる。それだけに、反落時のスピードの速さに注意したい。

●3.夏の賞与▲6.59%減少し、12年ぶりの下げ幅(厚労省発表)(時事通信)

●4.企業動向

 1)SBI    新生銀行にTOB開始を発表(読売新聞)
        現在、約2割の株式保有を、最大48%まで引き上げることを目指す。
        買付価格は1株2,000円で、約1,164億円を投じる。9/9終値は1,440円。
 2)JAL    コロナ禍の長期化で、3,000億円規模の資金調達を発表(読売新聞)
        劣後ロー2,000億円や普通社債の劣後債1,000億円で、成長投資。
 3)東芝    新開発の成膜法で太陽電池の世界最高効率を実現(MONO)
        2023年までに研究開発完了し、2025年から製品化と量産開始
 4)トヨタ   約40万台追加減産へ、東南アジア感染拡大で部品調達滞る(NHK)
        国内外の生産見通しは、930万台⇒「900万台レベル」に引下げ
 5)日本郵便・佐川急便  小型の宅配便などで協業を合意(NHK)
 6)ローソン  中国で4,000店舗を突破(食品新聞)
        中国での目標店舗数は、2025年に1万店舗。(共同通信)
        アジアの旺盛な需要を取り込んで成長を図る。
        中国事業は、2021年2月期で営業利益ベースで初めて黒字化した。
 7)ファミマ  無人決済コンビニを、2024年度末までに1,000店舗に(共同通信)
        人口減少で働き手の確保が課題となっており、デジタル技術を活用してコンビニ運営の効率化を目指す。
        無人決済システムを設計したのはJR東日本の関連会社。

■IV.注目銘柄(投資は自己責任でお願いします)

 ・6289 技研製    国土強靭化関連。業績堅調。
 ・7518 ネットワン  DX機器関連。業績堅調。
 ・3697 SHFT    DXセキュリティ関連。業績堅調。

著者プロフィール

中島義之

中島義之(なかしま よしゆき) 

1970年に積水化学工業(株)入社、メーカーの企画・管理(財務含む)を32年間経験後、企業再生ビジネスに携わる。 現在、アイマックスパートナーズ(株)代表。 メーカーサイドから見た金融と企業経営を視点に、株式含む金融市場のコメントを2017年から発信。 発信内容は、オープン情報(ニュース、雑誌、証券リポート等々)を分析・組み合わせした上で、実現の可能性を予測・展望しながらコメントを作成。

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